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初めてのお使い

「えーっと、次に必要なものは……」

俺は今買い出しで町に出ている。

初めての町で土地勘もない状態で買い出しに行く羽目になったが町の人が親切な為、特に問題はなさそうだった。


「すみませーん、キャベツが欲しいんですけどいくらですか?」

「おう、キャベツかい? 一玉百五十ルピだよ」

俺はお金を渡すとキャベツを店員から受け取った。

この世界ではお金の単位はルピらしい。

小銭やお札もあるしさっきまで買った物の値段から推測してだいたい一ルピ一円と考えて問題ないだろう。


それにしても凄い量だな……。

俺の両手は今買い物カゴでふさがっている。

なんでも何日か分の食材とその他雑費が必要ということなので結構な量になっている。

「こんなのをヴェロニカさん一人で毎日やってるのか?」

俺は素直に感心したと同時に無理ゲーすぎるだろと思った。

なにせまだ買い出しの半分も済ませていない、にもかかわらずもう持ちきれなかった。

「台車ほしー」

これは宿まで何往復かしなきゃだな。


俺が買い物カゴにどうキャベツを入れるか四苦八苦してるときに店員が話しかけてきた。

「なぁ兄さんや結構大変そうだな。どうしたんだ? 魔法使わねえのかい?」

「魔法?」

何言ってるんだこの人は?

「もしかして魔法使えねえのかい?」

「ええ使えませんけど……」

「変わってるなあ兄さん。魔法使わず良く今まで暮らせていけたな、不便じゃねえのかい?」

やっぱりここは魔法が使える世界なのか? それもごく当たり前のように使えるようだ。


「誰でも使えるんですか?」

「そんなの当たり前じゃないか。魔導書さえ読めば子供だって使えるさ」

なん……だと……?

「いったいどうすれば魔導書が手に入るんですか?」

せっかく異世界に来たのだ、魔法は是非とも使ってみたい!

「そんなもん魔導書店に行けばすぐじゃないか。ほんと兄さん変わってんな」

ワハハハと店員はそう言って地図を持ってきてくれた。

「ほら、この道をこう行けば魔導書店があるからそこで魔導書を購入するといいさ」

なんということだこの世界は魔法が普通の暮らしに浸透しているようだ。

てっきり俺は厳しい訓練に耐えた選ばれし者や才能がある者、他には人間以外の例えばエルフとかにしか使えないものと思っていた。

「ありがとうございます。買い物を済ませたら早速書店に行ってみようと思います」

「おう、気を付けてな。 毎度ありー」


俺は一旦荷物を戻すべく宿に帰ることにした。

帰る途中に幼い子を連れたマリーを見つけた。

どうやら向こうも俺の方に気付いたらしくこちらに向かってきた。

「どうしたんだその子は?」

「母親とはぐれたらしくてな今一緒に探していたところだ」

その男の子はマリーの手をぎゅっと握りしめ今にも泣きそうだった。

「なら俺も探すの手伝うよ」

「本当か済まないな」

マリーはそう言ってしゃがみこみ男の子に微笑んだ。

「もう大丈夫だぞ、このお兄ちゃんも一緒に探してくれるそうだからな」

「ほ、ほんと?」

「ああ、だから安心て大丈夫だからな」

「うん!」


「じゃあ探す前にまず母親の特徴を教えてくれないか?」

「ああ、それならこの写真を見てくれ」

マリーが写真を取り出すとそこにこの子の母親らしき人物が写っていた。

「写真があるのか、ならすぐに見つかりそうだな」

「そうだな、とりあえず今ははぐれたと思われる場所に移動しているところだ」

「そうだったのか」

そういうわけで俺たちは母親を探しながらその場所に向かった。


「母親と合わなかったな」

はぐれたと思われる場所についたが結局母親には会えなかった。

「そうだな、だがここまできたら問題ないだろう」

「それってどういう……」

「あっ! お母さん!!」

いきなり男の子が声をあげ振り向くとそこにはこの子の母親がいた。

その母親は男の子を見つけると駆け出してきて男の子をぎゅっと抱きしめた。


「どこに行ってたの! 心配したじゃない」

「ごめんなさい……」

「本当にありがとうございます」

「いえ、礼にはおよびません。良かったなお母さんが見つかって」

「うん! ありがとうお姉ちゃん。あとお兄ちゃんも」

「ああ」

男の子は手を振りながら母親に連れられ帰っていった。


「済まなかったなユウト」

「別に俺は何もしてないしお礼なんていいよ」

「そんなことはないさ、ユウトがいてくれたおかげであの子も不安が少し減ったに違いない」

「そうか? それなら良かったよ。ところでさっき母親がすぐ見つかるようなこと言ってたけどどうしてわかったんだ?」

そう、マリーがここまできたら問題ないと言った途端に母親が現れたのだ、偶然にしてはおかしい。

「ん? 探知系の魔法を使っていたからだが?」

「え? 魔法使ってたのか?」

「まぁ私ではなくてあの子の母親が、だがな」

どうやらやはりごく一般的に魔法は使われているらしい。

「それなら母親を探さなくてもマリーが探知魔法を使ったらすぐ見つかったんじゃ」

「それは無理だ。私は探知系の魔法は苦手なのでな、使えるには使えるが生物の大きさくらいしか分からないし区別もつかない。正確な探知は無理なんだ」

「なるほど」

魔法にも得手不得手があるのか。

「ちなみにあの母親の探知系魔法も範囲が狭かったみたいであの子と距離が離れすぎてたらしい」

「なら離れる前に気付くんじゃ?」

「あの子はあの子で移動系の魔法を使ったらしく一瞬で移動してしまったらしい。慣れてなかったみたいで制御が効かなかったそうだ」

あんな小さな子でも使えるんだな……。

「だから迷子になっちゃったのか」

「そういうことだ」

あんな小さな子でも使えるなら俺だって使えるはずだ、ならすぐにでも魔法を覚えたい。


「なあマリー、俺も魔法使いたいんだけどよくわからないからさ後で魔道書店についてきてくれないか?」

「別に構わないが、まさか魔法が使えないのか? ……いやそうか字も読めなければ魔道書も読めないか。 分かったいいだろう、だがその前に字を読むための勉強からだな」

「うっ、勉強……」

学生の頃、英語ですらダメだった俺に異世界語を読めるようになれるのか?

「なら今日から早速勉強だな。仕事が終わり次第呼びに行くからな」

「ああ分かった、これも魔法の為だもんなやってやるさ」

「なかなかやる気だな。とこでユウト」

「なんだ?」

「その荷物、買い出しの途中だったか?」

…………。

「しまったー!」

やっば、完全に忘れてた。

もう結構時間たってるんじゃ……。


完全に買い出しを忘れてた俺は急いでまだ揃っていない物を確認し買いに行くことにした。

そんな俺を見てたマリーが荷物持ちを手伝ってくれて、なんとか宿に帰らず買い物を続けることが出来た。

しかし予定よりだいぶ時間が経ってしまったので俺はヴェロニカさんにこっぴどく叱られた。

その後、ヴェロニカさんから罰としてトイレ掃除と風呂掃除を一人でやらされ、夕方になる頃にはすっかり疲れ果ててロビーで寝てしまっていた。

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