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68:正夢?

 カレニア王国から帰ってきた、数日後の夜のことだった。

 ボクは、疲れてグッスリと眠っていた。


 …

 …

 …


 ふと気が付くと、ボクは前世の有馬透の姿をしていた。良く分からないけど、その時、ボクは何故か、そんな自覚があった。


 窓の外には何故か富士山が見えていた。

 と言うか、この山がネペンテス世界のモノではなく富士山であると認識していた。

 富士山には雲がかかっておらず、その全容がハッキリと見えていた。

 また、雪も積もっていない。

 多分、夏の富士山だ。



 これは、夢の世界だと思う。

 でなければ、ボクが前世の姿になっているはずがない。


 それに、そもそも富士山が見えるはずもない。

 でも、今回は志賀さんの姿が見えない。

 珍しいな。

 ただ、この時、ボクは、なんだか胸騒ぎがしていた。



 次の瞬間だった。

 激しい轟音と共に富士山が大噴火を起こしたんだ。


 そして、その噴火口の中から、金色に輝くドラゴンが飛び出した。

 ただ、やたらと全身からメタリックな雰囲気を放っていたけど、生物なのか機械仕掛けなのかは分からない。



 恐らく、これはシリシスやフィリフォーリア様からの啓示ってわけではない気がする。

 もしそうなら、今までのパターンからすると、ボクは直接真っ白な空間に呼び出されているはずだと思うんだ。



 この時、ボクは、

『そのドラゴンは、目が合うと近付いて来るので、絶対に目を合わせてはイケない!』

 って誰かに言われた気がしていた。


 そんな台詞を誰かから直接聞いたわけでは無かったはずだけど、不思議とそんな感じがしたんだ。


 夢の中のことだからね。

 良く分からないけど、そんな設定があったみたいだ。

 なので、最初、ボクは布団の中にくるまって窓の外を見ないようにしていた。



 しばらくして、ボクは外が気になった。

 ボクが住んでいるのは、どうやら七階建てくらいの集合住宅のようだ。

 多分、四階か五階あたりにいる。

 玄関は、富士山が見える側とは逆側にあった。


 もし、これが現実なら、ボクは絶対に外に出ないだろう。

 ドラゴンと目を合わせてはダメと言われているなら、引き籠るのが正解だ。

 ところが、ボクは何故か玄関を開けて外に出た。



 階段を降りると、二体の怪人がいた。

 ドラゴンの眷属だろうか?

 それともドラゴンとは無関係なのだろうか?

 その辺は、良く分からない。


 ボクは、本能的に掴まってはいけないって思って、その場から逃げ出した。

 ただ、良く分からないけど、何故か逃げた先は広大な空き地になっていた。


『さっきまで集合住宅の中だったはずなのに、いつの間に空き地に出ていたんだろう?』

 と普通なら思うだろう。

 でも、このことをボクは、普通に受け入れていた。


 

 二体の怪人がボクを追いかけてきた。

 この時、ボクはドラゴンの存在を完全に忘れていたけど、とにかく怪人が怖くて、ひたすら逃げるだけだった。


 片方の怪人が、ボクのすぐ背後まで迫っていた。

 もう、捕まりそうだ。

 だけど、もう疲れて走れない。


 そう思った時だ。

「トオル!」

 力強い男性の声が聞こえてきた。

 それでいて、不思議と安らぐ声。



 ふと、ボクは目を覚ました。

 やっぱり、今までの訳の分からない光景は夢の中の話だったってことだ。

 変に整合性が無かったしね。



「トオル。大丈夫か? 随分、うなされていたけど」

「なんか、怖い夢を見まして」


 そう言えば、今日、ボクはお城に来ていた。

 アクティスの誕生祝いと言うことで、パーティが開かれたんだ。


 ボクはアクティスの婚約者だからね。

 当然、出席は義務だ。

 そして、パーティの後、ボクはアクティスから特別な誕生プレゼント(?)をねだられて、同じベッドで寝ていたんだ。



 ボクは、さっき見た夢を、順を追ってアクティスに話した。

 ただ、前世の姿だったってことだけは隠したけどね。


 すると、アクティスから、

「それって何か変なことが起こる啓示じゃないのか?」

 と言われた。


「でも、掲示でしたら、大抵、フィリフォーリア様に真っ白な空間に連れられて行って、そこで直接言葉で聞かされますから、今回のは違うと思います」

「俺には、何か意味があるように感じるんだけどな。それから、東の大陸にドラゴンにまつわる伝説があるって聞いたことがあるのを、ふと思い出したよ」

「どんな伝説ですか?」

「金色のドラゴンが火口から飛び出して災いを引き起こすってモノだけどね。二体の怪人は出てこないけど」

「そうですか。でも、まあ、気のせいかと思います」

「ならイイんだけど……」

「それにしても、私、ここで寝てしまっていたんですね。一応、体面上のこともありますので、一先ず本来泊るべき部屋の方に移ります」

「いや、別にこのままでもイイけど」

「また、アクティス様を起こしてはイケませんし。では、お騒がせしました。お休みなさい」


 アクティスは、このままボクにいて欲しかったみたいだけど、ボクはアクティスの寝室を出て、客室に戻った。


 …

 …

 …


 翌日、ボクは王宮転移魔法使いのエリカさんにお願いして、トオル製薬に送り届けてもらった。


 この日は、朝からED治療薬と男性の持続薬の製造を行った。

 まったく朝からシモかよと思ったけど、そう言うスケジュールだから仕方が無い。

 そして、十時くらいに一休みしようと、ボクは休憩室に行った。

 そこには、既にアリアの姿があった。


「トオルお疲れ」

「お疲れ」

「ねえ、聞いた? 東の大陸のこと」

「えっ? 何かあったの?」

「海底火山が噴火したって」

「初耳だけど。どの辺?」

「アドレア王国の南方の海らしいよ。イビセラ国から流通センターに来た転移魔法使いが言ってたって」

「そうなんだ」


 イビセラ国は、このネペンテス世界最大の面積を誇る国家で、東の大陸の九割を占めている。

 その国には、かつてボクも、ルビダスを連れてコレラみたいな病気の治療のために行ったことがある。


「火山灰がアドレア王国まで届いてるって話。でも、この時期だと、あの辺って台風も発生するのよね」

「そうなの?」

「うん。雨が降って空中の火山灰が洗い流されればイイけど、風で火山灰が運ばれるだけだったら悲惨かなって思って」

「どうなるだろうね?」


 何となくだけど、急にボクは昨夜見た夢が何か関係しているような気がしてきた。

 昨夜の時点では、掲示でも何でもないって思っていたくせにね。


 そして、急いでチャットボット機能を立ち上げた。

 アリアには、シリシスと交信してブツブツ言っているってことにしているけど。


『Q:アドレア王国沖に台風は発生している?』

『A:二つ同時に発生している』


『Q:アドレア王国に台風は上陸する?』

『A:片方が上陸する』


『Q:海底火山の噴火は何時まで?』

『A:数日で鎮まる』


『Q:ボクが昨夜見た夢との関連性は?』

『A:比喩的な予知夢』


 マジでアクティスが言っていた通りだったよ。

 これも、掲示だったってことだ。

 でも、だったら女神様もシリシスも、ダイレクトに言ってくれればイイのに。


『Q:具体的に何が起きる?』

『A:火山灰に注意せよ』


 さすがに、具体的に何が起こるかまでは教えてもらえないか。

 正直言って、

『火山灰に注意』

 だけだと、良く分からない。


 この時、ボクは、富士山が海底火山、ドラゴンが火山灰、二人の怪人が二つの台風を、それぞれ意味していると解釈した。

 その後も、この解釈は基本的に変わらなかったけどね。


 …

 …

 …


 数日後、チャットボット機能の予告通り、二つの台風のうちの片方がアドレア王国を直撃した。

 大雨を降らしたらしく、台風による直接被害は大きかったみたいだ。

 まさに、踏んだり蹴ったりって感じに思えた。



 そのさらに数日後、ボクはお城に呼ばれた。

 例の如く、ルイージさんがボクのことをトオル製薬まで迎えに来てくれた。

 ルイージさんからは、出張準備をして欲しいと言われたけど……。


 それで、ボクは一旦、マイトナー侯爵の御屋敷に向かい、アイテムボックスの中に着替えとか出張アイテムを収納した。

 それから、マイトナー侯爵には会えなかったので侍女の一人に状況を話した後、お城へと向かった。



 ルイージさんの転移魔法でお城の前に到着。

 当然、門番は顔パス。


 そして、ボクが通されたのは謁見室だった。

 そこには、女王陛下とアクティス、それから初めて見る女性の姿があった。



 この時のフルオリーネ女王陛下は、近しい人だけといる時とは違って、威厳に満ちた雰囲気を身にまとっていた。

 完全に余所行きモードだ。

 ただ、第一声は女王陛下からではなくアクティスからだった。


「トオル。あの日の夢が正夢になったようだ」

「もしかして、東の大陸の海底火山のことでしょうか?」

「知っていたのか」

「はい。海底火山の件は、イビセラ国から流通センターに来ていた人が話しておりましたので。それから、シリシスから二つの台風が発生したことも教えられました」

「そうか。それで、その台風の片方がアドレア王国に上陸したそうだ」

「そのようですね」

「やはり、それも知っていたか。ただ、台風の後、アドレア王国では一部の地域で人々が体調不良を訴え出したらしい。激しい熱と、それから咳がヒドイらしい」

「そうなんですか?」

「ああ。それで、アドレア王国の使者の方が、トオルの派遣を陛下にお願いしに来たんだ。こちらが、使者のミランダさんだ」


 ミランダさんが、ボクに深々と頭を下げた。

 彼女は、藁をもすがるつもりで、ワザワザ遠路はるばるここまで来たのだろう。



 それにしても、発熱と咳?

 チャットボット機能によれば、火山灰に注意ってことだったから、咳は分かる。

 火山灰を吸って咳き込んでいるんだろう。


 でも、激しい発熱?

 もしかして、気管支炎でも起こしているってことじゃ?



 念のため、チャットボット機能で確認すると、思った通り多くの人が気管支炎を発症しているっぽかった。

 噴火当時に細かい火山灰粒子もあったため、それがアドレア王国まで届き、肺の奥の方に入って症状が出たとのことだ。


 でも、細かい火山灰粒子を、今後も吸い続けるわけでもないみたいで、一過性の症状と思われる。



 それから、今回の噴火で有毒ガスが発生したと言うこともなさそうだ。

 ある意味、台風直撃で大雨が降ったのは、先日、アリアが言っていた通り、幸いだったかもしれない。

 大気中の細かいチリが全部洗い流されたからね。


 もう、噴火も治まっているって話だし、これ以上、細かい火山灰粒子が人々に襲い掛かることも無いだろう。


「では、トオル。ルイージに同行させますので、アドレア王国まで行っていただきます」

 これは、フルオリーネ女王陛下からのお言葉。


 さすがに女王陛下からの依頼だからね。

 口が裂けても『No』とは言えない。

 これは、『はい』か『Yes』の二択だ。


「分かりました。全力を尽くしてまいります」

「おおよその内容はアクティスが話した通りです。毎々面倒ごとを依頼して恐縮だですが、今回もよろしく頼みます」

「はい」


 そして、ボクは転移魔法使い兼世話係兼騎士のルイージさんと、ミランダさんと共にアドレア王国へと空間移動した。

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