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74:意外とコイツ等、下品だった!

 そう言えば、商品化を考えているネタって他にもあったんだっけ。

 せっかくだから、アリアに相談してみよう。


「あとさ。二日酔いの薬ってのも考えているんだけど……」

「本当? だったら、実験が必要ね」

「実験?」


 なんか、話を振って、いきなりイヤな予感がしたし、それと同時に……と言うか、瞬時に後悔したよ。

 これって、もしかして自分達で、率先して浴びるように酒を飲むつもりじゃなかろうか?

 理由付けも、

『商品開発に向けて必要なんです!』

 ってことでバッチリ(?)だし。



「明後日は休みじゃん? だから、明日の夜に、ミサやマルシェ達を誘ってさ」

「まあ、イイけど……」

「じゃあ、そっちの方も、みんなに声をかけておくよ」


 そう言うと、アリアは大量の入浴剤が入った袋を抱えてボクの部屋を出て行った。

 しかも、随分と笑顔だった。

 飲む理由が出来たのが、そんなに嬉しいのかな?

 なんだか、明日の夜が怖くなってきたよ。



 ただ、それなら二日酔いの薬のことを、キチンと考えておかないとイケナイね。

 成分と形状は、どうしようかな?

 肝臓エキスのことも考えてはみたけど、やっぱり手堅いところで、マイトナー侯爵に渡したモノと同じ成分でイイか。

 それを、合剤にでもすればイイだろう。



 一先ず、二日酔いの薬の件は置いといて。

 話を入浴剤の方に戻すけど、せっかくなら、ボクの方でもマイトナー侯爵家で試してみようかな?

 マイトナー侯爵だけじゃなくて、侯爵家に仕えてくれている人達からもアンケートが取れるからね。


 ただ、お屋敷に戻ってから出すんだと忘れそう。

 なので、

「出ろ!」

 一先ず、アリアに渡したのと同じモノを、今のうちに数十個出しておいた。

 これを、今夜、早速みんなに使ってもらうことにする。


 …

 …

 …


 その日の夜、ボクは、なんちゃって入浴剤を侯爵家で試してもらうことにした。

 この屋敷には、マイトナー侯爵は勿論のこと、転移魔法使いのバイエッタさんや侍女達等、合計十人以上が住んでいる。

 ボクは、早速、彼女達に入浴剤を配り歩いた。


「これをお風呂に入れて溶かして、それから入ってみてください」

「トオル様。それって、なんでしょうか?」

「言うなれば、温泉の元です」

「温泉ですか!」

「はい。美肌効果と保温効果が期待できると思います」

「本当ですか?」

「一週間分渡しておきますので試してください。それで、済みませんが、使った感想とか、それからどんな香りが付いていると嬉しいかを後で教えてもらいたいんです。良いようでしたらトオル製薬で売り出そうかって思っていますので」

「分かりました。つまり、私達はモニターと言うことですね?」

「そうです。ですので、素直な感想をお願いします。ダメなら正直にダメ出ししてください。ダメなモノをムリに商品化しても意味ありませんから。あと、良いと思われた場合は、いくらくらいなら買う気になれるかも知りたいです」

「たしかに、それは商品化する上で大事ですもんね」

「では、よろしくお願いします」


 ここは侯爵家のお屋敷だからね。当然、お風呂はある。

 しかも、嬉しいことに、この世界は、衛生面だけは優れている。

 女性ばかりの世界になってしまったからだと思うんだけどね。


 全般的には中世レベルなのに、バス・トイレ関連だけは、1960年代後半から1970年代の日本に近いレベルにまで達している。

 なので、お風呂が付いている家が比較的多い。



 ただ、生活水準自体は現代日本と比べれば数段低い。

 なので、ワザワザ温泉地まで旅行に出かけようなんて人は少数派だ。


 でも、家で温泉に入った気分になれるのなら、ボクが作った『なんちゃって入浴剤』を使ってもらえる可能性はあると思う。

 旅費も宿泊費も必要無いからね。



 問題は、一ついくらなら買ってもらえるかだ。

 銅貨一枚でも払ってもらえるようなら有難いんだけど……。


 正直、

『あると嬉しいけど、金を払ってまで欲しいとは思わない!』

 ってパターンになる可能性があるからなぁ。



 薬なら、高額でない限り必要があれば買ってくれる。

 それこそ、鎮痛薬やお通じの薬の場合、無いとキツイって人が存在するからね。


 でも、入浴剤の場合は、無くても不自由は生じないだろう。

 そもそも、今まで入浴剤が存在しなかった世界だし、ムリに入浴剤を買う必要性を感じてくれるかどうかも怪しいからさ。


 …

 …

 …


 次の日の夜、ボクとアリア、ミサ、ロンド、ソナタ、マルシェ、アイカの七人で、トルリシティ中心部の大衆酒場に行くことになった。

 トルリシティは、旧アダン町のことね。



 ただ、ボクの場合は、

『体内に侵入した害となる異物を全て瞬時に体外放出する力が与えられた身体』

 だからね。全然、酒に酔わないんだよ。

 そのことは、遠野留美時代に検証済みだし、それイコール、ボクの身体では二日酔いの薬の検証が出来ないってことでもある。


 だから、他のメンバーに検証してもらうしか無いんだけど、彼女達は全員、二日酔いの薬の検証がオマケで、飲む方が主目的になっていないかな?

 多分、なっているよね?

 大丈夫かな?


 しかも、

「今回は経費でイイよね?」

 ってアリアが言い出したよ。


 ミサとかマルシェならともかく、こう言うことをアリアが口に出すとは、さすがにボクも想定していなかったよ。

 絶対に、タダ酒を気持ち良く飲もうって考えているな。

 でも、経費で落とすなら、予め経理のオゼンピックさんに話を通しておかないと、さすがにマズいと思うよ。


 いや、通そうとしてもムリかも。

 正直言って、飲み食い自体は完全に私的な方に偏っていると思うからね。

 絶対に目的と手段が逆転している。


 なので、今回はボクからの奢りってことにするよ。

 みんなには、いつもお世話になっているし。



 それから、申し訳ないけど、ボクを警護する兵士達には店の前で待っていただくことになった。

 これも彼女達の仕事だからね。


 本当は、一緒に飲ませてあげたいけど、兵士達が酔ったところを狙って、ボクが誰かに拉致されたってなると、兵士達がムチャクチャ責められることになる。

 なので、この場は飲まずに待ってもらうしかないんだ。



 そう言えば、アイカと一緒に食事をするのって、今回が初めてな気がする。

 他の五人……特にアリアとミサは、ボクの家の一階で、結構な頻度でお食事会とかを開いて、一緒に食べていたけど。



 全員にグラスが行き届いた。

 早速、

「カンパーイ!」

 先ずは、シャンパンから。



 一応、念のためボク達は個室に入った。

 万が一、酔った勢いで社外秘の情報を口に出しちゃマズいからね。


 ただ、アイカとマルシェが一緒なのは、別の意味でマズいってのが、すぐに分かった。

 二人共、凄いペースでガツンガツン飲んで、飲み始めてから十分もしないうちに完全に出来上がっちゃってさ。

 最初から二日酔いになることが前提だから、セーブしようなんて考えはサラサラ無いってことだ。



 しかも、この二人は悪い意味で会話が合うんだ。

 つまり、シモネタトークで……。


「アイカ、知ってるぅ?」

「ナニがぁ?」

「トオルの婚約者ってさぁ」

「あのイケメン王子? ケシカランよね、トオルって。あの超希少種、イケメン様を独り占めだもんね」

「しかもさあ、アソコが大きいのよ?」

「ナニそれ? マルシェってば、王子としたことあるの?」

「さすがに、それは~ない! トオルに貸してって言ったら断られた!」

「言ったの?」

「うん」

「さすがに貸してくれないでしょ」

「だから、私は、王子のナニを直接は見ていないけどさぁ。でも、ズボンの膨らみを見れば分かるじゃん?」

「私は、そこまで凝視してないよ~」

「で~も~。トオルは実物を見てるじゃん」

「そりゃそうだ!」

「そしたらぁ。長さがこれくらいで、太さがこれくらいだって言ってた!」

「うわっ! すっごーい!」


 しかも、この内容。

 最悪だ!


 加えて、コイツ等は声がでかい!

 個室じゃなかったら、絶対に周りの人達が聞き耳を立てているよ。

 もしかして、他の部屋に聞こえていないよね?

 これって、一夜でトルリシティ全体に噂が流れそうな危ないネタのような気がするし。



 次にペースが速いのは、ミサとロンドだった。

 薬の生産組で、結構、仕事上のストレスがかかっているかと思っていたんだけど、この二人は、別の意味でストレスがかかっていたみたいだ。


「まったく、アリア、知ってる?」

「何が?」

「トオルの生産スピード。私とロンドで見学させてもらったんだけどさ、あっと言う間に一年分くらい作っちゃうんだよ。マジで自信喪失」

「まあ、世界中に一人で薬を供給していたくらいだからね」

「たださあ。私とロンドの給料から考えると、トオルが一旦消失した以前は、どれだけ稼いでいたかってことよね。イケメン王子に寝取られる前に、さっさと私のお嫁さんにしておけば良かったって後悔しているわよ」


 あの生産現場を見せたのは、逆効果だったかな?

 でも、あの時はマジで急いでいたし……。


「でもさあ。ミサもロンドも、言っとくけど、この世界で最初にトオルに唾を付けたのは私だからね」

「えっ? 何で?」

「そもそも、トオルをこの街に連れてきたのは私だから。私が馬で荷車を引いていて、通りすがりにトオルを荷車に乗せて来たのよ」

「そう言えば、そんなこと言っていたような……」

「あの時、トオルはディオネア王国のファリャって村から来たって言ってたけど」


 なんか、懐かしい話だな、それ。

 もう、十一年ちょっと昔の話だよ。

 あの時、ボクは男として転生していたつもりでね。

 宿に着いて服を脱ごうとした時に違和感を覚えて、それで魔法で姿見を出して全身を見たら、女性になっていたんで驚いたんだっけ。



「たださあ、トオル!」

「何? アリア」

「あの時、私に嘘ついたでしょ?」

「嘘って?」

「ナニがファリャから来たよ? 本当は天界から来ていたんじゃない?」


 なんだか、アリアがボクに絡んできているんだけど?

 実は、意外とアリアも、今日はペースが速いっぽい。



 その隣では、ソナタがマイペースで料理を食べていたんだけど、

「ねえねえ。このカレーシチュー。クソ美味いよ! あと、こっちのもんじゃ焼きもヤバいくらいゲロウマだし!」

 なんか、表現が汚いんだけど。

 ソナタって、こんなことを言う娘だっけ?

 完全にお酒で頭がイカれている気がする。


 しかも、これを聞いてミサが、

「カレーがクソウマで、もんじゃがゲロウマって────」

 もの凄くウケていたよ。

 彼女も、完全に脳みそがアルコール漬けになって、自制と言うモノが失われている状態に近いんだろう。



 そして、飲み会開始から一時間くらいした頃だった。

 ボクのところに店の人が来たんだけど……。

「あのう。今までの飲食代を、一旦、ここでお支払いいただくことは可能でしょうか?」

 って言われたよ。


 勿論、声をかけられたのは、一番シラフなボク。

 他のメンバーじゃ、既にアテにならなさそうだからね。


「構いませんが、おいくらでしょう?」

「30万トールですけど……」



 実は、最近、この世界の通貨に単位が出来た。

 以前は、銅貨何枚とか小金貨何枚とか言っていたけど、それよりも単位を付けた方が分かり易いだろうってことでね。


 鉄貨一枚が1トール。

 銅貨一枚が10トール。

 小銀貨一枚が100トール。

 銀貨一枚が1000トール。

 小金貨一枚が1万トール。

 金貨一枚が10万トール。


 ただ、トールって……。

 言うまでもなく、ボクの名前からとったらしい。

 貨幣の単位を聞く度に、なんだか恥ずかしくなる。


 ただ、年配の方達は、従来通り銀貨何枚とか銅貨何枚って言うけどね。

 その方が慣れているから。



 それにしても女性七人とは言え、一時間で、しかも日本円で三十万円だよ?

 大衆酒場で、何を飲み食いしたらそうなるって思ったけど、それだけ高いお酒をジャンジャン飲んでいるってことだ、コイツ等。


 そもそも、大衆酒場に、そんな高いお酒が置かれていること自体、凄いと思うけど……。

 たしかに、これじゃ店の方も支払い能力が心配になるよね。


「分かりました。では、コチラを」


 一先ず、ボクがアイテムボックスから金貨三枚を取り出して店の人に渡した。

 店の人も、ホッとした表情を見せていたよ。

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