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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗と『名も無き調査団』
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『名も無き調査団』の動き

今年最後の投稿になります。

 ヘルズ達が作戦会議に浸っていたその頃ーーーー

 

 『名も無き調査団』も、アジトの中で話し合っていた。ただしその姿勢はとても、戦いに挑むようには見えない。組織の長であるリットンは唯一椅子に座っているが、後は皆寝転がっているか自分の能力で遊んでいる。


「まさかあの怪盗ヘルズを潰せとはね・・・驚いたよ」


「いいじゃねえか。ついにこの嵯峨村・スコーピオン・ソードナイト様とヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニングの戦いが始まるって事だろ? ククッ、ワクワクしてくるな」

 

 嵯峨村が指先でキングの駒を弄びながら、誰ともなしに言う。その時、嵯峨村の真横にイーデアリスが突如として現れた。彼女の能力で瞬間移動してきたのだろう。


「見て来たわ。警察はヘルズのアジトを包囲したけど、何も出なかったみたい。ヘルズ本人だけじゃなくて、そこに住んでる住人が怪盗ヘルズであるという確たる証拠も、何一つね」


「一つくらいは見つかるんじゃないか?」


 嵯峨村が軽い声で聞くが、イーデアリスは首を振った。


「駄目ね。見つかったのはゲームのカセットと、部屋に散乱したカップラーメンの容器だけ。あれじゃ怪盗と言うよりネトゲ廃人の部屋ね。驚いた警察が、カップラーメンの容器に蹴躓いて全治一週間の怪我を負ったわ」


「馬鹿だなそいつ!」


 嵯峨村のツッコミを無視して、イーデアリスは溜め息を吐いた。


「隣の方がまだ怪盗らしかったわよ。『怪盗としての在り方』、『アルセーヌ・ルパン』全巻・・・怪盗モノで埋め尽くされてたわ。まあ、取り調べの結果ただの怪盗に憧れて一人暮らしを始めた一般人だったけど」


「ああ、そう言えば『復讐屋』の被害を受けたのはその子だったか。『目標の部屋に行ったが、どう考えても引きこもりの部屋であり怪盗の部屋ではない。ただし目標の隣の部屋は明らかに怪盗の部屋そのものだったため、そちらを襲撃』だっけ。可哀想だねえ」


 まさか『復讐屋』も、あんな引きこもりの部屋がヘルズの部屋だとは思うまい。隣の部屋の住人には同情するが、それでヘルズの部屋が『復讐屋』の被害を免れたのだと思うと何とも言えない気持ちになる。


「そう言えば、倉根君と向井原は?」


 イーデアリスが室内を見回し、嵯峨村に問う。室内には嵯峨村、リットン、下部組織の二人が居るだけで、倉根と向井原の姿は見えない。


「倉根君の居場所は分からねえが、向井原なら自衛隊の方じゃねえか? 特殊部隊の隊長様い呼び出されたんだろ。ま、あの向井原が勝てないとかその隊長様とやらはどんな身体能力してんだよって話だが」


「そう・・・」


「何か、心配事でもあったのかい? 私で良ければ聞くよ」


 何やら考え事をしてしまったイーデアリスに、リットンが優しく声を掛ける。しかしイーデアリスは「いえ、何でもないです。お気遣いありがとうございます」と言い、リットンの救いの手を拒んだ。


「まあまあ、イーデアリスにも恋煩いとか生理とか色々あるんですよ。・・・ってうわぁ! 何すんだテメェは!」


 咄嗟に『無敵化』を使った嵯峨村の体に、無数の家具が襲いかかった。




 

「何やら、本部が騒がしいようですね」


「よく聞こえるねー。倉根くんってやっぱり耳良いんだね」


「・・・機械人間ですから」


 倉根はボソッと言うと、眼下の景色を見下ろした。


 倉根とライラが今いるのは、廃ホテルの一室だ。ライラは時々『たまには明るい所がいい』と言って町に出る事があるが、倉根は毎日ここで寝泊まりしている。


「でも確か、ここってそう言う機械人間の能力をジャミングするんじゃなかったっけ? だからレイチェルちゃんの探知にも引っかからないって言ってた気がするけど」


「いや、ジャミングするのはほんの少しなので問題ありませんよ。せいぜい、座標を数メートルずらす程度の物です」


 この近くには強力な電波を放つ工業機械が今も稼働しており、機械人間の機械部分を微妙に狂わせる。もちろん裏社会で作られた高性能な精密機械を破壊するまでには至らないが、小さな歯車程度は乱れさせる事が可能だ。そしてその乱れは、能力の使用時に小さなミスを起こす。


「俺みたいに『音を探知する』だけならまだしも、瞬間移動なんかしようものなら壁に体がめり込みますよ。強すぎる能力故、その反動は大きいって訳です。まあ、どんなに頑張っても所詮、俺たちは機械人間な訳ですからね」


「ふうん」


 ライラは素っ気なく言うと、ベッドにゴロリと横になった。「ふああ・・・」というあくびが、彼女の口から漏れる。


「流石に疲れたよ・・・五徹って、思ったより大変なんだね。よくヘルズはこんな事出来るよねー。若いっていいなあ」


「今は寝ていてください。おかげでヘルズを弱体化させる事が出来たんですから」


 ライラはこの五日間、よくやってくれた。ヘルズのやっているネトゲに入り、五日間ぶっ通しで引き回す。そのせいでヘルズは一睡もできなかっただろうし、『名も無き調査団』が送った果たし状にも気づかなかったはずだ。


「寝不足状態で不意打ちを受けると、判断力が極端に低下する・・・二ノ宮救出作戦の時に分かりましたからね。使わせてもらいますよ、この情報を」


 現在のヘルズの状態は、最悪と言わざるを得ないだろう。倉根はポケットから携帯を取り出すと、とある画像を開いた。そこには、『名も無き調査団』側の具体的な作戦が記されている。


「この調子でいけば、ヘルズは一睡もする事無く俺達とぶつかる事になりますね。そうすれば流石のヘルズでも敗北するでしょう。残った奴らとは戦うまでもありませんよ。イーデアリスが遠隔から攻撃して終わりです」


「でも、確かヘルズ勢力には『歴代最強の暗殺者』って言う隠し玉があるんでしょ? そっちはどうするの? アタシ沙織ちゃんの事調べてみたけど、プライベートの方でも全く隙が無いよあの子」

 

 ライラが目を閉じたまま、半分眠った声で言う。眠る態勢に付いているのに眠れないようだ。


「それと、降谷先生は今回は傍観を決め込むってさ。ヘルズ勢力を裏切る事もないけど、『名も無き調査団』からの命令を聞くこともないって言ってるみたい。優柔不断だねえ」


「降谷先生にとってはお金が全てですからね。万が一ヘルズ勢力が勝った場合に備えて、保険を掛けているんでしょう。何せ、勝負は終わるまで分からないのですから」


 倉根は画面に映し出された計画を眺める。この調子でいけば、多分問題はないだろう。計画に支障をきたすような横槍を入れてくるとするならば『最強の犯罪者』か峰岸馨のどちらかだがーーーー


「そうだ。唯一の不確定因子の動きはどうなってますか、ライラさん?」


「んー?」

 

 間延びした声を出しながらライラが服に手を突っ込み、胸の辺りから一枚の紙を取り出した。それを倉根に手渡してくる。倉根は億劫げに紙を手に取り、後悔した。・・・生温かい。


「その紙がある限り、まだ戦いは続いてるよ。能力の所有者であるアタシが言うんだから間違いない・・・ふああ、ムニャムニャ」


 どうやら、完全に眠ってしまったようだ。倉根はそんなライラを一瞥すると、紙に一通り目を通した。


「・・・成る程な」


 これで、情報は整った。何人たりとも、倉根の計画を邪魔出来る者は居ない。


 倉根が薄く笑ったその時、ライラが寝返りを打ちながら呟いた。


「あ、ン。駄目だってば倉根くん。初めてはアタシがリードするって決めてるんだから。でもーーー倉根くんなら、アタシ全然いいよ」


 この夜、倉根は悶々と悩まされる事となった。


 ・・・目の前の爆睡女を叩き起こすか否かで。



 同時刻、某国。


 廃墟と化した町に、『最強の犯罪者』は佇んでいた。その目はしっかりと閉じられており、外部からの情報を完全に聴覚と嗅覚、及び気配に委ねている。


「・・・ふむ」


 突如、『最強の犯罪者』は目をカッと見開くと、前方に向かって大振りに腕を振った。まるで目の前に飛んでいた蝿を薙ぎ払うような、そんな自然な仕草。



 たったそれだけの動作で、遥か前方にあった複数の廃車がまとめて爆発した。



 『最強の犯罪者』から数十メートル離れた場所が、火の海に変わる。爆発した車の数は二桁は行くだろう。生身であの爆発を受ければ、間違いなく生きてはいまい。もし仮に爆発を何らかの方法で防御したとしても、爆発の影響であの辺り一帯の酸素は極端に減っているはず。つまり、どう足掻いても無傷ではいられないはず。


 だが、『最強の犯罪者』は眉をひそめた。


「・・・やはり、しぶといな」


 燃え盛る火の海の中から、人影が見える。人影は前後左右から来る炎を物ともせず、真っ直ぐにこちらに歩いて来ていた。人影は右手で頭をトン、トンと叩きながらこちらに聞こえるくらいの声量で言う。


「おいおい、何だ今の意味のねえ攻撃は? 周りの車を破壊されたからちょっとは面白くなると思ったが、全然駄目だな。そろそろ老人ホームの予約を入れたらどうだ? ボンクラジジイ」


 人影が言った瞬間、その苛立ちが具現化したかのように轟! と音を立てて燃え盛る炎がまとめて消し飛ばされた。しかしそれに対して驚くことなく、『最強の犯罪者』は強敵の姿を見据える。


「峰岸馨か。ここに来て我が輩の邪魔をするとはな」


「邪魔? 腐れジジイに引導を渡しに来ただけだよ、オレは。つーかいつまでも『最強』の座に座ってんじゃねえよ。引きずり下ろしてやる」


「出来るのか? お前如きに、この我が輩を」


 『最強の犯罪者』の言葉に、峰岸は嗤った。


「出来るさ。ってか、わざわざテメェ如きに本気を出すまでもねえな。来いよ、耄碌ジジイ。特別ハンデだ、今回オレが使うのは『恐怖』だけにしてやるよ」


 自他ともに『最強』と認められている者に対して、峰岸は平然と喧嘩を売った。しかもハンデ付きで。


 それに対し、『最強の犯罪者』も口の橋を歪める。


「いいだろう。ならば我が輩も、使うスキルは三分の一程度に留めてやる。特別サービスだぞ?」


 互いが互いに、ハンデを付けた戦い。


『相対する事すら許されない絶対の存在』と、『相対しても絶対的に勝つことが出来ない存在』の二大巨頭が、ぶつかろうとしていた。

 

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