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28:薬用!

「こちらです」

 ボクは、侍女二人に連れられてルビダスの部屋の前室に通された。

 前室って言っても、かなり広い。十畳くらいのスペースがあるよ。

 さすが、第一王女。


「失礼します。ルビダス様。トオル様がいらっしゃいました」

 侍女に呼ばれて、奥からルビダスが出てきたんだけど、なんか表情が暗いなぁ。悪役系美人顔が台無しになっているよ。

 なんか、前にもこんなことあったような?


「トオルさん」

「どうかしたの?」

「前にもらった薬って出せない?」

「えっ?」

「ルテア町に泊まった時のヤツ」

「もしかして」

「なんか最近、頭皮が荒れていて」


 やっぱり、以前と同じ展開……。

 と言うわけで、

「出ろ!」

 ボクは取り急ぎ、ベタメタゾン吉草酸エステルとゲンタマイシン硫酸塩の配合剤ローションを出した。容器も前回と同じでプラスチック製ね。


「これでイイ?」

「そう、これ。ありがとう」

「あとね。ちょっと前の世界に戻って勉強してきたんだ」

「勉強?」

「うん。出ろ!」


 さらにボクは、薬用シャンプーと薬用リンスを出した。

 複数成分でも、ボクは含有成分の構造式がキチンと分かれば作り出すことができる。融通の利かない物質創製魔法だけどね。


 今回も容器はプラスチック性だけど、まあ、中味はボクが追加するってことで、多分、プラゴミは出ないと信じよう。


「これを使ってみて」

「これって?」

「薬用シャンプーと薬用リンス。頭を洗う時にこれを使ってみて。フケとか痒みとかが出にくくなるはずだから」

「本当?」

「うん。ルテア町でのこともあったからね。前の世界で、これの成分をキチンと覚えて来たんだよ」

「そうだったんだ。ありがとう」


 悪役顔でも、本気で喜んだ時の笑顔にはカワイイ雰囲気が溢れてくる。別に、ルビダスの中味は黒いってわけじゃないんだけどね。

 むしろ、優しい娘だってことはボクが良く知っているよ!



 そう言えば、有馬透時代に、大学の研究室の後輩で悪役顔の娘が一人いたな。

 目が細くて吊り上がっていて、妙に顔つきが怖かった。


 でも、それは別に怒っているとかガンを飛ばしているとか言うわけじゃなくて、ただ、そういう顔なだけなんだけどね。


 実際に話してみると、性格的にはカワイイ娘だったし。

 基本的には顔立ちも整っている方だったけど、でも、絶対に損をしているよなぁ。本人も悪役顔なのを気にしていたからね。

 今頃どうしているかな?



 その後、ボクは、少しルビダスと話し込んだ。

 昨日は全然、話す機会が無かったからね。アクティスとフルオリーネ女王陛下が優先だし、その後、すぐに侯爵家に行っちゃったからね。


 気が付くと二時間くらい経っていた。

 もうすぐ、お昼になる。


「昼食はどうします?」

 こう、ルビダスに聞かれたけど、

「ちょっと、流通センターの方に用があるんで、折角だけど、この辺で失礼するね」

 ボクは、ルビダスの御誘いを断ってお城を後にすることにした。お昼をいただくと、さらに二時間くらい居座ることになりそうだからね。



 別に、ルビダスと一緒にいるのがイヤってわけじゃないよ。むしろ、本当の妹みたいで可愛く感じているし。

 食後にパフェを出せって言われても、別に構わないし。


 でも、やっぱり、ボクの本来の仕事の様子が気になるからね。

 それで、そろそろ流通センターに戻りたかったんだ。



 お城を出ると、ボクはバイエッタさんの転移魔法で流通センターに送り届けてもらった。

 バイエッタさんには、そのまま侯爵家の御屋敷に戻っていただいたけどね。


 まあ、バイエッタさんに延々付き合ってもらうのも悪いし、ボクは、ここからなら店に設置された特殊ゲートで侯爵家に帰れるから、全然問題ないってことで。


「再びただいま」

「お帰りなさい」


 私を出迎えてくれたのはミサ。

 あれっ? アリアの姿が見当たらないけど?


「アリアは?」

「ちょっと調子が悪いって言って帰った。二日目だし」


 それで、今朝は一瞬辛そうな顔をしていたわけか。

 それを我慢して明るく振る舞っていたんだもんね。

 本当に強い娘だと思うよ。


「そ……そうなんだ。で、今朝アリアにも聞いたけど、足りない薬は?」

「まあ、アリアの言った通りね。基本的に自動供給されるから欠品は無いし、今のところ、特に問題ないんじゃないかな? あと、今朝、トオルが言っていたけど、トオルの家からの自動供給が終わるのって、あと一年くらい先よね?」

「うん」

「それまでトオルは休んでいても大丈夫だから」

「それは有難いよ」

「お昼は?」

「これから」

「じゃあ、一緒に食べない?」

「うん」


 と言うわけで、ボクとミサは、ボクの店の方に移動した。

 今では、一階部分は隅から隅まで薬の箱だらけで完全に物置状態になっているけど、一応、二階部分は物置状態と化している床面積は半分程度。

 なので、食事するには十分すぎるスペースがあるからね。


 ミサは持参したお弁当。

 ボクは、

「出ろ!」

 女神様からもらったペンダントで幕の内弁当を出した。このペンダントは、本当に便利なアイテムだ。



 これを見てミサは、

「食べ物も出せるんだ! ねえ、デザートにスウィーツをお願いしてイイ?」

 早速、想定内の反応を示してくれた。

 前にもパフェを四杯も食べていたもんね。

 そう言えば、このペンダントでモノを出せるって話は誰にもしていなかったな。


「じゃあ、食後にね」

「ありがとう! トオルが薬を魔法で作っていたことは、トオルがいなくなった後に王太子から聞いていたんだけどね」

「そうなんだ」

「そうそう。でね、ちょっと前にお城の人が来てね」

「流通センターに?」

「そう。一時間くらい前かな? イケメン王子の使いの人に、明後日、お城に来るようにって、私とロンドに通達があって」


 ロンドは、ボクやアリア、ミサと同年代で、流通センターで働いている娘ね。

 東の大陸の最東端に位置する小国ゲンリセアの担当者で、自国から発注された薬を確保するのが彼女の仕事になる。


「もしかして二人共、化学の講義を受けてくれたの?」

「ええ。アリアもマルシェもソナタも受けていたけどね」


 マルシェは、中央大陸のウトリキュウラリア王国から流通センターに派遣されてきた娘で、仕事内容はロンドと同じ。

 出身は、王都のリビダで、この流通センター立ち上げの時からいる。


 ただ、変に男好きでね。ボクにアクティスを一晩貸せとか言ってきたことがある、ちょっと困った感性を持った娘だよ。

 婚約者を貸せって、普通じゃないよね?



 それから、ソナタはボクと同じ西の大陸の人間だけど、ドロセラ王国が西の大陸の西端に位置しているのに対して、ソナタの出身地アルドロバンダ国は、西の大陸の東側に位置していた。

 勿論、ソナタの仕事もロンドやマルシェと同じね。


「みんな受けてくれていたんだ!」

「まあね。トオルが残してくれたものだって聞いて」

「ありがとう」

「ただ、マルシェだけは講義中に王子の下半身しか見ていなかった気がするけど」


 あの女……。

 まあ、なんとなく想像つくよ。


「で、アリアとマルシェとソナタは?」

「来るように言われたのは、私とロンドだけだったけど?」

「そうなんだ」

「何が行われるのか知ってる?」

「聞いてないの?」

「来てくれとしか言われてなくて」


 うーん。アクティスの方で意図的に目的を隠しているのかな?

 それとも、使いの人が説明できないだけ?

 でも、別に話しても問題無いよね?


「ええと、私の方で、ちょっとテストをね」

「テストぉ?」

「別にペーパーテストじゃないから。適正確認するだけだから」

「適正って?」

「魔法で薬を作るためだけど」

「えっ? 私、薬を作る力なんて無いよ?」


 拒絶とまでは言わないけど、結構驚いているなぁ。

 まあ、いきなりこう言われたら、誰だってこんな反応を示すよね?

 重度の中二病でない限り。


「一人で作るんじゃなくて、何人かで作業分担してやれないかって思っているんだけどね。特性ごとに分業して」

「でも、私にできるかなぁ?」

「それを明後日、確認するってこと。ボク以外にも薬を作れる人を確保して、それを次の世代にも伝えて行ってもらうんだ」

「次の世代って?」

「ボク達だって、いずれは死ぬでしょ。永遠に生きるわけじゃないからね。なので、ボク達がいなくなった後の世界に、この薬の文化を受け継いでもらいたいんだ。そのためには、先ずボク以外の人間でも……」

「えっ? トオルって人間だっけ?」

「人間だってば!」

「絶対に人外の何かだと思うけど」

「人間だよ!」

「(絶対に嘘だね!)」


 ミサが懐疑的な視線を送って来たよ。

 これは明らかにシリシスのせいだね。

 まあ、ここで否定しても話がループするだけだから、話を進めよう。


「で、ボク以外の人間でも薬を作れるようにして、それを次の世代に引き継げるようにしてもらうってこと」

「別にトオルから次の世代に直接引き継げばイイって気がするけど?」

「でも、ボク以外にも作れることを証明してもらうのも大事なんだ。それと、薬を作る側になれば収入も増えると思うし」

「それは、たしかにそうなんだろうけど……。でも、私、魔法、使えないし……」


 本人はそう言っているけど、ミサからは一応、魔力を感じるんだよね。

 厳密に言うと、六年前には全然、魔力を感じなかったんだけど、この六年間で開花したって感じかな?

 多分、本人は気付いていないんだろうけど。


「まあ、薬作りには、いくつか工程があるからね。その中の、どこかの工程に適性があるかを調べるわけ。もし、魔法が使えなくても化学知識を後世に伝える役目を果たすことは出来ると思うし」

「まあ、私自身、使い道があることを祈るわ。でも、どう? 私って適正ありそう?」

「うーん。じゃあ、これって、何をやっているか分かる?」


 ボクは、両手を前に出して右掌と左掌を二十センチくらい離して向き合わせると、右掌から電磁波……厳密に言うとラジオ波を発生させて、それを左掌でキャッチした。


 すると、ミサは、

「なんか、掌の間にエネルギーを感じるけど?」

 一応、何かがあるってことを感じ取ってくれていた。

 第一段階はクリアってとこかな?


「ラジオ波を出しているんだけどね」

「ラジオ波って?」

「ある種のエネルギー波だね。まあ、余り難しく考えないで。これと同じことが出来る?」

「自信は無いけど……」


 見よう見まねで、ミサはボクと同じように右掌と左掌を向き合わせた。

 そして、

「うーん」

 気合を入れたわけだけど、ミサの悪役顔が一段と怖くなっているよ。さすがに、これは他人には見せられないね。



 でも、間違いない。

 ミサの右掌から左掌に向けて、ラジオ波が放たれている。


 早速、第一号発見だ!

 でも、ここからが本番なんだ。本当の意味で分子をイメージさせるためにね。

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