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83:化石?

 その翌日、ボクは入浴剤開発に向けての会議を招集した。

 まあ、招集のために、アチコチに声をかけまくったのは秘書のアリアだけどね。

 そして、オゼンピックさんからの案をたたき台に議論しようと思ったんだけど……。


「販売及び価格に関して異議はありません」

「私もです」


 基本的に、そのまま通ってしまったよ。

 結局、みんな、家で温泉気分が味わえるってところに魅かれているみたいだ。



「しかし、販売後も商品のさらなる改良検討は必要と思います」

 こう意見を出してくれたのはケックセンター長。


「検討ですか?」

「そうです。当座は、香り無しの商品一本で良いと思いますけど、そのうち、変化を求める消費者も出てきます。ましてや、相手が富裕層ですので……」


 この意見に、ボクも賛成だ。

 今は、入浴剤が無いのが当たり前の世界だけど、あるのが当たり前の世界に変わると、当然、消費者側の要求や考え方も変わって来る。

 当然、何らかの変化も求めて来るだろう。



「元々、アンケートを取る際に、トオル様も香りについて伺っていたと言うことは、香り成分のことをお考えだったのでしょう?」

「そうです。あと、今回は聞きませんでしたけど、色も検討課題になりますかね」

「色?」

「はい」

「まあ、たしかに変化と言う意味ではアリですね」

「そうなんですけど、これから一カ月もすれば温かくなり始めます。ですので、青い涼しげな色とかイイかも知れないと考えています」

「なるほど。そう言うことですか」

「ええ。いずれにしましても、毎月の売れ行きをモニターすることが必須と思います。売れる時期と売れない時期があると思いますので、来年、再来年に向けて、販売しながら、その辺のデータをキチンと取って行くべきでしょう」

「そうですね。トオル様の仰る通りかと思います」



 商品の改良検討と売れ行きのモニターは宿題事項として残るけど、これらは、ボクの方でも想定していた範囲内だ。


 マイトナー侯爵家の侍女から、バラの香りって意見が出ていたから、先ずは、そこから検討を開始することになると思うけどね。



 あと、社員向け銭湯は、

「異議なし」

「右に同じです」

 満場一致で可決されたよ。

 多分、ここにいるみんなも入りたいんだろうね。


 勿論、流通センターの職員も同様に入れる。

 それから、薬学教室の生徒も入って良いとのことになった。


 また、入浴料は、素案よりも安くなって、取り敢えず50トールにすることになった。

 そして、実際に運営してみて、値上げが必要なら考えようってことになった。



 建設費用は、トオル製薬から……と言うか、ボクが以前消滅した際に残した遺産から出すことに決まった。

 想定の範囲内だけどね。



 銭湯施設の建設は、流通センターを建てた時と同じように、建築関連魔法を使う人達を集めて行う。

 上下水道は勿論、蛇口をひねったらお湯が出るような仕組みも、水魔法使いに作り上げてもらう。


 もっとも、この辺のところは、オゼンピックさんが交渉対応してくれたけどね。

 なので、ボクは薬作りや資料作りに専念できたよ。



 そして、一週間ほどで銭湯施設が完成!

 魔法での建築だから、地球よりも数段完成が速いよ。

 さすがに街外れとは言え、露天風呂は作らなかったけど。


 でも、トオル製薬の社員も流通センターの職員も、それから薬学教室の生徒達も、温泉気分が味わえるって喜んでいたよ。



 それから、銭湯施設には多目的ホールを併設した。

 みんなの意見では、将来的に、ここにトオル製薬の歴史とかに関する資料展示とかするつもりらしいんだけど……。


 でも、恥ずかしいから、ボクとしてはパスさせてもらうつもりなんだけどね。

 代わりに何か、展示するネタを考えておこう。


 …

 …

 …


 それから、さらに数日が過ぎた。

 既に入浴剤は富裕層向け商品として販売が開始されていた。


 また、ピカドン王国には人間用の予防薬と、犬用の駆虫剤を卸していた。

 価格交渉は、アクティスにやってもらったけど、結局、何時もの通りで、トオル製薬の取り分として、人用は一人一回分が銀貨一枚、つまり1,000トールになった。


 犬用は前例が無いんで、どうしようって話になったけど、これもトオル製薬の取り分として、一回分を1,000トールとすることで合意された。



 ボクが銭湯施設から居室に戻ると、そこにはアクティスの姿があった。

 その後にはエリカさんの姿もあった。

 これは、ボクをどこかに連れて行くパターンかな?


 ただ、この時の彼は、ボクと初めて出会ったばかりの頃のように、目をキラキラ輝かせていた。

 まさに、天体の話をしていた時みたいだよ。



 あと、この場にエリカさんもいるってことは、Hな展開にはならないね。

 さすがにアクティスも人前でしようなんて言い出さないだろうから。



「トオル。ちょっと聞きたいんだが」

「何でしょう?」

「実は、イットリア山の近くで、龍のような骨が見つかってな」

「龍ですか?」

「そうだ。ただ、ちょっと龍と違っているっぽくてな。それで、是非、トオルにも見てもらいたい。トオルなら天界にも通じているし、それが一体何なのかを判別できると思ってさ」

「天界って……。まあ、分かりました」


 そして、ボクはエリカさんの転移魔法で、アクティスとエリカさんと一緒にイットリア山の麓まで瞬間移動した。

 そこは、小さな村の端で、近くには家が点々としか建っていなかった。



 アクティスが、一点を指さした。

「あれなんだが」


 そこには、多分、首長竜と思われる化石が岩肌に露出していた。

 しかも、全身の骨がキチンと揃っているっぽいし、これなら龍の骨と思われても不思議じゃないかも知れない。



「多分、これは首長竜の化石ですね」

「では、やっぱり龍なのか?」

「ええと……。多分、アクティス王子が想い描いている龍とは違います。地球でも、同じようなモノが発見されますけど、それらは、過去に生息していた生物の骨が鉱物に置換されて残されたモノなんです」

「じゃあ、これも、昔、この世界に生きていた生物の骨ってことか?」

「そうなると思います」

「ただ、どれくらい前の生物になるんだ? 少なくとも、こんなに首の長い生物は誰も見たことが無い」

「それなんですけど、地球の例をお話しますとね……」



 ボクは、地球では中生代に恐竜や翼竜、首長竜が生息していたことや、それらが6,600万年前に小惑星が激突して絶滅したことを話した。


 だから、当然のことだけど、今では、恐竜も翼竜も首長竜も、基本的に地球には生息していない。

 もしかしたら、どこかの湖に首長竜だけは細々と生息しているかも知れないけど……。



 でも、絶滅した生物も、地球では、今は化石として残っている。

 それで地球では、化石を発掘することで過去の地球の生物の姿を想像している。



 ボクの話を聞いて、アクティスは、

「じゃあ、この世界でも、地球と同様に、遥か昔に首長竜が生息していたってことだ!」

 と興奮した声を上げた。


「そう言うことになります」

「ただ、この世界でも、同様に小惑星が激突したってこと?」

「それは分かりません。小惑星の激突が無くても、恐竜は、いずれ絶滅したのではないかとの話もありますし」

「そうなんだ。でも、何で絶滅するんだ?」

「気温の低下とか火山活動の影響とか、様々な要因で環境が大きく変化するからです。動物は、長い時間をかけて周りの気候や環境に合わせて身体の仕組みを変化させます。ところが、環境が劇的に変わると、その環境変化について行けないと考えられます。それで、いずれ絶滅しただろうって話もあるようです。他にも新種のウイルスが発生して絶滅する可能性とかもありますし」

「なるほどね。たしかに、新種のウイルスについては理解できるよ。」

「そうですね」


 それこそ、この世界の人々は、地球の人達と比べると、インフルエンザウイルスに格段に弱いからね。

 インフルエンザの大流行で絶滅する可能性だってあり得た。


 アクティスも広範囲に及ぶ致死的感染症で、たくさんの人が亡くなっているのを、その目で見て来ているからね。


 だから、アクティスとしては、感染症による絶滅の方が、気候変動による絶滅よりも理解しやすいんだろう。



「それにしても、これだけキチンと骨が揃っているのも凄いと思います。キチンと発掘して……」

「発掘?」

「つまり、綺麗に取り出して、崩れないように処置して、組み立てたら面白いかも知れませんよ」

「たしかにな」

「それに、かつて、ここは海の底だったようですし、他にも海の生物の化石があるかも知れませんね」

「海?」

「はい」

「何で、そんなことが言えるんだ?」


 さすがに、そこまではアクティスも想像つかなかったか。

 ボクは、首長竜イコール海の生き物って図式が頭の中にあるけど、それは地球で生まれ育ったからだもんね。

 すっかり、それが、この世界でも常識的なモノとして通用する気で話していたよ。



「首長竜は、海に生息していたからなんです。この四肢が、陸の生物のモノではなく、海亀のオールのようになっているでしょう?」

「ああ、たしかに」

「だから、この首長竜は海の生物であるって言えますし、首長竜の化石がここにある以上、かつて、ここは海の底だったって言えるんです」

「信じられないことだが……。ただ、そう言うことなんだろうな」

「はい」

「でも、逆に過去に陸で、今は海の底なんて言うのもあり得るのか?」

「多分、あると思います。ボクが研究出向していた国では、底引き網を使って魚を獲っていた際に、二万年以上前に生きていたとされるゾウやスイギュウ、シカなどの化石が網に入ることがあったらしいんです」


 これは、瀬戸内海のことだ。

 ただ、これは陸地が下がって瀬戸内海になったと言うよりも、当時は今と比べて海面が下がっていたために陸だったらしいけどね。


 今は南極の氷が溶けて海面が上昇しているとか言われているけど、その当時は、地球全体が氷河期で、海面が130メートルくらい低かったって言われているらしい。

 それで、瀬戸内海が陸だったんだ。



「ちょっと待て。二万年前の生き物でも化石になるのか?」

「はい」

「あと、二万年前とか6,600万年前とか、何で分かるんだ?」

「その化石と同じ地層の鉱物中に含まれる放射性同位体の量を測定して、その結果を基に計算するんです」

「放射性同位体?」

「はい。元素が持つ同位体のうち、原子核が不安定なために原子核が崩壊して放射線を出すんですけど……」

「済まない。聞いた俺が悪かった。もう、話について行けない」


 まあ、それが普通の反応だよね?

 むしろ、この世界の科学の常識で、今までの話を理解していた方が、むしろ凄いんだろうと思う。

 エリカさんなんて、とっくの昔に遠い目をしていたし。



「でも、この世界なら魔法で化石の年代を測定できるかも知れませんね」

「そんな魔法は聞いたこと無いが」

「ボクも聞いたことはありませんけど。でも、この化石は、せっかくですので掘り起こしたいですね」

「そうだな。まあ、その辺のスタッフは、追って確保しよう」

「よろしくお願いします。でも、勢い余って化石を割ってしまう人も出て来るかと思いますけど……」

「たしかにな」

「そうなってしまっても、今回が初めての作業ですし、責めないであげてください」

「まあ、綺麗に作業ができたら儲けモノってところか」

「そうですね」


 割った人が、変に責任を感じても困るしね。

 そもそも、化石なんてモノの存在を知らない世界だから、扱い方なんて誰も知らないだろう。

 ボクも良く知らないし。



 でも、やっぱり失敗は避けたいな。

 発掘が巧く行って綺麗に組み立てられることを期待するよ。


 ただ、組み立ての際にも、何らかの工夫が必要だろうね。

 後でチャットボット機能を使って、組み立て作業について調べておこう。

 せっかくの首長竜だし、その姿をみんなに見てもらいたいからさ。

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