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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
根暗な少年の怠惰な青春黙示録
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人と繋がるという事は面倒な事であり、決して楽しいものではない

「ここか」


 作戦会議も無事終わり、今俺達は殲滅対象の屋敷の前にいる。

対象は密かに国家反逆を企んでいる組織のボス。ここがそのアジトで、現在重要人物のみを集めて打ち合わせをしているらしい。そこを一気に奇襲するのが今回の作戦だ。中にいる戦闘員の数は、少なく見積もっても80人ーーーーー


「あ、そろそろ楽しみにしてるドラマが始まるから帰らないとーーーーー」


「そんな理由で帰れると思っているの、倉根くん。だとしたら、私はここで貴方の心臓を粉々にする必要がありそうね」


「・・・・何でもないです」

「そう、ならいいわ」


 怖ッ!


 心臓を粉々ってなんだよ⁉ 『貫く』ならまだしも、粉々ってなんだよ⁉ もう再起不能じゃん。しかもイーデアリスの性格上、本当にやりかねない所が怖い。


「ところで倉根くん。そろそろじゃないかしら」


「ん? ああ、そうだな」


 作戦はシンプル。俺とイーデアリスが正面から、リットンと向井原が裏口から、嵯峨村が陽動部隊となる。嵯峨村が1人になってしまうが、まあアイツの能力は防御面においては『無敵』なので、誰も心配はしていない。


「じゃあ俺達もぼちぼち行くか」


 言って俺は扉を開ける。すると、いかにも荒事専門といった感じの人達と目があった。やっぱりいたか、見張り。


「おいお前、一体ここをどこだとーーーーー」


 言い終わる前に、俺は懐から拳銃を抜き、連射。3人中2人の心臓を撃ち抜き、撃破する。


「よし」


「テ、テメエーー⁉」


 怒った最後の1人が、銃を抜く。ーーーいや、今日び『テメエ』はないだろ。もう少し日本語を勉強しよう。


「そこまでよ。安らかに眠りなさい」


 最後の男が銃の引き金を引く寸前、イーデアリスが言う。すると、男の手から銃が滑り落ちた。そして、いつの間にか頭上にあった廃車が、男の体を押し潰す。


「さすが。外国の人は違う」


 俺が言うと、イーデアリスは溜め息を吐いた。


「今ので敵に侵入がバレたわ。倉根くん、頼めるかしら」


 今の溜め息何だったんだ?


 という質問を飲み込み、俺は踵で地面を軽く叩く。カツン、という音が、辺りに響き渡る。


 ーーーそして、俺の脳に様々な情報が入って来る。敵の座標、人数、武器ーーetc. それらの情報を、俺は全て把握した。

これが俺の《反響把握エコーロケーション》。後方支援において、これ程の強さはそうないだろう。


「もうすぐ敵が来る。数は3人。ただし全員武器を携行しているから、油断するな。じゃあな」


 言うだけ言うと、俺はヘッドホンを外した。ーーー途端、突き抜けるような頭痛が俺を襲う。耳が良すぎるというのは、単なる皮肉でしかない。


「ッ・・・・」


 それを無視して、俺は能力を発動。ーー瞬間、音が消える。


「ふう・・・」


 これで安心だ、少なくとも俺は。イーデアリスの事は知らん。まあ死んだら死んだで骨くらいは埋めてやろう、とそんな物騒な事を考えていると、通路の角からわらわらと敵さんがお出ましになった。数は宣告した通り3人。俺、というか一般人ですら『うわあ、関わりたくねえ・・・』と思うような、そんな奴らだ。


 今1人がショットガンを構え、俺に向けて乱射する。後の2人もそれに続く。ーーーってちょっと待て、イーデアリスは狙わないの?


 とか思っている間に、弾丸は俺に向かって来た。あ、ヤバイと呟くまもなく弾丸は俺にーーーーー当たらなかった。


 正確には、見えない壁が弾丸の行方を阻んでいる。俺はそれに守られているおかげで無傷だ。そして俺に弾が当たらないことに、敵は驚いている。


空間断裂くうかんだんれつ》。


 俺の技の1つだ。鼓膜で周囲の音を反響して、空間を切断する。

空間が切断された事により、そこには不可視の壁が出来る。空間が切断されているため、いかなる物体もその先に行くことは出来ない。また物理的な壁があるわけではないため、音や衝撃波といった類いの物もない。全くのゼロダメージだ。まあ、この壁がある間、俺の方からも攻撃することは出来ないが。


 でも、そこは問題ない。何故なら、イーデアリスがいるから。


 男の1人が持っていたショットガンが、突如燃え上がる。男は慌ててショットガンに着いた火を踏み消そうとするが、もう遅い。ショットガンの火は男のズボンに燃え移り、男の顔が驚愕に染まる。他の2人も、同じような状況に遭っていた。ご愁傷さま。


『もういいわよ。倉根くん』


 俺が炎に右往左往している3人を見ていると、空中に文字が浮かんだ。今ここに居る人間でこんな芸当ができるのはイーデアリスだけだから、この言葉は信じて大丈夫だろう。俺は首に掛けていたヘッドホンを、再び耳に付ける。そして、《空間断裂》を解除。雑音が戻ってくる。


「敵の掃討、お疲れさま」


「あら、随分と他人事ね。貴方の任務でもあるでしょう」


 ムッとして言い返すイーデアリスに、俺は指を振る。


「俺の担当は、《反響把握はんきょうはあく》によるマッピング。で、お前の担当は、敵の排除。適材適所とは、まさにこのためにある言葉だ」


 うん、完璧な正論。これならイーデアリスも反論できない。まあ、イーデアリスがどんなに言葉を尽くした所で、俺が戦えない事実は変わらないのだが。


 普通、探知系や回復系など、後方支援の能力者というのは自分を守る力を持たないため、真っ先に敵に狙われる物だ。だが俺には、《空間断裂》という絶対防御の技がある。つまり俺は、辺りの様子を探りつつ自分を守れるという、いわば『最強の探査系能力者』なのだ。だが裏を返せば、俺には戦闘能力がない。よって、俺に戦闘は不可能である。


「自分の世界に浸っている所悪いのだけれど、そろそろ次の探知お願い出来るかしら」


 なぜ分かった。お前はエスパーか?


「了解」


 動揺を悟られないようにしつつ、俺は再び《反響把握エコーロケーション》を発動させる。


「俺達の居場所が敵にばれた。10人ほどこっちに来る。あと向井原たちが裏口は突破した模様。敵のボスの部屋に行くのは時間の問題だ」


「そう。ならばボスはあの3人に任せて、私達は来る敵を迎え撃ちましょう。大勢で行っても面倒だもの」


 それもそうだな。というかイーデアリスが行くならまだしも、俺が行ったところで大した意味はないしな。


「分かった。じゃあ後は任せた」


《空間断裂》と攻撃は同時に行えない。それに俺は射撃の腕があまりよくないため、ここはイーデアリスに任せよう。うん、そうだ。適材適所最高。


「・・・貴方の行動、リットンに細かく報告しておくわね」


 イーデアリスの声が震えている。そんなに嬉しかったのか。


「お、来たぞ」


 そうこうしている内に、敵が来た。敵はこちらを見るなり、ショットガンを発砲する。俺は《空間断裂》で、イーデアリスはバリアを構成して、弾丸から身を守る。弾丸が一旦止んだタイミングを見計らって、イーデアリスが腕を振った。瞬間、床から針の山が出現し、敵を全員まとめて串刺しにする。・・・意外とグロいな、これ。


『終わったわよ』


 再び、空中に文字が書かれる。俺はペコリと頭を下げると、ヘッドホンを装着し、《空間断裂》を切った。この能力、音が聞こえないため、戦闘終了が分からないのが難点だ。


「しかし、今回は派手にやったな」


「どこかの馬鹿にぶつけるはずの怒りを、多少ぶつけただけよ」


「そうか。でもこんな美少女を怒らせる馬鹿なんて一体どこにいるんだろな。きっとそいつは根暗で陰湿なぼっちに違いない。まったく、そいつの顔が見てみたいものだな」


「世の中には、鏡っていう便利な物があるわよ」


 イーデアリスが言うが、それは対処出来ないので無視する。


 しかし、本当に凄いな、イーデアリスの能力は。



 




次回は9月30日更新予定です。


次回、ついにイーデアリスの能力が明かされます!

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