晴れ渡る空
「ところでルゥは何しに来たのさ?」
多少の気恥ずかしさも手伝って少し早口になりながらも幼馴染みである見習いシスターのルゥに尋ねてみる。
「ん?私はクラウスと一緒にお昼を食べに来たんだよっ」
そう言って満面の笑みを浮かべながら何処からか両手で抱える程のバスケットを取り出した。
「……ルゥ、それどこから」
「ん?私はクラウスと一緒にお昼を食べに来たんだよっ」
そう言って満面の笑みを浮かべながら両手で抱える程のバスケットを突き付けてくる。
「………わかったよ、一緒に食べよう」
ルゥはかなり頑固だと思う、自分の中で一度決めてしまうとそれを覆すのはかなりの困難になる、一応説得してこちらに従ってくれてもその後拗ねたようになるので僕は割と従ってしまうようにしている。
「うん!一緒に食べようっ!」
本当に嬉しそうに笑うルゥを見ると、何だか少し照れくさくてまた顔を背けてしまった。
二人で森の少し開けた場所にある岩場に向かい手頃な岩に腰掛け、どこから出したのかわからないバスケットからお昼を取り出し一緒に食べる。
ふとルゥを見ると、まるでリスのように口一杯にサンドイッチを方張りもきゅもきゅというような感じでニコニコと嬉しそうに食べていた
「ルゥは本当に美味しそうに食べるよね」
「うんっ!美味しいよっ!」
口元にパン屑を付けながら笑うルゥは可笑しいのに凄く可愛くてズルいと思う
僕とルゥは同じ時、同じ場所でくそババァ…シスターティアに拾われたらしい。らしいと言うのも僕達はその時赤ん坊で二人で寄り添うように寝かされていたみたいだ。
僕とルゥの名前は僕達を包んでいた布に刺繍されていたそうだ、それ以外にはこの古ぼけた銀の首飾りとブローチがあっただけで両親の事がわかるような物は残されていなかったらしい。最も僕とルゥが兄妹なのか尋ねたらそれは違うと言っていたから本当はまだ他にも両親に繋がるような物があったのかもしれないけど。
僕達は去年の5歳に成る時にそれを聞かされた、普段は何事も笑い飛ばしたり、いい加減だったりするシスターが辛そうに話してくれた後に優しく抱き締めてくれた時は正直驚いたけど、何だか少し暖かくなってルゥと一緒に訳もわからず大泣きしてしまった。両親に捨てられてしまった僕だけどその暖かさはきっと家族の暖かさだったのだと思う。
それからは何だか少し照れくさくてシスターの事をくそババァとかって呼んだりするようになってしまったけど、シスターはいつも笑いながら「おうともさっくそババァで何ぞ悪いかね?」と僕の頭をグシャグシャしてくる。その度に僕は何だかモヤモヤしてしまう。
それはきっと僕が『色無し』だからなんだと思う……
この世界は誰もが魔法を使えて誰もがそれぞれの色を持って産まれるらしい、でもたまに誰もが持つ色を持たずに産まれてくる人がいるのだと言う。
産まれながら色を持たない人は魔力が弱かったり上手く魔法を使えなかったりするので、そんな人の事を『色無し』『無色』とかって呼んで酷い事をする人も中にはいるみたいだ。
僕の両親は『色無し』が嫌だったんだろうか……
「・・ウス?クラウスってば!」
物思いにふけっていると激しくかたを揺すられる。
「んぁっ、なんだよ急に大声出されるとビックリするだろ」
「だってクラウスってばお昼も食べずにずぅ~とぼ~っとしてるんだもんっ」
そう言われてバスケットの中身を見てみると、そこにはもう残り僅かになったサンドイッチとおそらくデザートとしてあったパイのカスだけがあるだけだった。
「ルゥ、僕のパイはどこに消えたのかな?」
「んっ?」
キョトンとしながらこちらを見つめるルゥの両手には沢山の木苺が詰まった美味しそうなパイがしっかりと握られていた。
「もしかしてその両手のパイは僕の分じゃないのかなぁ」
「んふふ、早い者勝ちでぇすっ」
そう言うやいなやルゥは立ち上がって走り出す。
僕の分のパイを持ったまま。
「あっ、ちょっと待っててばっ!」
慌ててルゥを追いかけるものの、ルゥは逃げながらも器用にパイを食べていく。
「あぁ~~おいしいぃ~~、あははははっ」
「本当に待っててばっ!怒るぞ!」
「心から望むものは自らの拳により勝ち取るべしっ!シスターの教えだよぉぉ」
「そんな物騒な教えをとく人物がシスターの訳がないっ!」
「あっはっはっはっは~」
晴れ渡る空の下、楽しげな少年と少女の声が響き渡っていた。
(☆´・ω・)クラウス達が暮らしている所は『色無し』に対しそこまでの偏見を持っていません。全くの0では無いでしょうが、大抵はシスターが押さえ込みます。(物理で)
△△
(|||・ω・) ……シスターってなんだっけ?