88:もしかしてアクティスって変な願望持ってない?
アクティスがソファーの上に腹ばいになった。
ボクは、チャットボット機能の指導……と言うか指示に従って、アクティスの背骨を矯正した。
ボクが背中を押すと、
「ボキボキ!」
って音がして、見ている方が痛く感じたけど、アクティスは気持ち良さそうだった。
イタ気持ちイイってヤツ?
ただ、首の矯正だけは見送った。
さすがに、アクティスに万が一のことがあったら怖いからね。
一歩間違ったら、
『王太子を婚約者が殺害!』
なんてことになりかねないもんね。
一通り、矯正終了(首を除く)。
さらにボクは、
「出ろ!」
L-オルニチンとクルクミンの錠剤を出した
前に、マイトナー侯爵にも飲ませたヤツね。
他にも、二日酔いの薬の実験と称して、とんでもない量の酒を浴びるように飲んだアリア達にも服用させたけど……。
これが、今のアクティスに効くかどうかは分からないけど、少しは肝機能復活に寄与してくれればイイかな……とか勝手に思っただけだ。
深い意味は無い。
「王子。これを」
「これは?」
「L-オルニチンとクルクミンの錠剤です。L-オルニチンはシジミに含まれる成分。クルクミンはウコンの成分で……」
「ウ〇コ?」
「ウコンです。ターメリックのことですってば」
「なんだ。ターメリックか。一瞬、なんてモノを飲ませる気だって焦ったぞ」
あのね……。
そんな聞き間違いするヤツって、下品ネタ大好きな小学生男子か、つまらないオヤジギャグで喜んでいるクソオヤジくらいだよ!
たしかに、ありがちな聞き間違いな気もするけど……。
「そんなモノを王子に飲ませるわけないでしょう!」
「しかし、トオルのだったら……」
「えっ?」
「いや、何でもない。それより、ウコンの成分が何だって?」
もしかして、コイツ。
そんな変な願望を持っていたりするの?
ボクのだったら試食してみたいとか、ぬかしたりしないよね?
少なくとも、ボクは、そんな趣味を持っていないからね!
食べる方も食べさせる方も!
「クルクミンはウコンの成分で肝臓の機能を向上させると言われています」
「シジミにウコンね……。でも、これが効くのか?」
「ボクの出向先の国では、二日酔いに良いとか言われておりましたので、まあ、保険程度には……」
「なんだか、これも珍しく自信無さげだな」
「まあ、ちょっと。こっちでは、二日酔いへの効果実験に失敗しまして……」
「どうせ、仲間内で、たらふく飲み過ぎて、薬を飲んでも『焼け石に水』くらいのレベルの二日酔いだったとか言うオチじゃないのか?」
「御名答です」
ボクの隣では、アリアが恥ずかしそう俯きながら顔を赤らめていたよ。
たらふく飲み過ぎた一人がここにいるって、完全にバレバレだな。
「でも、これで酒が美味くなるのか?」
「そうなってくれたら嬉しいなと。薬の方は何とも言えませんけど、ボクの出向先の先生が背骨を矯正したら、お酒が美味しくなったって言っておりましたので。今回は、それにあやかってみたんです」
「なるほどね」
「一応、矯正した日の飲酒は控えてください。あと、お風呂の方も、長湯したり入浴剤を入れたりするのは控えた方が良いかと」
「まあ、俺は基本的に烏の行水だし、入浴剤も使わないから大丈夫だ。でも、なんだか、矯正してもらったら身体が楽になった気がする」
「そう言って頂けると有難いです」
一先ず、矯正自体は巧く行ったみたいだ。
ボクとしても、こう言った施術をするのは初体験だったけど、さすが、チャットボット機能サマサマだね!
正直、アクティスには、長生きしてもらいたい。
別に、ボクの婚約者だからってわけじゃなく、王太子だからさ。
国民達のために長生きして欲しいって思っているんだ。
そう言った意味では、たまには、ボクが診断魔法で健康状態をチェックしてあげるのもイイだろう。
「ねえ、トオル様」
丁度、このタイミングでボクに話しかけて来たのはルビダス。
ボクとアクティスの会話が途切れるのを待ってくれていたみたいだ。
顔だけ見ると悪役王女だけど、中身はイイ娘なんだよね。
「はい?」
「甘いものは無いんですか?」
「甘いのって?」
「だから、ケーキとかパフェとか」
はいー。
いつものキター!
ここで、
『甘いお酒!』
とか言わずにスウィーツに走ろうとするのがルビダスらしい。
そう言えば、甘いお酒って、今まで一度も出したことが無いか。
チョコレートリキュールとかコーヒーリキュールとか。
でも、今出すと、ガバガバ飲んで、そのままここに居付かれ……いや、ここで寝ちゃいそうだから、それらを出すのは、まだ後日にしよう。
ただ、スウィーツって言ってもなぁ。
ボクが有馬透時代に食べたスウィーツって、実は、大したモノじゃないんだよね。
コンビニスウィーツと、あと話題になっていたのを、大学一年の頃に友達何人かと二~三回食べに行った程度でさ。
その頃の記憶にあるモノを出しているだけだから、レパートリーも少ない。
遠野留美時代なんか、妙に科学知識を詰め込む方にばかり走っちゃって、スウィーツを楽しむ余裕なんて全然なかったし。
だから、本当は、ボクなんかよりも、ずっとスウィーツに詳しい人が召喚されれば、別腹メニューを、もっと充実させることが出来るって思っている。
ボク程度の知識でゴメンナサイ。
でも、一先ずは出しておいてあげよう。
「出ろ!」
ボクは、女神様にいただいたペンダントにお願いして、山盛りフルーツタルトを人数分出してあげた。
ルビダスの分だけじゃなくて、フルオリーネ女王陛下、アクティス、ベリル、スティビア、ルイージさん、エリカさん、それからアリアの分もね。
ボクのは……要らないや!
直径十四センチのヤツだから、多分、ルビダスなら超余裕で、一人で全部食べちゃうだろうって思っていたけど……。
思った通りだったよ。
一瞬で全部、胃袋と言う名のブラックホールに吸い込まれて行った。
そして、当然の如く、
「美味しかった。それで、次のは?」
釣り目の笑顔でお代わりを要求してきた。
ただ、この笑顔が何故かボクにとっては可愛いんだよね。
なので、ついつい甘やかしてしまう。
「出ろ!」
今度は、ザッハトルテを出してあげたよ。
勿論、ボク以外の全員の分ね。
一方のアリアだけど、そう言えば、さっき、チョコレート軍団を食べたばかりだよね?
なのに、何故、それが身体の中に消えて行く?
コイツも、別腹は完全にブラックホールだと言うことを再認識させられたよ。
珍しく、ベリルだけは、食べる速度がいつもに比べて遅かった。
ケーキを食べながらだけど、自分が見つけた滄竜の化石をシゲシゲと見ていたからね。
むしろ、意識がケーキより化石の方に向いていた。
珍しい! って思ったけど、やっぱり発見者本人だし、当然の反応なんだろう。
「これって、魚とかを食べていたんでしょうか?」
ベリルが、こうボクに聞いて来た。
この化石が、生前、どのようなライフサイクルを送っていたか気になるってことか。
「そうだね。ただ、魚と言っても、ボク達が焼き魚とかで食べるレベルの大きさのモノじゃなく、もっと大きいヤツだね。何メートルとか言うレベルの。シリシスが言うには、どうやら当時の生息域では食物連鎖の頂点にいたみたいなんだ」
「じゃあ、もし、今、この生物が生きていたとして、近くで海水浴なんてしたら……」
「瞬時に喰われると思う」
「怖い……。でも、不思議ですよね。そんな遠い時代に生きていた獰猛な生物が、骨になって、今の時代に残っているなんて」
「そうだね」
化石として過去の軌跡が残るって、本当に不思議だし、ロマンがあると思う。
骨以外に、タマゴの化石とか足跡の化石とか、それこそウ〇コの化石なんてのもあるって話だし。
さすがに、ウ〇コって言葉だけ言われたらロマンの欠片も無いけど、ウン〇が化石化するってこと自体は、ある意味、ロマン溢れることなのかも知れないなぁ。
知らんけど!
あと、皮膚の化石も一応あるらしいね。
ボクは専門外だから詳しくないけど。
それから少しして、
「随分と御馳走になったな。じゃあ、俺と陛下は、そろそろ戻る」
とアクティスがボクに言って来た。
実は、フルオリーネ女王陛下も、アクティスも、こんな時間だけど、まだ公務が残っているらしい。
ちょっと区切りがついたところで、ワザワザ見学に来てくれたみたいだ。
「こちらこそ、お忙しところ、ありがとうございました」
「いやいや、こっちこそ作業中邪魔したな。あと、ベリルが見つけたヤツで、この間、発掘中だった化石も、ここに運び入れたいんだが、イイか?」
「構いませんよ」
「明日で大丈夫か?」
「問題ありません」
「あと、その際にトオルの異空間収納を使わせてもらいたいんだが」
「アイテムボックスですね。承知しました」
「助かる。それじゃあ、また」
「はい。お疲れ様でした」
これで、一先ずアクティス達は、エリカさんの転移魔法でお城へと戻って行った。
それにしても、ルビダスは、ただ甘いものを食べに来ただけだったな。
別にイイケド!
翌朝。
ボクとアリアは多目的ホールでスタンバっていた。
しばらくして、
「遅くなりました」
ベリルとルイージさんが到着。
早速、ルイージさんの転移魔法で、ボク達は発掘現場へと急行した。
一応、ボクとベリルを警護するって意味で、エリカさんじゃなく、ルイージさんを派遣してくれたんだろう。
発掘現場には、瞬時に到着!
そこには、発掘された化石がパーツごとに並べられていた。
見た感じ、多分、先日発掘した首長竜や滄竜よりも、さらに大きいんじゃないかな?
ボクは、その化石が崩れないように、
「強化!」
一応、強化魔法をかけた。
ショボいボクの魔法でも、多少は効くからね。
何もしないよりはマシだと思う。
それらの化石をアイテムボックスの中に順次収納した後、ボク達は、再びルイージさんの転移魔法で移動……と言うか、多目的ホールに戻った。
そして、アイテムボックスの中から化石を順に取り出しながら、部位毎に並べて行った。
ベリルがパーツごとに番号を振ってくれていたから、どれがどの辺の骨か、キチンと分かるようになっていて、本当に助かったよ。
並べ終わると、早速、ボクはチャットボット機能を立ち上げた。
当然、化石組み立ての指示を仰ぐためだ。
しかも、今回はボクとアリアとベリルとルイージさんの四人での作業だからね。
今までやってきた中で、一番、組み立て作業の進みが早かったよ!




