44:愛人希望!
倉庫に着くと、ボクは早速、
「出ろ! 連発!」
お通じの薬の製造を開始した。
昨日の続きだ。
五百ミリグラム錠が百二十錠入ったヤツを、十本×十本の十五段重ねで、しかも縦横三列ずつの合計九列。
これを五~六秒に一回作り出す。
一分間に十三万五千本。このペースで約四十分間の連続製造を行い、約一か月分に当たる五百万本を製造した。
昨日のを1ロット目とすると、これが2ロット目になる。
一先ず、ここで休憩。
ボクの隣では、ミサがorz状態になっていた。
そのさらに隣では、ロンドが茫然とした顔で完全に動きが止まっていたよ。
ボクは、女神様から頂いたペンダントを握り締めて、
「出ろ!」
清涼飲料水を三本出した。
「ミサもロンドも飲む?」
「「……」」
無反応。
多分、何も聞こえていないんだろうな。
「じゃあ、ここに置いておくよ」
「「……」」
ボクは、彼女達の分を床に置くと、3ロット目の製造を開始した。
とにかく時間が惜しいからね。
「出ろ! 連発!」
再び毎分十三万五千本のペースでお通じの薬が作りされていった。
とにかく、昨日の分と合わせて半年分作りたい。
なので、あと四ヶ月分だ。
そして、3ロット目となる五百万本の製造が終了した時、ミサから、
「凄過ぎるんだけど……。これって、私達が製造する意味って無くない?」
との発言が……。
「ボクがいなくても製造できるようにすることが大事なんだってば。だから、ミサ達の製造は絶対に必要だよ! それに、次の世代の人達の希望になるんだから!」
「でも、こんなの見せられたら自信無くすってば。それから思ったんだけど、私達が六人で製造する分が一カ月必要量の百分の一でしょ。ってことは、トオルは一人で全部作ってたってわけで。だとすると、私達の給料の六人分の百倍以上取ってたってことよね?」
うーん。これには答え難いな。
まあ、その通りなんだけど。
「それに、もう一つ。トオルが製造していた時って、トオル一人の会社だったから売り上げが全部トオルのお小遣いよね?」
「別に、お小遣いってわけじゃ……」
「でも、全部トオルの収入でしょ?」
「まあ……ね」
「ってことは、トオルっていくら稼いでいたのって思ったわけ。まあ、それだけ稼いでいたら、たしかに化学の教育とか工場設立とかって話が出ても、トオルの遺産だけで十分お釣りがくるわけよね。なんか、もう働くの辞めてトオルのお嫁さんになりたくなっちゃったわよ」
「辞められちゃ困るよ。ボクがいなくても薬が作れるシステムを構築することが目標なんだからさ」
「じゃあ、働くのを辞めないけどトオルのお嫁さんになる……ってダメか。王太子様の婚約者だもんね。こうなるって分かっていたら、王太子様が手を出す前に私が手籠めにしておけば良かったわ」
「あのね……」
まあ、ミサだったら手を出されてもOKだったけどね。
勿論、アクティスとの婚約話が出る前の話だけど。
「でも、正直、私達が働く意義を見失うレベルだってことだけは確かよ。だから、絶対に他の人達には見せないようにしてよね?」
「分かった」
「で、あとどれくらい作るの?」
「お通じの薬は、あと三ヶ月分。その後、お昼を挟んで別の倉庫にも行こうかなって思っているんだけど……」
「どれだけ作るつもり?」
「あと追加で一年分くらいかな。倉庫内は劣化防止の魔法がかけられているから作り置きしても問題無いから」
「でも、そんなに作られたら、私達の存在意義が益々無くなる気がするんだけど?」
そう思う気も分からなくも無いけど……。
でも、ミサ達の存在意義が無くなるってことだけは無いよ。
薬作りが、ボクの手から離れても大丈夫だってことを証明する第一号だからね。人々にとって大きな希望になるはずなんだ。
「飽くまでも、不測の事態のためだってば。基本的には使わないストックってことになるんじゃないかな?」
「でも、トオルがいる限り不測の事態自体が起こり得ない気がするけどね」
「分からないよ。ボクだって、何時魔法が使えなくなるかもしれないって思うこともあるからね」
「そうなの?」
「他にも、ドロセラ国としてはボクが他国に拉致されることを警戒しているし」
「たしかに、トオルが拉致されたら薬が手に入らなくなるかも」
「それに、ボクは一度消滅しているしね」
「それは、たしかにそうだけど……」
「つまり、物事は永続的じゃないってことだよ。じゃあ、次のロットの製造に入るね」
「うん。じゃあ、私達は見学してる。あと、午前中の作業が終わったら、お昼はトオルの店の方で食べられるかな? 午後も見学したいから」
「分かった」
と言うわけで、ボクは、この後さらに千五百万本のお通じの薬を作り上げた。
そして、ここで一旦作業を区切って、ボクの店の方に三人で移動したんだけど、実はミサもロンドもお弁当を用意していないんだよね。
多分、最初からボクに出してもらうつもりでいたんだろうけど。
意外と……いや、ミサの場合は意外じゃないな。
結構図々しい。
でも、まあイイか。
店の方は、置かれていた薬を全部運び出したから殺風景な空間になっていた。
そこに、
「お願い。出て!」
ボクは女神様から頂いたペンダントにお願いしてテーブルと椅子を出してもらった。
多分、これからは、ここでミサやアリア達とお食事会が頻繁に行われるようになるんだろうなぁ。
まあ、その準備も兼ねてってことで大きなテーブルにした。
さらにテーブルの上には、ボクの趣味で中華料理を中心に料理を出した。
勿論、この料理も女神様から頂いたペンダントにお願いして出してもらったものだよ。
今日の気分は担々麺。
それからチャーハンに餃子。
かきたまスープも付けた。
そうしたら、ミサから、
「肉が欲しい!」
って言われたし、ロンドからは、
「野菜が不足しています」
って言われたよ。
仕方が無いなぁ。
なので、
「お願い。出て!」
ボクは再び女神様から頂いたペンダントにお願いして肉野菜炒めを出してもらった。
「ところで、トオルって『トオル製薬』の中でどんな立場になるの?」
こう聞いて来たのはミサ。
「顧問とか会長とかかな? 今、社長はマイトナー侯爵になっているって聞いたけど、ボクの正式なポストは無いよ」
「でも、元々トオルの会社でしょ?」
「会社って言うほどのモノじゃないよ。個人でやっていた製造業だね。でも、今後は製造に関与しなくちゃならないから、何らかのポストは依頼されるだろうね」
「じゃあ、もの凄い高収入が期待できるわよね? なら、トオルのお嫁さんはムリでも愛人になろうかな?」
「考えとく」
ボクは、見た目、平然とそう答えたけど、内心はドキドキだったよ。
もしボクが今の姿じゃなくて、男としてこの世界に転生していたなら、喜んでミサをお嫁さんにするもん。
でも、女性ばかりのこの世界なら、女性同士ってのもアリだっけ。
とは言っても、ミサを愛人にしたらアクティスが怒らないかな?
うん、仕方が無いな。ここは、冗談だったってことで受け流そう。
午後は、先ず二つ目の倉庫……これを第二倉庫って呼ぶけど……その倉庫に行って、
「出ろ!」
ボクは、昨日の夕方から夜にかけてやったのと同じように鎮痛剤や風邪薬、整腸下痢止め、ED治療薬、早漏治療薬、湿疹・かぶれのクリーム、水虫の薬、鎮痛剤クリーム、滋養強壮剤等を作って行った。
ただ、お通じの薬だけはビンのサイズも大きいし、本数を作るのに時間がかかるので明日に回すことにした。
さらに三つ目の倉庫……第三倉庫ね……にも行き、お通じの薬以外のモノを大量に製造した。
翌日は、午前中は第二倉庫で、午後は第三倉庫で、ひたすらお通じの薬を作り続けた。
この第二、第三倉庫にある薬だけで約一年分になる。
これだけ作り置きできれば、ボクが出張だらけになっても何とかなるだろう。
さらにその次の日、ボクは女神様から頂いたペンダントにお願いして、自分の店の一階部分に大量に棚を出した。
そして、この間から作成している薬の構造式や薬効を記載した書類のファイルや、サンプル等を棚の中に収納して行った。
ボクが再びこの世界からいなくなっても、残された人達で何とか各種の薬を作って行けるようにって思いがあってね。
それで、これらの資料やサンプルを残すことに決めたんだ。
勿論、今すぐにボクが消滅する予定は無いよ。
って言うか、別にフィリフォーリア様から、いつ消滅するなんて言われたわけじゃない。
でも、さすがに百年後には死んでいるだろうからね。
それで、記憶が新しいうちに作って置こうって思ったんだよ。
二階部分はボクの部屋。
と言うか居室ね。
元々、ボクはここに住んでいたわけだし、ここはボクからマイトナー侯爵に相続された物件ってことになるけど、ボクがどう使おうと自由って、昨夜、マイトナー侯爵に言われたからね。
なので、ここをボクの仕事場にする。
一応、ベッドもここに置くことにした。
疲れて横になりたい時もあるからね。
別にミサとの愛の巣にしようとか考えているわけじゃ……、いや、ちょっと否定し切れる自信がないな。
それから、その翌週には、マイトナー侯爵の意向もあって、ボクはトオル製薬の会長の座に就任した。
ただ、会長って言っても、ボクが薬の大部分を作るわけだし、実際には実働部隊なんだけどね。
どっちかって言うと常時取締られ役って感じかな?




