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45:再試験!

 ボクが会長職に就任してから一か月が過ぎた。

 第二、第三倉庫には、ボクとマイトナー侯爵、アクティス、フルオリーネ女王陛下、それから結界術師当人以外は通ることが出来ない特殊な結界を張ってもらった。


 基本的に、これら二つの倉庫内の薬は不測の事態以外には使わないとの判断だ。

 とは言っても、結界破りの魔法を使える、極一部の特殊な人間には破られちゃうんだろうけどね。



 それから、薬学教室の生徒の大量募集を開始した。

 募集のポスターや願書等は、流通センターを通じて全世界に配布された。



 それともう一つ、大きなことがあった。

 遡ること二週間前。


「トオルさん。モニターからの感想です」

 シュライバーさんが十人のモニターからアンケートを回収して、ボクのところに持って来た。フリバンセリンのモニターアンケートね。



 ただ、シュライバーさんの姪のフリートさんは、このモニターの中に入っていなかったからね。

 彼女の一票が、さらにカウントされることになる。



 この時、ボクは居室にいた。

 その場には、本当にたまたまなんだけど、アクティスとマイトナー侯爵も同室していた。今後の薬学教室についての打ち合わせがあったんだ。

 ある意味、グッドタイミングとも言える。


「フリバンセリンの件ですけど、十人中九人から喜びの声が上がり、商品化を望むとの意見が出ていました」

「残りの一人は、どのような回答でしたでしょうか?」

「頭痛と吐き気が出て、使用は見送りたいとのことでした」

「副作用ですね」

「はい。ただ、九割の女性から商品化希望が出ていますし、フリートも商品化を希望しておりますので、私としては商品化して欲しいと思います」

「これだけ希望があったら仕方ないですね。分かりました。商品化しましょう。ただ、処方の際に、副作用があることをキチンと説明することを徹底する必要はあります」

「そうですね」

「それから、用量を下げた錠剤も用意しておきましょう」


 この世界は、地球と違って臨床試験の実施は無いからね。なので、勝手に薬を売り出しても問題はない。

 それに、そもそもフリバンセリンは地球では薬として認められているし、まあ、バカみたいな使い方さえされなければ問題ないだろうって判断だ。



 そして、その二週間後、つまり、ボクが会長職に就任した一か月後に、フリバンセリンは販売が開始された。


 ただ、最初は様子見のつもりで少ししか製造しなかったんだけど、まあ、ボクが想定していたよりは売れ行きがイイみたいだ。

 なので、ボクは早速追加で製造する羽目になったよ。



 そのさらに二か月くらい後のことだ。

 この日は午前中に、流通センターの一室に、ボクの補講を受けていた八人に来てもらっていた。


 何の八人かって?

 化学教師になる試験を受けて、惜しくも不合格にあった八人だよ。


「今日は、みなさんの最終試験となります。今まで学んできたことを全て出し切ってください。制限時間は六十分です。前回と同じで100点満点中70点で合格とします。では、始めてください!」


 ボクの声と同時にテストが開始された。

 一応、アクティスにも試験副監督として来てもらっていた。

 別に試験副監督はアリアかアイカでも構わないかなって思ったんだけど、前回の合格者が副監督じゃ受ける側も面白くないんじゃないかってアクティスに言われてね。

 まあ、それも一理あるって思ってアクティスにお願いしたんだ。



 前回同様、一瞬にして室内が緊張した場へと切り替わった。

 特にカンニングするような輩はここにはいない。みんな、正々堂々と試験を受けてくれているよ。



 試験開始から四十分。

 ここで、ボクは一旦、試験会場を出て隣の部屋に移動した。

 ちょっと準備があってね。十分くらいで戻って来たけど。


 そして、試験開始から一時間が経過した。

 ここで、回答用紙の記載内容をフィックスしてもらう。


「終了です。解答用紙を回収します」


 回答用紙は、今回もボクとアクティスで順に回って回収した。

 八人しかいないので、後ろから回してもらうよりも、二人で回収して回った方が速いだろう。


 それで、ボクはアクティスが回収した分を受け取ると、急いで通路の向かいの部屋に移動した。

 勿論、採点するためだよ。



 採点の間、受験者には昼食を取ってもらう。

 昼食は、さっき、ボクが準備に入った部屋に用意してある。

 今回は、ボクが女神様から頂いたペンダントにお願いして立食形式のランチを用意したんだ。

 これで一時間くらい、ゆっくりしてもらう。



 その後、受験者達には流通センター内と工場内をそれぞれ見学してもらった。工場の方は、まだミサチームとロンドチームの製造ラインしか無いし、見学自体は一瞬で終わりそうだけどね。


 でも、八人共、見学中は気が気じゃなかっただろうな。

 受かっているかどうか、テストの結果が正直言って怖いだろうからね。


 ボクの方は、結構楽観視していたけどね。

 みんな大丈夫だって。


 そして、採点結果は……全員合格だ。

 嬉しい限りだよ。



 二時間くらいして、みんなが試験会場に戻って来た。

 全員が元いた席に着くと、ボクは、みんなの顔を見渡した。前回同様、全員が不安そうな表情を浮かべていたよ。


「では、合格者を発表します。全員合格です。本当におめでとうございます!」

 この僕の言葉を聞いて、八人共、一気に喜びの笑顔に変わった。


 でもね、試験で合格することが最終目標じゃないからね。

 これは、通過点でしかない。

 本当は、ここからが大変なんだ。


 でも、まあ、この場でそれを言っても、嬉しさ最高の状態に水を差すだけだし、今は言わないけどね。


「みなさんには、一か月後から薬学教室の教師として働いていただきます。諸手続きの方は、リキスミアさんにお願いしておりますので、この後、説明を受けていただきます。今後は、教える立場として、その力を十分発揮してください!」

「「「はい!」」」


 みんな元気いっぱいの返事だね。

 本当にマジで期待しているからね!

 と言うわけで、ボクの出番はここまで。

 あとはリキスミアさんにバトンタッチして、この後の手続きやスケジュールについての説明をしてもらった。



 それから、実を言うと、全員が合格することを見越して薬学教室の生徒を世界中から大量募集していたんだ。

 なので、今後はアリアとアイカを筆頭に十人の教師で薬学教室を運営して行く。



 それともう一つ。

 ボクは、この後すぐに、アリアにボクの居室に来てもらった。

 それもあって、リキスミアさんに面倒なことを押し付けて来たってのもあったんだ。


「トオル。用事って?」

「実は、アリアにお願いがあって」

「どんなお願い?」

「アリアは、ボクが前に薬を製造していた頃の売り上げとかも知っていたでしょ?」

「ええ、まあ」

「その辺のところも全部分かっているし、情報漏洩もしない」

「まあ、仕事上の秘密は守らないとイケナイって気持ちはあるから」

「なのでボクは、アリアのことを凄く信頼している」

「あ……ありがとう」

「それでね。アリアには、化学教師だけじゃなくて、是非ボクの秘書も兼務してもらいたいんだ」

「でも、一月後に生徒が一気に増えるんでしょ? 教師の仕事が疎かにならないか心配だけど?」

「それなら大丈夫。前回不合格だった八人を、今日、再テストしてね。全員合格したよ」

「じゃあ、教師は全員で十人になるってこと?」

「そう言うこと。秘書としての給与もちゃんと出るから」

「分かった。じゃあ、引き受ける」


 ありがとう!

 引き受けてもらえて助かった。


 これからも、ボクは変な出張が入ったりするだろうしね。

 なので、ボクのスケジュールとか、ボクの方で行う製造のタイミングとか製造量とかをアリアの方で管理してもらえると助かるよ。



 それにさ。本音を言うと、アリアには教師としての給料にプラスして秘書の給料も出したいんだ。

 要は、理由を付けて給料をアップさせたかったんだ。


 ずっと仲良くして来てもらった親友だし、仕事の上でも信頼できるしね。

 さすがに、そこまではアリアには言わなかったけどね。



 それから一か月後、薬学教室には新入生が入学した。

 先に入学した娘達の10か月遅れでの入学だけど、先に入学していた娘達は、この日から二年生ってことにした。


 立ち上げの一年目だけ、ちょっとイレギュラーってことで、今年からは、この時期に進級、入学をするってことにしたよ。


 アリアとアイカには、そのまま二年生を担当してもらって、残る八人には新入生を分担して担当してもらう。



 そうそう。新入生のために、薬学教室の寮も拡張したよ。

 何せ、世界中から生徒を募集したからね。この星の反対側から通うのなんか絶対にムリだもんね。



 そんな中、

「トオル」

 居室にいたボクのところに秘書のアリアが来た。


「どうかしたの? アリア?」

「中央大陸からお客さん」


 これって、なんだかイヤな予感がするな。

 十中八九、出張依頼な気がする。

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