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異世界冒険活劇 ~チートなしでも英雄になれますか?~  作者: 飛騨 栄治
2章~新都市へ~
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第10話 忘られぬ傷



あれから『階層超え』が起きたという話は出ていない。

あの一日に二度の『階層超え』が偶然だと決めつけることは誰にもできないが・・・



冒険者ギルド


ユウは、ギルドの職員に剣の研ぎ師について話を聞いていた。

使った後は血を拭き取るなりしていたが、昨日の迷宮探索の際若干斬れ味が悪かったように感じたのだ。


もちろん、剣の砥石は武器屋で買うことはできるので自分で研ぐことは可能だ。

ギルド職員からの答えはユウの思っていた通りのものだった。


砥石を買い自分で研ぐのは安上がりだ。しかし、所詮は素人。自分の命を握っている剣に対しては金をかけ妥協すべきでないこれが答えだった。



「ここがゴーシュさんの鍛冶屋か」

ギルド職員からある鍛冶師について教えてもらった。その人のお店は、多くの新人冒険者が通っているそうだ。


なんでも昔は頑固一徹の職人気質だったらしいが、孫が冒険者になった途端新人冒険者の世話をやくようになったらしい。


「人はいつ変わるかわからんね」ギルド職員がそう言っていたのが記憶に新しい。

そして、この街の鍛冶師を父と祖父に持つ友人のことも・・・



「すいません、ゴーシュさんはいらっしゃいますか?」

店に入ると、道具は置いてあるものの人気は無くガランとしていた。


「はーい!少々お待ちください!」

二階からだろうか元気のよい少年の声が聞こえてきた。

しかも、ユウにとって何度も聞いたことのある声色の・・・


「いらっしゃい・・・ませ、ユウさん!迷宮は?」


やっぱり。そう思わずにはいられなかった。

孫が冒険者になった鍛冶師と聞いてもしかしてとは思っていたが、この街の鍛冶屋を営んでいるものは多いし単なる偶然とも思っていた。



「やあ、ホーメル。少し剣の斬れ味が落ちてるようでね、先に剣を研いでもらいに来たんだ。」


驚いているホーメルに迷宮探索の予定を変更した理由を言うと、然もありなんというように頷き

お祖父ちゃん呼んできますと言って二階へと階段駆け上がって行った。


「やあ、いらっしゃい。孫の友人らしいな、私がゴーシュ。こっちは息子のハイドだ。」


剣を研いで欲しいんだって?とハイドに聞かれ、ユウは剣と短剣を渡す。


「ふむ、血はちゃんと拭き取っているようだが、刃こぼれが酷いな。」

他のものもあるから5日後に来てくれ。そう言われ、ホーメルとレミに別れを告げて外に出た。



「さて、武器屋に行くか。」

前に買った時は、身近にいたレガンが反面教師となり貯金のことを考え武器は各一つずつしか買ってなかった。


よく考えればこれは危険なことだ。


もし弓が壊れたら?


もし剣が折れたら?


そんなことよく考えもしなかった。改めて自分の危機感の無さや馬鹿さ加減にガッカリする。



「この剣と・・・あとその短剣と弓矢を二つずつ下さい。」


物は前回と同じものだ。もう少し高いものも買えたが、ポーションも買いたいので諦めた。

それに、手に馴染んでるものの方が良いと考えた。


剣と短剣を腰にさし、他の物はバッグにしまいポーション屋に行くことにした。


「えっと・・・ハイポーションを三つ」

ハイポーションなら、普通のポーションでは治らない大怪我や毒・麻痺など専用のポーションでなければ治せない症状も完治させることができる。


(まあ、高くても持ってて損はしまい・・・)




迷宮 一階層


(まずは一階で試し斬りするか)


「やっぱり・・・斬れがいい! フッ!ハァ!」

5体のノーマルゴブリンに対して魔法と剣を駆使し近距離線でも問題の無い動きができるようになってきた。


剣を新品に替えたのも、もちろん影響しているだろうが



(二、三体のゴブリン見つけて格闘術の練習もするか)


格闘術があれば、剣での戦い方にも幅は広がるし剣を抜けないような自体に陥る可能性も考えた方が良いだろう


「さてと、探すとするか・・・」



8分ほど経った後、ゴブリン3体の群れを見つけることができた。


まずはある程度近づき、こちらに注意が向かぬよう遠くに石を投げる。

すると、カンッという音が迷宮ないに反響した。

ゴブリンたちは音の発生源の方を向いている。


ユウが一気に詰め寄ると、1体のゴブリンが気づいて剣を振りかぶったまま迫ってきた。



(まずは、一体一か好都合だ!)


ゴブリンの剣を短剣で受け、即座に相手の腹部を足で蹴る。そして、怯んだゴブリンの頭部めがけて廻し蹴りをくらわせた。


すると、ゴブリンは糸の切れたあやつり人形のようにバタリとその場に倒れた。



続いて2体のゴブリンがこちらに気づいた。


迫ってきた2体に対し、相手が足の射程内に入った瞬間に蹴りを食らわせ、1体を怯ませる。


そして、もう1体のゴブリンの剣を受け流し返し刀に顔面に裏拳をぶち当て、さらに右手の短剣をゴブリンの眉間めがけて突き刺した。


ザシュッ という音がして、ゴブリンの目から徐々に光が失われていった。



としていると、


「ギガアガルグ!」

ゴブリンの声が聞こえ後ろを向くと、ちょうどゴブリンが斬りかかって来るところだった。


ユウは慌てて横に避けるが左腕を少し斬られてしまった。

焦ったユウは、とっさに「ファイヤーアロー!」と唱えゴブリンを撃退する。


慢心と油断が招いた結果と言うべきだろうか。この世界に来て初めて負った傷だった。


(そろそろ帰るか・・・)


ポーションを飲み、迷宮外に出ることにした。



収穫はあった。しかし、あの時ゴブリンが声を発せず斬りかかってきていたら気づかず深傷を負っていたかもしれない。


初めて傷を負った今日を忘れまい、と心に決めるユウだった。





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