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31:通し作業!

 一先ず、構造解析の部は、これで終了。

 でも、これで終わりじゃないよ。

 この五人にもミサと同じことをキチンとやってもらう。


「次に、物質創製魔法にチャレンジしていただきます」

「「「えっ?」」」

「みんな、構造決定魔法が使えたわけですから、魔力自体はあるってことです。今度は、それを物質創製に生かしてみましょう。先ず、エタノールの構造を頭の中で描いてください。勿論、分子模型のエタノールじゃなくて、さっきNMR信号から頭の中で掴んだ構造ですよ。その上で、このコップの中にエタノールが出るように念じてみてください」

「「「……」」」


 五人は、各自コップを両手で掴むと、目を閉じて集中した。

 そして、

「「「うーん!」」」

 何かが出てしまいそうなくらい必死な表情を浮かべた直後、コップの中には、何とか透明の液体が湧いて出て来た。


 ボクは、その液体を少量ずつ取って、それぞれ重クロロホルムの入った小さな容器に入れて、左右から両手でかざしてNMR信号をチェックした。

 大丈夫だ。全員、ちゃんとエタノールが作れていたよ。


「全員成功です。では、次に、さっきの鎮痛剤の構造式を思い浮かべて、この容器の中に出してください」


 みんな、目が点になっていたよ。

 いきなり、初日でここまでやらされるとは思っていなかったってことかな?

 でも、できてもらわなきゃ困る。


「お願いします」

「「「は……はい」」」


 五人はボクが渡したガラス容器を両手で掴むと、静かに目を閉じて集中した。

 やっぱり彼女達には使命感があるからね。やれるだけやってみようって気持ちが心の奥底にあるみたいだ。

 そして、数十秒かかったけど、全員、容器の中に粉状の個体を出すことに成功した。



 ボクは、再び、それらを重クロロホルムの入った小さな容器に少量取って溶かした。

 構造チェックするためだ。

 NMR信号を確認したところ、間違いなくボクのところで作っている鎮痛剤の有効成分だった。


「成功です」

「「「本当ですか?」」」

「はい。よくできました」


 これだけできる人が見つかると、本気で有難いよ。

 でも、みんな相当疲れたみたいだね。

 まあ、仕方ないか。


「五人共、ここで一旦休憩してください。次は、残りの六人ですが、この中で物質転送魔法を使える人はいますか?」


 すると、

「「はい……」」

 自信無さげに二人の女性が手を上げた。

 でも、いてくれて有難い。


 ただ、ふと思ったんだけど、この十二人には、予め女神フィリフォーリア様が能力を与えてくれていたのかも知れないね。

 余りにも出来過ぎているような気がするから。



 ボクは、その二人に、

「物質創製魔法は使えますか? ビンを作ってもらいたいんですけど」

 と聞いた。


「一応できます」

「私も、できると思います」

「じゃあ、この鎮痛剤用のビンと同じ空ビンを、各々五個ずつ、物質創製魔法で作ってください」

「「はい」」


 本当は、彼女達がNMR信号を魔法でキャッチできれば、原薬製造とビン作りを兼任できて効率良かったんだろうけど、敢えて女神様は二物も三物も与えなかったんだろうね。


 多分、今の彼女達にエタノールを出してって言っても、エタノールの分子模型とか、エタノールの構造式を描いた紙しか出てこないと思う。

 化合物単体として作り出すことは出来ないんじゃないかな?



 二人が物質創製魔法で、所望の空ビンを机の上に出してくれた。

 次にボクは、薬作りの魔法で、

「出ろ!」

 鎮痛剤の錠剤三百錠を教卓の上に出すと、

「これを、三十錠ずつ、それらの空ビンの中に魔法で物質移動してください」

 と、この二人に指示した。


「「えっ?」」

「チャレンジしてみてください」

「「は……はい……」」


 二人共、ビン詰め作業は想定外だったみたいだけどね。

 たしかに、この工程だけは、化学知識は不要だったかもしれないな。


 でも、薬づくりのメンバーだからね。

 知識がないよりはあった方がイイと思う。

 それに今後、NMR信号をキャッチできるようになるかも知れないしね。期待は薄いと思うけど……。



 二人が空ビンに次々と錠剤を魔法で入れて行った。

 まあまあのスピードだけど、本当は、もうちょっとスピードアップして欲しいところなんだよね。

 まあ、今日のところは仕方が無いか。



 さて、残る四人の適性チェックだ。

 これで全工程がフォローできるとイイけど……。

 まあ、そこは何とかなると信じよう。


「この中で防腐魔法が使える人はいますか?」

「はい」

「私も一応……」


 まるで狙った通りのように、二人の女性が手を上げてくれた。

 ってことは、残る二人は製剤化の適性があると言うことかな?

 そうなれば、薬を作るグループが二つ確保できる。


「では、さっき、こちらの二人がビン詰めしてくれたうちの二つに、敢えて異物を入れます。異物の入ったビンがどれかを魔法で当ててください」

「「えっ?」」

「そのビンを当ててもらい、その後に、防腐魔法をかけてもらいます」

「「は……はい……」」


 異物チェックは、二人とも想定外だったみたいだけど、これくらいは何とかやって欲しいなって思う。

 でないと、作業にかける人数がムダに増えるからね。



 ボクは、物質創製魔法で鎮痛剤の錠剤に似せた別の錠剤を二つのビンに入れた。そして、異物入り1ビンと異物無し4ビンを、二人の机の上にそれぞれ置いた。


 彼女達は、1ビンずつチェックして、

「これです」

「私の方は、これです」

 一先ず異物の入ったビンを当ててくれた。


「合っています。では、他のビンに防腐魔法をかけてください」

「「はい」」


 さらに、彼女達は、ボクの指示に従って他のビンに防腐魔法をかけてくれた。

 これで、最後の工程は大丈夫だろう。


 まあ、魔法で作る錠剤だから、基本的に異物は入らないはずだし、規格外のモノができるってこともないはずだけどね。

 なので、カビが生えたりしないように防腐魔法さえ、しっかりかけられればイイってのが本音だけど、まあ、異物チェックは念のため行ってもらうことにする。

 万が一のことがあるからね。



 と言うわけで最後の二人。

 もし、ボクの思った通り、女神フィリフォーリア様がメンバーを揃えておいてくれたのなら、この二人は間違いなく、この魔法が使えるはず!


「二人には製剤化を行ってもらいます」

「製剤化ですか?」

「そうです。ええと、出ろ!」


 ボクは、二人の机の上に、鎮痛剤の有効成分と、錠剤にするのに使っている数種類の賦形剤を物質創製魔法で出した。

 勿論、配合比に合わせて出したよ。

 この比率は、キチンと物質創製する側に教えておかないとイケナイね。


「これらを全て均一に混ぜて、これと同じ錠剤を作ってください」

「「えっ?」」

「これができないと、薬にならないんです。一錠あたり、有効成分は25ミリグラムになります。チャレンジしてください」

「「は……はい……」」


 これまた二人共、想定外の指示だったみたいだけど、取りあえず気合を入れて着手してくれた。

 やっぱり使命感があるからだろうね。



 二人が目を閉じて精神を集中した。

 すると、魔法でこれらの成分が全て空中に浮いた。

 まさしくサイコキネシス!

 じゃなくて魔法だってば。


 そして、それらは一か所にまとまって均一化されたかと思うと、次の瞬間、一気に沢山の錠剤に形状変化された。


「成功です。」

「本当ですか?」

「はい。では、ここで二つのグループに分かれてもらいます。ええと……」


 ボクは、ミサとロンドを敢えて別のグループにした。

 別に大した理由は無くて、単に自分の中でミサグループ、ロンドグループって呼びやすいからなんだけどね。



 1グループあたり、薬の成分を作る人、つまりNMR信号のチェックが出来た六人のうちの三人ずつを割り当て、あとは製剤の人、ビン詰めの人、検品・防腐の人を一人ずつ割り当てた。


 と言うわけで実習第二弾!

 今回は、パイロット製造だから三百グラムくらいでイイか。


「では、実際にみなさんの力だけで錠剤を作ってもらいます。今日は鎮痛剤を作ってみましょう。薬の成分を作るメンバー達は、ここに示したものを各グループともに記載された量だけ手分けして魔法で作り出してください。賦形剤を重溶媒に溶かしたものがこれです。それぞれ、さっきのラジオ波を発生させた魔法で構造を確認してください。ここに描かれた構造と同じモノになるはずです」


 ボクは各賦形剤を重クロロホルム等の重溶媒に溶かしたモノを各グループに渡した。

 すると、早速、それらの構造を化合物合成メンバー六人がチェックしてくれた。

 構造式は分かったっぽい。

 念のため、ボクは賦形剤の構造式を描いて、そのメンバー達に見せた。


「これで間違いないですよね?」

「「「は……はい」」」

「では、記載された重量比率に従って作り出してください。今回は、各グループで有効成分の量を三百グラムとします。一人百グラムずつです」

「「「はい」」」


 と言うわけで、各グループが自分達の机をくっつけて作業台に変えた。

 そして、先ず各グループで、それぞれ作り出す成分の分担を決めて、必要量の有効成分と賦形剤を作り出した。


 それが終わると、製剤化担当者が、有効成分と賦形剤を混ぜて均一にし、錠剤へと変えて行った。

 二十五ミリグラム錠なので、有効成分三百グラムなら、全部で一万二千錠の錠剤が出来上がる計算だ。


 さらに、ビン詰め担当者が必要量……各々四百本のガラスビンを木箱入りで重ねた状態で作り出し、出来上がった錠剤を三十錠ずつ魔法で詰めて行った。

 しかも、一ビンずつ取り出して詰めるのではなく、木箱に入ったままの状態で、魔法で物質転移させていった。


 そして、最後の担当者が検品・防腐魔法を施して完了。

 これも、一ビンずつやっていたら大変な作業になってしまうので、木箱に入った状態で一気にスキャンして行った。



 流れ作業とは言え、今回は初めてだったからね。

 全工程で二時間以上かかったよ。


 ボクがやれば、これくらいは数分で済むんだけどね。

 でも、各グループ四百本、合計八百本の商品が出来上がった。


「お疲れ様です。今日は、これで終了です。みなさんには、実際の生産を今後、お願いしたいと思います。ただ、商品は鎮痛剤だけではありません。他の種類もあります。それに、流通センターで働いている二人は良く分かっていると思いますが、一日で世界中に出荷される量を考えれば、これでは全然足りないと言うことは分かると思います」


 これを聞いて、ミサとロンドも含めて十二人全員の顔から血の気が引いていた。

 って言うか、ミサもロンドも、全世界的な流通量が頭から抜けてたってことかい!

 まあ、今日のところは仕方ないけど。

本当は、賦形剤には色々な物を使いますし、不斉点を有するものを使うこともあるのですが、ここでは済みませんがスルーしてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が常に明るく、全体的にほのぼのした印象を受けました。文章もライトで読みやすかったと思います。 転生の仕組みもおもしろいと感じました。 また、話のテンポも早いので、冗長になりがちな自分…
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