第17話 モノたち
翌朝になり待ち合わせをしたギルド前に向かうと既に彼女はそこに立っており、幾人かの冒険者たちと会話をしていた。
やがて彼女に近づいていくとこちらに気づいたようで会話を止め駆け寄ってきた。
「待たせたかな?」
「いえ、私もさっき来たばかりだから大丈夫」
「そういえば聞きたかったんだけど奴隷って値段はどれくらいするの?」
「ああ、そのことね。」
彼女の説明では、やはり獣人やエルフといったある意味特殊な、ただの人間から見て特殊な部類の存在たちは値段が高いそうだ。
そして奴隷の価値を左右するのは性別とステータス。
女性ならば若さと美しさ、そしてエルフならば魔力、獣人ならば力の強さ。
男性ならば多くの場合は力の強さのみらしい、中には顔を特に重要視する人もいるらしい。
まあ、重要視する人の性別や性癖は別としてなのだけれど。
そうこうと話しているとやがて大きな館の前にやってきた。
「着いたわ、ここが奴隷商よ」
「なんか、思ってたより立派なんだね」
「まっ奴隷商は儲かるらしいからね~
それにここはこの街の奴隷商の中でも有名店だから」
「有名って、俺はそんなに金は持ってないよ?」
「別に有名だから高い奴隷しか売ってないわけじゃないのよ?有名だからこそピンからキリまで売ってるの」
どうやら信頼と実績の有名店らしい
「それに何も来たからといって買わなきゃいけないわけじゃない、ただ今回はユウが奴隷商に来たことがないと言ったから一番のお店を見に来ただけなんだから」
少し微笑みかける彼女を見ていると館のドアが開いた。
横に大柄な、恰幅の良い、太った、偉そうな、一人の男が出てきた。その前後には冒険者、と言うよりはやっている事はボディーガードのようにも見える5人の男と首輪を付けた3人の女性がいた。
女性の顔は皆一様に死んでいた。
と言うよりは殺してくれといった全てに絶望しきっている顔をしていた。
「あれはこの辺に住んでる貴族の息子よ。歳は私たちとあまり変わらなかったはず」
下卑た顔にあの図体、まるであのオークのようであった。
「さっ!あれのことはどうでもいいから行こ!」
生理的に無理みたいなものなのだろうかティナが腕を強引に掴み館へと入っていく。
中は外見同様に豪華絢爛としたものだった。
しかしあまりに派手というわけでもなく嫌味がない程度に金の持ち具合が分かるくらいであった。
「これはティナさん、いらっしゃいませ。本日はどのようなご入用で?」
「こんにちはハルベルさん。今日はこちらの方のユウさんの案内です、奴隷商に来たことがないとのことだったので、、」
「なるほど、私は当奴隷商の従業員をしているハルベルと申します。お見知りおきを」
「初めまして、ユウと言います」
どうやら彼女の、ティナの顔の広さは本当になかなかのもののようだ。
「さて、では初めてどのことでしたのでまずは奴隷たちを一通り見て頂こうと思います。
奴隷の扱いなどについてはご存知ですか?
「そうですか。では最後にそれについてもお話させていただきます。」
まず案内されたのは女奴隷のいるという区画だった。
まるで囚人の様に彼女らは牢に入っていた。
いや、囚人や牢というのは語弊があるかもしれない。
なぜなら彼女らは傍から見ても汚れがないように美しく、牢の中もそれに合わせたかのように整っていたからだ。
「彼女らは奴隷ではありますが当館の商品でもあります。これらの事は実は当然のことなのですよ?本当は」
驚きが顔に出ていたのであろうか?
それにしても最後の、本当はというのが気になった。
おそらくこの街の、ここ以外の奴隷商でこのようにしている所はそう多くないのだろう。
だがそれも責められない如何せん金がかかってしょうがないだろうから。
それ自体はハルベル自身も心得ているのだろう。
商品に気遣いすぎて自身を疎かにしてしまってはそれこそ商売人として駄目なのだろうから。
「当館では様々な種類をお揃えしています。人、エルフ、ドワーフ、犬や猫その他多数の獣人。
「もちろん違法な奴隷は取り扱っておりませんよ?
「では、次は男奴隷のいる区画に行きましょう。それとも女奴隷だけで十分ですか?
「そうですか。ではご案内させていただきます。
「男奴隷も女奴隷と同じく多種多様に揃えております。女奴隷との違いはその殆どが冒険者をしていたことがあること、そして年齢も高めですね。20代から30代が多いでしょうか。
「そうですね。ティナさんの仰るように冒険者の方はまず男奴隷を買われる方が多いです。
それにより冒険の合理化を図りお金を稼ぎ次は女奴隷をというわけです。
「ああ、先ほどの方を見てましたか。あの方はいつも女奴隷のみをお買い上げにいらっしゃいますね。
「奴隷たちに断る権利ですか?そのようなものは基本的にありませんね。態度の悪さに怒って送り返される奴隷は稀にいますが。」
まあそんなものか。ペットショップだってペットに飼い主を選ぶ権利は無い。
まあ、今回の舞台は奴隷商であり売られ買われるのはれっきとした人なのだけれども。
「では最後に奴隷についてお話させていただきます。
「まず・・・・・・・・」
衣食住は最低限を保証すること
意図的に生命を奪うような行為はしてはいけない
などなど大まかに言えばこんなものだった
詳しくは奴隷契約の際に奴隷商立会いのもとに個人的に決められるらしい。
まああまり過激だったり倫理的反するものはそもそも契約魔法が反応しないらしいのだが。
(奴隷契約の話で倫理的なんて言葉聞くとはね)
「では、お求めの際はぜひ当館へお越しください。」
こうして新しくこの世界の常識を知ることができた。
その後ティナとは夕食を食べに行ったりとあったのだが、期待していたことなど何も無かった。
当たり障りのない話をして当たり障りの無いようにその日は別れたわけだ。
(まあ、当然なんだけどね)
奴隷、女にしても男にしてもある程度のステータスを持っていれば冒険には役に立ってくれるだろう。
(まずは目標はできたか・・・
金を稼いで貯めるとしよう)
そうして床につくことにした。




