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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
根暗な少年の怠惰な青春黙示録
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厄介事というのは、立て続けに襲ってくる

 今回はイーデアリスの能力公開!


 更新遅れてしまって、申し訳ありません!

 レイチェル=イーデアリス。

 彼女の能力は、最強だ。


『理想を現実にする能力』


 無から有に、有から無に。彼女の想像を、世界に干渉させる。


 例えば車が自分の前に出てくる光景を想像すれば実際に車が出てくるし、自分がエベレストの頂上にいる様を想像すれば、エベレストの頂上に瞬間移動する。まさに『創造』。産み出す力だ。


 ただし、この能力は自分以外の人間そのものに干渉することは出来ない。よって彼女は人を殺すとき、間接的に相手を殺す。


 

 惨殺、斬殺、撲殺、絞殺、刺殺、欧殺、毒殺、薬殺、扼殺、轢殺、爆殺、鏖殺、圧殺、焼殺、抉殺、溺殺、射殺、銃殺・・・etc.


それら全ての殺害を、彼女は一瞬で行える。物体を出現させ、空間をねじ曲げ、自分の理想通りの『世界』を作り出す。


 それが『名も無き調査団』の一翼、イーデアリスの能力だ。


「なにをボサっとしているのかしら、倉根くん。敵も殺した事だし、さっさと仲間と合流するわよ」


「ああ、そうだな」


 俺の《空間断裂》も、こいつの前では意味を為さない。切断した空間の中に爆弾を出されたら、なにをするまでもなく即死だ。しかも音を衝撃も外に漏れないため、文字通り一人寂しく死んでいく。


 かたや『音』を操る能力者、かたや『世界』をねじ曲げる能力者。


 同じ組織の消耗品なのに、どうしてこんなにスペックが違うのだろう。


「不公平にもほどがあるよな・・・」


「何か言った? 倉根くん」


「別になにも。ただ俺の存在理由について考えていた所だ」


 すると、イーデアリスは意外そうな顔をした。


「そもそも、貴方に存在価値なんてあるのかしら。根暗、ぼっち、皮肉屋、存在感ゼロ。あとは引きこもりと厨二病が揃えば、完全に駄目人間の完成ね」


「おい、1つだけ訂正がある。根暗は短所じゃないぞ。生き様だ」


 そもそも、どうして根暗だと攻められなければならないのだろうか。人間、人それぞれだ。外向的な人もいれば内向的な人もいる。それを根明だの根暗だのと勝手に区分して、攻撃するのが悪い。


 大体、根明は根明で軽薄すぎる。内向的な人間にばかり非難の目を向けていないで、たまにはチャラチャラした奴にもそういう目を向けてやれよ。他人とあまり関わりたくない=内向的という図式をインプットしろよ。


「根暗は自分で言っていたじゃない。今さら否定しても遅いわよ」


「そうだったっけ。俺馬鹿だから忘れちゃった。ごめんな、俺が馬鹿で」


 俺の皮肉攻撃に、イーデアリスは眉をひそめる。


「貴方、顔はそこそこいいのだから、その皮肉をやめたらどうかしら。正直、聞いていて不快だわ」


 まあそうだろうな。皮肉を聞いて嬉しい気持ちになる人間など、アホかドMくらいなものだろう。


「安心しろ。俺の事を好いてくれる女子なんて、この世界を探して精々1人居るか居ないかくらいだ」


 そう、俺は自分の立ち位置を認識している。自分がぼっちであるということも、皮肉屋であることも分かっている。分かってはいるのだ。ただ、それを改善するやる気がないだけだ。


「居るわよ。少なくとも1人はね」


「え?」


 おかしいな、ついに耳が壊れたか? いや、この耳はまだ健在だ。現に、ノイズキャンセリング機能の付いたヘッドホンを付けていても、周囲の雑音まではっきりと聞き取れる。むしろ聞こえすぎて困るくらいだ。


 そうか、イーデアリスがいい間違えたに違いない。そうだ、きっとそうに違いない。だって、こんなほぼ無個性に近い俺の事を好いてくれる女子など、居るわけーーー


「どうせ貴方の事だから聞き間違いか勘違いだと思ってるだろうから、もう一度言うわよ。貴方の事を好いてくれる人、1人は居るわよ」


 もう一度言った。いったいどうなってるんだ? その女子は、一体、こんな男のどこを気に入ったというのだろう。こんな金もない、甲斐性もない、威厳もなければ物事に対するやる気もない、こんな俺を。


「で、そんな報われない恋をした女子は、いったいどこのどなたなんでしょうね?」


 イーデアリスが、またも眉をひそめる。・・・おいおい、せっかくの顔が台無しだぞ。


「報われない? どうして告白する前からそう決めつけるのかしら?」


「簡単な話だ。俺が断るからな」


「断る? 倉根くん、悪いことは言わないからそこは了承しなさい。さもなければ、貴方に子孫繁栄の未来はないわよ」


「いや、最初からそんな未来はないだろ」


 もし子供なんか作ってみろ。子供が俺の息子というだけで、言われ無き迫害を受けてしまう。それはあまりにも子供が可哀想だ。


「話を戻すが、そんな報われない恋をした女子はどこの誰だよ。まさか、お前なんていうありきたりのオチじゃないだろうな」


 イーデアリスみたいな美少女が嫁なら、どれほどいいだろうか。だが、現実はそう甘くない。イーデアリスはあくまでも仕事仲間。それ以上でも、それ以下でもない。それは未来永劫、そうなのだろう。


「ええ、そのまさか。それ、私の事よ」


 ・・・・・は?


 思考が数秒停止する。だが基本的にネガティブシンキングな俺はすぐにフリーズから立ち直り、この女が何が目的で俺に告白したか考える事にする。


「金か命か・・・いや、命はないな。仲間を殺せばすぐバレることはよく知っているはずだ。ならば金か。まさかこいつ、実は美人局なんじゃ・・・」


「話を続けてもいいかしら」


 俺の足元に、矢が3本突き刺さる。イーデアリスの能力で産み出された物だろう。・・・次は当てるっていう警告だな、これ。恐怖を抱きながら、俺は頷く。


「じゃあ続けるわね。・・・まず先に否定しておくけど、私は別に貴方に恋愛感情を抱いている訳ではないわ。ただ、『恋』という物を知りたいだけ」


「恋? あの相手を思って妄想を繰り返して授業に集中できなくなる、あれの事か?」


「貴方の恋に対する偏見が凄いのだけれど・・・・まあいいわ。そうよ、その恋。私は、恋が知りたいの」


 恋が知りたい?


「つまりあれか。お前はよほど嫌いな授業があるんだろうな。で、集中したくないから恋をしてみたいと。そういう事だな? そうでもなければ、あんな煩わしくて脳の容量の無駄遣いしないもんな、普通」

 

 ドカドカドカッ!


 俺の足元に、氷柱が突き刺さる。そのうち1発は、俺の靴を掠めていく。・・・危ね。


「あらごめんなさい。ついイラっとして撃ってしまったわ」


「いやイラっとしたってレベルじゃないだろ!」


 つい声を荒げてしまう。・・・まあ、俺は今靴を氷柱に貫かれかけたんだ。これぐらいのトーンで怒っても、バチは当たらないだろう。


「で、何だってお前は恋が知りたいんだ? しかも俺から。お前、黙ってれば可愛いんだからそれに騙された男を釣って、そいつから習えばいいのに」


 恋を知りたいだけなら、なにも俺じゃなくてもいいはずだ。嵯峨村でも、向井原でも、リットンでも、クラスメイトでも、通りすがりの通行人でも。誰でもいいはずだ。なぜ、俺なのか。


「だって私の知り合いの男子の中で一番親しいのは倉根くんだし、それに貴方は女性の体にあまり興味がなさそうじゃない。何より、貴方には友達が居ないから私との疑似交際を風潮される心配もない」


 ・・・・友達が居ないから付き合ってくれ、と言われるのを、俺は初めて聞いた。しかも相手が自分と同レベルの底辺ならともかく、高嶺の花の超絶美少女。


 しかしあれだな。美少女からの告白なのに、全然胸がときめかない。何故だろうか。


「ほら、私は能力で基本的に何でも出来るじゃない。でも人の心までは操れない。そこで気になったのよ。人の心ってどうなってるんだろうって。そのためには人間の心の中心である『愛』について知らなくてはならないのよ」


 ・・・・もうなんか、ツッコミどころが満載だった。

次回は10月2日更新予定です。

今回は番外編的な感じなので、普通に青春や学園入れていきます。

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