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勇者の魔法

作者: アオニシキ

 メモ帳のアイデアにあったネタを放置していたので腐る前に投稿。

 二年前に思い付いたネタ。これくらいならきっと発酵と言い張れる、はず。



 魔王が復活し世界は闇に落とされてしまった。


 魔王は強大な力を持ち、配下の魔物を世界中にばらまき、その魔物は暴虐の限りを尽くした。村、町、果てには小さな国まで落とすほどの勢いで、魔王軍と言われる魔物の軍勢は人間たちの生存圏を侵していった。


 そんな魔王軍と魔王に対抗するためにある人間の強国の魔法使いたちは一つの魔法を発明することにした。神話の時代の遺物であり、魔王の勢力が強くなってしまった以上、当然のように現代によみがえる勇者を召喚する魔法である。


 神話では別世界から呼び出された強大な勇者が魔王を封印する、そんな話がゴロゴロ転がっていたのだ。そんな魔法を利用して魔王を封印しようというのだ。


 強国の王は配下の宮廷魔法使いが提案したその魔法に興味を持った。


「神話の魔法の詳細を持ってこい! なに!? もう復活させているだと?」


 そして、強国の宮廷魔法使いは優秀だった。その魔法をあっさりと復活させて見せたのだ。だが、その魔法の詳細を知った時、王は叫んだ。


「なんだ、この魔法は! わが身も危うくなるではないか!」


 王は魔法使いたちには無かった視点、つまり支配者の視点からこの魔法の危険性を看破した。この魔法を復活させれば魔王は倒せるだろう。だが、王は自身の保身のために魔法を改造するように命令を下した。王よりも権力を持つ勇者なんてものは権力者にとっては必要ないものなのである。


 そして、ある意味魔王にとって最悪の改悪がなされた魔法は勇者の魔法と呼ばれ、さまざまな国が集まった場で行使された。


 行使する魔法使いはこの魔法を発見し改悪まで行った、強国の宮廷魔法使い筆頭である。


「それでは、始めます」


 彼がそう言ったとたん、強大な魔力がその場でうずまき、時空を切り裂き、誰の目から見ても分かるほどの巨大な裂け目がその場に生まれた。


  ──それも、二つ。


 神話の魔法では時空を切り裂き巨大な裂け目から別世界の勇者を呼び出すというものだった。その勇者は魔王と少なくとも相打ちできるほどの力を持つ。では、この改造された魔法はどうなるのか。


 各国の王は裂け目が二つ出たとき、こう考えた。


  ──なるほど、勇者に裂け目からさらに力を与えて、より強大にするのか。


 力を注ぎ、確実に魔王を倒すとともに、巨大な力で勇者自身には自壊してもらう。


 なるほど、自身よりも強大な力を持つ者にはさっさと退場してもらうに限る、とほくそ笑んだ王も多かった。


 だが、そうはならなかった。


 もう一つの裂け目から強大な力を持つ闇の存在が現れた……魔王である。


「な、何故この場に魔王が!」

「騙したのか!」

「王をすべてここで殺そうというのか?」

「た、た、助けてくれぇ! ヒィィィィ!」


 途端に騒ぎ出す各国の王たち。だが、強国と呼ばれるある国の王だけは動じていなかった。


 その場をさらに混乱に落とすように魔王が吠える。


 ──GYAAOAAA!!!


「ひえっ、こ、殺されるんだぁ」

「落ち着け! 落ち着いて我だけは逃がすのだ!」

「黙ってろ! このクズ王が!」


 だが、落ち着いていた強国の王は冷静だった。


「あの魔王、身動きがとれなさそうだが?」

「ふん、もう一つの裂け目にそんな意味があるのか」

「今騒いでるものは、あの魔王が喚くだけの畜生になり下がったことにも気が付かんのか」


 彼らは、魔王があの裂け目から出てきた時点でこの魔法の全貌とその危険性を理解した。魔法を開発した強国の王に目をやる。すると、強国の王は落ち着いていたその三人の王をちょうど見ているところだった。


 その一方で魔王は魔法でできた裂け目から完全に姿を現し、もう一つの裂け目に吸い込まれて(・・・・・)いく。


「自身よりも力を持つ勇者を生み出さないために勇者を呼ばない方法にしたのか」

「二つの裂け目は、魔王を引っ張る物とこの世界から放逐するための物か」

「そもそも我が国の力のみで危機に対処するべきだ。外から英雄を引っ張ってくるのは邪道だ」

「む、こちらに来たのか、今宵の主賓よ」

「まあな、それで相談なのだが……」


 四つの強国が会話している間に魔王はこの世界から時空の裂け目を通り消えていった。そして裂け目が閉じていく。


「終わったな」


 開発者の王がいまだに混乱の収まらない小国の王を見下ろして言った。



 その後、この魔法は別の場所から好きに任意のものを呼び出し、時空の裂け目に放逐できる危険な魔法であると説明し、魔法陣を四つに分け冷静だった強国に渡した。これでそう簡単に危険な魔法を復活させることもできない。


 この魔法の開発者の王はこれで世界中に恩を売りつつ、恐れられ憎まれない程度に世界に君臨することになるのだった。


 そして、この魔法は勇者を召喚する魔法を元にしていることから後の世では勇者の魔法と呼ばれるようになるのだった。


勇者を召喚すると見せかけてそれを元にしたあくどい魔法で魔王を倒す。

ダークファンタジー風のお話。


元になったメモには

『勇者を召喚するとは一言も書かずに強力な封印をかける古の魔法を再現するだけの話』

と書いてあったけど若干変更した。


勇者召喚が氾濫しているからこその作品に、なればいいなぁ。

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