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8:リットル単位の水素ガスに引火すると凄い音が出るって?

 競合店の美魔女達との話し合いから一週間が過ぎた。

 この日、いきなり態度の悪いオバサンがボクの店に入ってきた。


 腰には剣を差していた。

 なんかヤバそうだな。


「私は、バイルシュタイン子爵だ。この店の商品を、今後は全て、三割値で私のところに卸しなさい!」


 バイルシュタインって、炎色反応?

 まあ、それはどうでもイイか。

 そう言えば、バイルシュタイン子爵って、ミサさんに悪く言われていた貴族じゃなかったっけ?



 それにしても、いきなりだね、この人。

 転売して儲けようって輩だな。


 別に競合店の美魔女達だったら三割値でもイイよ。

 彼女達の場合は、生活がかかっているからね。

 こっちは原料原価ゼロだし。

 でも、それだと偽薬だと勘違いされるかも。


 それはさて置き、この子爵のオバサンは、ミサさんから聞いていたとおりだね。

 金を吸い上げることしか考えてなさそう。

 さすがに受け入れたくないよね。



 公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順だから四番目か。

 正しくは、女公爵、女侯爵、女伯爵、女子爵、女男爵って言うのかも知れないけど、まあ、そんなことはどうでもイイか。

 女男爵って、男か女か分かんねぇって一瞬思ったけどさ。


 全世界に薬を販売展開するだけの力がある人ならイイけど、ちょっと探るってみるか。

 全然、期待していないけどね。


 とりあえずボクは、

「できません!」

 と答えてあげた。


 これには、このオバサン子爵の目も一瞬、点になっていた。貴族がちょっと強い言い方をすれば、素直に従うとでも思ったんだろうね。

 でも、そう言うわけには行かないよ。


 急に目付きが、キツくなってきた。

 これは怒っているな。


「私を誰だと思ってるんだ!」

「相手が誰とか言う問題ではありません。一般論で考えてください。そもそも三割値で卸せるはずがないでしょう。原料原価とか製造工程費とかもお考えください」

「なんだと!」


 えっ?

 マジですか?

 これでキレちゃうの?

 あちゃぁ、相当頭悪いな、この人。

 原料原価のことも手間賃のことも分かってないよ。


 多分、親から爵位を引継いだだけのボンクラじゃないかな?

 これじゃ、ミサさんじゃなくても悪く言いたくなるよ。


 それに、ボクが同じ立場だったら、どのくらいの値段で、どのくらいの量が供給可能かとかを先に聞くよ。

 ただ、売れるモノを独り占めして高値で売ろうくらいしか考えてないよね。

 ムチャクチャ短絡的だよ。



 予想通りだね。

 子爵が剣に手を伸ばしたよ。

 それでボクは、子爵の靴に被せるように、物質創製魔法で5キロの鉄の塊を二つ作り出した。

 まあ、両足に鉄のカバーをしてあげたってとこ。


 勿論、靴の形にキチンと合わせて、子爵の足を押しつぶさないようにしてね。

 今、気付かれちゃいけないからね。


 これだけじゃない。

 ボクは、さらに剣に向けて雷魔法を放ってあげることにした。

 ボクの雷魔法はショボいけど、イタズラするには丁度良いレベルなんだ。


 子爵の手が剣に触れる直前を狙って雷魔法発射!

 すると、

「痛っ!」

 静電気発生。子爵が剣から手を離した。

 まあ、ボクの雷魔法は、この程度なんだけどね。


 静電気で驚いた子爵は、バランスを崩してその場に倒れた。

 靴が鉄の塊で覆われていて自由に身体が動かせなかったためだ。


 すぐさま、転移魔法で鉄の塊をテナント裏に移動。

 子爵は、足が動かなくてバランスを崩したまでは分かっているだろう。でも、何故、足が動かなかったかは分からない模様。


 さらにボクは、生活必需品を出すペンダントでゴム風船を出した。

 ゴム風船が生活必需品に入るかって?

 その辺は勘弁してくれ。


 どんな風船かは、ご想像にお任せする。

 男性が付けるヤツだ。

 これなら、一応地球なら生活必需品だよね?


 その風船の口を結んで、中に2リットルくらいの水素を入れて、ショボい転移魔法で子爵様のすぐ後ろに転移。

 それと同時にショボい火の魔法で火種を作れば、

「ドゴーン!」

 大きな音を立てて爆発したよ。


 多分、これくらいなら火事になることは無いはず。

 燃え移る前に水素が全部燃えちゃうからね。


「キャッ!」

 子爵は相当驚いている……と言うか震えている。

 背後であれだけ派手な音がしたんだから当然だよね。

 この声だけ聞くとカワイイかも。


 風船の残骸は転移魔法でテナント裏に移動。

 バイルシュタイン子爵なだけに炎で対抗。

 化学をやっている人以外には、つまらないネタだよね、きっと。

 ボクだってオヤジギャグレベルだって思っているからさ。



 店の外では、

「ヒヒーン!」

 馬車馬が驚いている。

 そりゃ当然か。

 走り出さないように御者が頑張っている。御者の方、ゴメンね。


 さらにもう一発。

「ドゴーン!」

「キャッ!」


 子爵は、頭を両手で抑えていた。

 そりゃ怖いだろうね。音だけはムチャクチャ大きいもん。

 その音が、自分のすぐ背後から聞こえてきたわけだから、平静でいろって方が普通はムリだろうね。


 その直後、

「何があったの?」

 巡回していた女性警備兵がボクの店に入ってきた。

 そりゃそうだよね。

 あれだけ大きな爆発音を聞いたんだから。


「この子爵様が、ボクの商品を全部三割値で卸せって言われまして。それで無理ですって答えたら剣に手を伸ばしたんです。

 そうしたら、よく分かりませんが、突然、子爵様の背後で大きな爆発音がしたんです」


 ドサクサ紛れに告げ口してやった。

 一方、警備兵は、

「はぁ?」

 懐疑的な目をしている。これじゃ爆発音の理由が分からないもんね。


 子爵が反論しないのを見て、警備兵は信じてくれたかな?

 でも、少なくとも剣に手を伸ばしてムチャな値切りをしたのは、この国では違法行為に当たるはず。


「さすがに恐喝行為と捉えられることもありますので、ご注意願えますか」


 警備兵も、相手が貴族なので言葉を選んでいるんだろうな、きっと。

 今日のところは、その子爵には、お引き取り頂いた。


 一応、女神様には、

『邪魔になる人間には、強硬手段をとっても構わないこととします』

 って言われていたけどね。


 たしかに後で面倒が起こるのはイヤだけどさ。

 でも、さすがに殺すのは気が引けるよ。


 今のボクの能力があれば、殺すのは簡単だよ。

 子爵が馬車に乗り込んだら、ニトログリセリンでも発生させて馬車を爆発させればイイわけだから。


 でも、ボクは人を殺したくない。

 それに、いざとなれば転移魔法で逃げられる。

 まあ、ショボい転移魔法だけどさ……。


 今は、この子爵の問題が先送りできたことで良しとしよう。

実際に数リットルの水素ガスを風船に入れて、やっちゃったことがあります。本気ですごい音が出ました。

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