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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗vs 暗殺組織『血まみれの指』
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引きこもり怪盗を手なずける方法

 今回は、少し短いです。

 そうして日々訓練を行っている内に、ヘルズはいくつかの事に気が付いた。


 一つ目は、その上達速度。


 姫香の技の上達度には、不可解と呼べるほど差が開いている。


 例えば、床の踏み込みを利用した突き。《叛逆(はんぎゃく)未遂(みすい)(いかずち)》のベースとなった技で、基礎さえ覚えれば姫香のような一般人でも使える、簡単な技――――なのだが、姫香は何日やってもこの技の上達が見られない。


 だが、姫香は相手の死角を突いて掌底を叩きこむ、《死角残樹(ダークネスアッパー)》に異様なまでの親和性があった。ヘルズの作ったこの技を姫香はたったの二日でマスターし、今ではヘルズと同じかそれ以上の実力を誇るようになった。


 他にも、敵に刺突の如き連撃を繰り出す《七連撃(セブンテス)倍速刺突(コンプレッサー)》は全くの無能なのに、敵に身体のバネを利用して回し蹴りを放つ《絶滅迅雷(ジェネラルストリーム)》に対しては、圧倒的な能力を見せていた。


 これはまるで、姫香の奴が――――


 そこまで考えて、ヘルズは首を横に振る。そんな事があるわけがない。


 二つ目は、彼女のスピードだ。


 普段、戦闘を行っている時の姫香はヘルズから見ればゆったりとしていて、攻撃速度も非常に遅い。返す刀で20回は殺せるレベルだ。


 しかし、時々姫香の速度が、尋常でなくなる事が多々ある。速度が桁違いなのだ。一瞬、立ち止まっていたかと思えば、一秒後にはヘルズの正面に立っている。慌てて反撃に移っても、その時には既に元の場所に戻っている程の速さだ。常人より遥かに高い動体視力を持つヘルズですら、残像しか捉えきれない。


 ヘルズの技の中にも《昇華(しょうか)残影(ざんえい)演武輝夜(えんぶかぐや)》という、速さ加速の超必殺技があるが、あれはこの技とは全く別の物だ。無自覚、というか本人が気付いていない間に発動しているような感じさえする。


 この二つを踏まえて、ヘルズは考える。


――――姫香は、本当にただの一般人か?


 ヘルズは、裏家業の中でもトップクラスの身体能力を誇る犯罪者だ。そんな自分が、格闘技術素人の少女に負けているという事が、あっていいのだろうか。


「・・・・おもしれえ」


 ニヤリ、と笑う。ここまで興が乗ったのは、師匠の所を出て以来初めてかも知れない。


「俺自身も、そろそろ訓練しないとな」


 ヘルズは肩を回しながら、そう呟いた。







「いい加減に―――――」


 姫香が、机を振り上げる。


「してください!」


 声と同時に机を手から離す。机は重力に従って下に居たヘルズの頭目がけて落下し、標的に届く寸前に受け止められる。


「ったく、朝からうるせえな」


 姫香が落とした机を右足で受け止めながら、ヘルズがぼやく。その目はパソコンの画面に向けられており、少しも姫香の方を見ないという意志が感じられる。


「『うるせえな』じゃありませんよ! 何ですか、『俺は誰かに縛られる人生なんて御免だ。よって学校などという、俺を縛るルールが大量に存在するような所には行きたくない』って! 確かに学校には校則がありますけど、それ普通に一般常識ですからね! ていうか、むしろ甘い方ですよ。ホラ、駄々こねてないで学校に行きますよ」


 姫香の説教に、ヘルズは右手で顔半分を覆って答える。


「フッ、ゲーム禁止で邪眼禁止で、さらには学校放火を禁止しているような校則を持った学校に赴くなど、あり得てたまるか!」


「むしろそれを容認する学校があったら潰れてしまえ!」


 というか最後の二つおかしいでしょ、と姫香はツッコミつつ、机を外してヘルズの足を引く。


「ほら、行きますよヘルズさん!」


「誰が行くか! あんな周りに合わせてへらへらへらへら笑っておけば仲間内の順位が上がっていくようなプチ社会なんかに!」


「偏見が強すぎる!」


 これではまるで、母親と子供のようだ。


 姫香が途方に暮れたその時、ヘルズの携帯電話が鳴った。つい反射的に手が伸び、着信ボタンを押してしまう。


「あ、はい、花桐です」


『お、何だ。恋人気取りか?』


 電話の相手は降谷だった。姫香は顔を真っ赤にしつつ「ち、違います」と弁解する。


『まあそのネタをからかうのは後でにして・・・そこに弐夜は居るか?』


 降谷が真剣な口調で聞いて来る。


「居ますけど・・・どうしたんですか?」


『悪い。ちょっと奴に代わってくれ』


 言われた通り、ヘルズに代わる。ヘルズは電話を受け取るとしばらく無言になり、最後に「ああ、分かった」と言って、電話を切った。


「何かあったんですか?」


 そのまま何事も無かったかのようにネトゲを続けるヘルズに、姫香は心配そうに聞いた。


「いや、何でも無い。何かつい三日前に受けた英語の小テストの回答に、若干教師を侮辱する発言があったらしくてな。何かムカつくから0点にするけどいいか、って内容だった」


「それまずいじゃないですか⁉ 早く行かないと!」


 だが、ヘルズはあくまでも冷静だ。


「いいよ、別に。成績がどうなろうと、知った事じゃないし」


「よくないですよ! いいから早く行ってください! ていうか、一体何を書いたんですか⁉」


 そこで、ようやくヘルズが振り返った。


「『貴方達の英語の担当、降谷幸一先生について、思った事を英文で書きなさい。ただし、悪口は減点とします』っていう問題があったから、『降谷先生は生徒から金をたかり、生徒に憎まれ口を叩き、挙句の果てには女生徒誘拐に協力するような、変態教師です』って、フランス語で書いて提出してやっただけだが?」


 あっけらかんというヘルズに、姫香は頭痛を抑えられない。


「お願いです、行ってきてください! なんかそれで0点を取ったとか、悲しくなるんですぐに弁解しに行ってください!」


「嫌だ。俺は絶対に動か――――」


「備蓄食料買っておきますから!」


「乗った!」


 ヘルズが叫ぶと同時、部屋に強い風が吹き荒れた。


 本気を出したヘルズが速攻で着替え、家を出て行ったという事に気が付くのに、数秒の時間を要した。

「さて、どんな健康的な備蓄食料を買っておきましょうか」


 突風で飛び散った書類を片づけながら、姫香は溜息を吐いた。



 次回は、6月23までに更新します。明確な更新日は不明です。ご了承下さい。


 皆さん、いつもこんな駄作をお読みいただき、本当にありがとうございます。

 今回のタイミングで、「世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした」内の大編集を行おうと思います。大幅な文字数増加に、戦闘描写の増加。『編集』という言葉が詐欺に聞こえるくらいまでの大幅な編集になります。よって、次回の更新日が明確には不明です。皆さま、半分新しく生まれ変わるこの作品に、どうぞご期待下さい。

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