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85:一億年前だって?

 ボクは、多目的ホールに移動すると、

「強化!」

 取り急ぎ、ボクの身体を強化した。


 ショボい魔法だから、何十トンもの重量物を持ち上げられるレベルまで身体強化されるわけじゃない。

 でも、今回の化石の各部位を運ぶ分には十分お釣りがくるだろう。



 続いて、ボクは、アイテムボックスから順次化石を取り出して並べて行った。

 そして、並べ終えると、

「強化!」

 ボクは、この化石にも強化魔法をかけた。


 これで、多少の力が加わっても化石が割れたり崩れたりすることは無くなるだろう。

 当然、化石を組み立てた後、自重で折れたり割れたりすることも無いはず。



 続いて組み立て作業だ。

 一般論で考えるなら、首長竜の化石を初めて取り扱う人間が、そう簡単に組み立て作業を行えるはずが無い。


 でも、ボクには、チャットボット機能と言う強い味方がいる。

 早速、チャットボット機能を立ち上げると、ボクは、チャットボットに確認を取りながら、順に化石を組み立てて行った。


 とは言っても、今日一日でキチンと組み立てるのは、正直ムリだ。

 強化魔法で化石を強化していても、慎重かつ大事に取り扱わなければならないし、そもそも論として生まれて初めての作業だからね。時間がかかる。

 なので、ボクはムリせず数日かけて、組み立てることにした。



 それにしても、ゴツイ骨だね。

 背骨も一つ一つが結構重い。


 そう言えば、背骨で思い出したけど、ボクが有馬透時代に所属していた研究室の教授が整体に行って背骨を矯正したら、酒が美味くなったとか言ってたっけ。


 背骨が曲がると、神経とか内臓とかが圧迫されて内臓機能が低下するから、身体がアルコールを受け付けなくなっていたんじゃないかって勝手なこと言っていたなぁ。


 それが正常になったからアルコールを身体が受け付けるようになったって話だったけど、いったい、どこまで本当やら?


 …

 …

 …


 一週間が過ぎた。

 ボクの努力の甲斐もあって……と言うか、チャットボット機能の指導のお陰もあって、この頃には、既に首長竜の化石の組み立ては完了していた。

 トオル製薬の社員達も、流通センターで働く人達も、仕事の合間に、この化石を見に来てくれた。


 それこそ、見た目が龍種っぽいからね。

『遥か昔には、この世界にも龍がいたんだ!』

 なんて話になっていたよ。


 ただ、龍の存在を信じる人達には申し訳ないけど、ボクは周りに、

『みなさんが想像する龍とは違っていて、海に生息し、魚類を食べていたと思われますけど……』

 って説明したけどね。


 でも、ほとんどの人が信じてくれなかった。

 それどころか、

『元々、龍がいたイットリア山だからこそ、トオル様が再臨された聖地として選ばれたのですね!』

 って話になって……。

 なんだか説明するのがドンドン面倒臭くなっていったよ。



 それと、トルリシティの人々への公開は、まだ、行なっていない。

 人が、たくさん押しかけてきても困るだろうってことで、どのタイミングで一般公開するか判断に迷っているところだ。



 そう言えば、王族にも報告していないな。

 後でアクティスには、完成したって、キチンと話しておこう。



「ねえ、トオル。遥か昔って、何百年くらい前?」

 こう聞いて来たのはアリア。

 意外とアリアは、首長竜の化石が気に入ったっぽくて、暇さえあれば、この化石を見に来ている。



「もっともっと昔だと思うよ」

「じゃあ、何千年前とか?」

「多分、もっと前だと思う。ちょっと待っててね」


 ボクは、チャットボット機能を立ち上げた。

 さすがに、放射能による年代測定なんて、ボクもやり方を知らないからね。

 なので、チャットボット機能に聞くのが一番速いし確実だって思ったんだ。



『Q:この化石が生きていたのは、いつ頃?』

『A:約一億年前』


 やっぱり、それくらい昔になるよね。

 あと、他にも気になることがあるから、ついでに聞いておこう。



『Q:ちなみに人類誕生は?』

『A:何を以て人類と定義するかによって異なるが、地球で言う新人類が誕生したのは三十万年前』


『Q:人類の歴史は地球よりもネペンテス世界の方が長いってこと?』

『A:その通り』


『Q:この世界にも、首長竜以外に恐竜や翼竜とかも存在した?』

『A:していた』


『Q:地球の古代生物と似たようなモノ?』

『A:大同小異』


『Q:恐竜や首長竜は、現在では生存していない?』

『A:完全に絶滅した』


『Q:絶滅したのは、いつ頃?』

『A:約七千万年前』


『Q:絶滅した理由は?』

『A:小惑星激突後の激しい気候変動による』


 それって、地球のケースと同じってこと?

 女神様の間では、そのやり方が一般的なのかな?



『Q:地球でも小惑星激突が恐竜絶滅の原因と言われているけど、それって女神様達の間で流行っている?』

『A:そう言う訳ではないが、手っ取り早く絶滅できるため、この世界にフィリフォーリア様が適用したのをラメラータ様がマネた』


 そう言うことか。

 これって、結構興味深い話だよ。

 あとで、もっと詳しく聞いておこう。



「ん-とね、アリア。御使いシリシスからの回答によると、この首長竜が生きていたのは、約一億年前だって」

「一億年?」

「そう」

「気が遠くなりそうなほど昔ね。でも、その頃に生きていた人達は、こんな動物を見ることが出来たってことか」

「ええとね。その頃には、まだ人類は誕生していなくてね」

「そうなの?」

「今みたいな人類と同様の種族が、この世界に誕生したのは、大体三十万年前らしい」

「そうなんだ。それも、シリシス様からの回答?」

「うん」

「じゃあ、間違いないね」


 丁度、この時だった。

 背後から、ボクに誰かが話しかけて来た。


「トオル様」

「はい?」


 振り返ると、そこにはエリカさんの姿があった。

 ただ、普段の彼女とは違って、これから農作業でもするのかなって服装をしていたんだけど……。



「その服装は、いったい?」

「化石発掘のためです」

「もしかして、あれからも?」

「はい。継続してイットリア山の麓の調査をしております。それで、また、いくつか興味深いモノが発見されましたもので……」

「本当ですか?」

「はい。それで、トオル様に、ちょっとお声がけに」

「凄いですね。でも、あれから一週間しか経っていませんけど、そんなに発見されたんですか?」

「実は、ベリル様が探査魔法で化石を見つけることが出来ると分かりまして」

「ベリルが?」


 ベリルは、アクティスの妹で第二王女ね。

 姉のルビダスと違って、比較的常識人だ。



「はい」

「でも、そんなことが出来るって、よく分かりましたね」

「先日、トオル様にご同行いただいた日に、アクティス様が女王陛下や王女様方にお話しされたところ、ベリル様が興味を持たれまして。それで、現地に行って試しに探査魔法を発動したら、ある程度以上大きな化石でしたら発見できることが分かったんです」


 それって、もしかしてメチャクチャ凄くない?

 普通は、大きな化石を見つけるのが難しくて、貝とかアンモナイトとか恐竜の歯とか、小さな化石の方が、どっちかって言うと見つけやすいんじゃない?

 地球の古生物学研究者達が羨ましがる能力だよ、それ。



「小さな化石は見つけられないんですか?」

「やっぱり、小さいと見逃してしまうようです。それと、その後にあるモノって、先日の化石でしょうか?」

「そうです。数日かかりましたけど組み立てが終わりまして、今ではトオル製薬の社員と流通センターの人達にだけ公開しています。そろそろアクティス王子には報告をと思っていたんですけど……」

「では、今からイットリア山の麓に行きましょう。そこにベリル様だけでなくアクティス様もいらっしゃいますので」

「分かりました」


 と言うわけで、ボクは化石発掘現場に行くことになったわけだけど、隣ではアリアが羨ましそうな顔をしていたよ。


 かなり、化石に興味を抱いているっぽいからね。

 多分、同行したいんだろうな。



「じゃあ、アリアも来る?」

「うん、行く!」

「でも、講義の方は?」


 アリアは、ボクの秘書だけど、同時に薬学教室の講師だからね。

 いくら何でも、講師の方を勝手にサボらせるわけには行かない。



「今日の講義は、もう終わったよ」

「そうだったんだ?」

「なので、問題無し!」

「了解。では、エリカさん。アリアも同行すると言うことでお願いします」

「分かりました。では、転移!」


 そして、次の瞬間、ボク達はイットリア山の麓に到着していた。

 たしかに、これなら交通機関が発達しないのもムリはない。

 どれだけ離れていても、マジで、一瞬だもんね。



 前方にアクティスの姿を発見。

 忘れないうちに報告しないとね。


「アクティス王子」

「トオル。来てくれたか。実は、また巨大な化石が見つかってな」


 アクティスの前には、巨大な化石がワンセット置かれていた。

 見た感じ、四肢がヒレに変わったワニみたいに見えた。


 ただ、体長が十メートルを超える。

 魚竜の一種だろうか?

 いずれにしても、これって、生きていた当時は、かなり獰猛だったんだろうな。



「王子の前にあるヤツですね?」

「ああ。他にもいくつか見つけている」

「ベリルの探査魔法で発見できるんですって?」

「そうなんだ。ただ、ベリルに、そんな芸当ができるとはね。あと、大きな巻貝の化石が何個も見つかっているぞ。あっちに置いてある」


 アクティスが指さした方を見ると、そこには、多分、アンモナイトと思われる化石が何十個と置かれていた。


 しかも、五十センチ以上のモノばかりだ。

 中には一メートルを超える巨大なモノまである。

 古生物学者が泣いて喜びそうだ。



「それはそうと、ボクからも王子に報告です。首長竜の化石の組み立てが完了しました」

「本当か?」

「はい。現在、トオル製薬の多目的ホールに展示しています。トオル製薬の社員と流通センターの方々に絞って公開しておりまして、一般公開はしておりません」

「そうか。後で、陛下を連れて見学したいんだが」

「いつでもどうぞ」

「じゃあ、早速で済まないが、この化石をトオルの収納魔法で保管してもらえないか?」

「分かりました」


 収納魔法と言うよりも、女神様からいただいたアイテムボックスなんだけどね。

 ボクは、この魚竜(?)の化石と、多分アンモナイトと思われる化石に、念のため先に強化魔法をかけてから、それらをアイテムボックスの中に収納した。



 ただ、この様子を見ながらアリアは、

「なんで……」

 って言っていたけど……。

 どうやら、化石の現物を少し眺めていたかったようだ。


 でも、貴重なモノだから、収納が先ね。

 組み立て作業の時には呼ぶから、それで勘弁してくれ!



「あと、王子。ベリルは何処に?」

「アイツなら、今、向こうでルイージと一緒に発掘作業をしているぞ」

「ルイージさんと?」

「ああ。向こうにも大物の化石が見つかってな。ルイージが発掘して、それにトオルがやったのと同じように、ベリルが、どの部分の何番目の骨かが分かるように順に番号を付けている」


 それって、大丈夫かな?

 ベリルは全然問題無いと思うけど、ルイージさんは粗雑なところがあるからなぁ。


 破壊工作していなければイイんだけど……。

 正直、不安だ!

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