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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
根暗な少年の怠惰な青春黙示録
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どの集団にもカースト制度が存在するが、はっきり言ってそれは自分の行動を縛っているだけであり、とくにメリットはない。

「昨日、学級委員から金を受け取ったあと、職員室の机の上に置いておいたんだ。そうしたら生徒から、授業で分からない所があると言われてな、数分席を外したんだが、どうやらその時に盗まれたらしい。皆、本当にすまん」


 盗まれた場所は職員室。つまり、犯人はこのクラスの人間とは限らないということか。


 ちなみに、紛失したという可能性は薄い。俺は昨日、職員室に修学旅行費を置きにいったが、その時には確かにあった。


「ちなみに、隣のクラスでも同じ事件が起こっているらしい」


 ・・・・この学校の教師、大丈夫か?


 本気で教師の頭の心配をする俺を余所に、ホームルームは終了した。俺は次の授業の準備をしながら、この後どうなるかを考えた。


 授業の大半を寝てすごし、放課後になった。俺は、イーデアリスを迎えに、隣のクラスへ向かった。


「おいイーデアリス、そろそろ帰る・・・・」


 と、そこで驚くような光景を見た。


 数人の女子が、イーデアリスを囲んでいるのだ。友好的な雰囲気はない。むしろ、険悪すぎてピリピリしている。


「さっさと吐けよ!」


 女子の一人が、イーデアリスの胸ぐらを掴み上げる。それを皮切りに、他の女子も声を上げる。


「修学旅行費、盗んだのお前だろ!」


「お前を無視した、あたし達への当て付けかよ!」


「テメエのせいで楽しみにしてた修学旅行、行けなくなったらどうすんだよ!」


 ・・・完全に八つ当たりだった。


 まあ気持ちは分からなくもない。なにか事件が起こった時、いじめられている奴や友達のいない奴に当たるのは、彼らの常套手段だ。行き場のないイライラを、誰かにぶつけたいのだろう。


「どっかに持ってんだろ。おい、鞄の中調べろ」


 一人の女子がイーデアリスの胸ぐらを掴んだまま、取り巻きの女子に命じる。その命令に迅速に動き、イーデアリスの鞄を引っくり返す取り巻き。見事な主従関係だ。


 俺は辺りを見回す。クラスに残っている連中は見てみぬ振りをしているか、さっさと教室から出ようとしている。どちらにしろ、助ける気は毛頭ないようだ。俺もどちらかと言えば関わり合いになりたくないのだが、仕方ない。これ以上イーデアリスを刺激したら、ただでは済まない。主に女子達が。


「面倒くさいな、本当に」


 俺は溜め息を吐くと、能力を発動させた。辺りの雑音を鼓膜で増幅し、拡散する。俺を中心に大音量が流れ、それに三半規管をやられた奴らが次々と倒れていく。数秒もしないうちに、教室内で俺とイーデアリス以外立っている奴は居なくなった。


「よし、帰るぞ」


 能力を切り、俺はいつも通り淡々とした口調で言う。・・・この技、一見すると一人で敵を無傷で倒す『俺TUEEE』だが、実際にやっているのはただの大音量による気絶なので、格好悪い事この上ない。


 イーデアリスは俺を見ると、心底意外そうな顔をした。


「あら、居たのね倉根くん。影が薄すぎて気がつかなかったわ」


「・・・おい」


 そこは感謝の言葉を述べる所だろ。なんで助けて悪口を言われなくちゃならないんだよ。


「まあいいわ。早く行きましょう」


 助けてもらってこの態度。なんかもう、苛立ちを通り越して呆れてしまう。


 鞄から落ちた教科書や筆箱を拾い、教室から出る。廊下に出ると、イーデアリスは俺の顔を見た。


「見てたの?」


「ああ、一部始終な」


 カアッと、イーデアリスの頬が赤くなる。やはり彼女でも、いじめを受けている様を知り合いに見られるのは恥ずかしいようだ。


「今回は女子のトップってか。お前も大変だな」


 あの女子を、俺は知っている。この学年の女子のカースト制度のトップに立つ女だ。男相手にもずけずけと物をいい、ギャルっぽい口調で話すため、悪い意味でよく印象に残っている。


「別に大変じゃないわ。下等な種族が何人かかろうと、私にはなんの支障もないもの」


 確かにそうなんだけどな。言い方ってものがあるだろ。


「そういえば、来週お前の誕生日だったな」


 俺が言うと、イーデアリスは頷く。


「そんな物もあったわね。貴方に言われるまで全然気がつかなかったわ」


「おい」


 自分の誕生日くらい覚えておけよ。まあ、イーデアリスには家族が居ないので、仮の誕生日なんだがな。


「何か欲しいものあるか?」


「特にないわね。大抵は能力で補えるし。強いて言うなら、私の能力では作れない物ね」


 ハードル高いなおい。


 イーデアリスが本気を出せば、地球をもう1つ産み出せる。自分にチート能力を大量に付与して敵地に飛び込んで無双する事も出来るし、半日で人類を根絶やしにする事もできる(最強の犯罪者を除く)。


 彼女の能力は万能すぎて、非の打ち所がほとんどないのだ。RPG

で例えるなら『全ステータスMAX、かつ自動回復付きのボスキャラ』だ。出てきたら一瞬で興醒めする。そもそも、戦いにすらならない。


 そんな彼女が能力で作れない物など、一握りしかない。それも、かなり難しい物ばかりだ。


「まあ、考えておくよ」


 今の俺には、これを言うのが精一杯だ。


「今日は『名も無き調査団』の収集もない事だし、何か食べていかないか? たまには外食もいいんじゃないか」


 ここ最近、面倒や奴らに絡まれて疲れた。金を無限に生成できるイーデアリスが居ることだし、たまには外食もいいだろう。


「それも一理あるわね。貴方と一緒と言うのが多少気に入らないけれど、まあそこには目を瞑って上げるわ」


 なんで、たかが外食1回でここまで言われなければならないのだろうか。まあいいか、いつもの事だ。


 昇降口で靴を履き替え(イーデアリスの靴は隠されていたため、新しく産み出した)、外に出る。校門から出て辺りを見渡しつつ、イーデアリスに聞く。


「この近くのファミレスでいいか? そこが一番近いし、安価で済む」


 金はイーデアリスの能力でどうにでもなるにしても、社会のバランスを崩さないためにも産み出す金は少ない方がいい。俺達が原因で国内でインフレが起こっても困る。


「いいわよ。ファミレスなんて倉根くんらしいと思ったけれど、そこは寛容な心で許して上げるわ」


 よし、今日の外食代は徹底的にこいつにたかろう。




 




 外食の話をしたものの、2人ともまだ腹が減っていなかったので近くのショッピングモールで2時間ほど時間を潰し、そこからファミレスに移動した。流石に6時近くだからか、店内の人は少ない。


「俺はスパゲッティを頼む。お前は?」


「私はいいわ。能力で産み出して食べた方が、味も単価もお得だし」


 おいおい、それじゃあ気分が台無しだな。


 とりあえず店員を呼んで俺の分だけ頼んだ直後、イーデアリスが俺に話しかけてきた。


「ちょっと倉根くん。あれを見て」


「なんだ?」


 イーデアリスの驚く顔に俺も驚きながら、イーデアリスの指差すテーブルを見てみる。すると、確かに驚きの光景が繰り広げられていた。


「《バッドミット十字架ダウター》か。かかっ、なかなかいい2つ名を持っているじゃないか、ヘルズ」


「くくっ、そっちこそ。《理想クリエイト破壊リアルブレイカー》とは、なかなか凝った異名を持ってるじゃねえか、《嵯峨村・スコーピオン・ソードナイト》」


「《理想破壊の王》は俺の元・仲間の2つ名だ。アイツが死の間際に俺に託した、いわばアイツの半身だ。たとえお前でもその名を呼んではただでは済まんぞ、ヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニング」


「おっと、それはすまなかったな。《嵯峨村・スコーピオン・ソードナイト》」


 嵯峨村とヘルズが、仲良く対談していた。

 

次回は10月7日更新予定です。

 番外編、あまり人気がないようなので、出来るだけ早めに打ち切って本編に戻れるよう、頑張ります・・・・・


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