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第四十一話「ステータス」


火星に旅立った(*´∀`*)帰って来ました。

とりあえず初回のクラウドファンディングは成功したため、しばらくは活動続行確定です。


他作品とは違って特別編ではありませんが、今回の投稿は某所で開催中の「次回Web投稿作品選定コース」に支援頂いたサン・カークさんへのリターンとなります。


内容については引き続き解説回……あれ?(*´∀`*)




-1-




「というわけで、マスターや私たちユニットにはステータスという能力が付与されていて、素の能力に掛ける形でパワーアップしちゃったりしてるんですね。このステータスは< 力 >、< 体力 >、< 器用 >、< 敏捷 >、< 魔力 >、< 抵抗 >、そしてそこに< 知力 >を合わせた七つが存在しています」


 アシスタントの面目躍如と言わんばかりのいい笑顔で解説する、ドスケベことあかりの言葉に耳を傾ける。

 何故こんな解説が始まったのかといえば、せっかく自由に質問できる相手ができたのだから何か聞く事はないかと考えて、最初に思い至ったのがステータスだったためだ。ここまでさっぱり意味不明なままだったステータスの事だから、セキュリティクリアランスが足りませんとか言われて回答をもらえない可能性も考えたのだが、意外にもこうして普通に回答が出てきてしまった。

 単に情報公開レベルが足りていただけなのかもしれないが、こういう現時点で問題が発生していない事項はどうしても優先度は低くなりがちだ。結果、質問権を使って確認するのは後回しになってしまう。

 それを考えると、こうして自由に質問できるというだけでもアシスタントの存在は大きいのだと思える。それ以外の部分……視覚的な要素も大きいが、絶賛賢者タイム中な俺にとっては目を逸らす事のできる程度のものでしかない。

 ……どうやって着てるのか構造が良く分からない、ヒラヒラな乳カーテンの隙間部分が気になったりしないのだ。


「< 力 >は主に筋力……といっても、< 体力 >や< 敏捷 >なども筋力には関係しているので、攻撃力に変換される力への補正と認識すれば分かり易いかと思います」

「すごく大雑把なんだが」


 攻撃力といったって、実際に相手に与えるダメージは大量の要素が絡み合う。力があれば単純に攻撃が強化されるわけもない。

 直立不動で正拳突きができないように、コンクリの地面に叩きつけたほうが投げ技の威力が上がるように、体重が重い力士のほうが強くぶちかませるように、筋力だけで成立しない攻撃は色々ある。極端な話、体重四十キロの人が< 筋力 >を上げたからといって、タックルが数値のまま強くなるのかという話だ。


「数値自体相互に干渉し合っているのと、神様たちでも検証がし切れていないという事で、明確にこの部分に関わっているという情報の提示ができないんです。実際、大雑把に< 力 >としていますが、内部には大量の数値を個別に管理していて、その平均値が< 力 >として表示されているとかそういう事なんだと思います」

「やっぱり異世界産の概念か」

「あ、その情報は開示されてるんですね。といっても、多分そうだとしか言えませんが」


 元々ブラックボックスが多過ぎて、あるものを利用しているだけみたいだからな。解析するといっても、むしろ俺が解析する側の人間みたいなもんだし。難儀な話だ。


「というわけで、各ステータスは非常に大雑把ですが、< 力 >は攻撃力関連の補正、< 体力 >はHPや持久力関連の補正、< 器用 >は装備の取り扱いやスキル習熟関連の補正、< 敏捷 >は移動速度や瞬発力、跳躍力の補正、< 魔力 >は……そのまま魔法やMP関連の補正ですかね。< 抵抗 >は属性耐性や状態異常の判定や進行状態の遅延、自然治癒力に関わってきます」


 確かに現実的に考えるならかなり大雑把としか言いようがないが、何百、何千という数値を羅列されて、それを確認しろっていわれても無理があるしな。分かり易さという点では、こういったステータスのほうが受け入れられるだろう。RPGなどの経験があればなおさらだ。最近、蛮族化・脳筋化の病状が進行していて忘れがちだが、俺ってば一応ゲーマーだし。


「さっき言った< 知力 >は? ……というか、コレが分かれてるのはなんでなんだ? 確かに俺のステータスウインドウにはないが」


 俺のステータスとして表示されているのは< HP >、< MP >に加えて、今言った< 力 >、< 体力 >、< 器用 >、< 敏捷 >、< 魔力 >、< 抵抗 >の六つのみである。< 知力 >なんて値は存在しない。

 モンスター名鑑を見れば知能・性格という欄も存在するが、アレは数値化されていないので別だろう。まあ、名鑑のステータスは他の六つのアルファベット表記で数値化されていないのだが。


「知力はマスター以外のユニットに適用される能力値だからですね。経緯は良く分かりませんが、元々存在していなかったところに追加した値だとかなんとか。これが低いとマスターの命令を理解できなかったり、ものを覚えたりするのが困難になります。ちなみに、私の知力は20なのです」

「ほー」


 と言われても良く分からんが、俺のステータスが軒並み10なのを考えると自慢できる数値なのかもしれない。


「す、素直に感心されると照れてしまうんですが、実はコレほとんどダンジョンオペレーターとしての補正値なので、知力以外は地を這っているんですよね。知力以外だと、実はリョーマ先輩より平均値が低い有様です」

「そうなのかね。私も結構なものだと思うのだが」


 リョーマの結構の使い方は間違っている気がする。このチワワ、数メートル走るだけで息切れするんだが、まさかそれより体力ないのか?


「物理的に干渉できない以上は能力値があったところで意味ないだろうしな。ダンジョン連れていけない時点で気にするような部分でもない」

「そ、そうですよね! アシスタントの役割はあくまで後方支援ですから」

「ペットの役割は愛玩だな」


 なんだろう、言っている事は間違っていないのに激しい違和感を覚える。お前ら、どちらも本来の役割と別の部分が主張し過ぎているような……。


「お前らの役割についてはおいておくとしてステータスに話を戻すが、能力値が乗算する値って事は素の能力が秀でていればいるほど強くなるって事だよな」

「はい。その値がどれくらいの割合で掛けられるかは分かりませんが、神様たちが検証した限り凡そその認識で間違いないかと。どうも個人差はかなりあるようなんですが」

「俺の場合、比較対象がいないから個人差があるのは別にいいんだが、これはどうやって上げるものなんだ?」


 クラスやスキルでも補正値は存在するが、そういうのとは別に成長させる方法を知りたい。称号のフレーバーテキストから、確率か何かで上がるものってのは分かってるんだ。


「ふふふ、良く聞いてくれました! そこでこの講習ですよ!」


 あかりは自信満々でいやらしい胸を張る。ただでさえ自己主張の激しい部分なのに、角度が危険な事になってしまう。無自覚でやってるのか、スケベ故に狙っているのかの判断が付かない。


「……それは、これから答えを教えてくれるって意味か?」

「あの……なんでマスターはそんな後ろに倒れそうな格好を……」

「腹筋を鍛えてるんだ」


 くっ、意外にも角度が全然足りない。下乳は割と露出しているのに頂点が遠い。


「教えるというのもそうですが、実はですね。そろそろ……」


[ アシスタントユニットからステータスに関する講習を受講! ステータスカテゴリのカードが開放されました! スキル/パッシヴゾーン+1! < VITトレーニング >を獲得! ]

[ VITトレーニング アンコモン スキル/パッシヴ ]


「……え?」

「というわけです」


 あまりに唐突に出力された実績達成のメッセージに、一瞬何が起きたのか理解できなかった。落ち着いて状況を飲み込み、ウインドウを開いてみれば見覚えのない枠が一つ増えている。


「……つまり、お前から講習を受けないとステータス関連の成長はなかったと?」

「そういうわけでもないんですけどね。私じゃなくてもアシスタントなら実績は開放できますし、成長要素もそれ一つじゃありません。詳細は分かりませんが、別のルートも用意されてるはずです。ステータスが成長した時点で開放される実績もありますし、そういうところでも同じようにカテゴリが開放されたりするんじゃないですかね」


 マジかよ。いきなりでビビったが、こんな実績も存在するのか。……まさかパチンコの講習を受けないと達成できない実績があったりしないよな。


「ちなみに、コレはどういうカードなんだ? いや、もちろん鑑定はするが」

「セットしたまま行動してると< 体力 >が成長し"易く"なります。ただし、セットしている間、< 体力 >の能力値が10%下がります。負荷トレーニングのようなものですね」


 ああ、単純にセットしておければ成長するだけじゃないのか。それはいいとして……。


「……今、易くって言ったよな?」

「はい。明確な基準は分かりませんが、このカードがなくとも各能力値に相当する行動を行う事でステータスは変化するみたいです。一応」


 一応か……そうだよな。鍛えてすぐに上がるようなものだったら、これまでに変化しててもおかしくはないしな。

 ここまでの一ヶ月足らずの使徒生活は、人間として見るなら相当な高負荷だったはずだ。なのに変化がないという事は、このステータスは1でさえ相当に上がり難いものという事になる。案外、小数点以下では成長してるのかもしれないが。


「マスターはカードの補正以外のステータス変動はないようなので、何も補正なしで簡単に上げられるものでない事は分かると思いますが、それを補助してくれるのがこのカードなわけです」

「なるほど。やってみなきゃ分からんが、少なくとも成長し易くなるってのが実感できる程度には補助効果があると」

「すいません。私は使った事ないので断言はできないんですが……」


 そこは断言してほしいんだが。……まあ、このウインドウもカードも俺がテスターみたいなもんだからな。前例なんてあるわきゃないし、断言もできないか。

 実際にプレゼントボックスから取り出した< VITトレーニング >をセットしてみれば、確かにステータスの< 体力 >が1減少している。< 戦士 >の変更値で相殺されれば良かったんだが、これは< 力 >と< 器用 >が+1だから凸凹が増えただけになるな。

 有用なのは間違いないが、コレを常時使うかはかなり難しいところだ。後々の事を考えるならステータスの成長は必須なのだろうが、ステータスが下がる以上安全マージンがとれない場所で使うのは憚られる。わずかな差が致命的になりそうな状況で悠長にトレーニングなどと言っていられない。

 チケット回収の周回時にセットしておいて、普段は別のパッシヴスキルをセットするのが基本になりそうだ。今ある中だと< 闘争心 >や< 集中力 >、< 方向感覚 >あたり。ほとんどレギュラーな< 闘争心 >に枠を割けるというのは大きい。


「一応、クラスカードについても同じような成長補正はあるらしいのですが、トレーニングカードと比べればかなり限定的なようですね」

「とりあえず、これは鑑定行きだな。リョーマ」

「ほいさ。空きスロットに突っ込んでおくぞ」


 というわけで、カードをそのままリョーマに渡す。

 現在< 鑑定部屋 >では< 天眼司教 >を含めて四つの鑑定用スロットが存在するわけだが、その内の一つはいざという時のために空けている状態だ。数に余裕ができた事もあるし、ちゃんと鑑定しようとするならばボトルネックになるのは< 天眼司教 >の一枠なので問題はないだろうという判断である。このカードにしても最終的には< 天眼司教 >で鑑定する事になるだろうが、事前に簡易鑑定だけでもしておければ処理時間の短縮にもなる。

 アンコモンだから、効果によっては当然< 強化+ >の合成候補だ。


「鑑定作業はリョーマ先輩の担当なんですか?」

「やっている事はカード投入と時間管理くらいだが、そうだな。他にも、御主人様が拠点を離れている際の作業は大体私だ」

「あ、じゃあ、その内のいくつか担当します!」

「役に立つところを見せようという気概は分かるが、あかり嬢は物理干渉できないのでは?」

「……そうでした」


 おい知力20、自分の仕様を忘れるなよ。ステータスはあくまで補正値でしかないってのが良く分かるな。


「大丈夫だ。なんの役にも立たない場合は、エロダンス要員としての道が残されている」

「が、頑張ります」


 どっちの意味でかは知らないが、頑張ってくれ。本当にエロダンスされてもドン引きするだけだから、できれば役に立つように。




-2-




 ステータスの話題に区切りがついたところで、ちょうどモブ夫たちがダンジョンから戻ってきた。あかりは「お疲れ様でーす」とか言って迎えているが、それに対してモブ夫たちも普通に反応しているのを見ると、俺がいない間に顔合わせは済んでいるようだ。

 首尾のほうはといえば、普通だ。以前のようにブロンズチケットが混ざっていたりもせず、ほとんどはゴブリンの部位でチケットは三枚。昨日からの分を合わせれば十連二回分ちょうどだな。


「あ、ちょっとお疲れみたいですね。昨日からずっとみたいですし」

「……ひょっとして、あかりはこいつらの健康状態とか分かるのか?」


 実際には昨日どころじゃないんだが、俺が見たところモブ夫たちに明確な変化はない。いつも通りのフラットなマネキン状態だ。拠点に戻ってきた時点で装備解除されてしまっているので、どっちがどっちか区別すら付かない。


「疲労は数値として出てこないのでかなり大雑把ですが、なんとなくは分かるみたいです。多分、アシスタントの基本技能かと」

「俺には良く分からんが、ずっと働かせるブラックな職場を目指しているわけでもないし、休ませるか。……といっても、どうすりゃいいんだ? お前ら寝たりするの?」

「ユニットも普通に寝ますよ。ベッドとか用意してあげれば喜ぶんじゃないですかね」

「そんな上等なものはない」

「ええ……ほんとだ。一覧にそれっぽいものがない」


 俺自身がまだ畳に雑魚寝なのだ。最初の頃は石床に直で寝ていたのだから、これだって改善されたほうだ。部屋着兼用だが、パジャマはあるし。


「ソファはあるから自由に使ってくれ。一応< 箱枕 >もあるが、これもマテリアライズしておくか」


 むしろ首が疲れそうだから使っていなかった< 箱枕 >をカードから物質化して使わせてみた。モブ夫が使っているのを見て思ったが、やっぱり寝にくそうである。他には< 人を駄目にするクッション >なんてのもあるが、これが単に商品名ならともかく変な効果があったりしたら嫌だからな。後回しにしてたが、コレも鑑定するか。


「他にも欲しいものがあるなら用意するんだが、意思疎通が困難だからな。あかりはそういうの分かったりしないか? お前が欲しいものでもいいが」

「分からない……というか、ユニークでもない限りは経験が少なくてそういう欲求がないんじゃないかと。色々用意してみれば利用するんじゃないですかね?」

「そういうものなのか。……あ、そうなんだ」


 あかりの話を聞いて納得していたら、横でモブ夫たちが頷いていた。

 なるほど、つまりこいつらは赤ちゃんみたいなものだから、何をやりたいかも分からない状態って事か。だから俺が命令すれば疑問も持たずに従うし、休めと言えば素直に休むわけだ。休ませてもただじっとしているだけだと俺が居心地悪いし、なんか適当に用意してみよう。

 そういえばリョーマも似たようなものか。あいつは最初から喋れたから意思疎通に問題がないように見えたが、欲求は用意して見せたものに限られている。


「といっても何を用意したらいいものやら。いつの間にか娯楽系のノーマルカードも色々溜まってるし……あ、すでにマテリアライズしてるやつはお前らも使っていいぞ。将棋とか、麻雀とか、人生ゲームとか」


 干渉できないあかりの代わりに駒を動かす事もできるし、むしろリョーマの将棋相手を務めてくれるなら……って、知らん間に異様に強くなってたりしないよな。そろそろマジで不安なんだが。


「ならば私がルールを教えておこう」


 待ってましたといわんばかりに、リョーマが教師役を買って出た。一方で教わる側のモブ夫たちは困惑気味だ。喋れない上に表情もないから、テーブルゲームが苦手なのか、それとも単に理解してないだけなのか判断がつかない。


「やりたい事を直接聞ければいいんだがな。ルーズリーフに書いてもらうか?」


 文字や絵を描ける事は分かってるし業務報告代わりに日誌でも付けてもらえばいいのかもしれないが、あいにくと文房具はそこまで潤沢ではない。


「とりあえず、訓練用の武器を用意して< 武装実験場 >で使わせておけばいいんじゃないですかね?」

「それだと、いつもとやってる事変わらんがな」


 探索やゴブリンとの戦闘がないだけで、休暇とは言い難いだろ。休みの日まで仕事で縛ろうとする上司じゃないんだから、そんな事を強要したくない。


「趣味みたいに休日の余暇にやる事ってのは、仕事と関係ないもののほうがいい気がするんだが」


 趣味がゲームですと言うと『えー、それってなんの役にも立たないですよねー。時間の無駄じゃないですかー』とか言い出すヤツがいるが、趣味に実益を求めてどうするんだって話だ。生活すべてを仕事に関連する事だけで埋めてしまうとワーカーホリックまっしぐらだぞ。


「といっても、私たちはそういうものなので」

「そういうもの?」

「創られた経緯から、役割から極端に外れる事は苦手としています。マスターが人間であるように、私はアシスタントですし、リョーマ先輩はペットですし、モブ夫さんたちはサーヴァントでエクスプローラーなんです」


 なんか急に難しい事を言い始めたぞ。哲学か。


「リョーマが読書や将棋に拘るのも、あかりがドスケベなのもそういう本質と」

「そ、それはちょっと分かりませんが……あと、ドスケベとかじゃないんで」

「私は趣味のつもりだが、やはりあかり嬢の言うようにペットとしての在り方を無視はしかねるな」

「本質から大きくかけ離れた事をやらせようとしても、かえってストレスになるって事か……」


 改めて、< 箱枕 >をマテリアライズするために引っ張り出してきたカード群を眺める。


「……体を動かす事なら、本質から外れてなさそうだな。サッカーでもやるか?」


 目についたのはいつ手に入れたのか覚えてない< サッカーボール >だった。試合は出来ないが、< リフティング >もあるし、玉蹴り遊びの範疇で遊ぶのはアリだろう。

 というわけで、< サッカーボール >をマテリアライズして< 武装実験場 >に移動。モブ夫たちとサッカーする事にした。ついでに< リフティング >の検証も兼ねてだ。

 尚、俺の装備は< 全身タイツ >である。別に今更見られてどうこうという事もないが、あえて見せびらかしたいわけでもないので苦肉の選択だ。


 ボールを渡しても最初は何をやればいいのか分からない様子のモブ夫とモブ次だったが、インサイドキックのパス回しと簡単なリフティングを教えたら徐々に集中し始めた。単純に回数を増やせばいいというのが分かりやすいらしい。ちなみに俺は知人に誘われてミニサッカーの人数合わせに行く事があるくらいで、本格的に指導する事はもちろんできない。リフティングも数回がやっとだ。


「なるほど。これがパッシヴスキルの効果か……」


 試しにスキルゾーンに< リフティング >をセットしてボールを蹴り上げてみたが、久しぶりに触れたにも拘らず四回続いた。適当にやってコレだから、真面目にやったらもっとできるだろう。

 あかり曰くコモンではそこまで効果はないという話だったが、素人から見れば結構な差が体感できる。本当になんとなくだが、どう体を動かせばリフティングが続くのか分かるのだ。覚えのない経験を植え付けられているようで少し気持ち悪いが、それに合わせる事で早く上達できるのは分かる。モブ夫もモブ次もスキルゾーンはあるので、これを使って遊んでもいいだろう。


「よし、俺も昨日は休暇みたいなもんだったし、お前らも今日一日は丸々休暇な。これからも最低週一日は休日を作るようにする」


 ただでさえ一日の活動時間が極端に長いのだ。最初の頃ならともかく、今なら週一で休みをとったところで問題はないだろう。最大の懸念だった食料だって、潤沢とはいえないまでもストックしてあるし、< ぼっち食堂 >やブロック食料もある。


「なら、私は読書タイムといこう」

「お前はちょっと運動しろ」


 早々に実験場から逃げようとするリョーマを捕まえる。


「さっきカード漁ってていいものを見つけたんだ。ほら、取って来い!」

「見てたから知ってるが、それは危険だ。やめたまえ、御主人様! ぬあー! 犬の本能がっ!?」


 マテリアライズした< フリスビー >を投げると、それに引き摺られるようにしてリョーマが駆け出していった。

 フリスビーを咥えて戻ってくる度にフラフラになっていたが、何回か繰り返すと慣れたのか次を要求されるようになってしまった。根本的に足が遅いのか全然追いつけないが、ちょっと楽しそうだ。息遣いはそろそろヤバいが。

 しばらくすると、そこには疲れ果てて動けなくなったリョーマと、フリスビーで遊ぶモブ夫とモブ次の姿が。楽しそうで何よりである。


「さて、あかりはどうする? 物理干渉できない以上、できる事は限られるだろうが」

「えっと、休暇はありがたいのですが、特に思いつく事が……特に変わりませんが質疑応答とかカード整理とか手伝いますよ」

「確かに出てきていきなり休みってのもな。いい機会だから、カード整理するか。さすがにそろそろ乱雑になってきてる感があるし」


 乱雑になっているのはかなり前からだが、整理する気にならなかったとも言う。基本的に重要そうなものだけ覚えておいてあとは放置していれば問題ないからだ。

 しかし、こうしてサッカーボールやフリスビーがダンジョンに関係ないところで活躍しているのを見ると、大量のノーマルカードの中にも埋もれているものがあったりするかもしれない。鑑定しても良く分からないものも多いが、アシスタントとしての知識を持っているあかりが解説してくれるなら期待できるだろう。




-3-




「結構謎なカードも多いんだが、一番謎な< ABパンチ >に関してはお前も分からないよな?」

「そもそも必殺技なんてカテゴリがある事を初めて知りました。多分、他のアシスタントが出てきても分からないんじゃないでしょうか」


 アシスタントどころか神様でさえ匙を投げるくらいだからな。これについては半分あきらめてるからダメ元だ。


「それについてはお役に立てませんが、カード整理ならいい機能がありますよ」


 あかりはそう言うと宙空ウインドウを出す時のように、空中へ手をかざした。それで表示されたのはステータスウインドウでもガチャ太郎ウインドウでもダンジョン中継でもなく、カードの一覧だった。カード名とレアリティ、カテゴリ別にリスト化されていて、鑑定済のものは第三カテゴリや付与能力まで載っている。


「おっ、これは普通に助かるな。見やすい」

「マスターが保有しているものに関してはすべて登録されています。カテゴリごとの絞り込みや除外もできるので、目当てのものがある場合は便利かと」


 あくまでただのリストだから実際に整理する際にはカード自体を移動する必要はあるものの、どんなカードがあるのか一目瞭然で、比較もし易い。どういう風に判定しているのかは分からないが、マテリアライズ済のものや譲渡した< 便座カバー >などはちゃんと除外されていた。紛失したものはないはずだが、拠点内でなくしてしまった場合も確認できるのも有り難い。


「でもこれ、どうやって使うんだ?」

「えっと……操作は私しかできないですね。……口頭で」


 地味に不便である。

 そして、あーでもないこーでもないと俺の持っているカードを眺めていると、当てた当時は気になっていたものの今の環境では使えそうになかったり、興味がなくなったりしたカードの名前が見つかる。その中で特に目立つのは、ペットを手に入れるために頑張った結果出てきてしまった大量の虫ペットだ。


「大量の虫ペットに使い道あると思うか? あと、< 大人しいペットゴブリン >」

「……サーヴァントやモンスターだったらともかく、ペットの虫だとちょっと難しそうですね。愛好家の人はいると思いますけど」


 俺にそんな知り合いはいないし、いたとしても渡す手段はない。


「今は無理ですけど、アイテムに効果を付けたりする材料としては使えるはずですね」


 いきなりの材料扱いである。一応、リョーマと同じカテゴリだったりするんだが、そういうのは気にしないのだろうか。


「あとは……ブロック食料とか?」

「虫食はちょっと……」


 元からパーツのみっていうならともかく、生きているものを材料にするのはちょっと抵抗がある。とはいえ、カード記念館用に一枚作るのはアリか。……要検討。


「< 魔法の鞍 >は騎乗用のユニットがいないから意味ないですね。ノーマルカードだと使い捨てになっちゃいますし」

「一応、オートバイはあるんだが」

「対象ではありますが、対象に合わせてサイズが変わるだけなので、元々乗る場所があるものにはあまり意味ないかと」


 サドルだけ盗まれた自転車じゃあるまいし、オートバイならそりゃシートついてるよな。……< 武装実験場 >ならコレも実体化できるし、あとで乗り回してみよう。


「魔法繋がりで< マジック冷蔵庫 >はどうだ? 電気ないから使えないかと思ってそのままなんだが」

「電気は必要ないですね。代わりに< 魔石 >があれば動く冷蔵庫です。もしハイブリッドタイプなら、電気でも動きますけど」


 その< 魔石 >がねーよ。


「確か、マスターは第二ダンジョンが鉱山なんですよね? 種類にもよりますが、そこで発掘できるのでは?」

「あー、あそこで発掘できるかもしれないのか」


< 鉄鉱石 >が出てくる以上は、そういう鉱石系のカードが出土する可能性もあるのか。今ならポーチがあるから、チケット回収周回をモブ夫単独にして、モブ次とフライングバインダーを鉱山で巡回させるって手もとれる。

 今のところ攻略する予定はないが、何もないって事はないだろうし、あそこも調査の必要はあるんだよな。悩ましい話だ。


「< 魔石 >系のドロップアイテムは、魔法生物系のモンスター……ゴーレムなどからドロップする事もありますね」

「モンスター名鑑を見れば分かるが、それは不可能なんだ」

「マスターはまだ< 修練の門 >の第十一層が最高到達深度でしたっけ。確かにそのあたりだとゴーレムは出てこないですね」


 そういう問題ではないのだ。……いや、ゴーレムっぽいゴブリンとかなら出てくる可能性はあるな。困った事に。


「私のほうで気になったのは< 筋力増強ギプス >ですね。簡易鑑定の結果にはありませんが、多分ステータスの成長補正があるのではないかと。< 力 >、< 体力 >、< 敏捷 >あたりの」

「それか。確かに筋肉は鍛えられそうだったが、装備品としては候補から外してたな」


 トレーニングの際なら問題ないが、動き辛い装備を着けて戦闘をする事を考えるとどうしても二の足を踏んでしまう。枠もないし、装備するならモブ夫の装備のどれかを交換って事になるが……。


「ユニットもステータスの成長はするもんなのか?」

「はい。マスターよりは上がり辛いと思いますが」


 なら、モブ夫に装備させて様子見してもいいな。あまり深層で装備させるのは危険だが、カード回収の周回中なら問題ないはずだ。それで効果があるようなら俺が試すって形にすればいい。

 ……アクセサリゾーンの枠があれば十分候補の範疇だな。今のところ使えそうなアクセサリって< 探索用ウエストポーチ+ >くらいだし。

 ただ、あまり考えたくはないが、そういった成長要素があると、もしロストした場合が怖過ぎる。あんなマネキンのような連中でさえ現時点でもロストしたら立ち直れないと思うのに、手間と時間をかけるほどにそれが倍増していくとか耐えられる気がしない。

 ロストの可能性があるような危険地帯に行かせなければいいんだろうが、それでは本末転倒だろうし、安全マージンをとっていても事故は有り得る。……考え過ぎると動けなくなりそうだ。今後ユニークなサーヴァントカードが出てきたらどうすればいいんだ。


「あとはそうだな……モブ夫のクラスゾーンが空いてるんだが、たとえば< ハンドボール選手 >をセットして何か意味はあると思うか? 能力値補正ないのは知ってる」

「能力値補正以外でも何かしらの効果はあるはずです。ボールに関連する装備の特殊効果が有効になったり、投擲関連のスキルに上方修正が掛かったり、スキル習得が効率化されたり……」

「なるほど。野球だから意味がないかもしれないが、あとで< スプリットフィンガーファストボール >で試してみるかってボールがないか…………ん?」


 あれ、なんかさっき妙に気になる事を言われたような……。


「……スキル習得?」

「はい?」


 そうだ。なんだ、スキル習得って。スキルってカードをセットして使うものだろ。


「まさか、スキルってカードなしで使えるようになるものなのか?」

「え、あ……はい。習得可能です。そういえば、マスターはまだ何も習得していないんですね」

「なんだそれは、当たり前の話なのか? ある程度攻略が進んでいたら一つ二つは習得しているような……」

「前例がないので分かりませんが、特にシステム的な制限などはなかったはずなので、習得していてもおかしくはないかと。すいません、解説すべきでしたね」

「ああいや、すまんが解説頼む。ちょっと想定外だった」


 あかりの解説によれば、スキルカードはあくまで後付けで付与される能力であって、スキルそのものはカードなしでも使えるようになるのだという。

 ただし、どんなスキルを習得できるかは適性によるし、適性があったとしても膨大な修練が必要になるのだとか。前例が乏しいのでどの程度修練が必要という目安はないものの、習得自体は事前に確認されているらしい。


「スキルカードは習得に必要な修練を大幅に短縮する役割を持っています。適性に関しても、ある程度は底上げしてくれているんじゃないかって話でした」

「つまり、セットして使っていればいつかはカードの補助なしで使える……かもって事か」

「そういう事ですね」


 俺はずっと< 闘争心 >をセットして使っているが、習得するような兆候はない。次点で多く使っている< マテリアライズ >も同様だ。その事から分かるように、習得に必要な修練というのは数週間~数ヶ月単位では足りないという事なのだろう。

 ただ、少なからず< 闘争心 >の影響は受けていると思う。慣れもあるのだろうが、俺はこんなに戦える精神性ではなかったはずだ。チキンな現代人は伊達ではない。これがカードなしでも維持できるようになればスキルを習得した事になるって事なのか?


「ひょっとして、能力が付与された装備品でも影響があるとか?」

「どうでしょう。ひょっとしたらあるかもしれませんが、カードが持つ習得補正はないはずです。やはり前例はないので」


 すでにない< ゴブリンの蛮族棒 >も< 闘争心 >に近い効果を持っていたが、やはり影響はある気がするんだよな。まさか、俺の急速な蛮族化はそこら辺に根本的な原因が……。なんてこった。


「となると、あんまり変なスキル……特にパッシヴスキルを習得したら問題があるな」

「付け替えできませんからね。わざわざそんな変なスキルをセットする事もないでしょうけど、気をつけたほうがいいかもしれません」


 そうなると、< 脅迫観念(睾丸破壊) >とか絶対にセットしたくない。もし適性があったりして、ちょっとセットしただけで間違って習得してしまったら最悪だ。ディディー2号が誕生してしまう。




-4-




 その後もあかりに解説をお願いしつつカードの整理を行った。セットして試してみればいいカードについても一通り使ってみる。今日はもうダンジョンに行く気はないので、< 湧き出す瓶( ワイン ) >のワインを飲みつつだが。

 俺は酒そのものがそこまで好きではないので、あれば飲む程度のものだし、そもそもあんまり美味くはないが、蓋をとれば無限に湧いてくるワインは質より量って人には感涙ものの仕様だろう。

 ちなみに、無限に湧いてくるといっても瓶の容量以上には貯まらないし、その分が貯まるのも一日かかるので万能ではない。


 それはさておき、微妙に気になっていたけど検証を後回しにしてたカード群の評価だ。



< 汚れないバスタオル >

 レアリティ:アンコモン

 分類:ノーマル/アイテム/入浴グッズ

 強化値:★

 付与能力:クリーン

 解説:汚れない。


 めっちゃ便利である。吸収するのは水分だけなのか、汚れの成分がポロポロと溢れ落ちるのは皮膚が剥がれているみたいで気持ち悪いものの、汚れまくってるのに水浴びくらいしかできない俺の救世主のような存在だった。解れたりはするので物理的な限界はあるものの、常用確定である。



< バトルポーション >

 レアリティ:アンコモン

 分類:ノーマル/アイテム/医薬品

 強化値:☆

 付与能力:-

 解説:戦闘時に使用する事を目的とした、即効性のある飲み薬。


 数少ない真っ当な回復薬という事で使わずにとっておいたのだが、やはりかなり優秀な効果らしい。

 あかりの解説によれば、個人差はあるものの服用から数十秒かけて効果量分のHPを回復し、余剰分も効果時間中ならダメージを受けた際も追加で回復してくれるとの事。

 強敵と戦う前に服用するのも良し、保険として持ち歩くのでも良しと、やはりもったいないと感じてしまうジレンマ。いざという時躊躇せずに使える覚悟が必要だ。



< 鬼盛りラーメン(濃厚味噌) 《 +山盛り千切りキャベツ 》 >

 レアリティ:アンコモン

 分類:ノーマル/アイテム/料理

 強化値:★

 付与能力:《 山盛り千切りキャベツ 》

 解説:目玉商品のない店がヤケクソで作ったドカ盛りラーメン。舌が馬鹿になるくらい濃厚な味付けが特徴。


 ついに手に入れたアンコモンの料理カードという事で、悩んだ結果、野菜不足を補うために< 山盛り千切りキャベツ >を合成。

 合成したあとで別皿に盛られたキャベツ用の調味料がない事に気付くものの、味が濃すぎるので箸休め的に食べるのもアリと自分を誤魔化した。



< 重量化 >/ < 超重化 >

 分類:ノーマル/マテリアル/合成素材


 武器の重量は攻撃力に直結するために重要である。もちろん持てないような重量は論外だし、振り回すのに適した重量というものはある。

 俺が使う< ウォーアックス+ >は重量と遠心力で叩き割る武器なので、今後のために確認しておいたほうがいいだろうと枠の空いていた< ゴブリンロングボウ >と< ゴブリンレザーシールド >で実験してみた。

 しかし元々< ウォーアックス+ >より軽い装備なのにこれが想像以上に重く、今の俺の筋力でさえ取り扱いは困難。< 超重化 >に至っては持ち上げる事すら不可能という有様だった。

 追加重量は元の武器の重さに依存するとの事なので、重量武器に使うのは厳しそうだ。合成素材と枠を使う事になってしまったが、むしろ事前にテストできて良かったと考えるべきだろう。

 これを使い熟せるかどうかは、今後の俺の成長に期待だ。



< 伝説の棒 >

 レアリティ:アンコモン

 分類:イクイップ/アクセサリ/打棒

 強化値:★

 付与能力:伝説

 耐久:100%

 解説:部族長の血縁が持った場合、血族三人を殺さなければ自分が死ぬという伝承が残る木の棒。拡大解釈と偶然が重なった結果、伝説に昇華された


 良く分からん解説文だが、あかり曰く付与能力の< 伝説 >はレジェンドレア相当の性能補正が付与されるとの事。しかし、元がただの木の棒なので補正されてもたかが知れていた。



< マグナムストレート >

 レアリティ:アンコモン

 分類:スキル/アクション/拳撃技

 強化値:☆

 付与能力:-

 解説:強烈なストレートパンチ。拳撃速度補正+


 ただのパンチではあるが、これまでに経験がないくらい腰の入ったパンチを打てたので好印象。

 武器なしでも使える技は補助としても活用できそうなので、ゾーンが空いていたら使ってもいいくらいだが、如何せん現在の構成に割り込む余地はなかった。



< アーマー・ブレイク >

 レアリティ:アンコモン

 分類:スキル/アクション/重量武器技

 強化値:☆

 付与能力:-

 解説:HPダメージを攻撃対象の防具への耐久値ダメージへと変換する。


 対象の防具を攻撃する際、多くの耐久値ダメージを与えられるスキルだ。あかりによれば他にも武器用と盾用のスキルが存在するらしい。

 重量武器技なので、俺たちの使う武器種とも一致するし、選択肢としてはアリだ。モブ夫のスキルとして保留。



< エレキショック >

 レアリティ:コモン

 分類:スキル/アクション/戦闘魔術

 強化値:-

 付与能力:-

 解説:接触した対象に電流を流し、一時的な行動不能に陥らせる。


 レアリティの問題なのか、モブ夫相手に試してみてもダメージは極小で行動不能時間も短い。射程の問題もある。

 使えないというほどではないが、常時セットするほどではない。



< 膨張する大腿四頭筋 >

 レアリティ:コモン

 分類:スキル/アクション/筋肉魔術

 強化値:-

 付与能力:-

 解説:対象の大腿四頭筋を一時的に強化・発達させる。


 大腿四頭筋が気持ち悪いレベルで膨張・強化させるというピンポイント過ぎるスキル。一応脚力も強化されるようだが、膨張した事によって行動が阻害されるデメリットが大きい。筋肉魔術ってなんだよって感じだが、大量にあるだろうカテゴリの中にはそういうのもあるのかもしれない。



< 方向感覚 >

 レアリティ:コモン

 分類:スキル/パッシヴ/感覚補正

 強化値:-

 付与能力:-

 解説:自分の現在向いている方向が分かるようになる。


 東西南北の概念がないダンジョンだが、どちらの方向を向いているのか感覚的に分かるのは結構便利。しかし、やはり枠の問題があるため補欠。



< 暗視 >

 レアリティ:アンコモン

 分類:スキル/パッシヴ/感覚補正

 強化値:☆

 付与能力:-

 解説:暗い場所でも良く見える。


 第六層以降、薄暗くなってきたダンジョンであったら便利的なスキル。暗所対策としては便利だが、やはり枠の問題で現時点では補欠。



< 屋内プラネタリウム >

 レアリティ:アンコモン

 分類:ベース/リフォーム/屋内変更

 強化値:★

 付与能力:暗所

 解説:屋内向けの天体投影機能。部屋を暗くする機能付き。


 普通に天体映像を投影するだけのものだったが、それに合わせて部屋を暗くしてくれるので、枠に余裕があれば睡眠時に使ってもいいかなと思えるカードだった。しかし、如何せん空き枠はなく、リフォームゾーンも< 畳床 >が専有している状況のため、しばらくは死蔵する事になりそうだ。



< 芝生 >

 レアリティ:コモン

 分類:ベース/リフォーム/地面変更

 強化値:-

 付与能力:-

 解説:地面を芝生に変更する。


< 畳床 >と同様、足元を芝生に変更してくれるリフォームカードだ。変更されるのは地面なので、より上にある床変更のほうが優先されるらしい。一応拠点の石床でも反映されたが、本来は屋外用のリフォームカードとの事。

 今のところ拠点でしか使い道はないので、部屋の中に芝生があるという奇妙な光景になるが、気分転換にはいいかもしれない。



< 武器の飾り棚 >

 レアリティ:コモン

 分類:ベース/インテリア/飾棚

 強化値:-

 付与能力:-

 解説:武器を飾る棚。スロットに投入したウエポンカテゴリのカードが実体化して飾られる。


 独自スロットを持ち、そこにウエポンカードを入れると飾られるインテリアカード。とりあえず武器の形状を確認したいとか、性能は微妙だけどデザインはいい武器を飾るのにはいいかもしれない。

 疑似的な保管庫としても使えるので、< 武装実験場 >のインテリア枠に使ってもいいかもしれない。かかし用として使うには微妙だが、候補としてはアリだろう。



< ゴブリン松明 >

 レアリティ:コモン

 分類:イクイップ/チャージ/携帯光源

 強化値:-

 付与能力:-

 耐久:100%

 解説:常時燃え続けるゴブリンの手。松明の代わりにどうぞ。


 燃えているのは腕側で、時間経過と共に短くなっていく仕様。握手するように持つ事になるため気持ち悪いが、数時間は消えないし、チャージカードであるために何度でも使い回せる。松明としては優秀だから、活躍の場はあるかもしれない。でも、あまり使いたくはない。



< ビキニアーマー >

 レアリティ:コモン

 分類:イクイップ/アーマー/軽鎧

 強化値:-

 付与能力:-

 耐久:100%

 解説:セパレートの上下で構成された軽金属鎧。一見防御力皆無に見えるものの、HPへの防御補正は備えている。

 基本的に女性用だが、特に装備制限などはない。



< エロ競泳水着 >

 レアリティ:アンコモン

 分類:イクイップ/アーマー/水着

 強化値:★

 付与能力:エロス

 耐久:100%

 解説:専用開発された新素材を使った競泳水着。

 エロが前面に押し出されたデザインのため、水泳の大会に出場する際は注意。最悪、出禁を喰らう可能性もあるぞ。



< オートモザイク >

 レアリティ:アンコモン

 分類:イクイップ/アクセサリ/腕輪

 強化値:★

 付与能力:モザイク

 耐久:100%

 解説:装備すると局部に常時モザイク処理が発生する腕輪。モザイクに実体はないので、動きを阻害しない。



「さて、ドスケベアシスタントあかりよ、お前はイクイップゾーンを持っていたはずだな」

「清純派なのでお断りします」


 まだ何も言ってない内から断固たる拒否である。しかし、俺は諦めない。


「着けてみたら意外と新たな性癖に目覚めたりするかも……」

「目覚めたくないのでお断りします」

「そんな事を言って、実は内心興味あったりするんだろ?」

「な、ないですっ!!」


 ふむ。あまり強引にセットするのはアレだが、脈アリと……。これはやはりムッツリドスケベ。

 ユニットのウインドウは俺が開く事もできるし、やろうと思えば強引にセットできなくもないが、こういうのは無理矢理よりも自発的に行動してもらいたいタチなのだ。


「ないですからねっ!?」


 はいはい、ワロスワロス。

 まあ、ビキニアーマーを着けたところで、あかりの固有衣装を見る限り露出度が減る可能性のほうが高いわけだが。今後に期待しておこう。




-5-




 それはそれとして、やはりガチャは引く。せっかくモブ夫たちが稼いできてくれたのだから、ガチャの使徒としては回すべきだろう。

 いつもの相方であるリョーマは大絶賛ノックダウン中なので、実況解説の代役は引き続きドスケベアシスタントあかりである。


「……良く考えたら、お前が当たったのもゴブリン十連ガチャだし、ひょっとしたらコレで妹とやらが出るかもしれないな」

「ま、まさかそんな事はないと思いますけど。もしそうならアシスタントゾーンの枠は……」

「そりゃお前と争う事になるな。より有能でスケベなほうがレギュラーという事になる」

「ないです。絶対当たりません! この枠のレギュラーは私で決まりです! はい、決定!!」


 そんな事を言っても、結局は俺のガチャ運次第なんだが。

 というか、リョーマもそうだがカードユニットは妙に自分の立ち位置を確保する事に固執している気がする。これもカード故の在り方という事なのだろうか。設定上だけとはいえ、妹に会いたいとか思わないんだろうか。俺なら……設定上だけの関係で会った事もない奴は別にどうでもいいな、うん。


「真面目に予想するなら、今回はそれほど変わった結果にはならないと思うぞ」

「マスターはそういう運の流れ的なものを読める感じの人なんですか?」

「いや、逆張りしとけば物欲センサー誤魔化せるかなって」

「そんなオカルトな」


 オカルトでもなんでも、やれる事はやっておきたい。大体、今のこの状況がオカルトそのものだ。尚、物欲センサーに関しては大体当たってる気がする。


「それじゃゴブリンガチャ十連一回目行くぞ」

「初めて見るので、ちょっとドキドキしてきました」


 神様がボール投げる演出くらいでそんな面白いもんでもないんだが、まあいいか。



< ヤクザの絶叫 コモン ベース/BGM >

< 軟質オブラート コモン ノーマル/アイテム >

< 六角レンチ コモン ノーマル/アイテム >

< 強炭酸コーヒー コモン ノーマル/アイテム >

< ゴブリン人形 コモン ノーマル/アイテム >

< ローリング・クラッチ・ホールド コモン スキル/アクション >

< ゴリラ・ダンス コモン スキル/パッシヴ >

< ラムネ菓子 コモン ノーマル/アイテム >

< 靴紐 コモン ノーマル/アイテム >

< ドスケベ清純派アシスタント あかり専用パンツ アンコモン イクイップ/アーマー >



「あかり、お前……」

「え、ちょ、ちょっと待って下さい!? なんですかコレ!? ちゃんと履いてますからね? え、履いてるよね? う、うん、触れないけど履いてる」


 あまりにピンポイントな出目にまさか今は履いてないのかと思ったが、履いてるらしい。何故こんなピンポイントな専用アイテムが出るのかは謎極まるが。


「まさか引く度にお前の下着が出てくるわけじゃないよな」

「し、知りませんよ、そんな事」


 もしそうなら邪魔ってレベルじゃないぞ。どうしようもないが。

 ……とりあえず、パンツの事は後回しにするとして、他のは……どうでもいいもんばっかだな。< ラムネ菓子 >は後で食おう。


「はい、じゃあ気を取り直して十連二回目ー」

「……また下着出たりしませんよね」



< 爪切り コモン ノーマル/アイテム >

< カード・ボム アンコモン スキル/アクション >

< ゴブリン・ワーカー アンコモン ユニット/ワーカー >

< またたび コモン ノーマル/アイテム >

< ハブ酒 コモン ノーマル/アイテム >

< フライパン コモン ノーマル/アイテム >

< じゃがいも コモン ノーマル/アイテム >

< 魔法陣柄のカーペット コモン ノーマル/アイテム >

< ウィスパー・マッスル コモン スキル/パッシヴ >

< ラジウム鉱石 コモン ノーマル/マテリアル >



「……うん、まあこんなもんか」


 実は、この流れだと何か予想外のものが出るんじゃないかと思っていたのだが、口にしないで正解だった。良く分からないものはいくつかあるものの、見た感じいつものハズレガチャである。……< ハブ酒 >は飲んだ事ないからちょっと興味あるかな。


「えーと、この中だと< カード・ボム >が当たりですかね」

「どんなスキルだか分かるのか? ……そりゃ分かるか」


 いつもなら鑑定してから判断って流れだが、仮にもダンジョンオペレーターを名乗るあかりなら知っててもおかしくはない。


「カードにMPを込めて投げると爆発します。爆発したカードはなくなりますし、爆発力はレアリティによりますが、コモンでもそれなりに威力はあったかと。あれ、投げなくてもいいんでしたっけ」

「ほう」


 自信がなさそうなのでMPの消費量や使い勝手はちゃんと確かめる必要はあるが、聞く限り普通に使えそうなスキルだ。

 投げたカードがなくなるといっても、ゴブリンのパーツならいくらでも手に入るし、なんなら現地調達どころか戦闘現場でも調達可能である。練習材料にも事欠かないし、ハズレどころか中々の当たりなんじゃないか? 今日はダンジョンに行く気はないが、< 武装実験場 >でテストするくらいならアリかもしれない。



 ……と、ウインドウを開いたところで、ニューストピックスに新着の文字が表示されている事に気付いた。


「なんだ、来週のピックアップ情報かな?」


 何気なしにトピックスを開き、ニュースの一覧を確認してみると、新着マークが付いたニュースは首を傾げるようなものだった。


「どうしました?」

「いや、なんか変なニュース……なのか良く分からんが、エラーみたいなもんが……」




 そこには[ < 質屋『ロストの質流れ』 >の質草スロットが一杯です ]というメッセージが表示されていた。

 ……カードをロストした覚えはないんだが、何がどうなって一杯になるんだろうか。





次回もガチャ予定なので、普通に続きます。(*´∀`*)



これだけ読んでる人は少ないと思いますが、一応こちらでも宣伝。


二ツ樹五輪(*´∀`*)再始動プロジェクトを始めてます。

http://oti-reboot.frenchkiss.jp


とりあえずの目標として、現在(*■∀■*)さんの「引き籠もりヒーロー」の書籍化を目指したクラウドファンディングを実施。数分で目標達成した上に意味分からん額になってビビってますが、期間は3月末までとなっていますのでまだマラソン中。


詳細については上記サイトかTwitterか活動報告で。クラファンへのリンクもそちらから。


新人Twitter芸人 二ツ樹五輪のTwitterアカウント(現在の主な情報発信)

https://twitter.com/0w0_Kongenzu


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(*■∀■*)第六回書籍化クラウドファンディング達成しました(*´∀`*)
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― 新着の感想 ―
[一言] エロ競泳水着をドスケベアシストに合成してだな…
[良い点] キャラ同士の掛け合いが楽しい。右も左も分からない状況だったのがドスケベのおかげで進んだ点 [気になる点] Dandelion bum bum (たんぽぽのおしり) [一言] 続きが読める日…
[一言] パンツ履いたイラストはまだですか!
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