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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と囚われの姫
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怪盗=神出鬼没のイケメン

翌朝、姫香はいつも通り七時四十五分に起床した。起き上がろうとすると、今日は身体の節々が痛んだ。昨日は凄かったからな、と思いながら慎重に身体を起こす。


 いつも通りバスケットに入っている黒いパンを食べ、学校の支度をする。まだ七時五十五分だったが、早く登校したい気分だったので学校に向かう。


 学校に着くと、教室には二、三人しか生徒が居なかった。まあ投稿時間よりまだ三十五分もあるので無理も無い。姫香は鞄を置こうとして、机の上に一枚の黒いカードが置いてある事に気が付いた。姫香は辺りを見回し、誰も見ていない事を確認するとカードを手に取った。


 カードには、


『昼休み、屋上に来られたし』


 という一文しか書かれていなかった。送り主は不明。しかし、姫香はこのカードの送り主に心当たりがあった。使いまわされた一文。いかにも厨二病が喜びそうな黒いカード。もし昨日のあの姿を見ていなければ、絶対に予想もつかなかった人物。その時、真理亜と沙織が登校して来た。慌ててカードを鞄にしまう。


「お、姫香おはよう。早いねー」


「お、姫ちゃん。今日も可愛いね」


 沙織が姫香の髪を撫でながら幸せそうに言う。もういつもの事なので姫香は笑顔で流す。


「そう言えば、沙織は昨日どこに隠れて居たの?」


 昨夜、ヘルズが現れたというのに沙織は出てこなかった。警察に見つかって追い出された真理亜はとにかく、沙織が出てこなかったのは不自然だ。


「ああ、真理亜が見つかったすぐあとに私も見つかっちゃったの。まさか姫ちゃん、ヘルズにあったの⁉」


「ヘルズ?」「ヘルズだと!」「会いたかったぜヘルズ!」「実は俺、ヘルズの一番弟子の・・・」


 沙織の言葉に、教室内が騒然となる。先ほどまで話もしなかった生徒まで、姫香の近くに寄って来る。


「姫香ちゃん、あの怪盗ヘルズに会ったの?」


「え、えっと、私は・・・」


「凄いよ姫! 俺なんか何回もヘルズの予告状の場所で待機してるのに、いつも警察の人に追い出されちゃうんだよな・・・どうしたらいいんだろ?」


いつの間にか賢一まで現れ、教室内は祭りのような状態となった。


 この馬鹿騒ぎは、チャイムが鳴るまで続いた。


 昼休みになると、真理亜と沙織が誘いに来たが、用事があるからと言って断った。


「まさか、彼氏⁉」


 と言って来る真理亜に笑って誤魔化し、姫香は屋上に向かう。手にはあのカードを持っている。屋上のドアを開けると、柵に寄りかかっている男を見つけた。間違いない。弐夜先輩だ。今日は眼帯もカラコンもしていない。姫香は一歩一歩慎重に近づく。


「あの、先輩、お話って・・・」


 その時、強風が吹いて姫香が手に持っていたカードが飛ばされた。慌てて取ろうとするも、カードは風に飛ばされて飛んで行ってしまった。


「話ってのは・・・お前がよく分かってるだろ」


 突然後ろから掛けられた声に振り返ると、そこにはさっき風で飛ばされたはずのカードを持った弐夜先輩が立っていた。


「あの、弐夜先輩――」


「ヘルズでいいよ。そっちの方が気楽でいい」


 弐夜先輩、もといヘルズは手の中のカードをクルクル回しながら言う。今の発言はつまり、弐夜先輩がヘルズだという事の肯定だ。


「じゃあやっぱり、先輩がヘルズ――」



「おいおい、いくら俺が二日連続で学校に来てるのが意外だからって、そこまで驚く事はないだろ」


「ち、違います。そこじゃなくて――」


「それともあれか? 俺の異能力が覚醒したことに気が付いた『奴ら』が、この学校ごと俺を葬ろうという計画を知ったのか?」


「え?」


 ここに来てようやく、ほとんど会話が噛み合っていないことに気が付く。というか、ヘルズの言っている事は本当だろうか。だとしたらそんな悠長な態度を取ってないで早く避難した方がーーーー


「そいつに真面目な答えを求めるだけ無駄だ。そいつは伝説級の厨二病だからな」


 声は横から聞こえた。横を向くと、そこにはいつ現れたのか、降谷先生が立っていた。


「黒明も花桐も、こんな所で何をやってるんだ?一緒に昼飯、というようには見えないが?」


 姫香は焦った。もし弐夜先輩の正体がヘルズだとばれたら、大変な事になる。そうすれば自分も共犯者として捕まってしまうのだろうか。姫香が焦っているのも知らずに、ヘルズは平然とした態度で降谷先生に話しかけた。


「来たのか、ニセ教師」


「ニセで悪かったな。ヘルズ」


「え?」


 思わず、口から間の抜けた声が漏れた。ヘルズが笑いながら紹介する。


「コイツは俺の仲間だ。担当は情報収集。ちなみに今やってる教師ってのも情報収集の一環だ。本業はスパイ。口は悪いが俺の仲間だ」


 姫香は二重の意味で驚愕した。一つ目は降谷先生がスパイだったという事だ。降谷先生は全く目立たない、冴えない教師だと思っていた。だがスパイだというなら納得がいく。


 二つ目は、学校内にヘルズの協力者が居たという事だ。ヘルズに協力者が居る、という噂はネットでも流れていたが、まさか自分の学校に居るとは思わなかった。


「おい、誰が口が悪いだ。お前の方が口が悪いだろ」


「黙れ。人を病気呼ばわりしやがって。いい加減滅びろ三次元」


 吐き捨てるように降谷先生に言うと、ヘルズは姫香の方を向き、ばつの悪そうな顔で言う。


「で、お前に俺達の事を紹介しようと思うんだが・・・ここじゃどうやら盗み聞きしてる奴らが居るみたいだから、続きは俺の家でいいか?」


 ヘルズの後ろを見ると、屋上の入り口辺りに真理亜と沙織が顔を出していた。

 

 ――あの二人には、後で説教しておこう。


 姫香はそう心に決めた。


 次回、二ノ宮登場!

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