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閑話4:ピタゴラスの定理!

閑話は今回までです。次回から本編に戻ります。

 ボクが用意した秘密兵器。

 それは、パフェだ!

 先ずはチョコレートパフェから。


 しかも、ボクとルビダス姫とベリル姫とエリカさんの四人分。

 このデザートは、まだ、この世界には存在しない。そもそも、チョコレート自体が貴重だし、アイスクリームなんてものが存在しない。


 ボクが、これを、

「召し上がってください」

 と言いながらテーブルに並べると、

「「これって?」」

 ルビダス姫もベリル姫も驚いていたよ。


 まあ、この世界にはケーキもあるしクリームもある。

 でも、パフェを見るのは初めてのようだ。



 早速、一口。

 三人とも感想は、勿論、

「「「美味しい~!」」」

 の一言。

 うん、気に入ってもらえたようで本当に良かった良かった。

 しかも、ルビダス姫は、一気に食べ終えると、

「御代わり、あります?」

 って追加注文して来たよ!


 何気に恥ずかしそうな表情をしていたけど、やっぱり美味しいモノは美味しいもんね!

 その気持ちは良く分かるよ!

 なので、次は何気にボクの大好きなモンブランパフェを、女神様から頂いたペンダントを使って出した。

 勿論、あたかも店の奥から取って来たような演出はしたけどね。



 ただ、モンブランって季節的には完全に外れているんだけどね。だって、この世界では、これから冬が明けて春になるわけだから。


 そして、ボクが、

「どうぞ」

 ルビダス姫の前にモンブランパフェを差し出したら、

「私も!」

「私も!」

 ベリル姫とエリカさんもお代わりキター!

 この二人も食べるの早い。


「では、少々お待ちください」

 ボクは、またもや店の奥に引っ込んで、モンブランパフェを持って来た……んだけど、

「三杯目あります?」

 既にルビダス姫は二杯目を食べ終えていた。


 凄いスピードだよ。余程、パフェが気に入ったんだね。

 なので、三杯目は必殺マンゴーパフェを出してあげることにした。

 でも、そのうち、パフェ大食い大会なんて始めたりしないよね?


 …

 …

 …


 お腹も満ちたところで、

「あのう、ちょっと分かったら教えて欲しいんですけど?」

 ルビダス姫がテーブルの上にノートを広げた。多分、ここからが本題なんだろう。


「学校で数学の先生が、これを証明出来たら数学はAをやるって言われまして、是非とも証明したいんですけど……」


 そこには、ボクにとって非常に懐かしい数式が書かれていた。

 これを見るのは、果たして何年ぶりだろうか?


「それって、ピタゴラスの定理?」

「なんですか、それ?」

「ええと、ボクが前にいた世界では、そう呼ばれていたんです。これを証明するってことですか?」

「そうです。つまり、直角三角形の三辺をa、b、cとして、a<b<cの時にa二乗足すb二乗イコールc二乗であることを証明するんです」

「その数式、久しぶりに見ましたよ」


 たしか、小学生の頃にお受験対応で、塾でやった記憶があるよ。

 ハッキリ言って、実生活では全然使うことなんてないけどね。


 学問の世界に進んだって必ずしも使うわけじゃない。

 ボクは大学院生だったけど使わなかったもん。

 有機化学専攻だったからね。


「分かるんですか?」

「はい。同じ三角形を四つ並べて、正方形を作るんですけどね」


 ボクは、一辺がcの長さの正方形を描き、そこに四つの三角形abcを書き入れた。

 一つ目の三角形の角acに二つ目の三角形の角bcが隣接して、二つ目の三角形の角acに三つ目の三角形の角bcが隣接。

 三つ目の三角形の角acに四つ目の三角形の角bcが隣接して、四つ目の三角形角acに一つ目の三角形の角bcが隣接。

 そして、一辺の長さがcの正方形の真ん中には、一辺の長さが(b-a)の正方形の空洞ができた。


「この空洞部分も足した正方形全体の面積はc二乗ですよね?」

「はい」

「それから、この四つの三角形と、この中の小さな四角形の総和も、この正方形全体の面積ですよね?」

「はい」

「で、この四つの三角形と、この中の小さな四角形の面積の総和は、4かけるab/2足す(b-a)二乗になりますよね?」

「はい」

「ってことは、2ab足すb二乗引く2ab足すa二乗で……」

「あっ!」


 分かったみたいだね。

 ボクも、これを知った時は感動したものだよ。


「a二乗足すb二乗イコールc二乗になっていますでしょ?」

「凄い、一瞬で……」

「他にも、一辺の長さがcの正方形に、この三角形を四つ、辺cの外側にくっつけて、一辺の長さがa足すbになる正方形を作るって方法もありますよ」

「そうか。この場合も、(a+b)の二乗がc二乗足す4かけるab/2だから、やっぱりa二乗足すb二乗イコールc二乗になる。トオルさん、凄い!」

「たまたま知っていただけですよ」


 この時、ルビダスは、ボクに尊敬の眼差しを送っていた。

 彼女も、昔のボクと同じで感動したんだろうな。


「トオルさん!」

「はい?」

「これからはトオルさんのことを師匠と呼ばせていただきます!」

「いや、さすがに師匠は……。そんな大した人間ではありませんし」

「私から見れば大した人です! それと、師匠なんですから、私に対しては、敬語は禁止でお願いします!」

「いや、さすがにそれはマズイと思いますけど」


 いくらなんでも王族に敬語禁止って……。

 どんなプレイだよ!


「ほら、また敬語を使いました」

「うーん……困ったな……。じゃあ、敬語をなしにするから師匠は勘弁して」

「仕方ありません。分かりました。それで手を打ちます! それと、私のことはルビダス姫ではなく、ルビダスと呼んでください」

「それもマズくない?」

「マズくありません!」


 変な方向に話が進んでいるような気が……。

 何だか良く分からないけど、この瞬間から、何故かボクはルビダス姫の数学の師匠になったっぽい。


「兄がトオルさんを尊敬するのが分かります」

「尊敬って、大袈裟な……」

「大袈裟じゃありませんよ。でも、私達の兄って、一応カッコイイでしょ?」

「たしかにイケメンだね」

「兄を狙っている貴族の娘も結構いますからね」


 そりゃあ、そうだろうね。

 この世界では、男性自体が極端に少ないからね。

 ましてやイケメン王子となると、とんでもなく希少な存在だよ!


「まあ、分かる気がするよ。性格もイイし、賢いし」

「悪くは思っていないんですね?」

「まあ、人としては好きだよ。話していて気が合うし、楽しいしね」

「(人としてか……可哀そうな兄さん。でも、基本的に好かれているっぽいし、可能性は十分あるわよね? それにトオルさんだったら私も本気でウェルカムだし!)」


 なんだか、ルビダス姫がブツブツ言っているけど、どうしたんだろ?

 しかも、その直後、なんだか気味の悪い笑顔を見せていたよ。変な悪だくみでもしていそうな表情だ。

 まるで悪役令嬢みたい!

 いや、この場合は悪役王女か?


 あっ! 表情が元に戻った。

 すると、

「では、トオルさん。次は、この問題なんですけど……」

 再び彼女のノートから数学のお題が……。


 その後、ボクはルビダス姫の宿題を見ることになった。まあ、ボクのレベルで解ける範囲のモノだったんで助かったけどね。

 解けない問題が出てきたら、どうしようかって思ったよ。


 …

 …

 …


 数時間後、

「「兄のこと、ヘタレだけど、よろしくお願いします!」」

 ルビダス姫とベリル姫は、そう言うとエリカさんに連れられてお城に戻って行った。

 それにしても、久しぶりの数学は疲れたな……。やっぱり、ボクは数学よりも化学の方が合っているよ。


 …

 …

 …


 その日の夜のことだ。

 お城に戻ったルビダス姫は、

「ユイナ。お願いがあるんだけど」

 一人の侍女に声をかけた。


「何でしょうか?」

「アナタの持っている魔法をかけて欲しい相手がいるのよ」

「でも、あの魔法は……」


 ユイナが持つ魔法……、それは、他の生物の動きをコントロールする魔法だった。

 この世界では、この魔法を持つ人間は非常に少ない。なので、大変希少価値のある魔法なのだが、ユイナは、それが使えることを隠していた。

 一歩間違うと強制的に軍隊に入隊させられる。敵の動きを止められるのだから、軍隊にとっては有難い存在だ。


 しかし、いくらお国のためとは言え、ユイナは軍への強制入隊を避けたかったようだ。

 つまり戦いたくないと……。


 ただ、ルビダス姫と、ユイナと同年代の侍女マリナだけは、その魔法をユイナが使えることを知っていた。



 数年前、ルビダス姫はマリナの同行で城下に出た際に、運悪く暴れ馬と遭遇した。

 その馬が、近くにいたルビダス姫とマリナを踏み付けようとした、まさにその時、偶然その場に居合わせたユイナが魔法を発動して馬の動きをコントロールし、その場から馬を遠ざけてくれたのだ。

 これが縁で、ユイナはルビダスの侍女として城で雇われることになった


 ただ、ユイナの魔法のことに関しては、ユイナにお願いされて、ルビダス姫もマリナも決して他言しなかった。

 それで、城内でも王都内でも彼女の魔法のことは、他の者達に知られていなかったのだ。


「使いたくないのは分かってる。でも、これは兄のためなの」

「アクティス王子の?」

「ええ。兄とトオルさんの既成事実のため、その力を貸して欲しいの!」


 つまり、トオルが勲章授与の日にアクティス王子を相手に処女喪失させられそうになったのは、全てルビダス姫が企画立案したことだったのだ。

 全ては兄のため。

 そして、自分のため。


 トオルが義姉となって城内に入ったら、きっと毎日が楽しいだろう。

 それに、毎日、美味しいパフェが食べられる!


 勿論、勲章授与当日に、アクティス王子の部屋にいた二人の侍女は、ユイナとマリナであったことは言うまでもない。


 …

 …

 …


 その翌日の夕方のことだ。

 ボクの店に、仕事を終えたアリアとミサが遊びに来た。

 ただ、ボクに色々聞きたいことがあるっぽい。


「一昨日の夜って何かあったの? 店を早く締めていたし。あと、イケメン王子も来ていたじゃない?」

 こう言ってきたのはアリア。目ざといなぁ。


 でも、近くにいたのなら声をかけてくれても良かったのにな。

 一緒にお城に行けたかもしれないのにね。


「アクティス王子に天体観測に誘われてね」

「じゃあ、デート?」

「違うってば。お城の屋上で、ルビダス姫とベリル姫もいたし」

「なんだ、つまんない」


 別にアリアは恋愛脳ってわけじゃないけどね。

 ただ、ボクの店にアクティス王子が入り浸っているから気になるんだろう。

 ボクとアクティス王子は、全然、そんな仲じゃないんだけどね。


「あと、昨日の昼に女の子が来ていたけど、あれって?」

 今度はミサからの質問。


「ルビダス姫とベリル姫、それから付き添いの転移魔法使いのエリカさん」

「じゃあ、イケメン王子の妹?」

「そう言うこと」

「でさあ。その三人に食べさせていたのって何かなぁって思って」


 こっちも目ざとい。

 しかも、その目は食べる気マンマンだろ!


「パフェって言うんだけどね。どうせ食べたいんでしょ?」

「ピンポーン!」

「じゃあ、ちょっと待っててね」


 ボクは、店の奥に入って女神様のペンダントに、

「お願いします。出ろ!」

 と、先ずはチョコレートパフェを二つ出してもらった。

 アリアとミサの分だ。


 さすがにボクの分は、今日は要らない。

 昨日食べ過ぎたからね。


 そして、それを二人に出すと、

「当然、次のもお願いね!」

 とミサの言葉。


「次のって?」

「だって、昨日は四杯くらい食べていなかった?」

 うわぁ。全部チェック済みだよ。


 結局、二人ともチョコレートパフェの後、モンブランパフェ、マンゴーパフェ、そして究極のメロンパフェを食べて帰った。

 ルビダス姫とベリル姫と同じだね!

 さすがにボクとエリカさんはモンブランパフェまででダウンしたけど。


 ところで、究極のメロンパフェって何かって?

 マスクメロンを半分に切った上にクリームとかアイスクリームとかでデコレーションしたヤツだよ!

 つまり、容器が果肉付きのままのメロン。

 凄いでしょ?


 これを当然の如く完食するとは……。

 やっぱり二人とも、色気より食い気だね。

 それでいて、体形が全然変わらないんだもんなぁ。

 基礎代謝が半端じゃないんだろうね。

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