84:化石発掘!
それにしても、非常に興味深いモノを見させてもらった。
でも、いきなり発掘とかは、さすがにムリだし、現段階では、これ以上のことは出来ないかな?
それで、ボクは、
『今日のところは、一旦、会社の方に戻るとするか』
って思ったんだけど、丁度その時だった。
「この骨みたいなのだけを取り出せば良いのですか?」
ボクに、こう聞いて来たのはエリカさん。
「そうですけど?」
「ちょっとチャレンジしてみますね」
エリカさんが化石の前に座り込んだ。
そして、彼女の右手が、そっと首長竜の化石の頭部に触れた。
「物質転移!」
彼女が、そう唱えると、今まで地に埋もれていたはずの首長竜の化石から、頭部だけが、その場から消えてしまった。
瞬間移動したんだ。
転移先は……、ボクの足元だった。
気が付いたら化石の頭部が、何故かボクの足元に転がっていたよ。
素晴らしいことに、割れどころかヒビすら入っていない。
ムチャクチャ綺麗に掘り起こされた……と言うか、削り出された状態になっていた。
たしかにエリカさんは、お城でお抱えの転移魔法使いだからね。
彼女レベルの物質転移なら、こう言った芸当が十分可能なのかも知れない。
ボク自身、そこまで考えが及んでいなかったよ。
「エリカさん、マジですか?」
「巧く行ったみたいですね。こんな感じで、全部、掘り起こしちゃえばイイですか?」
「そうですね。でも、どの骨がどの位置のモノかを、キチンと把握できるようにしておかないと、後で組み立てられなくなってしまいますので」
「たしかに。では、順に行きますので、トオル様は順番が分かるように、何か目印みたいなモノを付けることって出来ませんか?」
「了解です!」
ボクは、女神様からいただいたペンダントにお願いしてサインペンを出してもらった。
これを使って、物質転移された化石に、どの場所の骨かを直接書き込んで行く。
「では、行きますよ」
「お願いします」
「先ず、首の骨、上から順に行きます。物質転移……」
エリカさんは、首、背骨、肋骨、肩帯(胸のところにある骨で、前ヒレに繋がる部分)、前ヒレ、腰帯(腰のところにある骨で、後ヒレに繋がる部分)、後ヒレ、尻尾の骨を、順にボクの足元に物質転移していった。
ボクは、それらにサインペンで、どの部分の何番目の骨かを記載しながら、アクティスと二人で並べて行った。
小さな骨がボク担当で、大きい骨がアクティス担当ね。
もっとも、強化魔法を使えば、ボクでも多少重いモノを運ぶことは出来るんだけど……。
忘れられているかも知れないけど、一応、ボクは、一通り全ての魔法が使える。
基本的にはショボい魔法なんだけどさ。
でも、たとえショボい強化魔法でも、二~三十キロのモノを持ち上げることくらいは出来るようになる。
ただ、この場では、敢えてアクティスに頼ることにしたんだよ。
その方が、アクティスとしても男として嬉しいだろうと思ったんでね。
そして、それなりに時間はかかったけど、エリカさん一人で、この大変な発掘作業を全て終えてしまった。
エリカさんがいれば、発掘スタッフを招集する必要は無いってことだ。
しかも、結果的に、もの凄く綺麗に取り出せたと思う。
これがルイージさんだと綺麗に取り出せるかどうかは分からないけどね。
これは、能力的にじゃなくて、性格的な話なんだけど。
ルイージさんは、エリカさんと比べると、少し粗雑なところがあるから、化石を割っちゃうんじゃないかって気がする。
「王子。一先ず、この化石はボクの方で預かっておきますね」
「ああ、そうしてくれ。ただ、できれば、どこか広い部屋を確保して、早急に組み立てたいモノだな」
「では、トオル製薬の方で場所が無いか確認してみます」
「ヨロシク頼む」
取り急ぎボクは、発掘された首長竜の化石をアイテムボックスの中に収納した。
重い骨もあったけど、アイテムボックスを化石に近付ければ、化石はアイテムボックスの方で吸い込んでくれるからね。
それから、アクティスには、
『置き場所があるか確認します』
みたいなことを言ったけど、ボクとしては、この首長竜の化石を、銭湯施設に併設された多目的ホールに置きたいって思っている。
トオル製薬の歴史資料を置いたところで畳一畳分もあれば十分でしょ、きっと。
むしろ、こう言った凄いモノを展示すべきだよ!
「それとですね。この辺りを、もう少し調査したら別の化石も出て来るんじゃないかって気がします」
「たしかに、そうだな」
「首長竜以外にも、地球では海の生物の化石が見つかっていますので」
魚竜の化石だってあるかも知れないし、巨大なサメの化石だってあるかも知れない。
他にも、アンモナイトみたいなのも見つかるかもしれないし、色々と夢が広がりそうな気がする。
ただ、今回の発掘作業で、エリカさんは、完全にガス欠状態となってしまった。
これでは、すぐには、お城まで転移魔法で移動できない。
それで、ボクは、
「出ろ!」
女神様からいただいたペンダントにお願いして、今回は、いつもと趣向を変えて、たい焼きを三個出した。
しかも、結構大きいヤツ。
たまには、こう言うのもイイよね?
「エリカさん、これを」
「何ですか? コレ」
「たい焼きって言って、中に餡子が入っています。ボクが研究出向していた国の食べ物です」
「そうですか。でも、これって、初めて見る気がします」
「そうですね」
一先ず、ボクはエリカさんとアクティスに『一つずつ』たい焼きを渡した。
勿論、ボクの分も、一つだけ。
大き目の奴なんて、さすがに二つは入らないって思ったんだよ。
「いただきます」
でも、食べ始めて一分もしないうちに、
「お代わりあります?」
「俺も」
エリカさんもアクティスも食べ終わって追加を要求してきたよ。
一瞬で胃袋の中に全部消えたらしい。
余程美味しかったんだろう。
喜んでもらえたなら、こっちとしても嬉しいし。
だったら、仕方が無いよね?
「出ろ!」
改めてボクは、たい焼きを二つ出すと、エリカさんとアクティスに渡した。
ただ、今回のは、さっき渡したノーマルなヤツとは違って、濃厚なカスタードクリームを入れたヤツだ。
二人とも、
「これも美味しいですね」
「ああ。それに、美味いだけでなく、フォークもスプーンも使わずに片手で食べられるのも、こういう場では助かるな」
そう言いながら、こっちも、あっという間に完食しちゃったんだけどね。
でも、これでエリカさんのエネルギーが充填された。
なので、
「転移!」
ボク達はエリカさんの転移魔法でトオル製薬の前まで瞬間移動した。
「エリカさん。送ってもらって有難うございます」
「こっちこそ、美味しいたい焼き有難うございました。では、転移!」
そして、エリカさんは、アクティス王子を連れて、そのままお城に向かって空間転移に入った。
ボクの方も、早速、行動を開始する。
先ず、ボクはオゼンピックさんのところを訪ねた。
多目的ホールを使わせてもらいたいって、一言かけておかないとって思ったんだ。
たしかにボクは、会長って立場だし、ある程度以上の裁量権があるんだろうけど、結構巨大なモノを置くわけだからね。
事前アナウンスくらいは、しておかないとイケナイだろう。
それと、一応、アクティスの方から頼まれたってことにしておこう。
さすがに王太子の名前が出れば、誰も文句は言えないだろうしね。
一応、大嘘じゃないし。
「オゼンピックさん」
「なんでしょうか?」
「温泉施設の多目的ホールに、古代生物の化石を置きたくてですね」
「化石? ですか?」
「ええ。実は、龍の骨が出たんじゃないかってことでアクティス王子に同行を頼まれて現地に行ってきたんです」
「龍? ですか?」
さすがに、龍の骨と言われてオゼンピックさんも驚いていた。
今更だけど、実は、この世界に来てから、ボクは今まで、一度も龍を見たことが無いんだよ。
この世界は、一般に想像される異世界と地球の丁度中間辺りに位置した条件の世界なのかなって気がしている。
多分、オゼンピックさんも、龍は実在するモノではなく、飽くまでも伝説上の生き物って感覚&認識だろう。
「ええ。でも、発見されたのは、龍の骨ではなくて、古代生物の骨が長い年月をかけて石みたいになったモノだったのですけど」
「古代生物ですか?」
「はい。もう、気が遠くなるくらい遥か昔の生物の骨です。ボクが出向していた世界でも同様のモノが発見されていますので、間違いないでしょう」
「そう言うモノがあるんですね」
「はい。かなり貴重なモノです。それで、アクティス王子から、それを置くところを確保できないかと言われまして」
「だったら、別に多目的ホールに置いてもイイんじゃないでしょうか? でも、どれくらいの大きさですか?」
「全長十メートルくらいです」
「結構、大きいですね」
「でも、あのホールなら余裕でしょうから」
「まあ、そうですね」
「では、化石を組み立てる間、済みませんけど、関係者以外立ち入り禁止にさせてもらいます」
「分かりました。その旨を掲示しておきます」
これで、多分、誰も文句を言わないだろう。
アクティス王子が絡んでいるからね。
それに、化石を多くの人に見てもらいたいってのもあるし、今回の化石発見を機会に、多くの化石が発見されることを期待しているんだよ。
それらも、ここに展示出来れば、トオル製薬の歴史に関する資料を置こうなんて話も消えるんじゃないかって勝手に思っているんだ。




