閑話4 ~他国の動乱と禁術~
ミセントルス王国 王城
「王よ!今こそあの禁術を、使うべきです!」
国王『リペリアス』の自室で、レミセントブルクの国王『リーゼル』から「階層超え」について説明を受けていた臣下の一人が王に詰め寄った。
「しかし・・・!あれは・・・災厄をもたらすぞ!」
リペリアスは頭を抱えながら、詰め寄る臣下に言い放った。
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ミセントルス王国にはある禁術がある。
過去にこの禁術が使われたのは二度、用いたのは別の国ではあるが・・・
禁術の詳細に関しては、扱う『メヒュタル』家という魔法に長けた一族しか知らない。
この禁術は、何処からか『勇者』と言われる人間達を召喚するものだ。そして、彼らは大いなる力を手に入れる。
昔、「階層超え」が起こった時、また他国との戦争が熾烈を極めた際に行なわれた。
しかし、『勇者』が召喚された後は悲劇しか待っていなかった。
大いなる力を手に入れた『勇者』達は酷く傲慢になっていったのだ。
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・ある者は、馬鹿げた戦略を実戦に用い兵士たちを遊び駒のように扱った。
・ある者は、奇妙な食品を作り人を殺した。
・ある者は、同時に呼び出された『勇者』たちを私怨で殺した。
・ある者は、その力を見せつけ女たちを無理やりはべらせた。
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この自体に危機感を覚えたのは、王族・皇族だけではなく冒険者ギルド他、全てのギルド、冒険者たちだった。
ある時は、毒殺、睡眠薬を使い拉致した後に暗殺、その他非合法の【暗殺ギルド】、【盗賊ギルド】など暗部の力も借り『勇者』たちは処理されていった。
しかし一番の問題は、この禁術を使う『メヒュタル』の一族が存命していることだ。
もともと彼らは、既に無くなったデルーガ帝国に使えていた。
この国は、禁術による『勇者』騒動の責任として他国の兵や冒険者によって滅亡の道をたどったのだ。
しかし、『メヒュタル』は生き延びていた。
そして禁術をエサにミセントルス王国へと入りこんだのだ。
そして、今その禁術が使われようとしている。
「ふぅ・・・父上はだいぶまいっているな・・・」
ミセントルスの王子『リュークリヒト』が王室から自室に帰り、馴染みの臣下に対して言うと
「そのようで・・・ 殿下はどのようにお考えで?禁術について」
リュークリヒトに話しかけられたこの男も、さきほど王室に居て『階層超え』について聞いていた臣下だ。
「まだ早いだろう。奴らの力は役立つ、しかし代償もでかい。急がず時を見極めるべきだろうな」
王子の返事を聞き臣下は
「では、皆にも殿下のお気持ちについて知らせておきます」
王子が「ああ、頼む」と言うと臣下は部屋を出る。
(あの一族が勝手なことをしなければいいが・・・)
『メヒュタル』は決して侮れない奴らだ狡賢い上に知恵もある
こうして、迷宮都市ヴルテンにおける『階層超え』は様々な国に混乱を招いていった。