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閑話5:薬用シャンプーが欲しい!

 イビセラ国ルテア町でコレラみたいな感染症が蔓延した時のことだ。

 現地に飛んだボク達は、日中作業……消毒とか薬剤配布とかを終えて、ジゼル町長が押さえておいてくれたホテルへと向かった。


 一応、ボクは侯爵令嬢ってことになっているし、同伴者のルビダスは王女様だし、ジゼル町長としても、実は相当なプレッシャーがかかっていたんじゃないかなって思った。

 多分だけど、ルビダスだけじゃなくてボクも贅沢な暮らしが板についているお嬢様って思われていただろうからね。貴族ってことで。


 それで、失礼の無いようにイイ部屋を確保しなきゃってなったんだろうなぁ。

 本当のところは、まあ、マジお姫様のルビダスはともかく、ボク自身は感性が完全に平民だから、泊まれれば何だって良かったんだけどね。

 でも、ジゼル町長にも立場ってものがあるもんね。



 彼女が用意しておいてくれたのは、町で一番大きなホテル……って、ホテルは一つしかないんだけど、そこのスウィートルームだったよ。

 さすがに、スウィートルームに泊まるなんて、前世じゃあり得ない話だったなぁ。


 一応、ボクとルビダスは別室だった。

 別に姉妹ってわけでもないし、いくら婚約者の妹とは言え、他人だからね。ここは別室にするのが普通なんだろうね。


 宿泊料は、当然の如く無料。

 依頼されて、ワザワザここに来ているんだから、その辺は宜しくお願いしたいところだ。まあ、宜しくなっているからイイんだけどね。



 でも、正直、この床面積は、贅沢だなって思ったよ。

 ルビダスの方には転移魔法使い兼世話係のルイージさんが一緒に泊まったけど、ボクは、この広い部屋に一人だもんね。


 まあ、ムダに空間を持て余していた。

 マジでボクの方は、もっと安くて狭い部屋でも良かったのにって改めて思ったよ。

 それこそ、ビジネスホテルくらいの面積で十分なんだけどなぁ。

 むしろ、それくらいの方が、たまには落ち着くかも。平民感覚のくせに、普段住んでいる家が広いからね。



 宿泊して三日目のことだった。

 今日の夕食はサラダとスープとパンとステーキ。

 十分贅沢だと思うけど、ホテル側としては、

「罹患した従業員も多くて、人手が足りず、ディナーも今一つで申し訳ございません」

 自分達の仕事に納得できていない様子だった。


 相手が上客って認識だろうし、本当は、もっと豪華絢爛な料理を出してやろうって気持ちもあったんだろうね。

 そりゃあ、あの感染症に罹患した従業員は休ませるしかないからね。ムリに連れて来て働かせたら、その従業員から感染拡大しかねない。



 夕食を終えて部屋に戻ろうとした、まさにその時、

「トオルさん、ちょっと相談があるですけど」

 とルビダスに耳打ちされた。


「どうかしたの?」

「ええ、ちょっと……。部屋まで来てもらえます?」


 人前では大きな声で言えない内容なのか、それとも恥ずかしいのか、まともに声に出して言えない様子だ。


「別にイイケド……」

 それで、ボクは、食堂を出ると、そのままルビダス達の部屋に入った。



 いったい、どうしたのかと思ったんだけど。そうしたら、ルビダスから、

「トオルさん。頭が痒くて」

 と突然、自覚症状の訴えがあった。


「えっ?」

「ここに泊まるようになってから、痒くなったの」

「ルビダスだけ?」

「はい。私だけで、ルイージは何ともないから、虫が付いたとか言うわけじゃないと思うけど……。水が合わないのかしら? 何かイイ方法ありません?」

「えーと、じゃあ」


 早速、ボクは女神様から頂いたペンダントを握り締めて、

「薬用シャンプー&薬用リンス、出ろ!」

 と唱えたんだけど、何も出てこなかった。

 何でだろ?

 シャンプーとリンスだよ! 生活必需品じゃないの?


 すると、ボクをこの世界に連れてきた御使い様の声が聞こえて来た。

「単にシャンプーとリンスと言われれば生活必需品として認めますが、薬用である必要はありません。ですので、今回のは認められません」


 つまり、何らかの付加価値が付いた贅沢品はダメってこと?

 いやいやいや。普通にパフェとかも出していたでしょ!


 それこそ、アクティスにプレゼントした反射式天体望遠鏡が認められて、どうしてルビダス用の薬用シャンプーと薬用リンスが認められないのさ?

 ちょっと納得できないなぁ。


 もしかして、御使い様はイケメン男子が好きで、見た目が悪役王女のルビダスは却下ってことなのかな?

 良く分からないけど。



 そうボクが思った直後、再び御使い様の声が聞こえて来た。

「アクティス王子は、トオルの薬を全世界に販売展開するためのキーパーソンとなる予定でした。事実そうなっています。なので、特例を認めたのです。トオルも彼にはお礼を考えておいたほうが良いでしょう」


 つまり、アクティスには望遠鏡を与えたんだから、キチンと働けと。

 それから、ボクにも何かプレゼントを考えておけと。

 平たく言えば、そう言うことか。



 でも、薬用シャンプー&リンスが出せないとなると、何か別の方法を考えないとね。

 たしかに、よく見ると意外とフケが出ているなぁ。

 これじゃあ、ツンデレ風美人が台無しだよ。

 ある意味、幻滅してしまう。

 なんとかしてあげないと。

 かと言って、ボクは医者じゃないから診断は出来ないし。



 と言うわけで、ボクはステータス画面のチャットボット機能を使うことにした。きっと何か良い方法を教えてくれるはずだもんね。


『Q:ルビダスの症状を改善する方法は?』

『A:取り急ぎ副腎皮質ホルモン・抗生物質配合外用剤を用いれば良い』


『Q:具体的な有効成分は?』

『A:ベタメタゾン吉草酸エステルとゲンタマイシン硫酸塩』


 それって、どこかで聞いたことがある気がする。

 ええと、どこだったかな?


 もしかして、ボクのいた研究室の教授が使っていたヤツじゃないかな?

 頭が痒くてフケが出て、それで、その配合剤のローション液を頭に塗っていたっけ。たしか、タンポポの液みたいな乳白色のローションだった気がする。

 構造式は、一応、覚えている。



 と言うわけで、

「出ろ!」

 ボクは、ベタメタゾン吉草酸エステルとゲンタマイシン硫酸塩を配合したローション液を物質創製魔法で出した。

 ちなみに、容器は10ミリリットルのプラスチック容器ね。


 これが一般客用なら、プラスチック容器は時代背景から考えて完全にオーパーツになり得るからね。

 絶対に出すのはマズイと思うけど、今回は特別だ。


 正直、プラスチック容器の方が使いやすい。

 容器の腹の部分を押して出せるからね。

 ガラス容器だと、そうは行かない。

 それに、相手がルビダスだから、薬の余りも容器もボクの方で回収できるはずだもんね。



 でも、毎日、頭皮に塗り付けるのも大変なんだよね。

 これって、少しドロッとした白濁液でさ……。

 なんか、変な想像した人いない?


 だから、ヘアートニックみたいに、頭の上から大量にジャバジャバかけるようなタイプじゃなくて、手に少量取って頭皮に塗り込む感じで使うことになるんだよ。


 こうなるんだったら、薬用シャンプーの成分も薬と同様に覚えておけば良かったなぁ。

 いや、だったら、いっそのことチャットボットに聞いてみよう!


『Q:薬用シャンプーの成分は?』

『エラー:どの薬用シャンプーかを指定してください』


 あれっ?

 エラーが出るって珍しいな。

 ただ、薬用シャンプーも色んなのがあるから、キチンと銘柄を限定しないと回答できないってことか。

 さすがに、ボクもそこまでは詳しくないからなぁ。

 薬用シャンプーとか薬用リンスとか、前世のボクには無縁だったし、全く興味が無かったからね。


 まあ、どこかで機会があったら覚えるように……って、そんな機会は無いか。

 この世界にあるモノで、

『これが薬用シャンプーです』

 って言われても、成分の構造式が分かるわけじゃないもんね。



 一先ず、ボクの出したローション剤を朝晩使うようになって、ルビダスの痒みは、数日で一応、治まったっぽい。

 フケも消えたっぽいし、良かった良かった。


 ……となるはずだったんだけど!

 それと入れ替わりでルイージさんが、

「食事が合わないみたいで、お通じが」

 今一つ、腸の調子がよろしく無さそうだった。


「薬は使われていますか?」

「いえ、持ってなくて。トオルさんと一緒だから、何かあったら出してもらえばイイやくらいに思っていましたから」


 うーん……。

 なんだか依存されているような気がするけど。

 いや、チャッカリさんって言う方が正しいかな?

 まあ、イイけどね!



 と言うわけで、

「出ろ!」

 ボクは、普通に店に卸しているのと同じお通じの薬を出した。

 有効成分は酸化マグネシウムね。


 今回は一先ず、六十錠入りのビンにしておいた。

 百二十錠入りだと、ちょっと大ビンになるからね。


 それを渡すと、

「ありがとうございます!」

 ルイージさんは、早速、服用してくれた。


 翌朝には、キチンと症状が改善されていたみたいだね。

 表情もスッキリしていたし、効果は十分あったようだ。

 めでたしめでたし。

ゲンタマイシンを服薬しても、うな重が食べたくなるわけではありません。多分……。

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