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26:復活!

 六年ぶりに、ボクは、女神フィリフォーリア様の元へと連れて来られた。

 この時のフィリフォーリア様は、人型をしていなかった。ボクに地球への出向命令を出された時と同じで光の球体だったんだ。


 それでも、放たれるオーラと言うかエネルギー波から、この球体がフィリフォーリア様であることは、言われなくても分かるんだけどね。


「お帰りなさいトオル」

「ただいま戻りました。お久しぶりです」

「この六年間で、課題はクリアできたようですね」

「自信はありませんけど」

「十分、問題ないと判断しています。アイテムボックスもステータス画面の装備も、前回と全て同じにします。基本的に、魔法のスペックも前回と同様です」

「ありがとうございます」

「ただ、電磁波関連の魔法だけは強化します。意味は分かっていますね?」

「はい。そのためにボクは研究出向していたのですから」

「では、イットリア山に急行してもらいます。身体の年齢は、こっちの世界から地球に向かった時と同じに設定しています」

「では、19歳ですか?」

「そうです。では、シリシス。お願いします」


 そう言われた次の瞬間、ボクの視界は真っ暗になった。

 前回、転生した時と同じような感覚だよ、これ。


 フィリフォーリア様は、今回は、ゆっくりとお話をする時間もないみたいだった。

 完全に事務的な連絡だけで終わったって感じだもん。


 本当は、マジで忙しいんだろうね。

 なんてったって、この世界を統べる本家本元の女神様だもんね。



 気が付くと、ボクはイットリア山の裏の森の中で横たわっていた。

 ボクが身体を起こすとシリシスが、

「では、これから演出をさせてもらいますよ」

 と言ってボクの身体を宙に浮かせた。


 その直後、突然、ボクの目の前の風景が森の中から雲の上に変わった。

 シリシスお得意の瞬間移動が発動したんだ。

 しかも、シリシスがボクの身体の中に入って、ボクの動きを完全にコントロールしていた。拘束具で完全に全身の自由が奪われているみたいな感覚だったよ。


 加えて、ボクの背中には白い一対の大きな翼が生えていた。

 傍目には、天から遣わされた者みたいに見えるんじゃないかな?



 これって、ボクが前にこの世界から消えた日に、シリシスに身体を乗っ取られた時とほとんど同じパターンだよね?


 また、勝手なことを口走ったりしないよね?

 ちょっと心配だな。



 イットリア山は、標高千二百メートルくらいの山で、一応、この山の山頂が雲で覆い隠されることは、たまにある。

 ただ、今日は曇り空だけど、山頂を隠すほど低い雲ではなかった。

 山頂よりも、さらに数百メートル上空に層積雲が敷き詰められていた感じだ。


 ボクは、その層積雲のさらに上空に浮かんでいた。

 完全にボクの意志とは無関係にね。



 丁度、ボクがいる真下のところに雲の裂け目が出来た。

 多分、雲の下では、この裂け目からお日様の光が射していることだろう。

 シリシスらしい演出だなぁ。

 ボクの身体は、その裂け目を通って、ゆっくりと地上に降りて行ったんだ。



 しかも、降り立つであろう場所は、計算されたかのように山頂。

 完全に神々しい何かの降臨みたいになっているよ!


 それから、山頂で何かが光っていた。

 よく見ると、それはボクがアクティスに渡したダイヤモンドだけど、何故ここに?

 あと、たくさんの人が来ているみたいだけど?



 ボクが地に降り立った、丁度その時だった。

「トオル!」

 ボクのことを呼ぶ懐かしい声が聞こえて来た。

 そこには、この国の王太子であるアクティスの姿があった。


 その後には、フルオリーネ女王陛下、マイトナー侯爵、それからアクティスの妹のルビダス姫とベリル姫の姿もあった。



 アダンの町の人達も大勢来ていたよ。

 親友のアリアとミサ、それから美魔女薬屋店主達にシュライバーさん、アダン町にある流通センターのみんなまで。


 わざわざボクを迎えに来てくれたってこと?

 ても、何で?

 すると、ボクの頭の中にシリシスの声が聞こえて来た。


「(今日、トオルが復活することをアクティス王子には事前に伝えておきました)」

「(他の人達は?)」

「(伝えていませんよ。多分、アクティス王子が周りに声をかけたのでしょう。トオルが帰ってくるって。それと、ダイヤモンドは、トオルの身体になるものと信じられていますので、それでわざわざ山頂に置かれていたようです)」


 なるほど、そう言うことか。

 でも、ダイヤモンドの件は、本当に誤解させたみたいだね。



 数秒後、ようやくボクは自分で自分の身体を動かせるようになった。まるで、拘束具から解放されたみたいにね。

 やっと、シリシスがボクの身体から抜け出たのだろう。


 これと同時に、ボクの背中から白くて大きな翼が消えたけど……、これって、やっぱり周りから御使いか何かに勘違いされるってパターンだよなぁ。


 もっとも、ボクが前にこの世界から消えた時にも背中に翼を生やした演出をシリシスがしてくれたからね。

 既にボクは人外認定されていると思うけど。


「トオル、お帰り」

「ただいま」

「本当に……本当に良かった! 会いたかった!」


 そう言うと、アクティスはボクを思いきり抱き締めて、その勢いで、そのまま濃厚なキスを……って人だかりの前でやるんじゃないよ!

 そりゃあ、一応、ボクは、彼の婚約者ってことになっているけどさ。

 ルビダスとベリルは、微笑ましい表情でこっちを見ているし。



 一旦、ボクはアクティスに向けて全力で電撃を放った。

 つまりは、

『とりあえず、放してもらえないかなぁ』

 ってことだよ。


 ただ、ボクの電撃魔法はショボくてね。

 大したレベルじゃないんだ。

 なので、全力で放ったところで、一瞬、静電気に触れた程度でしかない。


 とは言え、これを受けてアクティスも驚いたんだろうね。

 さすがにボクのことを放してくれたよ。


 一先ず、周りに聞かれない程度の声量でボクは、

「こんなに大勢の前でする趣味は無いですよ、王子」

 と言った。


 すると、

「俺を最後に押し倒した上に襲ったのは誰だっけ?」

 って反撃されたよ。

 クソッ!

 ヤラれて喜んでいたくせに!


「イイじゃないですか。あの時は、もう本当に最期だって思っていましたから。そうそう、このダイヤモンドは、別にボクの身体じゃないですよ!」


 そう言いながら、ボクはダイヤモンドを拾い上げ、アクティスに渡した。

 改めて見ると、たしかに我ながら伝説級のダイヤモンドを作ったものだ。誤解させて当たり前のレベルかも知れない。


「たしかに、このダイヤモンドが、そのままの状態であるってことは、コイツはトオルの身体ではないってことだな」

「あの後、女神様に怒られたんですからね。この巨大なダイヤモンドにボクの魂が宿っていたって勘違いして、王太子がダイヤモンドに向かって生涯独身を誓ったじゃないか。なんてことしたんだって」

「知っていたのか?」

「まあ、嫌な気はしませんでしたけどね」

「じゃあ、このダイヤモンドは、いったい?」

「前回、この世界に来た日に、試しに作ってみたんです」

「マジ?」

「言っておりませんでしたけど、ボクは構造式が分かれば、その物質を作り出すことが出来るんです。だから、薬も作れるわけですし」

「初めて知った。薬だけじゃなかったんだ! でも、ダイヤモンドの構造を知っているとは恐れ入った」

「まあ、ダイヤモンドの構造は、前の世界では有名でしたから。でも、ここだけの話にしておいてください。とんでもないダイヤモンドを作れって言い出す人が出てきますから」

「まあ、確実だな」


 そう言いながら、何気にアクティスの視線はルビダスの方に向けられていた。

 別にルビダスはムチャクチャ強欲ってわけじゃないけど、基本的に女性だからね。

 宝石類は好きな方。


 前に、ルテア町でコレラみたいな細菌性感染症の治療をしたことがあったけど、その後に、ルビダスにプレゼントをねだられてさ。

 結局ルビーの指輪を買ってあげたってことがあったもんね。


 まあ、生まれながらにお姫様だからね。

 宝石類が普通に手に入って当たり前って感覚は持っているっぽい。

 金銭感覚も、一般人とはかけ離れているし。



 それに、ルビダスは変なところでチャレンジャーなんだよ。

 だから、

『どこまで大きなダイヤモンドが出来るかチャレンジして!』

 とか、

『ダイヤモンドの家ってできない?』

 とか悪気無く平気で言い出しそうなんだよね。


「でも、そう言うことなら、このダイヤモンドは、トオルの前の身体だったことにしておいてくれ。でないと、ルビダスをはじめ、みんな何を言い出すか分からん」

「そこは仕方がないですね。了承しました」


 たしかに、ルビダスだけじゃないか。ダイヤモンドが出せるとなると、みんなの目の色が変わりかねない。

 ここは、嘘も方便と言うことにしておこう。



 まあ、一先ず、それは置いといて。

 そんなことより、みんなに挨拶をしなくちゃ!


「わざわざ、こんなところまでご足労いただいてありがとうございます。また、今日からよろしくお願いします!」

 そう言って、ボクはみんなに向かって深々と頭を下げた。


 続いてボクは、アクティスと一緒にフルオリーネ女王陛下のところへと向かった。

 隣にはマイトナー侯爵の姿もある。


「ご心配をおかけしました。ただいま戻りました」

「本当に、何で消えちゃったのよ?」


 こう聞いて来たのはマイトナー侯爵。

 彼女は、一応、ボクの養母なんだよね。

 だから、ボクは侯爵家の娘ってことになっているんだっけ。


「それが、女神フィリフォーリア様の御意向でしたので。あの時のボクの身体は、病にかからない特別製でした。そのため、病人だらけのところに行っても問題無かった半面、全員がかからなければならなかった六年前の伝染病にかかることができなかったんです。それで、その時の身体を回収して作り直してもらう必要があったんです」

「それで、前の身体だったダイヤモンドの中には入らなかったってことね?」


 こう聞いて来たのはフルオリーネ女王陛下。

 一先ずボクは、

「そのようです」

 と言って誤魔化しておいた。ダイヤモンドが出せることを隠す以上、この嘘は仕方がないんだけど、やっぱり罪悪感がある。

 ゴメンなさい、女王陛下!


「じゃあ、今の身体なら世継ぎの男の子も産めるってこと?」

 うーん……。


 やっぱり女王陛下の中では、ボクが次の王太子を産む設定になっているよ。

 まあ、アクティスの婚約者である以上、そう思われるのは当たり前なんだろうけど。


「多分……、そうだと思います」

「良かったわねぇ」


 でも、正直なところ子供を産める自信はないなぁ。

 そもそも、この身体はボクの理想とする女性の身体だからね。

 つまり、中に出しても妊娠しないって言うボクの身勝手な設定が生きている可能性が高いんだ。

 なので、男の子を産めるかどうか以前に、妊娠できるかどうかが問題なんだよ。


 …

 …

 …


 って、何でボクは、ボクが妊娠する設定の話をしているんだ?

 しかも、完全に相手は……まあ、イイか。


「あと、もう一度、前にいた世界に飛んで勉強してくるように女神様から命じられたんです。この世界の発展のために」

「そうだったの。でも、本当に生きて帰って来たのね」


 マイトナー侯爵もフルオリーネ女王陛下も、本当に喜んでくださっている。

 有難いよ。



 ボクは、もう一度この世界のために生きる。

 地球で、記憶を失ったボクの面倒を見てくださった遠野一家には、本当に申し訳ないけどね。


 死後の世界で、改めて遠野一家にお礼を言わないといけないね。

 何十年も先の話になると思うけど……、多分……。

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