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71:電話が無いと不便だよね?

「おはようございます、トオル様」


 背後から転移魔法使いのバイエッタさんの声が聞こえてきた。

 お城に行くために、ボクのことをワザワザ迎えに来てくれたんだ。


 薬作りに熱中していて、ボクは時間が過ぎるのをすっかり忘れていた。

 時刻は、もう午前9時を回っていた。



 マイトナー侯爵も同行してくださっている。

 今回は、ことが大きいからね。

 同行していただいて本当に心強いし、ありがたいよ。


「では、よろしいでしょうか?」

「はい。お願いします」

「転移!」


 そして、バイエッタさんの転移魔法で、一気に城の前まで空間跳躍した。

 たしかに、こんな便利な魔法があると交通手段……車とか自転車とかバイクとか……それから電車とかも発達しないよね。

 必要無いもん。



 門番は顔パス。

 さすがに、ボクやマイトナー侯爵が出禁ってことは無い。

 そして、ボク達は会議室の方に通された。


 しばらくして、フルオリーネ女王陛下が会議室に入ってきた。

 何処となく彼女の顔には焦りの表情が浮かんでいた。

 このタイミングでボクが来たと言うことは、何か良からぬことがあるって直感しているのだろう。


「おはようございます、女王陛下。お忙しいところ、お時間をいただき誠にありがうございます」

「そんな堅苦しい挨拶は抜き抜き。それで、今朝いきなり来たのは、昨日の大地震と何か関係があるのかしら?」

「はい」

「やっぱりね。まあ、この城は問題無かったけど、王都では結構倒壊した建物もあるみたいで。侯爵家の屋敷は大丈夫?」

「そちらは問題ありません。ただ、地震の直前に女神フィリフォーリア様からの啓示がありまして」

「なんとなく、そんな予感がしていたんだけどね。もっと言ってしまうと、ハッキリ言って何かイヤな予感がするんだけど?」

「はい。正直言ってイヤなことです」

「やっぱり?」

「ただ、今回のは、まだ時間的に少しは余裕がある案件ですので、地震直後ではなく、今の時間でも良いだろうと判断しました……」


 ボクは順を追って、昨夜、フィリフォーリア様から告げられたことを女王陛下に話して行った。

 勿論、ボクが200年前に犯した罪だけは隠したけどね。


 これを聞いて、さすがに女王陛下も、

「もう、どうしてこの国が実験台の一つにされるのよ……」

 と言いながら頭を抱えていたよ。

 その気持ちは、良く分かります。


「恐らく、この国や近隣諸国でしたら、ボクの方で対処しやすいからだと思います。それと、立場上、完全無報酬と言う訳には参りませんが、今回は思い切り底値であってもボク自身は構いません」

「まあ、価格は今まで通りでも構わないんだけどね。ただ、どれくらいの速度で感染拡大して行くのかを気にしてるのよ」

「発病者が出れば、一気に拡大する恐れはあります。ですので、一応、対象となる国の国民全員にマスクを無償配布しましょう。それだけでも効果は見込めると思います」

「そうね。それくらいはイイかも。手配はトオルちゃんにお願いしてイイかしら?」

「はい。急いで準備しておきます」

「あと、ウイルスが感染地域の外に流出されちゃマズいけど……」

「ただ、各国で国境を封鎖しても転移魔法での出入りも出来ますし……」

「そうなのよね。それに道を塞いでも道以外からの出入りは出来るから、国境封鎖って全然意味が無いのよね」


 別に国境の全てをイチイチ壁で仕切っているわけじゃないからね。

 荒れ地や草原から国境を超えて出入りすることも十分可能なんだよね。

 まあ、仕方が無いけど。


「ですので、早急に近隣諸国の分の薬は作りますが、その後も薬の供給ができるように準備しておきます」

「お願いね」

「はい。それと、取り急ぎ城内の分を出しておきます」


 一応、マスクは女神様から与えられたペンダントにお願いすれば出せることになっている。それは、このお城に初めてボクが来た時に立証済みだ。


 ボクは、取り急ぎ、代えの分も含めて数千枚のマスクを供給した。

 これだけあれば、当座分としては余裕で間に合うだろう。


 それから、ボクはアイテムボックスから、お城に来る前に作っておいた薬を出した。

 こっちも余裕をもってダンボール十箱程度出しておいた。


「発症しましたら、薬は一日朝晩一錠ずつで一週間の服用になります」

「了解。あと、国民全体へのアナウンスとか各国でのアナウンスについては、これから各国首脳と相談して決めるけど、トオル製薬内と流通センター内の情報開示についてはトオルちゃんとマイトナー侯爵に任せるわ」

「わ……分かりました」

「よろしくね」

「はい。では、ボク達は、これで失礼します」


 とにかく時間が惜しいからね。

 ボク達は、バイエッタさんの転移魔法でトオル製薬へと急いだ。

 この時間なら、既に会社の方も流通センターの方も稼働しているしね。



 転移終了。

 社屋に入ると、マイトナー侯爵にはバイエッタさんと一緒に、一旦、社長室の方で控えていただいた。


 一応、マイトナー侯爵は、トオル製薬の社長なんだよね。

 まあ、ボクが地球に研究出向している間に、ボクの養母ってことで立場上、社長にならざるを得なかったわけだけど。



 でも、いくらボクの養母と言っても、マイトナー侯爵は、薬のことに精通しているわけではない。


 それに、管理系の仕事は、お城から派遣されて来たオゼンピックさんに、ほぼ丸投げ状態だしね。

 完全にお飾り社長なんだ。


 なので、トオル製薬以外の仕事の方がメインで、こっちには余程重要なことでもない限り来ないみたいだ。

 それにしても、養女が会長で養母が社長ってのも、なんだか変な話な気がするけど……。



 一方のボクは、アリアがいる部屋へと急いだ。

 本当は思い切り走って行きたいところなんだけど、一応、これでも侯爵家の御令嬢様だからね。

 着ているモノがゴテゴテしていて、正直、走りにくい格好をしているんだよ。

 なので、早歩きにとどめておいた。


 アリアは、製薬実働部隊兼会長であるボクの秘書をしているけど、薬学教室の講師も兼務している。

 なので、普段は講師室の方にいるんだ。


 そして、ボクは講師室でアリアの姿を見つけると、

「10時半から緊急連絡をしたいんだ。管理職クラスと流通センター長のケックさんを会議室の方に招集してもらいたいんだけど」

 と彼女にお願いした。


 ボクはボクで、急いでマスクと薬を作り出さなきゃならないからね。

 悪いけど、面倒ごとをアリアに押し付け……いやいや、依頼したってところだ。



 管理職って言っても、別に、そんなに大した数はいない。

 会社全体でも、大して労働者がいるわけじゃないしね。


 でも、この世界にはメールも電話が無いから、ワザワザ本人のところまで行って、

『10時半から緊急会議がありますので、会議室まで来てください!』

 って言って回らなければならない。


 なので、この世界では緊急会議の招集って、実はもの凄く面倒なんだよ!

 多分、時間もかかるだろうし。


「でも、昨夜の大地震の直後だから、全員いるかどうか分からないけど?」

「いなければ代行を立ててもらって」

「分かった。じゃあ、第一会議室の方でイイ?」

「うん。お願い。それと、ボクは、ここの隣の部屋にいるから、全員揃ったら呼びに来てもらいたいんだけど?」

「了解!」


 本当に、出来のイイ友人を秘書にできて助かるよ。

 アリア様には感謝してます!



 ボクは、講師室の隣の空き部屋に入ると、先ず、女神様にいただいたペンダントを強く握りしめて、

「マスクを大量に出して!」

 とお願いした。


 このペンダントは、ボクが生きて行く上で非常に便利なアイテムでね。

 これで、ドロセラ王国と近隣諸国の分のマスクをガンガン出してもらった。


 勿論、部屋のスペースの問題もあるから、ある程度の量を出したら、それらをアイテムボックスの中にドンドン収納していったわけだけど……。



 さらにボクは、昨日からの続きを再開した。

 薬の供給だ。


 既に、ダンボール箱入りの状態で大量に作り出すイメージは出来ている。

 なので、

「出ろ!」

 ボクは、可能な限りハイペースで、こっちもガンガン作って行った。



 本当は倉庫に行って作れば、いちいちアイテムボックスに収納する必要が無いので効率的だと思う。


 でも、まだボクは、倉庫係の人とかに状況を教えてイイかどうか判断しかねていた。

 それで、この部屋に隠れて製造していたんだ。



 潜伏期間もあるから、恐らく発症者が出るには数日かかると思う。

 少なくとも、今日現在では、まだ発症者は出ていないだろう。


 発症者が見つかっていない段階で下手に話が流出すると、ムダに人々の不安を煽ることになるかも知れない。

 そう思って、ボクはトオル製薬の管理職クラスと流通センター長だけに状況を話し、今後の対応を考えたいって思っていたんだ。



 本当は、センター立ち上げの時からお世話になっているシュライバーさんにも声をかけたいところなんだけど、彼女は、ここには、たまにしか来ないからね。

 後でケックさんから報告してもらうことにする。



 薬作りに熱中していて、またもやボクは、時間が過ぎるのをすっかり忘れていた。

 前世からそうだけど、ボクは集中すると他のモノが全然見えなくなるタイプなんだよね。

 勿論、興味のあることにしか集中できなかったけど……。



 ふと、部屋の扉の方から、

「トオル」

 ボクを呼ぶ声が聞こえてきた。

 アリアの声だ。


「はいっ!?」


 ビックリして、ボクは大声を上げた。

 多分、この声を聞いてアリアの方も相当驚いたことだろう。


「全員揃ったよ」

「ありがとう。一応、アリアも出席して」

「私も?」

「ボクの代行で製造部の管理をお願いしているところもあるからさ」

「分かった。でも、もしかしてイヤなこと?」

「うん」

「まあ、トオルが緊急会議って言うってことは、また変な伝染病が拡大するってパターンだろうとは思っているけどね」

「でも、今回のことは、未来に向けて大事なことなんだ」

「そう言われても、全然意味が見えてこないけど?」

「まあ、詳細は会議室で話すよ」

「そうだね」


 とにかく、みんなを待たせているし、ボクとアリアは会議室の方へと急いだ。

 ただ、今回も早歩きね。

 この派手でゴテゴテした服装だと、下手に走ったら、足が引っかかって転ぶのが目に見えているからね。

 Gパンとかの方が楽だなぁ……ってつくづく思ったよ。

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