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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と自由になりたい王女
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まさかのダブル(?)デート

 今回はヘルズとチャルカがデート(散歩)します。

「どう、姫香ちゃん。これとか似合いそうだよ」


「あ、そうですね。では早速着てみます」


 二ノ宮と姫香は、大型ショッピングモールの中に居た。

 今日の出費は、全て二ノ宮のおごりだ。生活費には困っていないものの、自分に厳しい姫香は遊ぶための金を貰っていないため、「私も仕事の報酬は貰ってるから」という二ノ宮の言葉に甘える事にした。


 ちなみに外出を嫌う二ノ宮は、黒のサングラスを装着し、黒のワンピースを着ている。本人曰く、「服が黒いから、目立たない」らしいが、その銀髪のせいで目立ちまくっている。


 二ノ宮の用意した服に着替えると、姫香は試着室のカーテンを開けた。


「先輩、どうですか?」


 すると、店内に居た客たちが、「おおっ・・・」と感嘆の声を漏らした。客を押しのけて二ノ宮が姫香の元まで来る。そして、姫香の手を取ると、やや興奮気味に叫んだ。


「素敵、素敵よ姫香ちゃん! これでいい?」


「え、ええ・・・」


 普段とは違う二ノ宮に若干引きながら、姫香は答える。


「じゃあこれにしましょう。すみません、会計お願いします!」





「お前とこうして歩くのは、初めてだな」


「うん。私にとっては誰かと歩く事が生まれて初めて」


 病院内の公園を歩きながら呟くヘルズの言葉に、チャルカは無機質な声で返す。絶対安静を強いられているらしいが、全身包帯で外を歩くのは怪しいからと、頭の包帯だけは取り外した。


「ったく、何でそんな怪我したんだよ」


「全部主席のせい」


「いや、分かってるけどさ」


――――思えば、あれは厳しい戦いだった。


 昔と桁違いの速さのチャルカに圧倒され、ヘルズも超必殺技を一つ、使わざるを得なかった。使ったヘルズ自身も大ダメージを負い、それでも格好つけて姫香を救ったのだ。


「くっ、あの時の傷が蘇るぜ・・・」


「主席、大げさ」


「いや、そこは厨二病ってツッコめよ・・・」


 やっぱり花桐かニセ教師が居ないと調子狂うな、とヘルズがぼやく。普段一緒に居るせいで気が付かなかったが、自分にはツッコミ役が必要なのだとつくづく思う。


「主席、厨二病は何?」


 チャルカが感情の無い顔で、ヘルズに聞いて来た。――――からかっている訳ではない。チャルカは普通の人間とは違う人生を送ってきたため、一般常識が欠如しているのだ。


「厨二病か・・・教えてやってもいいが、貴様に我が呪文が理解できるかな・・・・」


「主席、気持ち悪い」


「はい・・・」


 しょぼん、とうなだれるヘルズ。チャルカはそんなヘルズを見ても無表情だ。


「主席、そこは昔から変わってないね」


「え?俺の厨二病な部分がか?」


 自覚は無かったが、自分は昔から厨二病だったのだろうか。・・・・もちろん今も自覚はないが。


「うん。昔から周りと違う事ばっかりやりたがって、よく分からない技を空き時間にずっと練習して、師匠に『カッコいい技は無いですか?』って毎日聞きに言って、私やクルシアに『俺の作った技を見せてやる!』とか言ってよく自慢してた」


「うわあ・・・」


 思わず、頭を抱えたくなる。確かに解釈を変えれば自己の鍛錬に励む努力家な少年かもしれないが、事実ただの痛い少年である。


「あと、『深淵の時間だ!』とか言って、よく私の布団に・・・」


「ストップ! 分かったから、一回黙ろうか、な!」


 光のような速さでチャルカの口を塞ぎ、その耳元で囁く。これ以上、ヘルズの過去を暴露されると、社会的に死んでしまう。――――もう既に半分死んでいるが。


 チャルカの口から手を離し、ヘルズは頭を掻いた。


「あれから二年か・・・俺も変わってないな」


「うん。主席、性格は相変わらず」


「お前も変わってないな・・・その無表情な所とか」


 チャルカの言葉に、ヘルズは苦笑いで応じた。


「ところで主席、今日はどうして私の所に?」


 不意にチャルカがヘルズの方を向き、小首を傾げて聞いた。


 チャルカの疑問ももっともだろう。以前、自分をボコボコにした男が突然現れて、一緒に散歩に行くのである。恐怖以外の何物でもない。まああの戦いは成り行き上の物で、二人ともその事を根に持っては居ないのだが、やはり突然訪ねて来た理由は知りたい。


「あー、実は俺今ストライキ中でさ、要するに仕事したくないからサボってんの」


「主席、それは駄目。ちゃんと仕事しないと、クルシアに怒られる」


 クルシア、という言葉を聞いた瞬間、ヘルズの顔が強張った。


「そっか。お前はあの時いなかったから知らないんだっけ」


「何が?」


「クルシアなら死んだよ。ちょうど、俺達の卒業式の日にな」


 チャルカの眼が大きく見開かれた。


「それ、本当?」


「嘘でこんな事言うかよ。言ったら俺は人間じゃねえ」


 そう言う自分の顔は、とても辛く見えるだろう。握りしめた拳には爪が突き刺さり、噛みしめた唇からは血が滲み出ている。


「と、悪い。暗い雰囲気になっちまったな。ったく、死んだ奴を悔むとか、アニメお決まりのパターンだな。自分でそれをやるとか、情けねえな。まあいいや。なあチャルカ、お前ずっと一人で退屈だろ。もう少し、話をしようぜ」


 チャルカが驚いた目でヘルズを見た。おそらくヘルズが無理をしている事に気が付いているのだろう。


「お決まり?」


「ああ。この展開はアニメのお決まりだぜ。―――それに事件だって、二年前の事だ。今更悔いたってしょうがねえよ」


 ヘルズは肩をすくめた。


「じゃあ何にするか――――」


「そう言えば、主席。大事な話がある」


 チャルカがヘルズの方に向き直った。


「どうした、チャルカ?」


「・・・・実は私、もう身体が持たないかもしれない」


「え・・・?」


 視界が一瞬、暗くなる。まさか、二週間前の怪我で致命傷を負ったのだろうか、でもそれなら師匠が――――


「私の身体は、あと一か月も持たないらしい」


「う、嘘だろ・・・」


「本当。うわっ」


 抑揚のない声と共に、チャルカが芝生に倒れる。もしかして、絶対安静というのは本当だろうか。それなのに、無理矢理外に連れ出したせいで怪我が悪化して――――


「チャルカッ!」


 ヘルズは慌てて駆け寄り、チャルカを抱き起こす。チャルカはヘルズの顔を見ると、口の端を少し歪めた。


「ごめん、主席。私もう無理かも」


「ふざけんなッ!」


 気がつけば、ヘルズは叫んでいた。周りに居た人が何事かとヘルズ達を見るが、そんな事は関係ない。ヘルズは自分に言い聞かせるように、チャルカに言う。


「お前は死なない。そんな事で死んだら、師匠に顔向け出来ねえだろうが!」


「主席・・・」


「待ってろ。今から近くの病院に乗り込んで、無理矢理治療を受けさせる。お前は必ず、俺が助ける」


「主席」


「大丈夫だ、お前は必ず俺が助ける」


「主席、ちょっと」


「何だよ?」


 チャルカは相変わらずの無表情な瞳でヘルズを見て―――









「これが、お決まりって奴?」




「は・・・・?」


「師匠から教えてもらった。これがよくある『お決まり』らしい」


「じゃ、じゃあ、病気は?」


 すると、チャルカは可愛らしく小首を傾げた。


「主席、何言ってるの?」


 その反応に、ヘルズは数秒、沈黙した後。






「ふ、ざけんなぁぁぁぁぁぁ!」


 凄まじい破砕音が、公園内に響き渡った。


 次回は、姫香と二ノ宮です。

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