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第二十三話「カードラボラトリー」

水分は大切という教訓。(*´∀`*)




-1-




「というわけで、俺は学習した。補給大事」

「……何があったか知らんが、妙にやつれてないか、御主人様」


 畳の上で正座しながら、呼び出したリョーマに語りかける。

 多分、まだ水分が足りてないんだろう。ある程度回復した感はあるが、拠点の自然回復だけでは完全に元に戻るまでもう少しかかりそうだ。

 カードセットしないと時間が経過しないこいつから見れば、唐突に死にかけになったように見えるはずだ。そんな困惑したリョーマを放置して俺は続ける。


「軍人上がりのお前なら分かるだろうが、新兵ほど疎かにしやすく、戦術あるいは戦略規模で理解し辛いのが兵站というものだ」

「軍に所属した事などないが、まあそうだな」


 もちろん分かってるが、お前と話してると将官か、少なくとも佐官を相手にしているような気分になるから仕方ないのだ。なんなら、サーをつけないと怒られそうな雰囲気まである。


「前回からどれくらい経ったのか分からんが、餓死でもしたのかね?」

「今の規模だったらまだ餓死はないだろうな。水がないまま彷徨い続けて渇死しかけた。マジでギリギリ。ちなみに、お前をカードに戻してからすでに二十四時間以上経過している」

「おぉ……」


 ボロボロの状態で帰還、そのまま気絶して、気付いたら更に半日経過していた。地味にここに来てからの最長睡眠である。気絶を睡眠と呼んでいいのかは分からんが、似たようなもんだろう。自動回復効果のある拠点でこの有様だから、如何に極限状態だったかという話である。起きてしばらくするまで拠点に帰還したのは幻なんじゃないかと疑ったくらいだ。ひょっとしたら畳の寝心地が良過ぎて寝過ごしたのかもしれんが、現時点で完全に体調が戻っていない以上、その可能性は薄い。


「拠点では最低限の生命保証はされてるって話だったが、体感した限り多分本当に最低限だな。水飲まなくても水分が補給されてる感じはあったが、起きてから水飲んだほうがはるかに戻るのが早かった」


 そして、妙に腹が減っている。時間も経っているし確実ではないが、この手の生命維持にエネルギーを使っているんだろう。最低限動ける程度には維持しつつ、カロリーや水分など使えるリソースがあるならそれを使って回復を促進する。そんな感じなのではないだろうか。つまり、HP/MPの消耗、怪我や状態異常、物理的な怪我は何もせずとも治るが、飯を食ったほうが治りは早そうという事である。


「だからそんなに調子が悪そうなのか。冷蔵庫の野菜室で半年放置した人参か何かに見えるぞ」

「たとえが分かり辛い……今は風邪で寝込んだ時みたいな感じだな。熱はなさそうだが、体が重い。多分、あと二、三時間もすれば元通りになるはずだ」


 悪夢のような第三層後半戦と違って、今はせいぜい会社休むか悩む程度の状態である。良く訓練された社畜なら、この状態でも迷いなく出社するはずだ。良く訓練されていない社畜なら、会社を休む連絡のための文言を考えて四苦八苦しつつやっぱり怖くなって出社してしまうはずだ。つまり、調教された現代人なら出社してしまうのだ!

 俺はすでに社畜ではないから別に寝てたっていいんだが、やらないといけない事はあるし、起きてても回復速度は変わらないだろう。


「ちなみに、ダンジョンに水場のようなものは?」

「今のところ一切ない。まだ第三層攻略したところだから先に進んだら分からんがな。そういう補助施設が出てくる事も考えられるし、逆に今後一切ないという可能性だってある」


 そう、あんな苦戦してしまったが、まだ第三層なのだ。一体どれくらいの深さがあるのかも分からんが、第三層が中盤や終盤という事はないだろう。十六魔将の一体がトイレで苦しんでいるという第八層までは確実にあるんだろうし、自宅への一時帰還の条件として神様が提示した際、第十層の存在についても触れている。つまり、最高でも俺はダンジョンの30%しか到達していない。深さもそうだが、[ 修練の門 ]以外のダンジョンが出てくる可能性だってある。

 ……ってあれ、第八層にはトイレがあるのか?


「……多分序盤も序盤、チュートリアルに毛が生えたようなもんなんだろうな。今回は俺の準備不足って自覚はあるし防げた問題でもあるわけだが、正直この先単純に楽になるとは思えない。俺の使徒としての修行場でもあるんだろうし」

「道理だが、修行場というのなら現地施設の活用能力を鍛えるという線もあるな。また、有用な施設を用意する事で、それを利用したトラップも用意できる」

「それは少し考えた。だから絶対とは思ってない」


 攻略者にとって有用な施設が追加されたとしても、それがイコール救済処置になるわけがないのだ。俺の場合、やっとの思いで水場を見つけたらゴブリンがおしっこしてました、なんてパターンもありそうだから困る。

 ……まあ、トイレはあるんだろう。


「今回の件も、俺のフリーゾーン活用能力や過去のカード資産を上手く使えって教訓に繋がるんだろうな」

「無事に戻ってこれる保証があるのなら、アイテム回収枠を無駄に圧迫する必要はないからな」


 フリーゾーンはその名の通りなんでも枠だ。どこかのゾーンに入れないと拠点に持ち帰れないという制限がある以上、どうしても回収用のゾーンに見てしまうが、本来このゾーンはRPGで言うアイテム枠なのだろう。

 昨今の作品では全メンバー共通管理、個数もほとんど制限がないというパターンも多いが、それはユーザーに不要なストレスを感じさせないという目的がある。現実的に考えるならアイテムの所持量は重要で、継戦能力にも直結するのだから考慮しないといけない部分なのだ。

 普通に考えるなら戦闘役だけでパーティを組んでダンジョン探索なんて自殺行為。飯、水、治療、予備装備や武器の修繕、長期に渡る行動なら寝床や調理の問題もある。アイテムの回収もそうだが、本来荷役に必要とされる要素は大きい。

 それに相当するフリーゾーンは、そういった補給要素も考慮していく必要があるわけだ。

 そういった能力があるならゴブリンだって立派なパーティメンバーになり得る。前にダイナミック自殺したゴブリンはその能力もないのだが。


「というか、そこら辺は知らないんだな」

「知識が偏っているからな。御主人様が探索しているというダンジョンの事はほとんど知らない」

「なら、その辺色々情報共有したほうがいいな。相談するのにも困るし」

「私はペットなのだが」

「お前をペットとして扱う気はない」


 可愛くないし。……とはいえ、ダンジョンには連れて行けないから、あくまで相談役だな。軍からPMCに出向してきたオブザーバーのような感じだ。


「どうも一人でいると妙な暴走をする事があるから、そういう時は止めてくれ」

「あまり自信はないが、注意はしておこう」


 多分だが、俺が暴走しがちなのは誰とも話さずにずっと一人でいるのが一因なのだと思う。ゴブリンと殺し合ったりはしているが、アレはあくまでモンスターだし、会話もできない。

 神様たちや九十九姉妹と話をする機会がなければ、精神的に病んでいる可能性もある。というか、今の時点でかなり人格への影響を受けている気がしないでもない。社会で生きていくための猫被りが不要になったのもあるが、それ以上に俺はこんなんだったっけと思う事もあるのだ。実家に戻っても本人かどうか疑われてしまう懸念さえある。リョーマにはその辺の防波堤になってもらいたい。


「まずは反省会だな。お前との情報の摺合せも併せて、どこに問題があって、何をすれば解決するのかを検討していきたい」

「ホワイトボードが欲しくなるところだな」

「会議にする気はない」


 ぶっちゃけ、俺は会議というものに良いイメージがない。営業だからという事もあるが、報告、情報共有の意味は感じられても、それ以上に時間を無駄にしているという印象が強いのだ。

 せめてプレゼンならいいんだが、部内会議の類はどうも苦手だ。なきゃないで困る事になるのだろうが、社内にいて時間に追われる仕事をしている人はもっと感じているような気もする。営業先でも結構似たような愚痴を聞いた。ひどいところになると一時間おきに会議してたりするところもあるのだ。俺との打ち合わせを口実に逃げてきた人もいた。


「とりあえず、ここまで俺が書いたメモは読んでもらうとして」

「結構マメだな。御主人様」


 ボールペンとバラバラのルーズリーフでここまで書き溜めてきたものだ。記憶から書き出したダンジョンのマップや覚書、アイテムやモンスターについて気にかかった事など。

 はっきり言ってまとまってはいないが、ある程度の情報は読み取れるだろう。


「この、『おっぱいマウスパットに関する考察』とは?」

「今は飛ばしていい。適当なところで説明しよう」

「ふむ」


 チワワであるリョーマに対しておっぱいマウスパッドの良さを語ってもただの雑談にしかならないだろう。ダンジョンにもまったく関係ないし。

 そんな感じで、俺の体調が戻るまでリョーマと情報の摺合せを行った。実際に体験せずにダンジョンの事を理解するのは無理があるのだろうが、ある程度のイメージは掴めただろう。


「つまり、ローグライク系のRPGをリアルに落とし込んだイメージか。ゲームシステムとして処理しない事で発生する大量の矛盾部分に盲点がありそうだ」


 だからといって、いきなりそこまで深い理解されても困惑するわけだが。




-2-




 結論として、今回の問題点は、良く考えずに未踏の地へ足を踏み入れてしまった事だろう。

 同じ場所を周回するならともかく、知らない場所に向かうのに散歩気分はいけない。思い立ったが吉日とは言うが、それは何も考えずに行動すべきという意味ではないのだ。現状で準備といっても大した事はできないが、それでもセットカードを見直すくらいはできたはずだ。選択肢が少ないというなら、少ないなりの対策はすべきである。今回の問題だって、決して防げないものではなく、対策の余地はあるのだ。

 普段の狩りでそれをやるというわけではない。あくまで未踏の地に踏み込む場合の話だ。

 では、どうすれば良かったのかと言えば単純な話で、補給物資になりそうなノーマルカードを持ち込めばいい。死蔵されている水は結構あるし、これらは失っても特に問題はない。フリーゾーンの枠を圧迫するのは難点だが、フライングバインダーと合わせて枠は増えているのだから、二、三枠圧迫されたところで大した問題はない。そもそも大量にドロップするマテリアルカードならそのまま放置したっていいのだから、実質的な効率だって大差はないだろう。取捨選択でチケットまで捨てていた前回が異常なのだ。

 ただ、ノーマルカードを物質化するのに< マテリアライズ >が必要という問題はある。フリーゾーンと違って、スキルゾーンの枠が一つ減るというのはかなり厳しい。しかし、選択肢がかなり広がるのは確かだ。水だけでなく食料を持ち込んだっていいし、< ゴブリンの秘薬 >のような消耗品も視野に入ってくる。検討の余地は十分以上にあるだろう。


 また、不幸中の幸いか、今回のボーナスで水分補給対策は選択肢が増えている。新しく増えたイクイップ/チャージゾーンに< ミネラルウォーター >をセットするだけで確実に補給が可能になるというのは大きい。量は少ないが、これがあるだけで精神的な余裕も変わってくるだろう。ノーマルカードと違って枠の心配もいらないから、常時これでも構わない。今後、チャージカードが増えてきた場合は新たに検討すればいい。


「やはり、現在の問題はゾーンの不足に起因するところが大きいな」

「だな。ベースゾーンだって必要ではあったが、他のゾーンも足りない」


 ストレス軽減は重要だからベースゾーンを増やした事に後悔はない。とはいえ、他のゾーンが足りないという事実は変わらない。

 現状、余ってるのはユニットゾーンくらい。補給もそうだが、俺はまだファウルカップしか身に着けていないのだから、イクイップゾーンだけでも十枠くらい欲しい。


 そういえば武器の問題もある。うろ覚えではあるが、超でかいゴブリンとの死闘でついに< ゴブリンの蛮族棒 >がご臨終なされた。

 コレに代わる選択肢は実のところあまりない。現実的に考えて< ゴブリンの棍棒 >か、< AK-47 >の銃剣を使うか、あるいは< ガントレット >を装備して殴るという手もあるが、どの選択肢でもしばらく戦力ダウンは否めないだろう。

 もちろん、< ナッツ・クラッシャー >は選択肢には入らない。新しい武器が手に入るまでは< ゴブリンの棍棒 >を代用武器にするのが妥当なところか。攻撃力的には大差ないのだろうが、< ゴブリンの蛮族棒 >の精神的な補正がなくなる影響が気になるところではある。


「< カードラボラトリー >で作れたりしたらいいんだがな」

「三層ボス攻略のボーナスで手に入れたというベースカードか」

「鑑定中だが、アンコモンだからもうすぐ終わる」


 多分、既存のカードを強化する類のものだと思うから、新しく武器が手に入る気はしないのが困るところだ。



< カードラボラトリー >

 レアリティ:アンコモン

 強化値:☆

 合成可能レアリティ:~UC

 分類:ベース/ライフ/生産設備

 解説:二枚のカードを合成する事で強化を行うための装置。一回の合成につき、ベースとなるカードの強化値一つと素材カードを一枚消費する。



 鑑定から読み取れる詳細は、大体これまでに想像していたものと合致する。アンコモンのカードまでしか合成できない制限は、おそらくこのカード自体のレアリティに関わっているのだろう。

 かといって、このカード自体を強化する方法は現在存在しないのが困ったところだ。


「リョーマは、これについて何か知ってるか?」

「合成、強化に関しては基礎的な概念のみ把握している。この解説文の内容とほぼ同等だな。強化値に空きのあるカードに対して別のカードを合成する事でスキルを付与するのだ」

「……とりあえず試してみるか」


 百聞は一見にしかず。モノがあるのだから、とりあえず試してみよう。


 < かんてい >をベースゾーンから外し、新たに< カードラボラトリー >をセットすると、中央にディスプレイのついた複合機サイズの筐体が出現した。

 ガチャマシンやアクアリウムのようにカード投入口があるので、ここに合成するカードを入れるのだろう。


 カードスロットにカードを投入すると、筐体の画面に投入したカードが表示される。一枚目がベースとして扱われるらしく、ここで強化値に空きのないカードを入れると戻されるようだ。

 次に合成素材となる二枚目のカードを入れると、投入したカードと合わせて合成結果が表示され、[ 合成しますか? ]というメッセージが出力される。意外とシンプルなシステムらしい。


 試しに< ゴブリンの腰巻き >と< ゴブリンの左腕 >を投入してみたところ、合成結果は< ゴブリンの腰巻き >のままで< 基本性能強化+ >という特性が追加されるらしい事が分かった。その結果だけ確認して、処理を中断する。

 続いて、< ゴブリンの左腕 >を< 汎用ゲームパッド >に変えると追加される特性が< 基本性能強化 >になってしまった。色々試してみたが、どうも合成するカードにも相性があり、ゴブリン用の装備にゴブリンの部位を合成する場合は付与される効果が強化されるといったルールが存在するようだ。ちなみに、デフォルトの追加特性は< 基本性能強化 >らしい。何も関係ないカードなら、大体コレになる。


「合成っていっても、あくまで元のカードへスキルや特性を付与するだけって事なのか?」

「いや、確かカード名そのものが変わる組み合わせもあったはずだ。具体例は知らんが」


 おそらく< チワワ >のまま変化せずに強化済であろうリョーマが言う。

 という事は、< ゴブリンの棍棒 >と< 闘争心 >あたりで< ゴブリンの蛮族棒 >になったりするんだろうか。アンコモンの< ゴブリンの棍棒 >がないから試せないけど。

 色々組み合わせはあるんだろうが、それを探すのは面倒臭い作業が伴うな。とはいえ、俺が所持しているアンコモンカードはそこまで多くない。


■ノーマルカード

 < 超高精密戦国武将フィギュア 最上氏編 延沢満延 >

 < 超高精密三国武将フィギュア 蜀編 姜維 >

 < 夢の再現デスマッチシリーズ 力道山 VS ウサイン・ボルト >

 < 魔法の鍵 >

 < 再現茶器シリーズ 九十九髪茄子 >

 < 高出力シャワートイレ ダイナマイト・インパクト >

 < ゴブリンの秘薬・改 >


■イクイップカード

 < ブレストプレート >

 < ゴブリンの腰巻き >2枚

 < 派手なゴブリンの腰巻き >

 < 奴隷の首輪 >

 < ガントレット >

 < ゴブリンレザーシールド >

 < ゴブリンレザージャケット >


■ユニットカード

 < フライングバインダー >

 < 巨大なミジンコ >

 < アンモナイト(再現種) >

 < チワワ >


■スキルカード

 < パワースラッシュ >

 < ナンバーアンカー >


■ベースカード

 < かんてい >

 < 畳床 >

 < スモールルーム >

 < 簡易転送ゲート >

 < ペット病院 >


 現在俺がカードとして保有しているアンコモンカードはこれだけだ。確かイグアナやトランクスもアンコモンだったような気がするが、マテリアライズ済なので対象外である。

 加えて、この内< 派手なゴブリンの腰巻き >、< 巨大なミジンコ >、< ゴブリンレザーシールド >、< ゴブリンレザージャケット >、< 高出力シャワートイレ ダイナマイト・インパクト >、< アンモナイト(再現種) >、< ゴブリンの秘薬・改 >、< チワワ >は投入できずに排出された事から、すでに強化済のものである事が分かる。


「手当たり次第に試してもいいが……結構な時間がかかるな」

「ご主人様がいない間、私が確認するという事もできるが」

「……いいのか?」

「投入口の届く足場を用意してくくれば問題ない。あと、多少唾液が付着する」


 まあ……犬だからな。その前脚でカードを持って投入ってのは難しいだろう。このカードは異様に頑丈でツルツルしてるから、唾液に関しては拭けば問題はないと思うが……。

 試しにやらせてみたら、器用に咥えて投入してみせた。俺がやるよりは時間がかかるものの、空いた時間を使うなら良いかもしれない。


「という事は、< かんてい >のほうも頼めたりするか?」

「構わんぞ。アレを横倒しにしてくれればなんとかなるだろう。次に鑑定するものを指示してくれれば、それを投入するだけだ」


 素晴らしい。合成の検証はともかく、鑑定クールタイム終了後の空き時間を無駄にしなくていいのは助かる。可愛くない以外は、なんて有用なペットなんだ。


「じゃあ、大量にあるコモンカード素材とのマッチテストはお前に頼むとして、とりあえずは意味のありそうな組み合わせで確認してみるか」


 というわけで、なんかそれっぽい感じの組み合わせをいくつか試してみる事にした。まずは< ゴブリンの腰巻き >二枚、同名カード同士の合成だとどうなるか。


「……いきなり別カードになったな」


 合成結果に出力されているのは< ? >である。これまでは元のカードと付与されるものが出力されていたから、これは新カードという事なんだろう。

 何になるかの法則性の確認、合成時の挙動やクールタイムの確認のためにこれを合成するのはアリなんだが……。悩ましいのは< ゴブリンの腰巻き >はテストに使い易い、絶妙にいらないカードというところだ。結果を確認したくとも、すぐに合成していいかは疑問である。


「素材側をコモンの< 腰巻き >に変えるのはどうだろうか?」

「ああ、それも確認してみるか…………ビンゴだ」


 素材カードをコモンに変えても結果は変わらず< ? >だ。アンコモンの腰巻きは一枚あれば十分だろうと、早速合成してみた。


[ ゴブリンの腰巻き+ アンコモン イクイップ/アーマー ]


「超普通」

「……< 派手な腰巻き >ではないんだな」


 リョーマは< ゴブリンの派手な腰巻き >になる事を予想していたようだが、どうやら違うらしい。それはまた別の組み合わせがありそうだ。他に確認する組み合わせがないが、同名カード同士の合成は+が付くって事なんだろうか。

 強化値の☆が一つなアンコモンでは確かめようもないが、更に同名カードを合成したらどうなるのかもいずれ確かめたい。また、+のついた同名カード同士ならどうなるのかも気になるところだ。


[ 生産実績 初カード合成! < 強化+ >! 入手! ]

[ 強化+ コモン ノーマル/マテリアル ]


 初めてカードを合成した事で実績が解除されたようだが、とりあえずこれは置いておく。


「そして、クールタイムは30:00と」


 キリがいいように見えるが、他を試してみないと法則は掴めない。ただ、合成こそできないものの、クールタイム中でもカードの投入と結果確認まではできるらしい。

 また、この合成によってもう一つ判明した事がある。一度合成した組み合わせは登録されるのか、別の< 腰巻き >を二枚投入すると、今度は結果欄に< ゴブリンの腰巻き+ >が表示されるようになったのだ。


「これは合成済カード限定か、それとも所持済カードも判定されるのか」

「所持済のカードが結果表示されるとしたら、< ? >になる組み合わせは確実に新カードという事だな」


 とりあえず分かるのは、無駄に同じ組み合わせのカードを合成してしまう危険がなくなったという事だ。これを確認するには、所持しているカードになる組み合わせを見つけないといけないわけだが、駄目元でQAに投げてみると、普通に回答が返ってきた。


 [ A.合成先か所持実績がある同名カードの場合、素材選択画面の合成結果に表示されます ]


 所持実績で判定されるらしい。これは助かる。

 たとえば、< ゴブリンの棍棒 >と< 闘争心 >で< ゴブリンの蛮族棒 >になる場合は、合成するまでもなく結果確認でそれが分かるという事だ。実際にこの組み合わせになるかは知らんが。

 また、合成結果が鑑定済カードと同名なら詳細まで確認できる。ますます鑑定が重要になってくるわけだが、あのボディペイントの処理速度は変わらない。


 そして、実績ボーナスで獲得した< 強化+ >について。

 一応鑑定もしてみたが、どうやらこれは素材として使うと同名カード同士で合成した時と同じように+の付いたカードに変化するものらしい。アンコモンの< ゴブリンの腰巻き >に使ってみたら合成結果として< ゴブリンの腰巻き+ >が表示された。とりあえず使わずに保留するが、容易にアイテム強化ができる類のカードなのだろう。

 となれば、カード分類のマテリアルがその手のカードを指すのではないかと思うのだが、< ゴブリンの右腕 >などが単純に同じカテゴリー……合成用のカードとは思えない。確かにカテゴリー的には同じでも、もっと別の使い道が存在するような気がするのだ。……というか、大量に肥やしになっているコレがそれにしか使えないとなると困る。




-3-




 カード合成についての検証は続く。

 ある程度基本的な事は確認できたから、次は応用……実際に必要なものについて色々試してみる事にした。

 クールタイムの兼ね合いもあるから連続した合成はできないものの、現時点では結果確認しているだけでもその時間は経過する。


 まず、< フライングバインダー >に< ゴブリン探知機 >を合成する事に成功した。実際に試したわけでないからどういった挙動になるのかは分からないものの、スキルとしては《 ゴブリン探知 》が追加されているのが確認できている。

 ちなみに、イクイップ/パーツはマシン専用なのか、< フライングバインダー >以外のカードに合成しようとしても< 基本性能強化 >が付くだけだった。


 次に< スモールルーム >。何気なく検証していたのだが、これに他のベースカードを合成すると《 +かんてい 》のようなスキルが付与される事が判明した。

 この状態でカードを設置すると、スモールルーム内にその施設が追加された状態で実体化する。元々用意されていた追加スロットはそのままなので、二つ施設を設置できるようになるというわけだ。一度合成したらそのままになってしまうものの、ベースゾーンの枠がない俺にはありがたい仕様である。

 問題は何を合成するかなのだが、トイレとしてレギュラー化している< 屋内用簡易農園 >はレアのために合成できず、かといってトイレとして使っている場所に常設する施設と考えるとちょっと困ってしまう。

 結果的に< 水汲み場 >を合成する事にした。飲用を考えるとトイレと併設された水場というのはちょっとイメージが悪いものの、実質的な問題はないはずだ。最悪、一時的に< 屋内用簡易農園 >を外すという手もある。


 何回か合成をした結果、クールタイムに関してもある程度の推測はついた。

 アンコモンは20分、コモンは10分とレアリティによって決まっていて、その合計時間がクールタイムになるんじゃないかと思う。つまり、現状では40分か30分しかありえない。使えるレアリティが二種類しかないので検証材料が足りないものの、多分正解だろうと思っている。間違ってても大した問題はない。




「あとは……ガチャか」


 とりあえず、ゴブリンチケットは十連二回分貯まっている。武器も欲しいところなので特に回さない理由もない。


「癒やし系の可愛いペットが出たらお前の出番は終わってしまうかもしれんが、すまんな」

「バカな……ご主人様はこんなにも愛らしいペットを捨てるというのか」

「別に捨てる気はないが……間違っても愛らしくはないな」


 分かってやってると思うのだが、もしかしたら本当に自分は愛らしいと思っているのかもしれないのが怖いところだ。


「というか、ユニットゾーンの枠は空いていると思うのだが」

「三匹出るかもしれないだろ」


 まあ、貴重な話し相手を捨てるつもりはないが。本来の用途とは噛み合わなくとも、リョーマの存在はかなり助かるし。

 というわけで、ガチャ開始である。



[ 着ぐるみパジャマ(イルカ) コモン ノーマル/アイテム ]

[ 宮城県観光パンフレット コモン ノーマル/アイテム ]

[ レザーウィップ コモン イクイップ/ウエポン ]

[ ペット用ベッド ノーマル/アイテム ]

[ スタデッドレザーブーツ アンコモン イクイップ/アーマー ]

[ テント コモン ノーマル/アイテム ]

[ イベント用電飾セット ノーマル/アイテム ]

[ ストロングアーム コモン スキル/アクション ]

[ マグカップ コモン ノーマル/アイテム ]

[ ペット探しの張り紙 コモン ノーマル/アイテム ]


「素晴らしいではないか」

「……ベッドだと」


 ゴブリンがゴブリンをペットとして飼うが如く、ペット用ペットの間違いじゃないよな?

 なんだ、この敗北感は。まさか、俺よりも早くリョーマがちゃんとした寝床を得てしまうというのか。


「まさか使うなというつもりかね?」

「御主人様よりも文明的な生活をする事について、良心の呵責などはないのかね?」

「仕方なかろう。これが普通サイズのベッドであれば、私に使わせろとは言わんが」


 そりゃ、ペットサイズのベッドに俺が寝るわけにもいかんが。


「しかし、パジャマは手に入れたわけだ。意味があるのかどうかは分からんが、テントもある」

「お前……俺にイルカの着ぐるみパジャマを着ろというのか。似合わないってレベルじゃねーぞ」

「いかんのかね?」

「……部屋着としてはアリなのかな」


 大の大人が着ぐるみのパジャマ着て生活するとか……神様たちが見たら爆笑されそうな気が……一周回って気にしないような気もするけど。パンツだけよりマシか。


「しかし、ガチャとはこういうものなのだな。御主人様的には、この結果はどんな感じなのかね」

「普通……だな。いらんもんがいくつか混じってるのはいつもの事だし……ブーツは本気でありがたい」


 外見的な問題は残るが、素足でダンジョンを闊歩しなくてもいいのは助かる。鋲付きのレザーブーツなら、ゴブリンを蹴り飛ばす事もできるだろう。

 ペットピックアップのはずなのに肝心のペットがいないのは今更だ。さて、次、次。



[ アンティーク本棚 アンコモン ノーマル/アイテム ]

[ メンズファッション誌 コモン ノーマル/アイテム ]

[ 天かす コモン ノーマル/アイテム ]

[ スポーツドリンク コモン ノーマル/アイテム ]

[ やかん コモン ノーマル/アイテム ]

[ 米俵 コモン ノーマル/アイテム ]

[ ちゃぶ台 コモン ノーマル/アイテム ]

[ 囲炉裏 コモン ベース/インテリア ]

[ 田中正司(32歳)の黒歴史ノート コモン ノーマル/アイテム ]

[ 犬小屋 コモン ノーマル/アイテム ]


「……どーすんだよ、コレって感じのラインナップだな」

「田中正司というのは知り合いかね?」

「いや、知らん。時々こういう意味不明なもんが混ざってんだよ」


 通りすがりのブロマイドとか。それに比べたら黒歴史ノートはまだ意味はある……ような気がしないでもないが、実際に読んだら全身が痒くなってしまいそうだ。でも気になる。

 本棚は使えない事もないだろう。別に本をしまわないといけないわけでもないんだから、普通に棚として使ってもいい。やかんは必要あるなしならアリなんだろうが、そろそろお湯を沸かす手段が欲しいところだ。

 というか、地味に生活用品が充実してるな。あと一歩足りない感じではあるものの、文明的な生活が近づいてきているような気がする。ゴブリングッズがないのも気分がいい。


「お前、犬小屋使う?」

「いらんなあ。あれば本能的に入りたくなってしまうかもしれんが、御主人様も邪魔だろう」

「そりゃそうだよな」


 拠点の中にわざわざ建物を用意する必要はない。テントもそうだが、自宅にいながらアウトドア気分を味わいたい層には受けるかもしれない。


「インテリアが手に入っても入れ替える気は起きないしな」

「囲炉裏を使えばお湯を沸かせるのでは?」

「……そうか」


 あまりに馴染みがないから思い至らなかったが、囲炉裏とは本来そういう用途に使うものだ。慣れるのは大変かもしれないが、お湯を沸かしたり、鍋物を作ったり、魚を焼いたりくらいならできるかもしれない。

 早速< アクアリウム >を外して< 囲炉裏 >をセット。畳敷きの部屋に囲炉裏という異様に和風な光景になった。ガチャマシンの違和感が際立つ。


「……いつもの事ではあるんだが」

「炭はないのだな。別途用意しろという事か」


 実体化した囲炉裏に可燃物は含まれていなかった。一応灰が敷き詰められてはいるのだが、肝心の炭がない。これでは調理は不可能だ。

 とはいえ、炭が用意できれば活用できそうというだけでも進歩かもしれない。別に囲炉裏でなくとも炭があれば調理はできるという問題には目を逸らそう。




-4-




[ 修練の門 第一層 ]


「……さて」


 すでに体調は元に戻ってるものの、あんな悲惨な体験の直後に大した休息もなしで本格的な探索に挑むつもりはない。なのにダンジョンに足を踏み入れているのは何故かといえば、検証である。

 具体的に言えば、フライングバインダーに付与した《 ゴブリン探知 》のスキルがどのように反映されるのかの確認だ。これは拠点前の通路で試す事ができない。

 見た目は特に変わっていない。レーダーのようなものがついているわけでもなければ、アナウンスしてくれる機能がついたわけでもない。機械音のような音は上げるがそれは前からだ。さて、これで何が変わったのか。


「ピッ!」


 特に何をするでもなく宙に浮かぶフライングバインダーを眺めていると、明後日の方角に前面を向けた。

 これまでフライングバインダーは俺の後を追ってくるだけだったので、別の方向を向いた姿を見た事はほとんどなかったのだが。


「その方向にゴブリンがいるって事か」


 特に返答はないが、物は試しとその方角へと向かってみる。

 とはいえ、ダンジョンは曲道も分かれ道もある迷路のような造りだ。一直線でその方向へと向かう事などできるはずもない。方向がズレたらフライングバインダーの向きで修正しつつ、歩き慣れた道を進んでいく。相変わらず道中にゴブリンはいない。


 先ほど手に入れた< スタデッドレザーブーツ >の感触は上々だ。おろしたての靴など普通は歩き辛いものだが、これはそこら辺のサイズ調整まで上手くやってくれているらしい。背の小さいゴブリンは俺の足元を狙ってくる事も多かったから、防具としても有効だろう。

 肝心の胴体部分は何もなし、腰回りも< ファウルカップ >だけだから、変態性が強調されている感もあるが、それでも文明度はUPしているはずなのだ。

 胴体は超露出装備かつ、両脚がゴツイ見た目は、字面だけなら昨今の露出過多な女性格闘家キャラの紹介のように感じられなくもない。中身は俺だが。


 フライングバインダーの向く方角へしばらく進むと、小部屋にゴブリンがポツンと一匹佇んでいるのを発見した。最近は多数を相手にする事が多いから、一匹だけというのは結構新鮮だ。

 このゴブリンは普通にここへ配置されただけのザコモンスターだろう。こいつ自体がどうこうというわけでもないので、銃剣の使い勝手を確認しつつ、瞬殺した。

 ……ゴブリン一匹相手だからどうとでもなるが、やっぱり使い辛いぞ、銃剣。


「一番近いゴブリンの方角を感知してるってところか」


 ここまで十分以上は歩いているから、探知範囲はかなり広いといえるだろう。

 ただ、数の少ないゴブリンを探す目的ならともかく、第三層くらいになるとどうだろうか。……それでも、索敵の意味はあるか。音を立てるわけでもなく、ただその方向を向くだけだから、邪魔になるわけでもない。

 性能的にはかなり微妙。しかし、ディディー復活の儀式を行っている場所を発見する目的なら有用というのが結論だ。

 多分だが、この< ゴブリン探知機 >も合成するユニットによって使い勝手が違うのだろう。たとえば索敵専門でレーダーを可視化できるようなユニットなら、かなり強力な能力かもしれない。

 まあ、そんなユニットが手に入った頃にゴブリン探知機能が必要かと言われたらかなり疑問だが。

 これが< 宝箱探知 >とか< 階段探知 >、< 帰還陣探知 >ならかなり有効なんだがな。何故ゴブリン限定なのか。……未だ遭遇しない他のモンスター限定よりはマシなのか。


 そうして、フライングバインダーの探知に従って何度かゴブリンを発見、即殺していった。向かう先に必ず獲物がいるというのは精神衛生上ストレスが溜まりにくい。ここを周回していた頃なら重宝しただろう。

 ある程度慣れはしたが、やはり銃剣は使い辛い。ゴブリンが弱いという事もあるが、ガントレットで殴ったりブーツで蹴ったりするほうが断然向いている気がする。もしくは銃床でぶん殴るとか。


 遭遇する頻度はバラバラだが、適度にゴブリンを殺しながら先に進んでいると、フライングバインダーが壁の方向を向いた。

 確か、ここまでの道のりでは道がなかった方向だ。直線距離だけで探知していると、こういう面倒な事になるという事か。

 諦めて、その方向に向かう道を探索するが……なかなか見つからない。そうこうしている内に、壁の回りを一周してしまった。


「ん?」


 思わずフライングバインダーを見てしまうが、もちろん反応はない。

 どういう事だろうか。……隠し部屋的な何かか? それっぽい場所はなかったんだが。

 フライングバインダーは相変わらず壁の向こうに向いている。一周する間ずっとこうだったから、この中にゴブリンがいるって事なんだろうが……。

 試しに壁に耳をつけてみても音は聞こえない。


 罠のスイッチを探す要領で改めて壁を探索してみる事にした。

 予想できるのは偽装された入り口、スイッチの類、ひょっとしたらゴブリンが壁に埋まっているという可能性もあるが……それならむしろ介錯してやるべきだろう。


 そうやって注意深く壁を調べていると、その一部に違和感を感じた。一箇所、明らかに石の凹凸がない部分があるのだ。


「絵か何かなのか……?」


 そこに触れてみると、なんと擦り抜ける。立体映像か何からしい。……つまり、隠し部屋だ。

 穴は小さく、かがまないと入れそうにない。ゴブリンが通行できる通路というのならちょうどいい大きさなのだろう。視線よりかなり下にあるから見逃しやすいというわけだ。

 ちょっと怖いが、その通路に顔を突っ込んでみたら、案の定狭い通路が続いている。とりあえず、視界にゴブリンの姿は見えない。

 ……探知に引っかかっている以上、中にゴブリンがいるのは確かだ。しかし、何匹いるのかは分からないし、奥の構造がどうなっているのかも不明だ。


「というか、これ明らかにディディー復活の儀式場だよな」


 もちろん、単なる隠し部屋で宝箱か何かが置いてあるという線はあるが、ここまであからさまに隠してますっていうのはちょっとどころじゃなく怪しい。特別な何かがありますって言っているようなもんだ。

 さて、どうするか。補給問題でやらかした俺だが、今の状態で戦闘に問題はない。万全ではないが、第三層でも問題なく戦えるだろう。


「……引き返すにしても偵察はしておきたいな」


 場所は覚えているから、再度訪れるのは問題ない。とはいえ、ある程度の情報は欲しい。できれば敵の人数と構成くらいは把握したい。

 ただのゴブリンなら集団でも問題ないが、特別な場所にいるやつがただのゴブリンというのは考え難い。


「……よし」


 意を決して、偵察を続ける事にした。とりあえず、何かが確認できるまでは進もう。

 屈んで狭い通路へと踏み込む。スパイモノなどで見る通気孔よりはマシだが、微妙に天井が低いから歩き辛い。ここでの戦闘はかなり制限されそうだ。

 とりあえず、一度目の曲がり角から先には何もない。まだ通路が続いている。壁で囲まれた範囲の一部だけでなく、丸々使用してるっぽいな。


 ここは第一層としては異様な空間だ。通路の外と同じように罠がないとは限らないし、何か仕掛けがあるかもしれないと、第三層以上に注意しながら通路を進む。

 二つ目の曲がり角の先を覗き込むと変化があった。奥に空間が広がっているのが分かる。その広場らしき場所の手前に陣取るのは、金属鎧と槍を装備した重装のゴブリン二体。確認し辛いが、奥の広場には篝火が焚かれ、ローブを着たゴブリンが見える。更に奥に祭壇のような何かも見えるが、ここからでは判別が難しい。

 ……間違いなく十六魔将復活の儀式場だろう。ここでまったく関係ありませんでしたって展開があるのがこのダンジョンのノリだが、さすがにここまであからさまなら間違いないんじゃないだろうか。

 全体を確認できたわけじゃないが、一応目視はできた。モンスター名鑑にも名前が登録されている。


 門番のような二体のゴブリンはゴブリン・ガーディアン、奥のローブはゴブリン・シャーマン、あと何故か生け贄ゴブリンというモンスターも登録されている。

 正直生け贄はどうでもいいが、ガーディアンとシャーマンは強敵の臭いがした。


「よし、戻ろう」


 臆病風に吹かれたわけではない。

 今回はあくまで偵察。万全の準備をした上で強襲をかけるべく、俺は通路を引き返した。





人類の宿敵、十六魔将ディディー復活の時は迫る!(*´∀`*)

果たしてガチャ太郎は男性の股間に平穏を取り戻せるのか。

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(*■∀■*)第六回書籍化クラウドファンディング達成しました(*´∀`*)
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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば銃剣装備ということはパワースラッシュは使えるようになったのかな? 銃剣は刺突武器ではあるけど。
[一言] 生贄ゴブリンは儀式用と見せかけて雰囲気で連れてこられた可能性もある恐ろしさよ
[一言] ゴブリンたちにとって16魔将はどういう存在なのか… 復活させる価値があるのかあいつら
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