魔導書店へ
気付くと朝になっていた。
俺は急いで支度して食堂に向かった。
「おはようございます」
すでにヴェロニカさんが朝食を作っているところだった。
「今日は一人で起きれたようだね、これから叩き起こしに行こうとしてたところだったんだけどね」
「昨日昼寝してしまったせいであまり眠れなくて」
あとは魔法が使えると思うとワクワクで眠れなかったんだけど。
まるで遠足前の小学生だな……。
「それじゃあ早速食事の準備頼んだよ」
「分かりました」
俺は人数分の食器をテーブルに準備し、ヴェロニカさんが作った料理を並べた。
準備を終えしばらくするとみんなが集まってきた。
「ようユウト! 今日もやってんな」
「あ、バルトさんおはようございます」
「バルトでいいって、それに敬語もよせよ。俺たち同じ屋根の下で暮らしたんだ」
「ならそうさせてもらうよ」
「おう」
「言っとくが俺たち全員に気を使わなくていいからな、気楽に話してくれ」
「クシルさん…いやクシルありがとな」
「礼を言うなんて変な奴だな、逆に敬語なんてよそよそしいのは苦手なんだ」
全員が席に着き朝食を食べはじめた。
「よし、あんたも食べな」
「分かりました」
ヴェロニカさんに言われ俺も席に着き食べはじめた。
「ところでよユウト、おめえいつまでこの宿にいる予定なんだ?」
「特には決まってないかな、まだこの町のことも知らないし金もないしな」
「そうか、なら俺たちと一緒に自警団に入らねえか?」
「俺がクシルたちと同じ自警団に?」
自警団か……大変そうだけどなんかかっこいいかも。
「駄目だ」
振り向くとそこにはマルクがいた。
「なんだよマルク別にいいじゃねぇか。人数が増えるとその分仕事も捗るってもんよ」
「こいつには自警団に入る資格はない」
ここまではっきり言われると傷つくな......あと少しイラッときた。
「確かに俺はまだ魔法は使えないですけどちゃんとやってみせますよ」
「そうだぜマルク、まずはお試しってやつで少し働かせてからでも断るのは遅くないんじゃないか?」
「俺には分かるんだよ、こいつには向いてないってな。それよりユウトお前マリーと魔術書店へ行くんだろう? さっさと飯済ませて準備しやがれ」
そういえばそうだった。
「あ、はい」
「……」
マルクはその後何も言わず自分の席に戻っていった。
「マルクの言ってることは気にするなよ?」
「ああ、そうするよ」
「ま、お前が本当に自警団に入りたいって言うんなら俺たちがマルクを説得してやるからな」
「ありがとな」
俺は朝食を済ませるとヴェロニカさんの所へ行った。
「あの今日魔術書店へ行きたいんですけど仕事の方を早めに終わらせてもらってもよろしいですか?」
「ああ、マリーから聞いてるよ。こっちとしても魔法を覚えてくれた方が仕事が捗るからね、今から行ってきな」
「いいんですか? ありがとうございます」
「そのかわり仕事に役立つ魔法をしっかり覚えてくるんだよ」
「わかりました、では行ってきます」
ロビーに向かうとそこにはすでにマリーがいた。
「相変わらず早いなマリー、待たせたか?」
「問題ない、では行くとするか」
俺たちはそのまま魔導書店へ向かった。
道中今日の朝食に起きた出来事などを話した。
「そういえば今日自警団に入らねえかってクシル達に言われたんだけどさマルクさんに思いっきり断られたよ。そんなことよりマリーと魔術書店へ行く準備でもしてろってさ」
「懐かしいな……私も昔マルクに自警団に入るのは許さないって何度も断られたよ。それにしても珍しいなマルクのやつが私と出掛けることに関して何も言ってこないのは」
確かに今までと同じなら鬼の形相で止めに来たはずだけど。
「確かに珍しかったな、多分それよりも俺が自警団に入るのが嫌だったんじゃないのか? それはそれでへこむけどな……」
「自警団は時に危険を伴う場合があるからな、マルクなりの優しさというやつさ」
「そういうものか……けどそれが分かっていてマリーは自警団に入ったんだな」
「私の夢だったからな」
そう言ってマリーは空を見上げた。
その時のマリーはどこか悲しげな表情をしていた。
しばらくして俺たちは魔導書店の前に着いた。
「よし、着いたぞユウト。これから魔導書を買っていよいよ魔法の習得だ」
「ああ! すごく楽しみだ。今日はよろしくなマリー」
そして俺たちは魔導書店の中へ入っていった。