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72:やっと終息かな?

 会議室には、社長のマイトナー侯爵をはじめ、社長専属の転移魔法使いのバイエッタさん、管理部門からはオゼンピックさん、倉庫管理からはビクトーザさん、それから流通センターからはケックさんが、既にいらしていた。


 取り敢えず代行を立てずに全部署の管理職本人が来てくれた。

 と言うことは、管理職のみなさんの家は、倒壊とかしていないってことだろう。普通に出社できているってことだからね。



 製造部の管理職は、一応、ボクの担当になっている。

 さすがに、薬の製造のことが分かっている人は数が限られるからね。

 と言っても、大抵、ボクの秘書のアリアが代行しているんだけどね。



 ボクは、

「お忙しいところ、集まりいただき有難うございます。実は、大地震の直前に女神フィリフォーリア様からの啓示がありまして……」

 フルオリーネ女王陛下と話した内容を順に話して行った。


 女神様からの啓示のことは勿論、ドロセラ王国や近隣諸国へのマスクや薬の供給のこと、それから、その後予想される他の地域への感染拡大のことも含めてね。



 それから、トオル製薬全体と流通センターの全職員に、今回の啓示のことを、どのタイミングでアナウンスするかについても相談した。


 女王陛下からは、ボクとマイトナー侯爵に、今回の件の情報開示については一任されているけど、ボクは下手にアナウンスして、パニックになるのを恐れていたんだ。



 すると、ケックさんは、

「今すぐアナウンスした方がイイですよ」

 と特に悩んだ様子も無く、即答した。


「でも、そこから話がアチコチに拡大して、しかも話に尾ひれが付いて、必要以上にパニックにならないか心配でして」

「その点は、トオル様がいる限り大丈夫だと思います。トオル様の薬で、全員が治るって信じていますから」

「そうでしょうか?」


 すると、アリアが、

「トオルは人外認定されているからね。崇拝者も多いし、その薬で絶対に治せるなら問題ないよ」

 とボクに言って来たんだけど……ボクは一応、人間なんだけど?


 でも、パニックにならないのであれば開示した方がイイ。

 その方が、トオル製薬内でも流通センター内でも早い対応ができるからね。


 …

 …

 …


 と言う訳で、各部署でのアナウンスは、各管理職にお願いした。

 製造部の方へのアナウンスはアリアに丸投げね。


 そして、ボクは、早速倉庫に行き、アイテムボックス内に収納したマスクと薬を取り出した。



 でも、これだけじゃ、まだ足りないんだよね。

 なので、

「マスクを出して!」

 ボクは、女神様から頂いたペンダントにお願いしてマスク入りのダンボール箱を大量に出した。


 と言っても、全人口が一億人にも満たない世界で、一部の国だけがターゲットだからね。

 数百万人分を出せば余裕で間に合うと思う。


 布製マスク一人二枚と考えて、ダンボール一箱で五百人分。

 これを取り急ぎ、予め出しておいた分と合わせて一万箱出した。

 別に余る分には構わない。

 むしろ、今置かれた状況では、不足する方が問題との判断だ。


 結構、これだけでも相当なスペースを使うけど、この倉庫はムチャクチャ広いからね。

 特に問題はない。


 さらにボクは、

「出ろ!」

 ハイペースで、女神様から指定された三剤合剤の錠剤をガンガン出して行った。

 勿論、ダンボール箱入りの状態でね。


 こっちも、予め出しておいた分と合わせて五百万人分を予定。

 余っても、190年後に使えばイイし、それ以前に、全世界に拡大する可能性もあるから、多い分には問題ない。

 気が付くと、いつの間にか日が暮れていた。



 それから二日後、ドロセラ王国内で数十人が発熱した。

 今回、撒き散らされたウイルスの感染者で間違いないだろう。


 近隣諸国でも、同様に感染者が確認された。

 発症者がいない段階でマスク着用を推奨しても、基本的に受け入れてもらえない。

 なので、事前の感染予防を全員に課すことは極めて難しい。



 でも、発症者が現れると、人々の考え方も変わって来る……って思っていたんだけど、意外にもマスク着用者は多くなかった。

 発症しても薬で治せるって思い込んでいる人が結構いるみたいでね。

 マスク着用に関しては、ボクが思ったほど浸透してくれなかった。


 なので、かなりマスクが余ったかも?

 別に余ったマスクは190年後の人々のために保管しておけばイイけどさ……。



 今回も、各地に薬とマスクの配布場所を設置した。

 薬代もマスク代も国の方で支払われていて、国民には無料配布とされた。


 発症者自身は、予め女神様から聞かされていた通り歩くのさえキツイみたいだった。

 でも、重症化する前なら何とか薬を取りに来ることは出来たみたいで、発症者には一先ず薬は順次行き渡った。


 もっとも、これが有料だと、こうは行かないんだけどね。

 無料にしないと買えない人も出て来るし、国民全体に行き渡らないんだ。


 特に今回は、自然治癒しない病気だから、全員に服用させることが前提なので、国の方で費用負担してくれるのは有難い。


 そして、その日を皮切りに、日を追うごとに感染者は増えて行った。なので、数日後には、発症前にも拘らず薬を受け取って行く人もチラホラ出てきた。

 たしかに、その方が利口かも知れない。



 最初の感染者が出てから一週間後、アリアとミサも発症した。

 二人共、基本的にマスクを着用してくれていたけど、ミサ曰く、

「どうしても外す時間帯はあるし。歩く時とかマスクするの辛いじゃん?」

 そして、アリア曰く、

「飲食店で外さずに食べるのはムリだもん」

 とのことだったけど……。

 まあ、言いたいことは分かるよ。


 残念ながら、この頃になると、アリアとミサ以外にも、比較的予防していた側の人達の中に、発症者が結構確認され始めた。

 もしかすると、ボクが当初思っていた以上に感染力が強いのかも知れない。



 ただ、この頃には、最初の発症者は治っていたけど、再発防止って意味で、彼女達は自主的にマスクを付けてくれるようになっていた。

 それだけ、症状がきつかったってことだ。

 経験すると意識が変わるってことだろう。


 それから、意外にも再発患者の存在は聞かされなかった。それで、ボクは念のためチャットボット機能で確認することにした。


『Q:再発患者はいる?』

『A:いない』


『Q:今回の疾患は再発しないタイプ?』

『A:再発しない』


『Q:どうして再発が無い?』

『A:アルセニコスは、今回のウイルス性疾患が治癒する前提で作っていなかったため、再発する設計まで考慮していなかった』


『Q:免疫獲得ができるってこと?』

『A:ウイルスが弱った状態で獲得できている』


 そう言うことなんだ。

 なんか、都合がイイような気がするけど。

 でも、パンデミック状態だし、マスク着用を意識づける意味ではイイことだよ!


 …

 …

 …


 さらに一週間後、ドロセラ国周辺諸国以外でも発症者が出たとの報告を、ボクは流通センターに出入りしている転移魔法使いから聞かされた。

 それこそ、ドロセラ王国が位置する西側大陸とは別の大陸の国で発症したとのことだ。


 やっぱり、転移魔法で感染拡大地域に侵入して、ウイルスを祖国に持ち帰ってしまった人が、それなりにいたようだ。

 なので、ボクは薬の大量製造を継続した。



 それから、今回の薬が三剤の合剤になっているけど、これら三つの薬は、各々の作用点が違うらしい。

 だからこそ、三剤同時投与の意味がある訳だろうけどね。

 このウイルスを根絶するために……。


 それと、ミサ達にも、回復後、今回の薬の製造を実際に行なってもらった。

 これは、190年後の人達も自前で作れることのシミュレーションだ。

 勿論、ミサ達が作ったモノも治療用に回すけどね。


 ミサ達からは、

「三剤合剤? 原体作るのメンドクサイんだけど」

「製剤化も大変!」

「分析もキツイ!」

 と非難ごうごうだったけどね。



 でも、190年後の人達に、ボクしか作れないって思われても困る。

 だから、薬学教室の先輩達でも製造できたって前例を示したかったんだ。

 なんとか説得して頑張ってやってもらったよ。


 その分、

「特別手当を出してよね!」

 って言われたけど、まあ、それくらいは考えるよ。



 ミサ達が作ったものは、ボクの方で分析してみたけど、特に問題は無さそうだった。

 チャットボット機能でも確認したけど、完全に同一品として認めてもらえた。

 これで、190年後の後輩達にも製造可能だって思ってもらえるだろう。


 あと、実を言うと倉庫内の鎮痛剤の在庫が一気に減った。

 今回の疾患は頭痛を伴うからね。

 それで、鎮痛剤を買う人も増えたらしい。



 一先ず、第二倉庫にある分を解放して補填したけど、ボクもミサ達も、緊急で鎮痛剤の製造も並行して行った。


 第三倉庫の分まで考えれば、在庫切れは有り得ないって思うけど、念には念を入れての対応だ。


 …

 …

 …


 例の大地震から半年くらいして、ようやく事態は終息していった。

 この頃になると、今回の疾患は再発しないって情報が人々の間にも浸透して行き、これまでの病に怯える暗い雰囲気からは一転していた。


 三剤合剤は余ったけど、これは第三倉庫の方に保管した。

 第二、第三倉庫内は、ドアを閉めると時間の流れが止まる特殊倉庫だからね。

 190年以上の長期保存も可能なんだ。

 なので、余剰分は190年後の人々に使ってもらう。


 …

 …

 …


 そんなある日のことだった。

 流通センターの人が、ボクのところに来た。


「歯が痛いんですけど、診てもらえます? 虫歯ではないみたいなんですけど、痛くてモノが噛めなくて」

「分かりました」


 早速、診断魔法を発動。

 その結果だけど……。


「歯周病ですね」

「歯周病? それって、なんですか?」

「細菌の感染で歯茎が炎症を起こしています」

「細菌って、病原菌ですか? また高熱が出たりするんじゃ?」

「多分、そこまでは行かないと思います。一応、確認ですが、もしかして歯磨きが十分でなかったとかありません?」

「たしかに、病気で寝ていた間、歯磨きを怠っておりました」

「そうですか……。キチンと歯は磨きましょう。では、コチラの薬を使ってください」

「あ……ありがとうございます」


 ボクは、魔法でアジスロマイシンの錠剤を出して、その女性に処方した。取り敢えず、一日一回服用で三日分だ。

 これで改善してくれるとイイんだけど……。



 ただ、やっぱり毎回思うんだけどさ、治癒魔法があった方が便利だよね?

 あるいは、何でも治すエリクサーとか出せると嬉しんだけどなぁ。

 やっぱり、異世界で薬って言ったらエリクサーが定番だよね?


 それなのに、ボクの場合は科学的根拠のある薬しか出せないって……。

 魔法で出すこと自体は非科学的なのにさ。


 なんか、ボクの魔法って非常に中途半端な気がするよ。

 全然、異世界らしくない!

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