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20:こんな力も持っていたんだ!

 世界規模での販売を始めて二年が経過した。

 この世界に来て既に三年数か月。ボクは記録上では19歳になっていた。


 ボクの体型は全然変わっていない。

 暴飲暴食しても問題ない。

 ボクが理想としていた女性の姿を、どんなことがあっても、ずっと維持できるってことなんだろうね。

 有難い身体だよ。



 そろそろアクティスと結婚しろってアチコチからうるさく言われる今日この頃だ。

 結婚するつもりは無いんだけどなぁ。


 そもそも女神様の端末からは、結婚しないって回答を貰っているし、このまま破局するはずなんだけどなぁ。

 いったい何時まで、婚約者でいなきゃいけないんだろう?



 まさか、女神様が嘘をついているってことは無いよね?

 でも、破局すると、それはそれでアクティスが可哀想でね。

 ボクは家に引き篭もって時間が過ぎるのを待てばイイけどさ、アクティスは王子である以上、人前から逃げるわけには行かないからなぁ。


 でも、破局したらマイトナー侯爵にも迷惑がかかるか。

 やっぱり結婚しなきゃいけないのかな?

 最近、そんなことを考えることが多い。



 流通の方は、たまにトラブルが起こるけど、だいたい安定している。

 地球よりも圧倒的に速いね。

 さすが魔法が使われているだけのことはあるよ。

 海外からの輸入だと、地球では平気で一週間くらいかかるからね。


 一週間じゃ届かないこともあるって?

 そうなんだよね。


 ボクは個人輸入の経験は無いけどさ。

 食虫植物を趣味にしていた友人が植物の個人輸入をしていたんで、結構時間がかかるって聞いたことがあるよ。



 そうそう。去年、女王陛下が女児を出産されたんだ。ドロセラ王国のフルオリーネ・ウッドワード女王陛下ね。

 女児の名前はスティビア。


 姫様の名前は、上から順にルビダス、ベリル、スティビアだね。

 ルビダスは、地球では『暗赤色』の意味で、ルビジウムの語源。

 知らないって?

 でも、ルビーなら、みんな知っているよね?

 なので、赤を示すって言葉だってイメージはしやすいと思う。


 次のベリルは『緑柱石』の意味で、ベリリウムの語源。

 そう言えば、緑柱石って見たことが無いな。

 あとで出してみよう。


 それから今回のスティビアだけど、もしかして『stibium』……アンチモンから取ったんじゃないよね?

 アンチモンの炎色反応って淡青色じゃなかったかな?

 赤、緑、青って光の三原色かい?

 多分、偶然だよね?

 ゴメン、ちょっと知ったかぶりしてみた。



 この日、ボクはアクティスの依頼で隣国のディオネア王国に来ていた。

 激しい腹痛で、ボクの薬を飲んでも全然効かないらしい。


 ディオネア王国って、一応、ボクの故郷って設定なんだよね。

 だけど、来るのは初めてだ。そんなこと、口が裂けても言えないや。



 連れて来られたのはトリフィオ市。

 ボクの故郷に設定されたファリャ村から比較的近いところだ。


 何か突っ込まれたら困るな。

 トリフィオ市のこともファリャ村のことも、ボクは全然知らないからね。



 今回は、アクティスが同行していた。

 ボクの出張の際には、ボクが拉致されたりしないように必ず誰かが同行することになっている。


 ただ、アクティスも他国の女性達のターゲットになっているんだよ。

 その自覚を持って欲しいな、この男には。

 仮にもボクの婚約者だからね。寝取られたら嫌だからね!

 そりゃぁ、女神様の端末の答えでは、ボクは、いずれアクティスの婚約者じゃなくなるはずだけどさ……。



 患者はディオネア王国のジジム子爵。

 子爵って言うとバイルシュタイン子爵を思い出す。ジジム子爵がバイルシュタイン子爵みたいな人じゃないことを祈るよ、うん。

 結局、その辺はボクの取り越し苦労……って言うか、全然問題ない人だったけどね。


 ジジム子爵に、お腹を診せてもらった。

「あれっ? マジ?」

 この時、ボクは精神集中すると病変部位が見えてくることを初めて知った。


 ボクは、この世界にある魔法のうち、預言魔法以外は全て使える。大抵はショボいレベルだけどね。

 ただ、病変部位を見つける魔法は、一応、一人前に使えたようだ。


 今まで、こんな魔法があるなんて知らなかったし気にもしていなかったから、これが使えるって知って、自分自身でもマジで驚いたよ。

 このことを、もっと早く知っていたら、ボクは、もっと人々の役に立てていたような気がする。



 実は、子爵は胃に癌細胞があった。

 たしかに、これじゃボクの薬は効かないよ。

 ボクの鎮痛剤は、一応、癌性疼痛にも多少は効くだろうけど、完全に痛みを取り除けるとは思えない。

 それ以前にボクの薬は、抗癌剤じゃないからね。


「では、横になってください。これから、患部を取り除きます」

 ボクは転移魔法を使って、急いで癌細胞を子爵の身体から取り出した。自分自身が転移するわけじゃないから物質転移魔法って言う方が正しいのかな?


 まあ、それはともかくとして、これで子爵は随分楽になったみたいだ。

 それから、ボクは子爵の身体を、頭から足の先まで改めて診断魔法でスキャンした。

 今のところ、転移は無さそうだ。これで一安心だね。



 転移魔法だけだったら、ボクよりも優れた人はいる。

 診断魔法も、ボク以外に使える人は一応いるだろう。

 でも、女神様の端末……チャットボットで確認した限り、両方使える人って、基本的にいないみたいだ。


 いたら、腫瘍限定かも知れないけど、治癒魔法が使えることになってしまう。そうなると、この世界には治癒魔法が存在しないって定義に反してしまう。

 それで、今のところは、敢えて両方を同時に与えないようにしているらしい。

 なので、この摘出魔法は、ボクだけに与えられた特殊能力ってことになるみたいだ。


 転移魔法で取り出した病片を見て、アクティスは驚いていたよ。

「なにこれ? キモ悪!」

 だってさ。



 その日の夜のことだ。

 ボクは、倉庫兼製造場所のボクの店で仮眠を取るつもりだったんだけど、まともに寝入ってしまった。

 それで、夜になってもマイトナー侯爵の家に帰らなかったんだ。


 でも、転移ゲートで侯爵家から一瞬で来れる場所だからね。

 マイトナー侯爵も、ボクが店で寝ているのを従者に確認させていたらしくて、ボクのことは放置してくれていたらしい。



 この時、ボクは夢を見ていた。

 相手の姿は、人型だけど陰になっていて良く見えない。


 ただ、雰囲気から何者かは分かっている。

 このお方は、ボクを異世界間出張させた張本人だ。


「時は来ました」

 その張本人……女神様の声だ。


 ボクは思わず、

「えっ?」

 と声を出した。

 勿論、夢の中でだけど。


「既にアナタは、薬師としての知名度と世界各国への迅速な流通ルートを確保しました。これより、200年前の後始末を始めてもらいます」


 ボクは、女神様にこう言われると、目を覚ました。

 それにしても、後始末って何?

 200年前のことって言うと、二つの奇病が発生した頃だよね。

 ってことは、多分、これらの奇病に関係する何かだってことだ。


 そう思った直後、ボクの脳裏に200年前の出来事がフラッシュバックした。

 今まで女神様が伏せていた、ボクの記憶が全て甦ったんだ。

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