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49:ファン!

 ボクとルイージさんは、屋敷から少し離れたところでカトレアさんと合流した。

 そして、早速、

「相手にならなかったのではありませんか?」

 とカトレアさんに言われた。


「魔力無しが死に絶えるのをむしろ喜んでいるんじゃないかと思いました。それと、子爵が思っていることが、こっちに聞こえてくるんですけど」

「はい。魔力を持っている者には子爵様の心の声が聞こえてきます。子爵様が魔力をコントロールし切れていないためと思われますけど」

「そうなんでしょうね。それと、ボクに依頼したのはカトレアさんだって、見当がついていたみたいです。長距離の転移魔法が使える人がカトレアさんしかいないからって」

「やっぱりバレていましたか」


 そう言いながら、カトレアさんは溜め息をついていた。

 多分、カトレアさんは、あとで何か子爵から言われるんだろうなぁ。

 ボクのところに来た時点で、ある程度、彼女もそれを予想していただろうけど……。


「あと、なんか第一印象で、思い切り嫌われましたよ、ボク」

「嫉妬深い人ですからね。先ず、自分よりも魔力が強い人間は嫌いですね」

「そうなんですか?」

「はい。特に魔力が強くて美人となると、完全に排除する対象となります」


 魔力が強くってところは、まあ、これでも聖女とか御使いとか言われる立場だし、今のボクの立場では謙遜したら嫌味になる。

 ただ、美人って言われて、そうですねとは言い難いな。

 ボクが前世で想い描いていた理想の女性の姿だから美人だって自覚はあるんだけど……。


「別に、そんなことは……」

「謙遜なさらないでください。十分、そんなことはあると思いますよ」


 そう言われると、嬉しいけど反応に困るな。

 まあ、取り敢えずお礼を言って誤魔化しておこう。


「ええと……ありがとうございます」

「ただ、あの子爵は、基本的に自分よりも魔力が弱い人間しか受け入れません」

「でも、魔力無しはダメなんですよね」

「はい。あと、魔力が弱い者を可愛がりつつも見下しています」


 そんなヤツだったんだ。

 イイとこなしだなぁ。

 二度と会いたくないタイプだね。



 ここでウダウダしていても仕方が無い。

 なので、

「じゃあ、ルイージさん。お願いします」

「承知致しました。転移!」

 ボクは、ルイージさんの転移魔法で、オーキッド王国のお城の前まで急いで移動することにした。

 勿論、カトレアさんも一緒ね。



 門番から、

「入場許可証は?」

 って聞かれた。

 まあ、それが普通だろう。


「ドロセラ王国マイトナー侯爵家のトオルと申します」

「トオル?」

「はい。ククラタ町で多くの人が突然死すると言う奇病が流行しているため、その治療のことで女王陛下に相談に参りました」

「もしかして、女神様?」


 ここでもかい!

 なんか、あとでボクが女神フィリフォーリア様から怒られそうな気がするんだけど?

 ゴメンね。

 許して頂戴! フィリフォーリア様。


「イサベリア女王陛下から伺っております。お通りください」

「ありがとうございます」


 ってことは、エリカさんがフルオリーネ女王陛下の書状を、既に送り届けてくれたってことだね。

 助かったよ!



 城内に入ると、

「トオル様ですね。こちらです」

 ボク達は、そのまま侍女に案内されて謁見室へと通された。


 そして、入室すると同時に、

「もしかして、アナタがトオルさん?」

 イサベリア女王陛下が大きな声を上げた。

 相当興奮しているよ。

 なんだかアイドルにも出会ったみたいな雰囲気だ。


「はい。トオルです。よろしくお願いします」

「フルオリーネから聞いていた通りね。前に、アナタの薬を全世界に販売展開するに当たって関税を含めて色々とルールを決める会議があったじゃない? その時にフルオリーネとは意気投合したのよ」

「そ……そうなんですか?」

「そうなのよ。その会議の合間にもフルオリーネから色々聞かされてね。もう自慢ばっかり! 綺麗でイイ子で、国を伝染病から救ってくれたし娘も救ってくれたし。それで王太子の婚約者でって」

「は……はぁ……」

「その後、全世界で一気に伝染病が流行した時も大活躍だったじゃない?」


 そう言ってもらえると嬉しいけど、別に分子設計したのは女神様だし、ボクは、ただ言われた通り動いただけなんだよね。

 それに、ボクは二百年前の罪滅ぼしをしただけに過ぎなかったし……。


「まあ、あれは女神フィリフォーリア様からのご指示でしたので」

「女神様とも交流があって、素晴らしいことですわ。それで、すっかり私もトオルさんのファンになっちゃって。消滅したって聞いた時には、私もかなりショックを受けたのよ」

「済みません。それも女神様の意図でしたので」

「でも、復活したって聞いて嬉しかったわ。それに、実際に会えるなんて。お顔を見るのは初めてだけど、本当にフルオリーネが言う通り綺麗な娘ね。私が娘に欲しいくらいだわ。そうそう、アナタが王太子に渡したダイヤモンドも見せてもらったわよ」

「あれをですか?」

「あのダイヤモンドにトオルさんの魂が宿って人型になっていたって話だったけど?」


 ここでも、あの都市伝説が信じられていたぁ!

 もはや全世界的に噂なんだろうな。

 一応、否定はするけど。


「いえいえ。あれは普通にダイヤモンドです」

「さすがに、あのサイズに透明度。完全なる無色で、しかもカットも素晴らしくて、どう考えても普通じゃないでしょ。絶対に天界から地上に降りて来たダイヤモンドだって思ったもの」


 うーん。

 さすがにボクが魔法で作ったとは言えないな、これ。


 ボクが御使いとか女神様って言われたのも、こう言った背景があるからなんだろうな。

 フルオリーネ女王陛下だって、ボクの魂がダイヤモンドに宿っていたってデマを信じちゃっていたくらいだもん。


「それでね。あのダイヤモンド。見ていて羨ましいなって思ったんだけど、さすがに盗むわけには行かないし。それ以前に、アクティス王太子と離れ離れにさせたら祟りが起きて国が崩壊するんじゃないかって思ってね」


 ええとね……。

 さすがにそれは無いと思うけど……。

 でも、イサベリア女王陛下からすれば、そう思えてもおかしくないモノなんだろうな。


「でね、それをフルオリーネに言ったら、祟りどころか、この世界が滅びるって言われたわよ」


 うん。それも完全に有り得ないよ。

 別に、あれはボクが勝手に作ったダイヤモンドだからね。


「それで、私のところを訪ねて来たってことは、領主と折り合いがつかなかったってことかしら?」

「御察しの通りです」

「フルオリーネの書状には寄生虫って書かれていたけど、どんなモノなの?」


 こうイサベリア女王陛下に聞かれて、ボクはアイテムボックスからミラさんの体内から取り出したフィラリアの大群(ビン入り)を見せた。

 これには女王陛下も口に手を当てて、嫌悪感満載の表情を見せてくれた。


「ナニこれ? 気味悪いわね」

「これは、ククラタ町でボクが最初に出会った患者さんの体内から取り出したモノです」

「もしかして、これ、全部?」

「はい。これが、左胸でドキドキ言う部分に詰まっていたんです。それで血の巡りを止めてしまって」

「でも、こんなのが沢山身体の中にいるなんて信じられないけど?」

「それが普通だと思います。これは、蚊に刺されて感染します」

「蚊?」

「はい……」


 ボクは、フルオリーネ女王陛下に説明した時と同様の説明を、ここでもイサベリア女王陛下にさせてもらった。

 まあ、たしかにネペンテス世界の科学的常識から考えたら、こんなこと、到底信じられないだろうね。


 でも、イサベリア女王陛下はフルオリーネ女王陛下と同じでボクの言うことを信じてくれた。

 本当に有り難いよ。


「それで、これを治す方法ってあるの?」

「あります」

「そう、良かったわ」

「でも、ただ治すだけではダメなんです。治しても蚊に刺されたら再感染します」

「たしかにそうね」

「ですから、感染伝搬サイクルを完全に遮断するために、寄生虫を取り出した後も、毎月必ず一回、薬を六年間継続して服薬してもらう必要があります」

「六年間も!」

「そうなんです。ただ、信じていただきたいのは、ボクは別にお金をだまし取ろうとかは考えていません」

「それは分かっているわ。先ず、感染者が今すぐに死なないように体内に大量にいる寄生虫を全部取り出す。その後は、再感染しても寄生虫が大きくなる前に薬で殺す。蚊に刺される人は何回も刺されるから、毎月薬を飲む必要がある」

「そうです」

「あと、六年って言うのは、動物に感染したのを人にうつされる可能性があるから。だから完全に根絶するには六年かかるってことでしょ?」


 イサベリア女王陛下も理解が早いお方だ。

 有難い。

 あの子爵とは天と地の差があるよ。


「仰る通りです」

「他にも、蚊がククラタ町から他の町に飛んで行かないようにしないといけないわね。あと、動物も人も昆虫も、ククラタ町から出られないようにしないと。魔力持ちの人間は別としても……」

「はい。あの付近に結界を張る必要があります」

「でも、周りに広まっていないかしら」

「少々お待ちください」


 ボクは、チャットボット機能を立ち上げた。

 ククラタ町から付近の町に広まっていないか確認するためだ。


『Q:フィラリアはククラタ町から付近の町に広まっていない?』

『A:今のところ大丈夫』

『Q:感染拡大予防のため、結界を張る範囲は?』

『A:ククラタ町から一キロ離れたところまで』


 一先ず大丈夫そうだ。

 でも、これは飽くまでも今現在の話だからね。

 急がないとイケない。


「御使いシリシスが言うには、ククラタ町から一キロ離れたところまで結界を張る必要があります」

「でも、他の町には広まっていないってことね?」

「はい」

「分かったわ。では……」


 イサベリア女王陛下が、側近の一人を近くに呼び寄せた。

 そして、彼女は、すぐに対応に向けて指示を出してくれた。


「大至急、結界魔法の使い手と転移魔法の使い手を五人ずつ招集して。そして、転移魔法使いと結界魔法使いで五つのペアと作って、ククラタ町を取り囲むように配置して頂戴。ただし、ククラタ町から各々一キロ離れた場所で」

「分かりました」

「それで、結界を張って。アリ一匹外には出さないようにって。特に、蚊は絶対に取り逃がさないように」

「はい。最善を尽くします」

「一先ず、これでイイかしら、トオルちゃん?」

「はい。ありがとうございます」

「それから、治療代は国で持つわ。後で人数を教えて頂戴」


 これも本当に有り難い。

 お金を支払ってくれることではなくて、それだけ国民のことを思っていることがね。

 これも子爵とは雲泥の差があるよ!


「分かりました」

「それにしても、アグリィ子爵は私の顔に泥を塗るつもりかしら? もし、この寄生虫が他国まで広まったら私の立場が無いわよ!」


 たしかにそうだ。

 ボクは、そこまで考えていなかったけど、後になって絶対に国が叩かれる。


「たしかにそうですね」

「それに、他国に広まるのを結界で防げたとしても、魔力の無い者達が全員寄生虫の餌食にされてしまうでしょう。万が一、国内で蔓延したら、人口は五分の一近くに減るでしょうし、そうなったら経済が回らなくなるわ」

「ボクもそう思います」

「魔力の無い人間を嫌っていたのは知っていたけど……。だから見殺しってのはね。領主として失格ね」

「でも、これで人々も救われます。では、急いでククラタ町に戻ります」


 ボクは、イサベリア女王陛下に一礼すると、急いで謁見室から退室した。

 そして、

「ルイージさん、お願いします」

「分かっています。転移!」

 再びボク達は、ルイージさんの転移魔法でククラタ町へと急行した。

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