閑話3 ~ギルドマスター~
階層超え討伐後
【迷宮都市ヴルテン】 冒険者ギルド ギルドマスター『フェルナンド』執務室
そこには通信魔法を使うフェルナンドの姿があった。
「一日に二度の階層超えだ・・・」
頭を抱えながら悩んでいる。
「だが、一回は所詮ゴブリンメイジだろ?」
そこまで気にすることか?という口調で、この言葉を発したのは【商業都市エルミント】の冒険者ギルド マスター『ネイレス』
「だが、これまで一日に二回も階層超えが出現したことは一度だけでは?」
そう疑問を投げかけるのは【海上都市シーライズ】冒険者ギルドマスター『レナード』
「たしかに・・・ そもそも階層超えは数年から数十年に一度。一日に二度の階層超えは五、六十年前に一度だ。」
そう答えるのは【王都】冒険者ギルド総マスター『ヴィクトル』
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五十七年前 迷宮都市
そこには怒号と悲鳴が溢れていた。
「逃げろ!一階層にミノタウロスが出たぞ!」
「十階層にドラゴンがいた!あんなの見たことないぞ!!」
まだ現在の冒険者ギルドマスター達が産まれていない頃、世界は異常な空気に包まれていた。
天候は荒れ、各地の森で数回に渡る魔物の大発生。
その前触れとされるのが、迷宮における階層超えの複数勃発。
これまでに起こったことのない現象に、当時の各地の冒険者ギルドマスターと各国王族は懸命に処置に当たった。
結果は惨憺たるものだった
冒険者、各国兵士の合計死者数 数百名
負傷者 数千名
終息したのは三年後だった
しかし、その後は反動によってか落ち着いた日々が続いた。
魔物の数も通常より大きく減少、迷宮での階層超えも出なくなっていた。
もしも、またこれが起きたら・・・
これを覚えている元冒険者、王族にとって『階層超え』は違った意味も持っているのだ。
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「それでどうする?」
レナードがヴィクトルに問いかける
「はぁ・・・ ひとまずは各ギルドマスターへ連絡。
各総マスターと王族へは私が連絡をする」
「「「了解」」」
こうして冒険者ギルドマスターたちの夜は更けていった。