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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と囚われの姫
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夢、過去、そして現在

 サブタイトルがなかなか思いつきません・・・

 悪夢を見ていた。


 姫香が会った事がある人達が現れては、「お前が生きている価値はない」と言うのだ。近所の人が、真理亜や沙織が、降谷先生が、二ノ宮が、最後に両親が。


「大丈夫だ」


 どこからか声が聞こえる。辺りを見回しても周りは闇ばかりで、声の主の姿は見えない。それなのにどこか安心させるような響きを含んだ声だった。


「大丈夫だ、俺に任せろ」


 また声が聞こえる。やはり声の主は居ない。その時、闇の空間の一部が四角く切り取られ、誰かの手が伸びてきた。


「俺に任せろ」


 姫香は無意識に、その手を掴み取っていた。手に力がこもり、ゆっくり、ゆっくりとだが、姫香を闇の中から引きずり出す。あともう少し―――。


 そこで、意識が覚醒した。





「おい、大丈夫か?」


 目を覚ますと、ヘルズの顔が目の前にあった。


「きゃ!」


 叫び声を上げて布団を被ろうとした時、右手に温もりを感じた。見ると、ヘルズの手が姫香の手を握っていた。


「お前苦しそうだったからな。手、握っておいたんだが嫌だったか?」


 ふるふると首を振る。あの悪夢から抜けられたのは間違いなくヘルズのおかげだ。気が付くと、姫香の手はかなり力強くヘルズの手を握っていた。よほどうなされていたらしい。見ているとだんだん恥ずかしくなったので、そっと手を離す。


「そう言えば、お前って料理作れたりする?」


 ヘルズがヤカンに水を入れながら姫香に聞く。


「少しくらいは。先輩は料理、出来ないんですか?」


「全く出来ない。二週間に一回学校に行って昼食食べるとき以外は全部カップラーメンで済ませてきたからな」


 姫香はこの時、カップラーメンだけで生きられる人が居る事に驚愕した。


「お前、何が作れるんだ?」


「基本的に、何でもできますよ。味は保証しませんけど」


「じゃあ、今日の朝食は任せるわ。よろしく」


 ヘルズがキッチンから出ると、テレビの電源を入れてアニメを見始めた。あまりの自由さに姫香は一瞬面食らったが、気を取り直すとすぐにキッチンに向かう。


 ヘルズはカップラーメンしか食べていないはずなのに、冷蔵庫には様々な物が揃っていた。降谷先生か二ノ宮が持って来ているのかもしれない。何にせよ、材料がたくさんあるのは都合がいい。姫香は冷蔵庫から卵を出すと、フライパンを取り出した。久しぶりに料理を作るので、肩慣らしに目玉焼きでも作ろう。久しぶりだし―――。


 と、その時、姫香の脳裏に昔の光景が蘇った。ああ、自分は―――。

 足元にぬるっとした感覚がし、我に返る。どうやら卵を取り落としていたようだ。


「どうした?」


 ヘルズが訊ねてくる。姫香は「何でもないです」と言い、冷蔵庫から新しい卵を取り出した。今度は卵を取り落とす事も無く、きちんと目玉焼きが完成する。


「できました」


「お、サンキュ」


 目玉焼きの一つをヘルズに渡し、自分の分を食べ始める。相変わらず美味しい。


「お、美味いな。卵でこんなに美味い料理が作れたのか」


 ヘルズも目玉焼きを食べ、絶賛する。


「美味しいですか?良かったです」


「今までカップラーメンしか食ってこなかったせいか、新鮮に感じるな。うん、美味い」


 目玉焼きを食べ終わると、ヘルズは冷蔵庫から食パンを二つ出しトースターに入れた。その時、机の上に置いてある携帯が鳴った。ヘルズが携帯を取り、スピーカーボタンを押した。姫香にも聞こえるようにするためだろう。


「もしもし、ニセ教師か?」


『ヘルズ、今日も学校に来るんだろうな』


「行かないぞ。行くのはあと二週間後だ」


『今日は学校に来い。英語の抜き打ちテストをやるぞ』


「尚更行きたくないな」


『分かった。お前がその気なら、こっちにも考えがあるぞ』


「やってみろ。どんな手を使っても俺は動かないぞ」


 すると、降谷先生はまるでヘルズ以外の人間に聞こえるために言っているかのように、声を張り上げて言った。


『おーい、花桐。今お前黒明の家に居るんだろ?まだ清い身体のままだったら返事をしてくれ!』


 これにはさすがのヘルズも面食らった。


「おい駄教師、今どこに居る?まさか教室じゃないだろうな?」


『ん?教室に決まってるだろ?何言ってるんだお前』


 姫香は慌てて壁に掛けてある時計を見た。時刻は八時十分。早く登校している生徒に今の爆弾発言は聞こえているはずだ。


「あ、あの、冗談ですよね先生。ぼ、僕がまさか女生徒を襲うわけないじゃないですか」


『おーい、聞いたか男子共。黒明の奴が女子を家に連れ込んで襲ってるぞ!』


『マジかよ』『最低だな黒明』『う、羨ましすぎるぜ黒明!』『アイツ、だから学校に来ないのか』


 受話器の向こうから、ヘルズのクラスの男子と思われる人達の声が聞こえる。ヘルズの頬を汗が伝うのを姫香は見た。


「お、おーい。これじゃ俺もう学校に行けないんだが」


『おーい、あいつもう一回ヤるから遅れて来るって――』


「分かった!分かったから、もうやめてくれ!乗ってやるのは今日限りだからな!」


 ヘルズは叫ぶと電話を切り、白い玉や赤い玉を鞄に入れると、ポケットから鍵を取り出し姫香に投げた。


「鍵、掛けといてくれ!俺はちょっとあの教師を殴って来る!」


 家を飛び出していくヘルズを、姫香は呆然と眺めていた。

 そして自分も学校に行くために着替え始めた。


 あと2、3個伏線を引きたいと思います。

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