いざ宿へ!
俺はマリーに連れられマリーが暮らしてるという宿に向かっていた。
「そういえばマリーは仕事って何をやっているんだ? 俺を助けた時もこれが仕事とか言っていたし」
「まだ話してなかったな。私はこの町の自警団をやっている。これから行く宿も自警団が利用させてもらってる宿だ」
「自警団? 」
「ああ、この町やその周辺の警備が主な仕事だ」
「人数ってそれなりにいるのか?」
「別に多いわけではないな、これから行く宿に全員暮らしてるくらいだからな。女性なんか私一人しかいないほどだ」
今から行く宿は社員寮みたいなところなのかな?それにしても女性がマリー一人って色々危ないんじゃ……。
「着いたぞユウト、ここが私の住むそして自警団が暮らしてる宿だ」
「ここが宿か」
へぇ、結構大きいんだな。
宿の大きさは人数的には40人くらいは暮らせそうな感じがした。
「じゃあ入るとするか」
「ああ、わかった」
俺はマリーの後をついて宿に入った。
「今帰った」
「お帰りマリーちゃん。おや?その方は?」
入るとすぐに女性がいた。服装はメイド服らしきものを着ていたが、よくアキバなどで見るようなやつではなく本格的なものだった。
見た感じこの宿の管理人さんか家政婦といったところだろう、年齢は30代くらいで体格はがっしりとしていた。
「近くの森でボアロックに襲われていたのを見つけてな、金もないようだったから連れて帰ってきた」
「へぇそうかい、あんた名前は?」
「俺はユウトといいます」
「そうかい部屋はまだ空いてるところあるから適当に使いな」
「ありがとうございます」
なんていい人なんだ、マリーといいこの人といい異世界の人は親切だなあ。
「だが決してただではないよ? ただで住まわせちゃあ他の奴らに悪いからね」
「でも俺金持ってないんですけど……」
「甘えてんじゃあないよ、金がないなら働くそんなの常識じゃあないか」
「それはそうですけども……」
この人の言う事はもっともだがどうしたものか。
「今丁度人手が足りてないところなんだ、ここの従業員として働いておくれ。 それなら宿代だけは大目に見てやるさ」
「いいんですか? それならお願いします」
これでなんとか宿を確保することができたようだ。
「今日は疲れたろうから明日から仕事をお願いするよ。今日は自分の部屋でも決めてゆっくり休みな」
「はい、ありがとうございます」
「よかったではないか、ユウト。 これで宿と金の心配は無くなったな」
「そうだな」
「ヴェロニカさんもすまなかったな」
「良いってことさ、あんたもちゃんと休むんだよ」
そう言ってメイド服の女性、ヴェロニカはこちらに背を向けながら片手を振り別の部屋へ行ってしまった。
「部屋の事だが私の隣の部屋が空いているからそちらを使うと良い。何かあった時に近いと便利だからな」
「ああ、分かった。今日はありがとなおかげで色々助かったよ」
「気にするな、言ったろう?これが自警団の務めだ」
そう言ったマリーはどこか誇らしげだった。
「明日も早いし今日はもう部屋に戻るとするか。また明日な」
「ああ、また明日」
マリーは笑顔で手を小さく振りながら部屋に入っていった。
俺もマリーが部屋に入るまで小さく手を振っていた。
「よし、寝るとするか」
俺はマリーが部屋に入ったのを確認するとこれからしばらく寝泊まりすることになる部屋に入った。
中は意外と普通だった。ファンタジー感はあまり感じられなくどちらかというと日本のビジネスホテルに近かった。
違うところといえば洗面所やトイレ、シャワールームがないところか。おそらくそれらは共用なのだろう。
広さはビジネスホテルよりは広くシングルベッドが1つ置いてあるがあと2〜3個ほど置けそうだった。
あとはタンスとドレッサーがあるくらいだ。
一通り部屋を見たあと眠気が襲ってきたのですぐにベッドに横になり寝ることにした。
また明日から大変な1日が始まるんだな、なんてことを思いながら俺は深い眠りについた。