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二・九話 鉱山一つ目、完了

 暗い坑道を小さな松明の光が照らすこの空間で、オレが振り下ろした剣が魔物の首を斬り落とす生々しい音と、みんなの乱れる呼吸音だけが聞こえて来る。


「ハァ、ハァ……いやいや!? 話はちゃんと聞いてはいたけど、毒尾熊(ポアズベアー)戦した場所から先に進んでから一気に数が増え過ぎだって……!」


 最初の魔物戦からしばらく奥に進んでからと言うもの聞いていた通りというか、想像以上というか、出会す魔物の数も種類も格段に変わった。

 あの後、最初に遭遇した激闘土竜(アケブ・モール)毒尾熊(ポアズベアー)の他に、水袋を胴体に棘の付いた複数のツタで動く食水植(マカリナ・アイービ)や、肌色の尾が二本あるワニサイズ蜥蜴、二尾蜥蜴(ロタ・リザード)の群れと遭遇してはオレたちナルシスゥトン隊が退治していき、今は何度目かの小休憩を取るところ。


「はぁ……小規模とは言え流石は山だな。探索範囲が広いひろい……」


 溜まってきた疲労に、ついつい愚痴が溢れてしまった。

 鉱山内に入ってからもう何時間くらい経っただろう。もう半日くらいは経ったかもしれないな。


 時計という便利アイテムがまだ無い世界で、元科学時代の社会人としては外の様子が分からないというのは中々不安なものだな。

 前世では逆に割と時間に縛られてた気がする。


 仕事とか……主にリオンさんの手伝いの締め切りに……。


「まったく、嫌になってくるよ。まさかこんなにも魔物が現れるなんてね。僕のマントに血生臭い(にお)いがついてしまうよ」

「ご安心下さい、ナルシスゥトン様。宿舎に戻ったら私が水洗い致しますので」

「ああ、頼むよ、コッペン」


 どうでもいい事を気にしているナルシストに過保護な部下の姿を見せつけられつつ、オレは水筒の水を飲み、そのままリアンにも渡し分ける。

 最初こそ持ってきた携帯食料を全て平らげてしまうのではと思っていたが、意外に気遣いの出来るこの竜(リアン)はチビチビと飲み食いしてくれている。


「それで、あとどれくらい続くんだぁ」

「ちょっと待ってて下さいッスス」


 大剣に着いた汚れを拭っていたオウクが、顔は向けずにアキドに問いかける。

 アキドは荷物から坑道内の地図を取り出すと今一度位置を確認する。


「あと少し進んだ所で行き止まりッスス。この先は採掘中の坑道が何箇所かある広場で、開けた場所になっているみたいッススね」

「なら、あとはそこを探索したら完了だな」

「しかし、油断はできないわグレン。そこが最も重大な場所なのだから」


 ロキに水をあげながらレーズンがそう注意を(うなが)してくる。


 レーズンの言う通り、オレたちの目的は探索する鉱山の最深部。そこに魔物たちが大量発生した原因が無いか調べるのが目的だ。

 緩みかけた緊張が再び引き締められたところで、ナルシスゥトン隊長が立ち上がり、オレたちを方を向いて口を開く。


「奥に何があるか分からない以上、皆警戒を怠らない様に。よし、探索再開」




 地図にある通り、オレたちが進んだ坑道の先には、先程までよりも広い空間があった。


「予想通りと言うか、予想以上と言うべきか……。通路にも魔物がいたんだから、そりゃあ奥の広間にもいるのは当たり前だけどさ……」


 その広間に到着してから数時間経った現在、中央の開けた位置に積み重ねた魔物の死骸の山をオレは眺めながら、先程までの出来事を思い返す。


 広間に辿り着いたオレたちを出迎えたのは、三〇〜四〇体の魔物の大群だった。

 通路で遭遇した魔物たちとは別に、小岩人形(リトル・ゴーレム)の大群もいて、オレたちはリアンを先頭に力を合わせて魔物たちと激戦を繰り広げた。

 岩人形(ゴーレム)に剣が効かないことはオレが身を持って既に経験している。なので小岩人形(リトル・ゴーレム)を小竜リアンや〈装甲弾(クロス・バレット)〉を纏ったロキに任せ、その他の魔物をオレたちが始末する様にして挑み、長時間費やした末に見事殲滅(せんめつ)に成功した。


「よく死者を出さずに勝てたものだな、オレたち。戦闘中に二体の食水植(マカリナ・アイービ)のツタに両手足を拘束された瞬間に激闘土竜(アケブ・モール)が近づいてきた時は、正直生きた心地がしなかったよ……。あの時ばかりは、あのナルシストに感謝しないとな」


 激闘土竜が爪を振り上げる直前に、ナルシスゥトン隊長が食水植のツタを斬り離してくれたおかげでギリギリ迎撃に間に合った。

 一応は隊長らしく、部下を守ってくれたのだろう。

 ――屁っ放り腰だったけど。


「ふむ、数が多いだけあって、まあまあ手応えはあったな」

「ほとんど瞬殺しといてよく言うよ……。っていうか、何でその服を着ているんだ?」


 オレの隣で最後の魔物の死骸を放り投げて目の前の山に積み上げるリアン、しかしその格好は探索開始時の鎧姿でも、普段の少女服でも無く、どういう訳は小岩人形(リトル・ゴーレム)が身に付けている石器人風の服を着ていた。


「ふむ、何となく動きやすそうに見えてな、着てみた。どうだ、似合うか?」

「――似合う似合わないは置いといて、肩紐が片方しか無い男物をその(少女)姿で着るんじゃない」


 微妙にチラチラ見え隠れしてるんだよ……。

 オレがロリ好きだったら()()()()だぞ、まったく。


「早く元の格好に戻せ。いててっ……」

「主人よ、傷が痛むのか?」

毒尾熊(ポアズベアー)の攻撃が掠れただけだよ。なに、これくらい軽傷だ。リアンが小岩人形(リトル・ゴーレム)以外の魔物も多く倒してくれたから、みんな重傷を負わずに済んだんだ。ありがとうな」

「ふむ! お安い御用だ」


 手を腰に当てて大きく頷くリアン。少女姿ですると何気に可愛らしいな。

 ……ただ、胸を張るのは服を戻してからにしなさい。


「思ったよりも手こずってしまったけど、見事な勝利だ。僕の完璧な指示とチームワークの力だね」

「おっしゃる通りです。二尾蜥蜴(ロタ・リザード)の尾を一本斬り落とした剣筋は素晴らしかったです」


 額の汗を拭いながら、いつもの様に金髪を(なび)かせるナルシスゥトン隊長をコッペンが持ち上げる。コッペンとレーズンは戦闘時、当たり前にずっとナルシスゥトン隊長の側を離れなかったな。

 この探索の数時間で見慣れた光景なので最早オレも、遠い位置にいるオウクも何も言わなくなってきた。

 オウクの流し目が未だに冷たいままだがね。


 ようやくリアンが衣装チェンジしたタイミングで、スライドが探索から戻ってきた。

 スライドは戦闘中、付かず離れずでオレの背後を守ってくれていた。父さんの近衛だけあって腕は中々の物で、毒尾熊の尾を避けつつ接近してその首を斬り落としていたな。流石だ。


「グレン様」

「スライド、どうだ? 魔物が何処からこの鉱山内から現れているか手掛かりは見つかったか?」

「いいえ、それらしき道も穴も見当たりません」

「そうか。()()()は、見つかったんだけどな……」


 広場の壁の()()()()()方を見ながら、小さくそう呟く。

 スライドたちが見張りの兵士から聞いた、まだ戻って来ていない騎士と兵士の三人は、この広場の隅で亡骸として発見した。破損箇所が多く、酷いやられ方をしたのだろう。戻って報告をした後に丁寧に回収に来てもらわないとな……。


 今は魔物の残党確認とこの事件の手掛かりになる様な物が無いか、アキド、オウク、レーズン、スライドにこの広場を探索してもらっていた。


「ダメだなぁ、こっちも特に何も無いぜ」

「収穫無しッスス」


 お手上げとトボトボ歩くアキドと、大剣を担いだオウクが不満そうに近くの小石を蹴りながら戻ってきた。

 アキドはオウクと協力し、オウクはひたすら近づいてくる魔物を倒していってたな。小岩人形を大剣の腹で殴り飛ばした際に小岩人形の体がバラバラに吹き飛び、近くの魔物たちにダメージを与えた時は思わず見入ってしまって危なくなったっけ。


「一体、魔物たちは何処からあんな沢山湧いてきてんだぁ?」

「魔物も生き物ですからね。こんな何もない岩だらけの場所で訳もなく出現するとは考えられません」

「そうだよな……ゲームのモンスターでもあるまいし、何も無くて生まれるなんて聞いたこともないよな」

「訳が分からないッススね」


 オウク、スライドの言葉に同意するオレとアキド。腕組みをしつつオレは原因を考える。


 ちなみに毒尾熊戦で確認した首に巻かれていた糸だけど、その後に遭遇してきた魔物たちからは見つからず、今のところ最初に遭遇した毒尾熊たちだけに付いていた物だった。

 何となく気になったのだが、やっぱりたまたま絡まっただけの蜘蛛の糸だったのかな。……でもそれにしては、あの糸にはネバネバとした粘着力は無かった気がするけど……。


 なんて、思考が脱線し始めてきた頃に最後のレーズンとロキがナルシスゥトン隊長の所に帰ってくる。


 おっ、神妙な表情……何かを見つけたのかな。


「ナルシスゥトン様、広場から伸びる幾つかの坑道は全て途中までで塞がっておりました。しかし、一箇所だけ少し違和感がありまして……」

「違和感? 分かった、案内してくれレーズン」


 頷いたナルシスゥトン隊長と一緒に全員でレーズンが見つけた坑道に向かう。


 坑道の中は採掘作業の途中だからか、整備途中の暗い坑道の中で松明の光を反射する幾つもの綺麗な鉱石が埋まっている。


 ……沢山あるし、ルウナのお土産に少しくらい貰っていってもいいかな? ダメ……?


「こちらです」

「――っ?!」

「ふむ? どうかしたか?」

「い、いいや、何でも無い!」


 (よこしま)な事を考えていたところにレーズンの声が坑道を反響して聞こえ、一瞬ビクッとしてしまった。

 ……仕事中に変な事を考えるのはやめておこう。


「ここがそうなのか? ……見たところただの行き止まりにしか見えないが?」


 坑道の先に着いたナルシスゥトン隊長が行き止まりの壁をまじまじと見回す。

 オレも、見たところただの壁としか思わないけど。


「はい、私も最初はそう思ったのですが――」


 そう言いつつ壁全体を指差すレーズン。


「見てください。壁の至る所の溝、側面の壁よりも溝が深く見えます。それに足下に瓦礫が転がっていて、まるで落盤(らくばん)で塞がった様に見えます」

「確かに、言われてみればそう見えるね」

「そうかぁ? 偶然そう見えるだけじゃねぇのか、隊長」

「採掘途中なので地図も広場までしか書かれていないッススからね。それに落盤にしてはこの坑道一箇所だけというのも変ッススね。オウクさんの言う通り、偶然では?」

「グレン様はどう思いますか?」

「えっ――う、うーん……どうだろうなぁ」


 スライドに振られたが、確かに言われてみれば見えなくも無いけど……。


「でも落盤だったら、大体は斜めに塞がるじゃないか?」


 崩れて雪崩(なだれ)落ちたにしては、この壁は斜めでは無くほぼほぼ垂直で、とても『崩れ塞がった』とは思えないんだよな。


 みんなが黙り込んで考えている中、最初に口を開いたのはオレの隣の人だった。


「……そんなに気になるなら、ワシがこの壁を吹き飛ばしてやろうか?」


 わー、ワイルドな提案。


「いやいや! 瓦礫が吹き飛んで通路が出てくる前にオレたちが生き埋めになるから遠慮しておくよ、リアン」

「ふむ、そうか?」

「仕方ない、壁を掘る道具も無いしね。ひとまず魔物の討伐は終えたんだ。この先は採掘の専門家に任せて報告を待つとしよう」


 これ以上の探索は現状不可能と判断したナルシスゥトン隊長の「撤収」の号令に返事し、オレたちは広場まで出る。


 死骸の後処理は後日、回収担当に頼む事にし、みんな出口に続く通路へと潜っていく。最後にオレも向かおうとした時、ズダンッという音と、何かが右腕に絡みつく感覚が襲う。


「なっ――二尾蜥蜴(ロタ・リザード)!? まだ一体残っていたのか!」


 急ぎ抜剣して構えるが、腕に巻き付いた二尾蜥蜴の伸びた舌に引き寄せられる。


 オレも抵抗して踏ん張るが、二尾蜥蜴は二本の尻尾を地面に深々と差し込んで体を固定していてビクともしない。


「ぐうぅ……! それなら、しっかり引っ張れ……よっ!」


 抵抗をやめて、逆に前へと踏み込む。

 引っ張れる力を利用して一気に接近したオレは、二尾蜥蜴の背中に向けて剣を振りかざした。


 深くまで斬り込んだ剣が勢いのまま、尻尾の付け根まで一直線に線を引く。


 巻き付く力を失った二尾蜥蜴の舌から解放されるが、勢いは止まらずそのままオレは地面に転げ落ちてしまった。


「いてて……いや、鎧着てるから痛みは無いけど、それなりの衝撃がぁ……」


 多少の痛みに咳き込みながらゆっくり起き上がり、念の為に背中がパックリ開いた二尾蜥蜴を確認する。


「中々のモザイク物だな……流石に生きてはいないか」

「おいおい、何チンタラ――なんだぁ、まだ残ってたのか? 大丈夫か?」

「遅い助っ人だな。ああ、軽い打ち身くらいで大丈夫だ。直ぐに片付いたし。それより早く戻ろうぜ、もう踏んだり蹴ったりで疲れた」


 顔に似合わず親切なオウクが手を貸そうかと聞いてくるのを丁寧に断り、オレたちはみんなに合流して坑道を出る。


 驚いた事に鉱山を出るとオレンジの光がオレたちを照らし、空を見ると日が沈み始める頃の夕方だった。


 鉱山に入って行ったのが確か朝方だった筈だけど、そんなに時間が経っていなかったのか?


 しかし見張りの兵士に話を聞くと、どうやら丸一日鉱山内にいたらしく、想像以上に時間が経っていたみたいだ。


 本当に外が見えてないと時間感覚が無くなるんだな……時計が恋しいよ……。




 見張りの兵士に軽く報告をした後、オレたちはグリスノゥザの中央都市に戻ってきた。


 泊まっている宿舎に帰宅したオレたちは、宿舎の管理人が呼んでくれていた医師に怪我の治療を受ける。幸いな事にオレを含めみんな軽傷で済んだ。

 この後伯爵邸に報告をしなければいけないが、ナルシスゥトン隊長自らそれを引き受けてくれるらしい。


 まあ、あのナルシストの事だから、自分の活躍として書き換えて報告するんじゃないかな。


 コッペンとレーズンはやはりナルシスゥトン隊長について行き、あともう一人くらい付き添いをとなったのでスライドも同行する事に。

 そして残ったオレ、リアン、オウク、アキドの四人は居酒屋に行く事になった。


「この間の飯屋も良かったが、この店も悪くないなぁ」


 蒲焼料理を豪快に大口で頬張り、エールを飲みながらこの店を褒めるオウク。


「そうだな。……『蛇の生剥ぎ』なんて店名なのが、ちょっと気になるけど」


 目の前の焼き鳥風の串焼きを見つつオレは苦笑いする。

 あの蒲焼きとかこの串焼きの肉……蛇じゃないよね? ね?


「もぐもぐ、この焼肉も中々か歯応えがあって美味いぞ。食うか、主人?」


 マンガ肉の骨無しパリパリの皮付きみたいな肉料理にかぶりつくリアンの誘いを断る。

 デカい肉だなぁ……。

 あれは流石に蛇じゃない、よね……?


「自分も食事に誘ってくれて、ありがとうッスス。グレン」


 ベジタリアンなのか、アキドはサラダの山盛りが乗った器を目の前に置く。


「一緒に魔物と戦った仲間なんだから当たり前だろ。ほら、丸一日携帯食ばっかりだったんだ。たっぷり食べようぜ」

「そうッススね。うー、シャキシャキのレタスの食感が美味いッスス」


 刺して頬張って、刺して頬張ってを早いペースで繰り返し、口の中を緑豊かにさせるアキドに苦笑いしつつ、若干王都のよりぬるめのエールを飲む。


 次の日も任務ならお酒は控えるが、探索明けで明日は休みだとナルシスゥトン隊長が言っていたし、何よりこのエールもアルコールが弱いから問題ないだろう。


 コップを(かたむ)けたままふと店の窓に視線を向けると、全身をコートに包んだ人影が走っていくのが見えた。


「……なんだ? うん?」


 その人影が去った後に今度は二人組の人影がその跡を追って走っていく。

 あんなに分かりやすく怪しい格好で、事件か?


「ふむ? ふぉうかひたか(どうかしたか)……ごくんっ。主人?」

「あー、……いや、何でもない」


 漫画じゃあるまいし、トラブルはごめんだからな。「バレなきゃ犯罪じゃない」と明言もある。リオンさんが何かの物真似で言っていたっけ。


 オレは何も見なかった事にして、空になったエールのおかわりを頼んだ。




 そのまま飲み会を終えて現地解散し、アキドはオウクに連れられて次の店へと消えていき、オレとリアンも少し出店を回ってから帰る事にした。

 グリスノゥザに到着した時にリアンが美味しそうな匂いがすると言っていた食べ物を探す為に。


「明日じゃあダメなのか? 任務後で疲れてるんだが……」

「善は急げ、だ。――それにしても、あちこちから色々な匂いがしてきて……。ふむ、美味そうな匂いだなっ!」


 立ち並ぶ出店(主に飯屋)にリアンは目移りしながらフラフラと歩いていく。

 ……手持ちのお金で足りるかな?


 ふと先程の居酒屋「蛇の生剥ぎ」で見えた、追いかけっこしていた人影を思い出し、通過していく路地裏などをチラッと覗き込んでいくが、特に怪しい人物や事件は無さそうだ。

 ……たまに路地裏のほの暗い奥でお色気(アダルト)な展開を見てしまったりするが、それは見なかった事にした。


「いない……か。まあ、そうそうイベント事に巻き込まれる主人公では無いしな。――あれ、リアン?」


 正面に向き直ると、リアンの姿がない……。

 オレが余所見をしている間に何処かに行ってしまったみたいだ。


「まいったな。何処かの店にでも入ったか?」


 仕方ない。片っ端に近くの出店を覗いて確認するか。


 近くの開いている店に向かって、建物と建物の間の暗い路地裏の前を通る。


「――うん?」


 瞬間――路地裏の奥の暗闇から、こちらに向けて走ってくる人影が見えた。


「なんだ?」

「――っ!」


 すると、全身黒い()()()()()()()()()()()()がオレに気づくと、真っ直ぐ走って近づき、そのコートの下から出した手をオレに伸ばしてくる。


「えっ、ちょっ――」

帰還後の後半部分を改変しました。

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