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現代病床雨月物語 第二十二話  秋山 雪舟(作) 「民とマリア観音(その三)  愛に見離された天下布武の魔王・信長、安土城で神(デウス)を目指す」

作者: 秋山 雪舟

 夢に登場するキリシタン達の話しを聞いて私なりの『織田信長像』が出来上がってきました。いままでの信長像とは違うものです。

 信長は、父の織田信秀が死ぬ以前から生駒家という商人の家をよく訪れていました。そこで出会った生駒家の吉乃よしのと言う女性の間には少なくとも三人の子供が生まれます。その中には信長の長男になる信忠と次男の信雄がいます。信長が政略結婚ではなく本当に愛し結婚した女性です。吉乃は、信長が桶狭間の戦い(一五六〇年=永禄三年)に勝利した後に亡くなります。吉乃の後半生は信長に総てを捧げた生涯でした。信長は、商人である生駒家で経済と情報の大切さを学びました。

 また門閥貴賎を問わず総てを差し出す部下を重用しました。その筆頭が吉乃の家で雇われていた百姓あがりの藤吉郎(豊臣秀吉)でした。そしてフスタ船で遥か遠く万里の波濤を越えてやって来た宣教師のヴァリアーノやフロイスを丁重にもてなしたのであります。

 信長は、サムライの『一所懸命』の価値観を変えました。それに替わり信長への『一生懸命』の忠誠を要求したのであります。それはまるで信長に後半生を捧げた吉乃のように。

また信長の家臣は領地に縛られない専門の戦闘部隊になり領地を変えながら領地経営をシステム化し且つ楽市楽座で地域経済を支配して行きました。信長は、自らの行く手を阻む仏教勢力が大嫌いでありました。多くの破戒僧をつくり出しては仏の道を利用して全国的に地域経済を握っている仏教勢力が許せなかったのです。

 信長の残虐・非道性はどこから始まったのか。心理的には父・織田信秀の死(一五五一年=天文二〇年)が始まりです。それを確実なものにしたのが家督をめぐって実母から見捨てられた事であります。信長のトラウマの始まりでもあります。信長の人生は他方から観ると実母と唯一愛した女性・吉乃という二人の女性の存在が大きく作用しています。信長の残虐性は、信長のトラウマと心の潔癖性を裏付けるものであります。信長の残虐な処刑のあり方も潔癖性と家臣達の忠誠心を確かめるための魔王・信長の『踏み絵』でもありました。信長自身はほとんど処刑現場には立ち会わず部下の報告を聞いていました。また信長は自らが老いることを嫌い老人が苦手・嫌いでした。その現れが能の『敦盛』を舞うことであり、信長に対面で謝罪に訪れた高山ダリオ(高山右近=ジェストの父)と合わなかった事からもうかがわれます。これ以前にも松永秀久を徳川家康の面前でからかう話が伝わっているのも老人が苦手であったからであります。

 信長の次男・信雄が『本能寺の変』(一五八二年=天正一〇年)で父・信長の死を知り安土城を自ら炎上させたのは仏(仏教)や天皇より上の位置に信長自身がデウスになっている事を証明する物が存在していたからです。

 最後に、愛する女性・吉乃よしのを亡くした信長は魔王となり日本を変革しようとしました。しかし家臣である明智光秀の謀反(=天誅)により炎の中で自決します。私は、信長は異次元の世界で吉乃の膝枕でぐっすり眠っている姿を思い浮かべました。信長が異次元で愛に包まれている事を願っています。


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