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48:勝手にテレパシー!

 ボクとルイージさんは、その場にカトレアさんを残して、いざ出陣!

「ごめんください」

「はい。どちら様でしょうか?」


 出迎えでくれたのは侍女っぽい。

 一応、弱いけど魔力を感じる。


 魔力無しを人間と認めないアグリィ子爵のところで働いているんだもんね。そりゃあ、魔力が無きゃ雇ってもらえないか。


「ボクはドロセラ王国から来ました薬屋のトオルと言います」

「もしかして薬の女神のトオル様ですか?」


 これって、完全にミラさんと同じ反応だよ。

 ボクは女神じゃないんだけどなぁ。


「女神じゃなくて人間なんですけど……。さっきも他の人に同じことを言われましたけど、ボクは女神ってことになっているのですか?」

「そりゃあ、この世界を救ったお方ですから当然です。それに、想像通り、とても美しい女性で……。復活されたって噂を聞きましたけど本当だったんですね」

「一年ちょっと前に、訳あって舞い戻ってきました。それで、こちらはアグリィ子爵の御屋敷ですよね?」

「はい。子爵様に御用ですね? どのような御用件でしょうか?」

「町で流行っている突然死についてです」

「あれの件ですね。分かりました」


 その侍女は、一旦、子爵を呼びに屋敷の奥へと引っ込んだ。

 ボクは、

『相手の都合もあるし、結構待たされるんじゃないかな』

 って思っていたけど、一分くらいで、彼女は再びボク達のところまで戻って来たよ。

 突然死の件だからね。

 子爵も気にはしているんだろう。


「どうぞ、お入りください。こちらになります」

 ボク達は、その侍女に案内されて応接室へと通された。



 少しして一人の女性が部屋に入ってきた。この人がアグリィ子爵だろう。

 ただ、この世界でボクが今まで見てきた女性の中で、群を抜いて……悪いけどブサイ。

 それに、凄く目付きが悪い。


 たとえ目付きが悪くても、顔立ちが整っていれば悪役令嬢……じゃなくて悪役子爵でも絵になるのになぁ。

 漂ってくる雰囲気からも、なんかドス黒さを感じるし……。なんか、嫌な予感がする。

 でも、まあ、それはそれとして本題に入らないと。


「ドロセラ国から参りました薬屋のトオルです」

「領主のアグリィ子爵です。ドロセラ国からでは遠かったでしょ?」


 こうアグリィ子爵が言った直後だった。ボクの頭の中に、

『この容姿、気に入らないね! 綺麗すぎだろ! 魔力も相当強そうだし、殺してやりたいね!』

 って思い切り負の感情の入った言葉が響いて来た。



 発生源は間違いなくアグリィ子爵だ。

 もしかして、これって心の中の声が、勝手にテレパシーになってボクの方に飛んできているってこと?


 ボクの隣ではルイージさんも驚いた表情をしていた。

 彼女にも、これが聞こえているってことだろう。



 多分、魔力の制御ができていないんだね。

 本音と建前が聞けそうだよ。


 うーん、それにしても、いきなりムチャクチャ嫌われたモノだな。

 いきなりこれだと遣り難いかも……。


「まあ、転移魔法使いにお願いしましたので」

「そうですか。それで、侍女のアスカから聞きましたが、町で流行っている突然死の件でいらしたとか?」

「はい。ある方から依頼が参りまして」

『どうせカトレアだろ。この町では、アイツしか長距離の転移魔法は使えないからな』


 またアグリィ子爵のテレパシーが飛んで来た。

 完全にバレてるよ、カトレアさん。


「もしかして、あの突然死は何かの病気ってことでしょうか?」

「はい、寄生虫感染症です。寄生虫が血の巡りを遮断してしまうのです」

「寄生虫?」

「はい。ここに来る途中で一人の女性が死にかけているところに遭遇しまして、その場で物質転移を行い、取り出しました」


 ボクは、さっきミラさんから取り出したフィラリアの大群をアグリィ子爵に見せた。

 勿論、ビンに入った状態でね。

 一応、このビンはアイテムボックスの中にしまっていたんだ。

 なくすと大変なことになるかもしれないからね。


 さすがにアグリィ子爵も、これには、

「気色悪いですね。何ですか、これは?」

『気色悪いな。ナニこれ?』

 珍しく言葉と本音が一致していたよ。


「これが患者の体内に寄生していたのです」

「さすがにこれは……。しかし、何故このようなモノが体内に寄生していたのですか?」

「蚊が媒介します」

「蚊?」

「はい。この寄生虫の極小さな幼虫が蚊に刺された時に蚊の体内から人の体内に移動し、そこで大きく成長するのです」

「そうですか」

『そうなんだ。じゃあ、蚊に刺されない無能な魔力無ししか感染しないってことか。なら、放置していてイイよね!』


 あらら……。

 早速、ミラさんが懸念していた通りの展開になっちゃったよ。

 でも、町全体のことを考えれば、救わないわけには行かないよね?


「子爵様もご存じの通り、蚊に食われるのは基本的に魔力の無い者だけです」

「まあ、魔力がある人間も、体調次第では稀に喰われることはありますけどね」

「そうなんですか?」

「トオルさんともあろうお方が、ご存じなかったのですか?」

「ええ、お恥ずかしながら……。ただ、魔力の無い人が全員死んだら、ククラタ町の人口は現在の四分の一に減ってしまうでしょう。そうしますと、ククラタ町の経済が回らなくなってしまいます」

「そうですね」

『別に、そうなったら税金を五倍に増やすから関係ないね』


 おいおい。今、とんでもない本音が聞こえて来たぞ。

 大丈夫か、コイツ?

 しかも、四倍じゃなくて五倍なんだ。

 やっぱり、嫌な予感が的中した気がするよ。


「それで、ククラタ町の奇病の治療を依頼されたのですが、ボクもタダでやるわけには行きませんので」

「そうですか。それで、治療代はどれくらいになるのですか?」

「体内から寄生虫を取り出すのに一人当たり小銀貨一枚。その後、毎月一回、二種類の薬を六年間に渡って飲み続けていただきます」

「その薬代は?」

「一回分銀貨一枚です」

「じゃあ、一人当たり合計で小金貨七枚に銀貨二枚、それから小銀貨一枚か。それを魔力無し全員にとなると千六百人ちょっといるから金貨千百五十枚以上ってとこか」


 金貨一枚が十万円とすると、一億円を超える額だ。

 簡単にポンと出せる額じゃないことくらいはボクだって分かっているよ。

 でも、何とかしてもらわないと。


「それを町で負担していただくことは可能でしょうか?」

「寄生虫を取り出したら治るんでしょ? なのに、何でその後に薬を飲む必要があるのかが分からないけど?」

「蚊が寄生虫を持っているからです。御使いシリシスからの伝言では、感染伝搬サイクルを撲滅するためには、どうしても六年かかるとのことです」

「いやいや、治ったのに薬処方なんて詐欺でしょう?」

「いいえ。詐欺ではありません」

「不当に儲けようと考えているとしか思えませんね。もう、お引き取りください」

「えっ?」

『魔力無しのために、そんな金払えるか。かかったヤツが自腹で払えばイイだろ!』


 また本音が飛んで来たけど、まあ、自腹と言う部分だけは確かに正論でもある。

 でもね、各個人が自腹でってなると薬代が払えなくて処方されるのを拒否する人が出てくるんだよ。

 それじゃ意味ないんだ。

 これは、町や国がお金を払って人々には無償配布しないと、この寄生虫を撲滅できないんだよ。


『それに、放っておけば魔力無しが絶滅するわけだから、別にイイじゃん。それに、この女、容姿からして気に入らないし、私よりも魔力が強いっぽいのも気に食わない!』


 またまた子爵の本音が飛んで来たよ。

 ボクに対するヘイトがバリバリだし、完全に治す気もゼロだね。

 取り付く島もないってとこか。



 なら、一つやってみますか。

 この屋敷の中には、何匹か蚊が飛んでいた。

 勿論、ここには魔力を持つ人間しかいないから、蚊がターゲットにする人間はいないけどね。



 でも、ボクは一応、動きをコントロールする魔法が使える。

 ただ、ショボくてアリ一匹動かす程度しかできなかったけど。

 とは言っても、大きさから考えて蚊もコントロールできるんじゃないかな?


 と言うわけでチャレンジ!

 ボクは、一匹の蚊を魔法で動かしてみた。



 動く動く。

 これなら何とかなりそうだ。


 そして、ボクは、その蚊を子爵の腕に止まらせ、刺すように命じた。

 勿論、声には出さないよ。

 蚊は子爵を容赦なく刺した。



 これには、子爵も、

「何で私が刺される?」

 って驚いていたけど、同時に、

『この気に入らない女が視界に入るから体調が崩れたんじゃないか?』

 またまた変な本音が飛んで来たよ。



 でも、その直後、蚊に刺されるイコール寄生虫が体内に入るって図式が子爵の頭の中を横切ったらしい。


 当然、子爵は、

「頼む。私を治してくれ!」

 とボクにすがり付いて来たよ。


 勝手に飛んでくるテレパシーも、

『このままじゃ死んじゃう! 何でもするから治して!』

 マジで命乞いになっていた。


「では、町の人達の治療は?」

「それもお願いする」

 一先ず、この言葉を否定するテレパシーは、聞こえてこないな。

 じゃあ、信じてイイのかな?



 ボクは、

「出ろ!」

 フィラリア用の薬を出した。この薬を飲めば、体内に入り込んだフィラリアの幼体を十分殺すことが出来る。

 そして、その薬を子爵に渡すと、子爵は急いで薬を飲んだ。


「では、これから町の人達の治療も……」

「いいえ、それは不要です」

「でも、さっきはお願いするって」

「気が変わりましたので」

『って言うか、アイツらに出す金は無いからね』


 また本音が聞こえて来たよ、このヤロウ。

 さっきは、変な本音が聞こえてこなかったんじゃなくて、変な本音を語るだけの余裕も無かったってだけかよ。


 コイツを相手にしていても時間のムダだね。

 なら仕方が無い。

 方針変更だ。


「そうですか」

「私の治療代、銀貨一枚は払っておくよ。基本的に治したい人は自腹で行けばイイと思っているのでね」

「分かりました。では、私は一旦引き上げます」

「そうしてください」

「では、失礼します」


 と言うわけで、ボクはフィラリア入りのビンをアイテムボックスの中にしまうと、足早に子爵の屋敷を後にした。

 やっぱりオーキッド王国の王室に直訴するしかなさそうだね。

 イサベリア女王陛下が頼みの綱だよ。

後から読んで、税金が五倍になったら、給与額面よりも税金の方が多くなったりしないかと、ふと思いました。

トオルが暮らす国とアグリィ子爵の領地では、当然、税率は違いますが、もし同じだとすると、完全に税金が給与よりも多くなってしまいます。

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