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94:マトモな人で助かったよ!

 取り敢えず、原薬量を統一化することで、比較的短時間で多くの患者達に薬を配布することが出来た。


 王都の患者で、今日来ていない人の分は、アメティスチナさんに配布をお願いしよう。

 この寺院に来れば貰えるってことにすればイイ。



 一先ず、これで今日の配布は終了。

 そして、ボクが、

「出ろ!」

 女神様にいただいたペンダントにお願いして夕飯を出した。

 勿論、ルイージさんとボクが食べる分ね。



 丁度、主食を食べ終えて、ルイージさんが、

「デザートをお願いしたいんですけど……」

 と、いつもの台詞を言った丁度その時だった。


 一人の女性が寺院に入って来た。

 まさか、この人、デザートに釣られて入って来たとか言わないよね?



「トオル様ですね?」

「はい。アナタは?」

「モナントスと申します」

「あの転移魔法使いの。今日は、王都のほとんどの患者達にアナウンスをしてくださったようで」

「はい。さすがに死者が出ている病ですので、早急な対応が必要と思いますので」

「そうですね」

「ところで、テイラーから聞きましたが、彼女が手配した宿ではお気に召さなかったとか。しかし、あれ以上の宿となりますと……」


 一応、テイラーとは合流出来たんだね。

 ただ、これって、絶対に正しく情報が伝わっていないよね?

 完全に誤解している気がする。



「ちょっとイイですか?」

「はい?」

「テイラーさんから、どのような説明を受けているかどうかは分かりませんが、先ずボクは、宿のグレードは気にしていません。セキュリティ面がある程度以上の水準に達していれば、それでイイんです。ボクを拉致しようとする人達がいますので」

「それは、この国の人を疑っていると言うことですか?」

「違います。この国の人間でなくても、ボクをこの国で拉致する可能性はあります。過去にドロセラ王国内で、他国の者達に拉致されたことがありますので」

「そう言うことですか」

「それと、一つ聞きたいのですけど」

「何でしょう?」

「今回の場合、ボクとルイージの宿代は誰が持つのでしょう?」

「それは、王宮側から支払いますけど」


 それが普通だよね?

 恐らく、このモナントスさんはマトモな人だ。

 多分、キチンとした話が出来そうだよ。



「しかし、テイラーさんの説明では、ボク達が支払うと言っていましたよ?」

「えっ?」

「しかも、一泊二人で80万トール。その場に、この寺院の人もいましたので、彼女が証人になってくれると思います」

「これは、大変失礼致しました」

「それと、ドロセラ王国で、フルオリーネ女王陛下やボクにテイラーさんが説明した内容は、奇病が発生した、死者が出た、大人もかかるが子供の方が感染率は高そう、王都付近は一部の者を除いて出入り禁止、王都に出入りする場合は消毒を徹底している、これだけでした」

「えっ?」

「病気の症状も、患者数も、死者数も、感染死亡率も、発症地域も一切聞かされていなかったんです。王都で蔓延しているから王都に入れないのか、王都に病原体を持ち込まないように王都に人を入れさせないようにしているのかすら、分かりませんでした」

「本当ですか?」

「はい」

「……」


 モナントスさんの表情が固まった。

 さすがに、使者として、こんなヒドイ報告をするなんて有り得ない。


 ビオブラリア王国としても、極めて恥ずかしい限りだろう。

 これで、ボクがテイラーに対して良く思っていない理由がキチンと理解されたと思う。



「最初に、このルイージが伺った時には、シムランス王子も罹患したことと、王都近辺で患者が出ていることが話されていたみたいですけどね」

「これは、重ね重ね大変失礼致しました。たしかに、トオル様の仰る通りです。しかし、そんな報告で、よく来てくださいましたね」

「ボクから御使いシリシスに病気の詳細について問い合わせました。それで、少なくとも奇病が発生して人々が苦しんでいることが確認できました。それと、フルオリーネ女王陛下としては、やっと誕生した王子を絶対に救わなければならないってお考えがおありのようです」

「そうでしたか。本当に、どれだけ感謝して良いか分かりません。あと、コチラの不手際、まことに申し訳ございません」



 取り敢えず、諸悪の根源はテイラーと言うことを理解してもらえたようだ。


 ただ、どうしてモナントスさんじゃなくてテイラーなんかがボクのところに使者として遣わされたんだろう?

 モナントスさんが使者として来ていれば、もっと印象が良かったはずなのに。



「ちょっとモナントスさんに伺ってよろしいでしょうか?」

「何でしょうか?」

「どうして、使者がアナタではなくテイラーさんだったのですか?」

「本来でしたら、海外への使者はハミルの担当です。流通センターからの薬の搬出もハミルが行っておりますし」

「やはり、そうだったんですね」

「ただ、今回はハミルが病に倒れまして。それで、出来れば私の方で対応したかったのですが、私ではドロセラ王国まで転移するには力不足でして……」

「それで、転移魔法だけは長けたテイラーさんを遣わしたと言うことですか?」

「そうなります」


 つまり、モナントスさんよりもテイラーに任せた方が、ドロセラ王国に到着するのだけは早いってことになる。

 それで、致死率が高い伝染病だし、時間軸を優先してテイラーを遣わしたってことだ。



「ただ、いくら転移魔法に優れていても、普通はお城で働くには、他の面で力不足な気がしますけど?」

「まあ、ここだけの話、テイラーは家柄だけは良くて、それで、長距離転移魔法が使えるとなると、王家としてもムゲに扱えないようです」

「そう言うことでしたか」

「それで、本日は、この寺院に泊まられるのですか?」

「はい。せっかくですので」

「ただ、明日からは、当方で押さえた宿に宿泊していただけますか?」

「了解しました。それと、テイラーさんからは、ボクが言ったことで、何か聞かされていますか?」

「それが、ただトオル様から考えてくれと言われたと聞いただけでして……」


 これだと、完全に意味不明だ。

 ボクが何を言ったのか、全然テイラーは理解していないね。

 モナントスさんの方でも、これじゃ困惑するだけだよ。



「多分、王都の患者全員には、まだ薬は行き渡っていないでしょう。ですので、明日も薬が必要な人は、この寺院に来ると思います。しかし、王都だけではなく、王都周辺の街にいる患者達にも早急に薬を配布しなければなりません。それで、王都の分は、この寺院に置いておき、できれば王都民への配布は寺院の人にお願いして、ボクは、明日中に王都周辺の街全部を、一気に回りたいと考えています」

「そう言うことですか。至極真っ当な話ですね」

「はい」

「では、それぞれの街に配布場を設けるようにします。あと、配布場に配置するスタッフ達もですね。今夜中に手配します」

「よろしくお願いします」

「そう言えば、八年前にも似たようなことがありましたね。各市町村で配布場を作って」

「そうです。あの時と同じようにしたいのです」



 八年前のこと。

 それは、ボクが二回目の研究出向の直前に発症した病のことだ。

 男女出生率を元に戻すために女神様が特殊なウイルスを設計し、それを御使い達が散布したんだ。


 でも、発症すると初期症状が重くて、最悪の場合、死人が出てしまう。

 それで、ボクの方で症状緩和の薬を作って配布するよう、女神様から命じられたんだ。



「あの時の薬も、トオル様が作られたわけですよね?」

「まあ、そうですね」

「私も、あの薬で救われました。あの時は、本当にありがとうございます。では、急いで配布場所を手配してきます。それと、明日は何時頃、ここを出られますでしょうか?」

「八時半くらいで大丈夫ですか?」

「分かりました。では、その頃、迎えに上がります」

「ただ、ボクを転移させるのは、このルイージに任せてください。他国の転移魔法使いで転移して、万が一の事が起こりますと責任問題になってしまいますので」

「分かりました。では、明日、配布場所をお知らせします。失礼致します」


 そう言うと、モナントスさんは転移魔法で、この場から姿を消した。

 こんな時間から色々動いてもらって申し訳ないけど、対応が遅くなれば、それだけ人が死ぬかも知れないからね。

 なんとか頑張ってもらいたい。



 これで、明日は効率良く動けそうだ。

 後は、アメティスチナさん達への依頼だ。

 明日以降の薬の配布のことね。


 それで、ボクは、

「出ろ!」

 女神様にいただいたペンダントにお願いして、大量のデザートを出した。


 ただ、その量を見て、ルイージさんは、

「こんなに食べられないんですけど……」

 って言っていたけど、全部がルイージさん用ってわけじゃないよ!



「アメティスチナさん達もいかがですか?」

「よろしいんですか?」

「はい。ただ、明日から薬の配布をちょっと手伝ってもらいますけど。多分、この寺院に薬をもらいに来る人がいると思うんです。その人達に渡してあげて欲しいんです」

「それくらいでしたら問題ありません」


 よし。人員ゲットだ。

 これで、王都の配布は明日以降も大丈夫だ。


 そして、そのまま今夜は、スウィーツ大会に突入して行ったわけだけど……。

 ルイージさんは食べ過ぎないようにね。

 女王陛下から言われているしさ。



 そして、それから三十分くらいが過ぎた頃だ。

「あっ! ズルい!」

 って声がした。


 誰かと思えば、エリカさんだ。

 ボクの着替えとかを持って来てくれたんだ。



 そして、彼女は、

「トオル様。これを」

 と、ボクに着替えの入ったカバンを渡すと、ちゃっかりテーブルに着いた。


 スウィーツ大会に加わる気だ。

 別にイイケドね……。


 …

 …

 …


 翌朝、定刻通りにモナントスさんが来てくれた。

 早速、モナントスさんからルイージさんに配布場所の位置について説明がなされた。


 配布する街……と言うか市は全部で五つ。

 各市に五箇所、王都には、この寺院以外に七箇所の配布場所を確保してくれた。


 昨日のあの時間から頑張ってくれたんだなぁ。

 本当に有り難いよ。

 ちなみに、エリカさんは昨日のうちに帰ったよ。



「今日は、テイラーさんは?」

「それが、昨夜、発症したみたいでして」


 何と言う間の悪さだろう。

 でも、いない方が効率的かも知れない。


 なので、ルイージさんの転移魔法で、ボクとルイージさん、それからモナントスさんの三人で一気に回るよ!



「転移!」


 昨夜のスウィーツ大会でルイージさんはエネルギー充填120%以上の状態だ。

 当然、転移魔法も絶好調!

 計32箇所の配布場を、次から次へと、まるで疲れを知らないが如く回ってくれた。


 行く先々で、ボクは薬を出したわけだけど、これを見て、その場に居た配布用スタッフ達は、ムチャクチャ驚いていたよ。


 それこそ、昨日の患者さん達みたいに、

「嘘……」

「まさに奇跡……」

 って言いながらね。



 配布箇所が多かったから大変だったけど、この日のうちに何とか薬と説明書を全て配布し終えた。

 そして、この日からモナントスさんが手配してくれた王都の宿に泊まることになった。



 薬を飲み始めた患者達は治って行くけど、その一方で新規発症する者達もいる。

 それで、様子見も兼ねて、ボクは、結果的に二週間ほど王都に泊まることになった。

 この間にハミルさんは全快。



 あと、気になる精巣炎の方だけど、発症したのは、発熱して三日以上経ってから薬が投与された男児に限られた。


 発症したのはチャットボット機能の回答通り三分の一くらいだったけど、そのほとんどは片タマだけで済んだようだ。

 つまり、生殖機能を失うのは片方だけってこと。



 でも、一割程度は両タマがヤられた。

 これにより生殖機能を失った男児は全部で五十人くらいいた。


 この種無し少年達の治療は、然るべき年齢になって、本人が希望すればボクの方で対応することとした。

 再生魔法を使えば何とかなるからね。



 これで、一先ず奇病と呼ばれた病も随分と落ち着いた。

 ボクはレニフォルミス女王陛下に状況を報告し、あとは必要に応じてハミルさんにボクのところまで薬を取りに来てもらうこととなった。

 あと、今回の薬の代金については、追ってエリカさんの方で対応する。


 …

 …

 …


「転移!」


 ビオブラリア王国のお城の前から、ボク達は、ルイージさんの転移魔法で一気にドロセラ王国のお城の前に移動した。


 門番は顔パス。

 そして、ボクはフルオリーネ女王陛下に報告するために会議室へと通された。



 少しして、女王陛下が会議室に入って来られた。

 第一声は、

「今回もルイージは太らなかったわね」

 だったけど。



「それで、トオルちゃん。先方の王子は大丈夫だった?」

「はい。シムランス王子は生殖機能に問題が生じることはありませんでした。しかし、一般市民の男児のうち、約五十人が生殖機能を失いました」

「そう。それは残念ね」

「しかし、それなりの歳になって、本人が希望すればボクが再生魔法で治療します」

「そうして頂戴。あとは、早くトオルちゃんにお城に入ってもらうだけね。アクティスの生殖機能に万が一に事が起こると困るし……」


 そして、ここから二週間前の会話に逆戻りした。

 ただ、二人のニート姫のことは置いといて、ボクとアクティスの件だけに話題は絞られていたよ。

 状況を察して、ルイージさんも途中退席したし……。


 …

 …

 …


 一時間くらいして、ボクは解放された。


 ルイージさんと一緒に城の門に向かう途中で、ボクはアクティスに会った。

 二週間前に比べると、随分スッキリした顔をしていた。



「トオル。また出張だったって?」

「はい。ビオブラリア王国まで。今帰ってきました」

「そうか。じゃあ、今日は、ゆっくり休んでくれ。そうそう。忘れないうちに、お礼を言っておかないとな」

「お礼? ですか?」

「トオルに背骨を矯正してもらったからか、それとも、あの時にもらった薬が効いたのかは分からないが、あれから酒を美味く感じるようになってな」

「それは良かったですね」

「しかし、薬として売らないのは、ちょっと残念だな。もっとも、売り出すと過剰な効果を期待されて、大変なことになりかねないが」

「まあ、必要があれば王子には処方しますよ」

「その時は頼む。じゃあ、俺はちょっと。また、あとで行くから」


 アクティスは、今日も予定が立て込んでいるようだ。

 なので、今日は変な方に誘われることもなく、無事にマイトナー侯爵のお屋敷に戻ることになったわけだけど……。

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