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異世界語習得

気付くと宿の中が騒がしくなっていた。

どうやら仕事が終わってみんなが帰ってきたようだ。

「やばっ」

俺はどれだけ寝てたんだ? 俺は慌てて起き上がるとヴェロニカさんのところへ向かった。


「すみませんヴェロニカさん、俺寝てしまってたようで」

「ようやく目が覚めたみたいだね、マリーから聞いたよあんた魔法使えないんだって?」

「はいそうです」

「それならそうと早くいいな、魔法が使える前提で買い出し頼んだんだからさ」

「そうだったんですか……」

「確認しなかった私の落ち度もあるし今回居眠りした件については見逃してやるさ。ただ次居眠りした時は容赦なく叩き起こすからね」

「はい、今後気を付けます」

ちょっと怖いけどヴェロニカさんは優しい人だな。

「今日残ってる仕事は夕食の準備と片付けだけだからあんたはもう休みな」

「ありがとうございます」

俺はヴェロニカさんの好意に甘えて夕食までの間自分の部屋で休むことにした。


しばらく部屋で休んでいるとドアがノックされた。

「ユウト、今大丈夫か?」

「マリーか大丈夫だよ」

俺はそう言ってドアを開けるとそこにはマリーと怒りに満ちた表情のマルクがいた。


「おい貴様、マリーに近づくなと今朝言ったばかりだろう。それなのに二人きりで会う約束をしていたのか?」

「さっきも言ったがただ勉強するだけだ、別に問題ないだろう?」

「いいや心配だ。確かにこいつは悪いやつではないのかもしれないがマリーと二人きりになっていい理由にはならん」

「それならマルクさんも俺の勉強手伝ってくれませんか?」

「いいだろう」

以外とあっさりと引き受けてくれたな。

「まあそいうことで夕食後にロビーで勉強会だ。では食べに行くとするか」

「ああ」

俺たち三人は夕食を食べるべく食堂へ向かった。


夕食は騒がしかったものの朝食の時と違って慌ただしくなく楽しく食事ができた。

今思えばこんな大人数で食事するのは久しぶりで会社の飲み会を思い出した。

飲み会のことを思い出したがあまり良い思い出もなく逆に無理矢理幹事をやらされた事や上司への気遣い、休み返上など色々嫌な事を思い出してしまった。

ああ生まれ変わって、良かった。

バルトとクシルとも朝の事もあってか案外早く打ち解けて他愛の無い話で盛り上がった。


しばらくして食事を終えると俺はロビーに向かった。

そこにはすでにマリーがいた。

「悪いマリー、待たせたか」

「別に気にしなくても良い。それより随分とクシル達と打ち解けていたな」

「まあな」

「それでは早速始めるとするか」

「さて、貴様の頭脳はどの程度のものかな?」

気付くと隣にはマルクがいた。

「うわっ! いつからそこに?」

「さっきだ」

全然気がつかなかった、ひょっとしてこれも魔法なのか?

「それよりも早く勉強しようじゃないか」

「マルクの言う通りだな、ではユウトこれを見てくれ」

マリーは懐から紙を取り出した。

そこには多数の文字が書かれていた。

「これが私たちの使っている文字なのだが本当に見たことはないのだな?」

「ああまったく」

俺には暗号にしか見えない、もっとも外国語も似たような感想しか出てこないのだが。

ただじっとその文字の一覧を見てるとあることに気付いた。

「あれ?この数はひらがなと同じ数だな......」

「ひらがな?」

「俺の住んでたところの文字の一つだよ。ちなみにマリーの字ってどう書くんだ?」

「ユウトの住んでた場所は文字を何種類も使うのか?変わっているな。私の名前はこうだ、ちなみにマルクの名前はこう」

やはりだ。マリーが書いてくれた二人の名前、最初のマの部分が同じだ。

「ひょっとすると読めるようになるかも」

「本当か!?」

「まずこの文字すべてなんて読むか教えてくれないか?」

俺はマリーからペンと紙を借り、マリーが読み上げた文字とひらがなを合わせながら紙に書いていく。

「なんだ?この丸っこい文字は?」

マルクが不思議そうにそう言った。

「これがさっき言ったひらがなです」

「確かに俺たちの使ってる文字とは随分と違うな」


「よし、できた」

これでこの世界の文字も問題ないだろう。

それにしても助かった、英語やフランス語みたいなものだったら詰んでいたところだ。

まあ、言葉は日本語と同じだし考えれば分かるか。

「これからはこれを見れば文字は分かるよ」

「そうか、それは良かった。ひらがなという文字が私たちの文字と似たもので良かったな」

「それじゃあ勉強会もこれまでだな、部屋に帰ってゆっくり休みな」

「はい、そうします」

「俺はマリーとまだ一緒に過ごすがな。な?マリー」

「いや、私も部屋に戻るが」

「そんな……」

またこの人は……どんだけショックだったんだ。

マルクはその場で膝から崩れてしまった。

「そうだユウト、文字がもう大丈夫なら魔術書も大丈夫だろう。明日魔術書店でも行ってみるか?」

「行く行く」

これで俺も魔法が使えるようになるのか、超ワクワクするぜ。

「ま、待てマリー。お、俺も行くぞ」

「マルクは明日仕事だろう? 私は休みだからな」

「なんて事だ! あとお兄ちゃんと呼んで」


「あ、でも俺は宿の仕事あるしいつ行けるかわからないんだけど」

「それなら私がヴェロニカさんに相談してみるよ」

「そうか、ありがとな」

「気にするな、それじゃあな」

マリーはそう言って自分の部屋に戻って行った。

「それじゃ俺も戻るか」

「まて!」

俺はマルクに肩を強く掴まれた。

「な、なんですか?」

「明日、マリーに変な事してみろ! ただじゃおかない」

「だ、大丈夫ですよ。何もしませんって」

「そうか、ならいい。本来なら俺が見張るべきなのだが仕事を疎かにする訳にはいかないからな。いやでも……」

マルクは一人ぶつぶつとつぶやき始めた。


「じゃあ俺そろそろ部屋に戻りますね」

「……」

考え事をしててまったく気付いてない、マリーと同じだな。

マルクはほっといて俺は部屋に戻った。


明日はいよいよ魔法習得か。


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