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閑話2:天体観測!

 それから十日が過ぎた。

 今夜は天体観測のため、アクティス王子が迎えに来る。

 でもまだ昼だし、あと六時間は後かな?


 ただ、せっかくなら天体ヲタクのアクティス王子にも思いっ切り喜んでもらいたいな。

 これが、同伴者がボクなんかじゃなくて彼の婚約者だったら、彼もマジで大喜びなんだろうけどね。

 まあ、ここは理系ヲタク仲間として喜んでもらう方法を考えよう。

 何がイイかな?

 うーん……。

 なら、秘密兵器が出せないかな?


 と言うわけで、

「星ヲタクにとって天体望遠鏡は生活必需品だよね! だから、彼のために特別に生活必需品扱いして! お願い! 出て!」

 ボクは、女神様からもらったペンダントのペンダントトップを握りしめながら、祈るようにそうお願いした。


 ちなみに、このペンダントは、食料と生活必需品を自由自在に出せると言う非常に優れたアイテムだ。

 まあ、天体望遠鏡が生活必需品かって言うと……、かなりムリがあるよね。だから、ムチャクチャなことを言っているって自覚はあったし、確信犯でお願いしていたよ。


 すると、

『ホント、今回だけ特別ですよ』

 と言う声が聞こえた。

 どこかで聞いたことのある透き通った感じの声質。

 これは、ボクをこの世界に連れてきた御使い様の声だ。多分、ボクのことを陰ながら見守ってくれているんだろうなぁ。


 そして、その直後、ボクの目の前に口径150 mmの反射式天体望遠鏡が出てきた。これは、マジで大サービスなんだろうね!

 ボクは、この天体観測アイテムを、一旦、アイテムボックスの中に収納した。アイテムだけにね。



 夕方になった。

 ボクは、女神様からもらったペンダントを使ってサンドウィッチを出した。正直、これがあると自炊しないで済む。完成品で出せるんだもん。

 そして、それを少し早めの夕食として有難く食べさせていただいた。まだ時間が早かったので軽いメニューにしたんだ。

 アクティス王子には食べさせなくてイイのかって?

 別に、彼はお城でイイモノ食べるから、ムリにあげなくてもイイでしょ。



 それから少しして、

「トオル!」

 アクティス王子が迎えに来た。勿論、転移魔法使いが同行しているけどね。思ったよりも、ちょっと早かったかな。

 ちなみに転移魔法使いは女性だよ。ほぼ、女性しかいない世界だからね。


「今、行きます!」

 ボクは急いで店を閉めた。

 それから鍵を閉めてと。


「お待たせしました。今日は宜しくお願いします」

「こっちこそ。じゃあ、エリカ、頼む」

「はい」


 この転移魔法使いはエリカって言うのか。

 彼女の転移魔法で、次の瞬間、ボク達は既にお城の屋上に到着していた。

 何と言う便利な能力だろう?

 ボクの転移魔法じゃ、こうは行かないからね。ショボくて、百メートルくらいの移動が限界だもん。



 そして、早速、天体観測。

 アクティス王子が、

「これを使って」

 と星座早見盤みたいなのをくれた。これって、アクティス王子の手作りっぽい。

 これはスゴイ!

 ただ、この世界には星座って概念が無いみたいだね。なので、正しくは星早見盤だね!


 早見盤と空を見比べると、明るい星なのに、この早見盤に記載されていない星が二つあることに気が付いた。

 これって、あれだよね?


「ねえ、この星って」

「前に説明してもらった外惑星だよ」

「だよね。それで、今日は王子にプレゼントがあるんだ」


 そう言ってボクは、アイテムボックスから天体望遠鏡を出した。

 勿論、これが何だか、王子には理解不能だったけどね。


「これって?」

「星を見るための望遠鏡です」

「そんなモノがあるんだ!」

「これを王子にプレゼントします。早速、使ってみましょう。きっと気に入ってもらえると思いますよ!」


 一応、この世界にも望遠鏡自体はある。でも、まだ誰も望遠鏡を天体観測には使っていなかったみたいだね。

 それだけの口径と倍率を兼ね備えた高性能な望遠鏡を作るには至っていなかったのが理由だと思うんだけど……。


 そう言う意味では、この世界の天文学は、有機化学と同じで地球で言う十七世紀のレベルにも達していないってことなんだろうね。

 アクティス王子自身も、望遠鏡を天体観測が可能なレベルの高性能なモノに作り変えようって考えを持っていなかった……って言うか、そこまで全然、頭が回っていなかったみたいだし。



 早速、ボクは望遠鏡の照準を外惑星に合わせた。

 ボクも天体望遠鏡を使うのは初めてだったけど、多分、御使い様が手伝ってくれたんだろうね。意外とさくっと望遠鏡でお目当ての外惑星を捉えることが出来た。

 一つ目は、木星っぽい星だった。しかも、衛星が四つも見える。


「ねえ、王子。これを見て」

「ここから覗くの?」

「そう」


 反射式望遠鏡は、接眼レンズが横に出ているからね。

 アクティス王子も、これが望遠鏡ってことに半信半疑だったよ。


 ただ、覗くと同時に第一声。

「なんだ、この縞々の球体!」

「これが、外惑星のうち明るい方の星の姿です」

「でも、こんなのが光って見えているのか?」

「そう言うことになりますね。それと……」


 ボクは、紙にその星と四つの衛星を簡略的に描いた。

 衛星の場所は、その惑星の右中段に二つ、左上に一つ、左中段に一つだ。


「これらの四つの星も見えますでしょ?」

 アクティス王子が、ボクの描いた図を見た。蝋燭の光しかないから、ちょっと見難いかも知れないけどね。


「ああ。でも、これっていったい?」

「これが、この星の衛星です。ボク達がいる惑星で言うケテンやアレンみたいな」

「それが四つも?」

「多分、反対側にいて見えないのもあるでしょうし、もっと衛星を持っているんだと思いますけどね」

「へー。なんか、知らないことばかりだ」

「あと、もう一つの外惑星も見てみましょう」

「おお。そうだな」


 一旦、アクティス王子に望遠鏡から離れてもらって、再びボクが望遠鏡を操作し、もう片方の外惑星に望遠鏡の照準を合わせた。

 今度の星は、土星っぽい。リングがあるよ!

 マジで神秘的だなぁ。

 これを見たら、アクティス王子は相当驚くだろうな。星がリングを持っているなんて想像もつかないだろうからね。


「王子。これを見てください」

「ああ」

 そして、王子は望遠鏡を覗くと、

「なんだこれ!」

 思った通り、マジで驚いているよ。


「なんで輪を持っているんだ?」

「ええと、ボクがいた世界でも同じような星があって、衛星が破壊されてできたとか言われているみたいですけど、どうやってできたかは分かっていないみたいです」

「そうなんだ」

「でも、神秘的でしょ?」

「ああ。ムチャクチャ驚いたよ。でも、この望遠鏡を本当に貰ってもイイのかい?」

「勿論です。これを使ってケテンやアレンを見るのも面白いですよ。綺麗なクレーターが見えると思います」

「クレーター?」


 これは失礼したよ。

 こっちの世界には、クレーターなんて発想は、まだ無いだろうね。

 なので、そんな言葉すらないだろう。


「噴火口みたいに円形にくぼんだ地形が沢山見えると思います」

「あれか。あれなら、双眼鏡で見たことがある」

「それが、望遠鏡なら、もっと鮮明に見えるようになりますよ」

「たしかに期待できそうだな……」

「それと、望遠鏡で太陽は絶対に見ないでくださいね」

「分かってる。相当危険だろう?」

「ええ」

「あと、望遠鏡で、あれが見てみたいんだけど」

「あれって?」


 アクティス王子が、天の川を指さした。

 そりゃあ、あれが一体、何なのかって気になるよね。


「なんで、あんな雲みたいにモヤっとしたのが光っているんだろうってね」

「あれは、星が密集しているんです」

「あの光る雲みたいなものの前に星が沢山あるのは見て分かるけど、俺が知りたいのは、あの光る雲みたいなのの正体だよ」

「だから、全部星なんですってば」

「えっ?」

「星の軍団です。密集していて、あのように見えるだけです」

「全部星って信じられないけど……。でも、百歩譲って、あれが全部星だとしよう。だとすると、どうしてあそこだけ、それだけの星が密集しているんだ?」

「ええとですね……」


 ボクは、銀河系を上から見た図と横から見た図を紙に描くと、それを蝋燭で照らした。

 この時点では、さすがにアクティス王子にも、これがいったい何のか分からなかっただろうけどね。


「ボクが住んでいた地球では、こんな形をした銀河の中にありました」

「銀河?」

「沢山の星の集まりです。ボク達の太陽は、銀河系のこの辺にあって、その太陽の周りを地球は回っています」

「たしか、地球と太陽の距離は一億五千万キロって言っていたよね」

「そうです。ですから、銀河系は、もの凄く大きいんです。直径は十万光年以上だそうです」

「光年?」

「1光年は光が一年かけて進む距離です」

「ええと、光が進むって?」


 たしかに、この世界では、まだ光が進むって概念すらないよね?

 見て分かる代物でも無いし……。


「例えば、この蝋燭の光も、この蝋燭の炎からボク達の目に届くまで、一応、時間がかかっているんです。ただ、ムチャクチャ早いんですけどね。どれくらいのスピードかって言いますと、一秒間に三十万キロだそうです」

「はっ?」

「ですから、1光年は約九兆五千億キロ」

「もはや想像もつかん」

「ボクにも想像できませんから。それで、天の川は、この星が集まった部分を地球から見ているってことになるんです。こういう銀河が、宇宙にはたくさんあるんですよ」

「信じられないけど」

「では、ええとですね。ちょっと望遠鏡を使います」


 ボクは、ステータス画面を開き、チャットボット機能で近くの渦巻き型銀河について質問した。

 地球から見たアンドロメダ星雲みたいなのがないかなって。

 すると、天の川の少し左にあるとの回答が。どうやら、これが、この世界から一番近い銀河らしい。


 距離は約八百万光年か。さすがにアンドロメダ星雲ほど近いのは無いってことだね?

 早速、ボクはそれに望遠鏡の照準を合わせた。

 おおっ! これは素晴らしい!


 と言うことで、

「王子、これを」

 ボクは王子に、その銀河の姿を見てもらった。


 望遠鏡を覗いて王子は、

「本当にトオルが描いたのに似てる! こう言うのが他にも沢山あるってことか?」

 またもや驚きの声を上げていた。


 そりゃそうだよね。

 ボクは地球での予備知識があって見ているけど、そんな概念が無い世界の人が見たら、驚く以外ないと思うもん。

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