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11:類は友を呼ぶって本当なんだろうね?

「あのう、一つお願いがあるんですけど……」

 ルビダス姫は、そう言いながらボクから視線を逸らしていた。恥ずかしい依頼なのかな?

「なんでしょう?」

「実は、最近、お通じが宜しくなくて……」


 つまり便秘か。

 別に恥ずかしがることは無いよ。そう言う人、地球にもいるから。

 薬は、手頃なところで酸化マグネシウムの錠剤でイイか。早速、ボクは錠剤入りのビンを出した。


「これをお飲みください。ただ、一回2錠、一日4錠までにしてください。もし、これで効かないようでしたら、もっと強力なのを処方致します」

「あ……有難う」


 そして、ルビダス姫は薬ビンを受け取ると、何の疑いもなく、その場で薬を2錠飲んだ。

 インフルエンザ治療薬の実績があるから安心して飲んだんだろうね。少ししたら便意がくると思うよ。



「科学が発達した世界に居たとのことで、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 こう言ってきたのはアクティス王子。

 科学的な話をしたいのかな?

 意外と趣味が合ったりしてね。

 それに、この世界では、王子とボクは同じ年齢ってことになっているし。イイ友達になれるかも。


「何でしょう?」

「天体のことは分かるか?」

「はい、多少は」

「じゃあ、ちょっと会議室まで来てもらってイイかな?」

「はい」

「では、陛下。ちょっと彼女をお借りします」


 王子は女王陛下に会釈すると、ボクを連れて謁見室を出た。

 でも、人前だと母親のことを陛下と呼ぶわけか。立場上は仕方が無いんだと思うけど、他人行儀に見える。

 母と呼ぶことが公私混同になるって、ちょっと可哀想な気もする。


 まあ、それはさておき、ボクは隣接する会議室に通された。

 そこで、アクティス王子の説明が始まった。どうやら、王子は天体観測が趣味で、記録を付けているらしい。

 ちょっとヲタ臭がする。イケメンだけど、多分、ボクの仲間だ!


 この星には衛星が二つある。それぞれ、ケテン、アレンと名付けられているらしい。どちらも大きさは月よりも小さめだ。

 ただ、アクティス王子の興味は衛星ではなく、星の方に注がれていた。


「実は、特定の星が他の星とは違う動きをすることに気付いたんだ。しかも、その星に限って特に明るいヤツがあるってこともね!」

 これは多分、外惑星のことだね。地球で言う木星とか土星のことだよ。

「何故、こんな例外的な動きをする星があるのか実に興味深いことだと思ってさ。もし知っているなら、その理由を教えてもらえないか?」


 ただ、語る雰囲気が何気に熱い。

 間違いないね。思ったとおり、王子はボクと同類だ。ヲタ臭がしていたのは当然か。

 仲良くなれる気がするよ、うん。


 この世界は、まだ過去の地球と同じで天動説で考えられているんだね。だから、外惑星の動きが異常に見える。

 まあ、仕方が無いよね。

 どこから話そうか?

 じゃあ、地球じゃこうだったって感じで話すことにしよう。


「ボクが前にいた世界でも、実は、同じような議論がありました。順番に話します。ボクの前世の世界は、非常に大きな球体であることが分かりました」

「球体? 平らじゃないのか?」

「人に比べて余りにも巨大なので、人には平らに見えます。半径が6,000キロ以上の球体ですからね」

「ちょっと想像し難いな」


 そりゃあそうだろうね。

 ボクだって、ピンと来ていないもん。


「でしょうね。その球体を、ボク達は地球と呼んでいました」

「地球……」

「はい。地球は、一日一回の周期でコマのように回ります。これを自転と言います」

「一日一回って、回るのが遅いな」

「それでも、一番速いところでは、一日で4万キロも動くんですよ」

「言われてみればそうだな。それでも、かなりの速度と言うことか」

「そうですね。それから、一先ず星の殆どは、場所が動かないと考えます。ですが、地球が自転するので星が動いているように見えるのです」


 厳密には恒星も動いているんだけどね。

 銀河系の星だって、中心の超質量ブラックホールの周りを回っているって考えられているし。


 でも、今、そこまで言い出すと王子も混乱するからね。

 まだ、恒星は動かない星ってイメージで話して行こう。


「斬新な考え方だな」

「考え方ではなく、それが正しいこととして確認されています。そして、地球は太陽の周りを約365日で一周します。これを公転と呼びます」

「地球が太陽の周りを回るのか?」

「そうです。これを地動説と呼びます」

「天ではなく地が動く説か」


 多分、いきなりは信じられないだろうな。

 でも、頭ごなしに否定してこないところを見ると、少なくとも『地球が太陽の周りを回っている』ことを受け入れようとする努力をしてくれているんだと思う。

 そう言う意味では、地動説を受け入れられなかった、かつての地球人よりは、数段柔軟な頭を持っているのかも知れないね。


「まあ、そうですね。過去においては、太陽が地球の周りを回ると考えられていました。これを天動説と呼んでおりますが、今では地動説が正しいことが分かっています。それに地球が球体であることは証明されています」

「えっ? どうやって?」

「一番分かりやすい例としては……、そうですね。地球にもケテンやアレンみたいなモノがあります。ボク達は、それを月と呼んでいました。月は地球から38万キロほど離れています。それで、地球では、空高く飛ぶ特殊な乗り物を造り出して月まで人を送り込んで地球の姿を見ています」


 他にも世界一周旅行ができるとか、月食の存在とかでも分かると思うけど、

『実際に地球から出て外から見ました!』

 って言うのが、分からない人には一番説得力があるよね?


「なるほど、それなら一目瞭然だな」

「地球と太陽の間は、約1億5千万キロ」

「もはや想像もできんな」

「ですよね~。それで、地球と太陽の間にも、地球のように太陽の周りを回る星があります。これは、朝とか夕方に太陽のすぐ近くに見えます。そして、地球の外側にも太陽の周りを回る星があります。この星の動きを地球から観測すると、さっき、アクティス王子が仰っていた星と同じような変わった動きを見せるのです」


 つまり、この世界も天動説じゃなくて地動説だってことだよ。

 ボクの説明を聞いて、この時、アクティス王子は、ムチャクチャ驚いた表情をしていた。


 いくら地球の話を前振りに持って来ていたとは言ってもね。

 アナタの世界も地動説ですって言われて、即座に信じられる方がおかしいだろう。

 なので、アクティス王子の反応は当然だと思う。


「じゃあ、もしかして、俺達の世界も地球と同じような構成になっているとでも?」

「まあ、そう考えるべきでしょうね。信じられないかと思いますけど」

「信じられないな。でも、実際に俺の観測結果をトオルの言った説に合うかどうか、検証してみれば分かることだ。ちょっと確認してみよう。あと、ちょっとお願いしたいことがあるんだが」

「何でしょう?」

「実は、こう言った話ができる相手が限られていてな。それで、これからも俺の話し相手になって欲しいんだが」

「分かりました。こちらこそ、よろしくお願いします」


 ボクは笑顔で即答した。

 科学の話ができる相手ができて、ボクは単純に嬉しかったんだ。この王子とは仲の良い友人になれる。そう思っていた。


 ただ、この時、ボクは重大なことを忘れていた。

 ボクは、感覚は男だけど、外見は違うんだ。

 今のボクの姿は、ヲタクなボクが理想とする女性の姿。つまり二次元から抜け出してきたような飛び切りの美女なんだ。

 ボクと似たようなヲタク的思考回路を持つ王子が、今のボクに友人以上の感情を持ってもおかしくはない。

 だからこそ、ボクの説明を王子は否定しなかったのかも知れないけどね。

 でも、ボクは、そこまで頭が回っていなかった。


「あと、薬のことも色々知りたいんだが……」

 ボクは、アクティス王子にこう聞かれて、

「そうですね。この世にあるものの最小単位は……」


 原子、分子の話に始まって、構造式、生理活性化合物の話を順にしていった。アクティス王子は、全然理解できていなかったみたいだけど。

 でも、多分、その時のボクは、さっきの王子よりも熱弁だったんだろうな。



 気が付くと、もう日も暮れていた。ヲタクの会話なんてこんなものだろう。何時の間にか、とんでもない時間が過ぎ去っていた。

 この夜、ボクは王家のディナーに招待された。


 ダイニングに入る前に、ルビダス姫に呼び止められた。

 彼女は、この時、飛び切りにこやかだった。

「お陰様で、すっきりしました!」

 良かったね。これできっと、夕食もおいしく食べられるようになるよ。



 ダイニングに入ると、ルビダス姫以上に女王陛下が、すっきりした顔をしていた。かなりご満足されている模様。


「凄い効き目ね。あんなの初めてよ。もう、こっちが参っちゃった!」

 どうやら、あの後、随分とお楽しみだったっぽい。

 リチア氏もお疲れ様。大変な肉体労働だったに違いない。


「あと、あの二つの薬の追加注文をお願いするわ!」

「分かりました」

 でも、これがきっかけで、男性の薬も売れるようになって行った。先ずは女王陛下の口コミで貴族から。

 その後、一般の人達にも噂は流れて行ったんだ。


 ただ、タダラフィル単独ではなく、ダポキセチンとのセットで売れた。でも、服薬過剰にならないか心配があるな。

 服薬指導もキチンとしないといけないだろうね。

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