二・二話 定番な人気者
今年最後の投稿となります。
ゆっくりとお楽しみ下さい。
驚きのあまりに言葉が見つからないオレは、ただただ視線を泳がせる。
「やったー! 遂に私にも出来たよ、レクアちゃん! キキちゃん!」
「ええっ、良かったわね!」
「何かぷるぷるしてて、可愛い子が来たじゃん! やったねミヤー!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねた後に三人で喜びを分かち合っているミヤたち。
レクアは少し母性を感じさせる表情をしているけど。
う……うん、よかったね、ミヤ。
だけど、コイツって……。
「……銀? 鉄? この使い魔って……」
サリカ姉さんは難しそうな表情を浮かべて、〈召喚〉で召喚された魔物を見つめている。
どうしてそんな難しい顔をしているのかは分からないけど、多分オレも今、似たような顔をしている気がする……。
などと考えている内に、ようやく少しずつ冷静になってきた。
「こ、この魔物って……」
オレたちの目の前に現れたのは、大体直径五〇センチ程の丸い球体で、水っぽい性質をしてぷるぷると柔軟性な動きをしている。
「す……ス……」
生き物なのか分かりづらいが、前世なら間違いなく知らない人はいない有名なあの生き物――いや、魔物だ。
リオンさんのゲーム制作の手伝いで多少関わっていたオレとしても、そんな魔物が目の前に現れ、喜びと驚きに心震わせながら自然とこいつの名前を口にする。
そう、こいつは――。
「スライ――」
「何かしら、この魔物は……?」
オレが「スライム」と言おうとした途端に、被さる様に姉さんが発したまさかの疑問文に、思わず間抜けな声が漏れていた。
「えっ、何って……ス――」
「水粘流擬生と言う魔物にも似てはいるけど……平たい水粘流擬生と違って、丸い球体状なのよね、この子」
えーと、確か記憶が正しかったら……水粘流擬生はスライムみたいなまん丸な水玉では無く、粘着性のある平らな魔物だった……かな?
地面すれすれの高さしかない魔物らしいが、実物を見たことがないからよく分からないうえに、正直そんなに興味が湧かなかった魔物なんだよな……。
「そう、ですね……言われてみれば私も、こんな魔物は見たことがありません。キキは?」
「ぜーんぜん。けど、なんか見た感じ鉄みたいな色してるし、ちょっと強そうじゃん」
キキの言う通り、この……恐らくスライムは、定番の水色では無く日光を少し反射させている銀色をしていて鉄感がある。
「鉄のスライム――メタルスライムってところかな……」
「メタルスライム……? それは何かしらグレン」
「――え? あっ!」
つい口にしたのを姉さんに聞かれてしまったらしい。
「いっいや、何となくそんな言葉が思い浮かんだだけで……!」
「何でも良いです! この子は私の使い魔なんですから!」
妙にハイテンションなミヤは満面の笑みを浮かべながら、メタルスライムをひょいっと抱え上げる。
見た目より重くは無いみたいだ。
「まあ、そうね。新種の魔物だろうと何だろうと、ミヤちゃんが召喚した使い魔には変わりないですし、危険にはならないわね」
そう判断して考察をやめた姉さんだけど、博識のサリカ姉さんでも知らないとなると、本当にこの世界ではスライムは珍しい魔物みたいだな。
ミヤの手の魔法陣も消えて、すっかり緩んだ表情をして頬ずりするミヤに、特に目や口は無いが、何処となくメタルスライムも喜んでいる様な気がする。
「これからよろしくね、プルゥちゃん!」
もう名前をつけたみたいだな。「プルゥ」か、良い名前だと思う。
「えっ……プルゥ……?」
「それは、あれ……? その子の体がプルプルってしてる……から?」
「そう! 可愛らしい名前だと思うよね」
レクア、キキが何とも言えなさそうな笑顔を浮かべているのは何故だろう……。
「……良いんじゃないかしら」
「あっサリカさん! で、ですよね!」
「ええ。少なくとも、私の知る限りもっと凄いセンスをした人だっているもの。ミヤちゃんは全然いいセンスしていると思うわ」
姉さんに褒められて? 喜んでいるミヤはいいんだけど、姉さんが明らかにオレの方を見て言っていたのは……つまり、オレのネーミングセンスの無さの事か?
「なっ……なるほど。全然気づかなかったけど、つまりはミヤはオレと同じくらいにセンス無しと言いたかったのか……」
いや、あの言い方だとオレの方がもっと酷いと言いたかったみたいだ……。
「ん? 顔が引きつっていますけど、グレンさんどうかされましたか?」
「い、いや、何でもないから気にしないでくれミヤ。とにかく、無事に召喚出来て良かったな、おめでとう」
「はい! グレンさんや皆さんのおかげです! ありがとうございます!」
思わぬミヤの隠し個性が発覚したのと、若干オレのメンタルがダウンしながらも、結果ミヤが元気になったのは良いことだ。
こうして無事にミヤに使い魔が出来た事をみんなで祝福した後、しばらくして公園を後にした。
「プルゥちゃん。えへへっ、プルゥちゃん」
ルンルンと変わらずのテンションのミヤを先頭に、オレたちも加わってみんなで大通りを歩いている。
道中でオレたちにお礼がしたいと、ミヤが食べ物を奢ってくれる事になり、断ってもよかったがミヤの気持ちという事で、出店の安い菓子パンをありがたくいただいた。
「ねえねえミヤ、プルゥちゃんってどんな触り心地なの? やっぱり水っぽいの?」
「うーん、水っぽいような……つるつるした鉄っぽいような感覚かな。あっ、でもすっごく体が柔らかいよ」
「鉄だとしたら、ミヤは全く重そうにはしていないわね」
「うん、全然重たくないよこの子」
プルゥが来てからはその話題だけで、とにかく楽しそうにしている三人はとても微笑ましかった。
歩みを進めているといつの間にか、何時ぞやレクアたちと来た「憩いの園」の前を通り掛かった。
そして視線をその横に向けると、まだ一度しか見たことのない例の建物が目に入る。
「昼間に見たのは初めてだけど、『ギルド本部』って明るい時に見ると、結構年季が入った見た目をしているな」
外観四階建て(レクアたちによると中は広い二階建てらしい)の石レンガ作りの古めな教会風の建物。
ただ、全体的に古さを感じるがドアや窓は新しめだ。改築はしっかりしているのかな?
「まあ、確かに建てられてから長いと聞きますね。でも、中は思ったより綺麗なんですよ」
ただの独り言に、レクアはわざわざ答えてくれた。
すると、さっきまではしゃいでいたキキがギルド本部を何故か二度見すると、何かを考える様に「うーん……?」と唸り始める。
「――あっ、ああぁーー!? 忘れてたっ!」
突然キキが上げた大声にオレたちは驚き、近くの人たちもこちらの方を向いていて、驚かせてしまったようだ。
ずっこけて倒れているレクアはオーバーリアクションだと思うけど……。
「――もう、急に大声出してどうしたのよキィキーナ!」
「すごく詰め寄ってフルネームで呼ぶ程驚かせたのはごめんなさい……」
額に汗を流しながらとりあえず謝罪をするキキ。
ひとまず代わりに、オレや姉さんは周りの人たちに謝りながら、何があったのか事情を聞く。
「い、いやぁ、それが……最近、討伐依頼の後もみんなそこまで疲れなくなってきたなぁと思って……実は勝手にもう一つ依頼を受けて、た……り……?」
「はぁ!? なに相談も無く勝手な事をしたのよ!」
子を叱る母並みな剣幕のレクアに、お気楽系のキキも涙目のようだ。まあ流石に自業自得だな。
「ほ、ほら、レクアちゃんも落ち着いて……! それで、どんな依頼を受けたのキキちゃん?」
「えっ?! えーと……」
両手の人差し指同士をちょんちょんと突きながら、目線を逸らしている。
「に、荷物運びの手伝い……?」
「荷物運び……? はあ、なんだ、変な反応するからとても大変な依頼を受けたのかと思ったわよ」
「そうだね、運搬くらいなら全然大丈夫だよ。キキちゃんもそれなら最初に言ってくれればいいのに」
「あ、あはは……そう、だねぇ……」
レクアの怒りも鎮まり、とりあえず話が付いたみたいだな。
力仕事ならオレも手伝ってやろうかなと思い、オレたちもそのまま三人に付いて行くことにした。
ただ、未だにキキの目線が妙に泳いでいるのが気になる。
そしてオレたちが来たのは、これまた何時ぞや勝手にお世話になった記憶のある、木材屋である。
「今日は覚えのある場所ばかり来るな」
「どうかしたの、グレン?」
「何でもありませんよ、姉さん」
依頼書には店の裏にある倉庫に来るようにとあったらしく、みんなで店の脇道から裏に回る。
「さあ、さっさとキキが受けちゃった仕事を終わらせましょ」
表の店より大きな巨大倉庫のドアを開けたレクアが中へと入って行き、オレたちも後に続く。
「へー、子供の頃の体育館の半分くらいの広さだな」
「ふむ? 主人よ、たいーくかんとはなんだ?」
外の光で照らされた倉庫内には、木材ならではの匂いが立ち込めている。
視界の端には、沢山の積まれた木材が有り、長いのから短く加工した物も含めて多分一〇〇本や二〇〇本はあるな。
――何か、依頼内容が怖くなってきたけど、大丈夫だよね……。
「あ、あの方が依頼人の店主さんでしょうか?」
すると、倉庫の隅で加工作業をしていた数人の内、首にタオルを巻いた店主らしき褐色肌のムキムキ男性がオレたちに気付いて近づいてきた。
「何だぁ、お嬢ちゃんたち? こんな所に何しに来たんだぁ?」
おお……中々の重圧感のある声で如何にも親方って感じがする。
「あっ!? えーと……! わ、私たち冒険者で、依頼を受けてきっ、きました!」
すごみに負けてレクアが詰まりつまりながら説明をした後、懐から何かを取り出した。
それは、オレの騎士資格証のメダルに似た物で、レクア曰く「冒険者の資格証」らしい。
騎士のは銀色に対してこっちは銅色で、中央にある獅子の後ろに二本の大剣が交差している模様が彫られている。
「なるほど、確かに冒険者で間違いないみたいだがぁ……よりによって、こんなちっこいお嬢ちゃん共かぁ」
資格証を見て納得した店主だったが、三人を今一度見ると頭をかきながら唸り始めた。
何となくその理由は予想が付いているが……。
「頼みてぇのは、この木材を注文のあった各場所に運ぶことなんだがなぁ」
案の定、店主が指刺したのは壁一面に並べられた先程の大量の木材の山。これを彼女たち三人で運べとか、正直笑えない話だ。
特にレクアもミヤも開いた口が塞がらないみたいだ。
「この間まではうちで一番の力持ちだった若いのが運んでいたんだがぁ、つい最近、『俺も騎士を目指す』とか何とか言いやがって出ていっちまって困ってたんだぁ」
「そ、そうなんですか、それは大変ですね……」
依然、停止中の三人に代わって、ひとまず相槌だけでも打っておこう。
「……ふー、しょうがない! オレとリアンで何とか運ぶしかないか」
街中で竜形態のリアンはちょっとした騒ぎになりそうだが、助けない訳にもいかないだろ。
「――はっ! ダ、ダメです! 冒険者でもないグレンさんたちに手伝って頂くなんて……!」
「でもさー、レクア。この量はちょっと私達だけじゃあ無理っぽくない?」
「あなたが言わないで!」
「まあまあ、レクア落ち着けよ。オレたちは別にいいから」
「ふむ、別に問題はないが主人よ、ワシの意見は?」
「でも、流石にグレンさんたちに助けてもらうのは――」
真面目なレクアたちを説得するのは中々難しい。
そんなオレたちを他所に、知らぬ間に姉さんは他の従業員たちに声をかけられている。
モテる美人は大変ですね……。
――って、あれ?
「ミヤ、プルゥは何処に行ったんだ?」
「えっ……? あれ、さっきまで抱えていたのに! プルゥちゃん、プルゥちゃーん!」
ミヤの腕の中からいつの間にか消えたプルゥを探して辺りを見渡す。
しかし、すぐそこの木材の山の近くに居て、案外早く見つかった。
ミヤがプルゥに気付いて近づいていく。
「うん? 木材の一つに飛び乗って、プルゥどうしたんだ?」
「こらー、それは大切な商品だから。早くこっちにおいで、プルゥちゃん」
ミヤがプルゥに向けて手を伸ばす。
――すると、急にプルゥが水のように薄く広がると、乗っていた木材を包み込む。
そして次の瞬間にはプルゥは元の大きさに縮み戻り、木材の姿は跡形もなく消えた……。
「えっ……ええぇ?! き、消えちゃった……プルゥちゃん、食べちゃったの!?」
「おっ、おめぇ何してくれてんだぁ!」
「すっすみません! 仲間の使い魔が本当にすみません、弁償はしますので!」
「てか、プルゥちゃんって食べるの早いね」
「いや、呑気な事を言っている場合じゃないだろ、キキ」
レクアが頭を下げて謝罪している間にも、ミヤは「吐き出しなさい!」とプルゥを抱えて上下に振っている。
消化したならもう手遅れだと思うが……。
ミヤの手から柔らかく滑り落ちたプルゥが再び木材の上へ降り、また食べてしまうんじゃないかと思い、オレはハラハラしている。
だが、再び形を変えたプルゥは広がるのでは無く、長方形に伸びるとプルゥの中から消えた木材が姿を現し、その木材からプルゥは離れる。
「あ、出てきた……よかったぁ……!」
「食べてた訳じゃないのか?」
オレはミヤの元まで行き、膝の上で飛び跳ねているプルゥを見てみる。
こんな小さな体のどこに入っていたんだ?
「こいつぁ驚いた……。何の魔物かしらねぇがそいつ、〈次元狭間倉庫〉が使えるのか」
「にゅ、にゅー……? 何ですか、それ?」
店主が言った多分、魔法名だと思うものについて聞いてみると、どうやら格納用の魔法らしい。
と言うか、やっぱりこのメタルスライムは全然知られていない魔物なんだな。
「何処に繋がっているかぁ知らねぇが、大小関係なく物を収納できる便利な魔法らしい。冒険者の中でも〈次元狭間倉庫〉を使える魔物がいるパーティーなんざぁ、少ないんだ。こういう運搬系の仕事にこれ程もってこいな魔法はないってもんだぁ」
物珍しそうな目でプルゥを見て説明をする店主。
キキは「へー」と、分かっているのか疑問を持ちそうな返事をし、レクアは真面目に聞いて頷いている。
「凄い! そんな便利な魔法が使えるんだね、プルゥちゃん」
当人の主人であるミヤは、我が子を誇らしそうに笑顔で抱きしめて愛でている。
そしてプルゥも、無い表情で嬉しそうにしている……と思う。
それから事はトントンと進んだ。
プルゥの〈次元狭間倉庫〉に配達用の木材、約一五〇本を収納して、配達先と納品数の書かれたリスト表通りに街を回ってサインを貰っていき、最後にリスト表を店主に渡して依頼完了サインをもらって終了した。
「便利な魔法が使える使い魔が出来てよかったな」
「あんな魔法など無くても、ワシなら片手でひと運び出来る」
「あらあら、リアンがやきもちを妬いているわよグレン」
ギルドに報告をしに行っている三人を、外でオレとリアンと姉さんは待っている。
「お待たせしました。今終わりました」
「いやー、結構いい額だったでしょ? これからは荷物運びの依頼もじゃんじゃん受けていいんじゃない?」
頭の後ろで腕を組むキキが、にししっと笑みを浮かべてミヤに提案している。
それに対してギロリとレクアが睨みつけて、「反省は?」と低い声を出す。
……ちょっと寒気が走った気がする。
「さて、そろそろオレたちは帰りましょうか、姉さん」
「そうね。もう日も傾き始めてきた事ですし、何より、ルウナが貴方を待ちきれて泣き出していそうだからね」
「あははっ……簡単に想像できるからな、早く帰ってあげないと」
「えー! もうちょっといいじゃん」
「そうです、私、まだきちんとお礼出来ていませんし、もう少しだけでも……」
「二人とも、あまり無理を言うものではないわよ」
引き止めてくるキキとミヤには悪いけど、オレもそろそろルウナが恋しくなってきたからね。
「ごめんなさいね、まだ仕事が残っているのよ」
――はて、何かあったっけ?
「仕事って、書類仕事は二日前に終わらせてなかった――ああ、あれか」
「そう、今度お城である『ミトスレヤ王女殿下の誕生祝会』で言う、お父様の祝辞原稿作りの手伝い」
ミトスレヤ王女とは、名前の通りこの国の第一王女の事で、近々その王女の誕生日がある。
ガスラート王国を支える四領主はもちろん、家族のオレたちも参加しなくてはいけない。
「姉さんも大変ですね」
「グレンも他人事ではないでしょう」
「そうですね、正直今から緊張していますよ」
毎度の事だが、国王やその関係者に会うなんて、心臓が耐えられないよ。
目の前で下手なことでも言えば、最悪な状況になるだろうしな。
そう口にはせずに苦笑いを浮かべて視線をずらすと、レクアたちがぽかんとした表情をしていた。
「どうしたんだ、レクア?」
「あの……確かに今度、王女様の誕生日祝いの祭りがありますが、どうしてグレンさんたちがお城に……?」
「えっ、どうしてって……」
――あ、そういえばまだ言っていなかったっけ。
「そうか。ちゃんと名乗っていなかったな。オレはドゥラルーク侯爵領領主の家族で、グレン・ルナ・ドゥラルークと言うんだ」
「ちなみに私も、ドゥラルーク侯爵の娘で長女、サリカ・ルナ・ドゥラルークよ」
「ドゥラルーク領主の家族として、オレたちも誕生祝会に出る事になっているんだよ」
まだ家名とか名乗っていなかったので、久しぶりにフルネームで名前を口にした。
――すると、レクアと後に遅れてキキが青ざめた顔になり、次の瞬間にひざまづき始めた。
ミヤは青ざめるというより、驚きが勝っていたようだが。
「ごっ! ごめんなさい! なんか、本当に色々迷惑かけちゃってごめんなさい!」
「もっ、申し訳ございませんでした!? 知らなかったとはいえ、侯爵様のご子息様たちに数々のご無礼、お許し下さい!」
「まてまてまて、キキ、レクア?!」
急な事に驚き、ひとまずかなりのボリュームで謝罪をしてきたレクアたちを静止して三人を立たせる。
「別にかしこまらなくてもいいんだから、普通に接してくれよ」
「しかし……!?」
「いいのよ、侯爵の子と言っても、グレンは普段から貴族らしく無いからね」
「……姉さん、気のせいか、言葉にトゲがありませんでしたか……?」
笑みを浮かべてそうフォローしてくれるのはいいが、なんかちょっと気になるな。
……貴族っぽく無いのは認めるけど。
何とか堅物のレクアに――キキとミヤはすんなり受けれてくれたが、納得してもらい、変わらず親しくしてくれるように約束して一安心した。
その後、解散したオレたちは夜までに屋敷へと戻った。
勉強で今日はついて来れなかったルウナに、帰ってすぐにギュッと抱きしめられた後、夕食前に明日の準備をしようと自室へと向かう。
近々ある王女の誕生日会とは別で、明日はちょっとした予定があるからな。
――っと、その前に。
「どうしたの? もうすぐ夕食時なのに訪ねにきて。昼間に充分遊んであげたと思うけど、まだ遊び足りなかったかしら?」
「子供では無いんですから、違いますよ。ちょっと……聞きたい事があるんです」
姉さんの部屋に来て最初にキッパリと否定をした後、オレはある気になっている事を姉さんに質問する。
「――タツ、ノオトシゴ……?」
今年の投稿は最後となります。
来年もよろしくお願いいたします。