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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と囚われの姫
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予告状 ―さあ、始めようか。盗みという名のゲームを!―

 花桐邸でのゲーム、スタートです。

『―予告状―

 今宵、花桐邸にある『喜劇を演じた美少女』を戴きに参上する。

 怪盗〝ヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニング〟』

 

この予告状が花桐邸に届いたのは、ヘルズが姫香の家に行ってから二週間が経った日の事だった。




「警視庁の松林です。こちらにヘルズが盗みに入るという通報を聞いたのでやって来ました」


 松林は、数人の部下を引き連れて、花桐邸に訪れていた。


「あら、警察の方ですか」


 出てきたのは、二十代半ばだと思われる、美人の女だった。部下の数人が息を呑む音が聞こえる。松林がそんな部下たちを目でしかると、女性は「構いませんよ」と微笑んだ。


「失礼ですが、花桐紫苑さんの妻の、花桐文代さんでよろしいですか?」


「ええ、そうです。ではこちらへどうぞ」


 松林達が連れてこられたのは、体育館くらいある広さの部屋だった。そこに、美少女の彫刻があった。美少女の身体は裸で、跪いて何かを祈っているようなポーズを取っている。口元が笑っている。だが目が笑っていない。


「これが、ヘルズが狙っている『喜劇を演じた美少女』です。ご覧の通り、この少女は過酷な状況にも関わらず、喜劇のヒロインを演じ続け、死んでいったという逸話から作られたものです」


 確かに、この彫刻を見れば納得がいく。松林は彫刻を見て頷く。松林の他にも、何人か部下が頷いている。


「それで我々は、どこを見張ればよいのですか?」


 松林が文代に聞く。文代は廊下を指さし、松林に言う。


「とりあえず、廊下からこの部屋まで配置してください。増援は不要です」


「え、いや、しかし」


 松林は失礼だと思いながらも口をはさんだ。


「何です?」


「あ、いえ、最近のヘルズの手口では、高所からの侵入が多いので、そっちにも警備を配置した方が・・・」


 呟くように言う松林に、文代はニコリと笑い、「心配いりません」と言った。


「そう思って、既に一人、ボディーガードを雇っております。チャルカ、入って来なさい」


「はい」


 声と同時に、扉が開かれ、中から栗毛の女の子が入って来た。


「こちらが、私が雇った最強のボディーガード、チャルカですわ。今回は宝を守るために動いてもらいます。チャルカ、こちらは警察の方々です。ご挨拶を」


 文代の声と同時に、チャルカと呼ばれた少女が頭を下げた。


「チャルカです。17歳で、姓はありません。気軽にチャルカとお呼びください。短い間ですがよろしくお願いします」


 少女の無機質な自己紹介に、松林は初め彼女をロボットかと思った。だが、松林は彼女が妙な気配を放っている事に気が付いた。妙に首筋がチリチリする。その感触を、松林は何度か感じたことがある。


(これは、殺気⁉)


 長年の経験がすぐにその正体を察知し、松林は身構える。その時、部下の一人が余計な事を言った。


「その子、17歳だそうですけど、本当に高所の警備を任せても大丈夫なんですか?まあ今回、上空は我々のヘリが守っていると言っても、相手は天下のヘルズですよ?もし取り逃がしたら大変な事になります。やはり屋上は我々警察が――」


 部下の言葉は、首に突き付けられた剣によって遮られた。


「あら、ごめんなさいね。その子、長い戦闘訓練のせいで、口より先に手が出てしまうんですって。困った性格よね。でも、その性格がヘルズ逮捕に生かせると思いますよ」


 文代がクスクスと笑う。その時、部下一人がまたも余計な事をした。拳銃を抜いてチャルカに向けたのだ。


「き、貴様!我々警察を愚弄して―――」


 部下の一人が彼女に向かって引き金を引こうとした途端、松林とチャルカが同時に動いた。チャルカが風のような速度で部下の一人に迫る。その剣が部下の首を切り裂こうとした刹那、松林の右腕がそれを遮った。剣と右腕がぶつかり、ガキィン! という金属音を鳴らす。


 攻撃が失敗したことを悟ったチャルカは、一歩引いて部下の首に剣の切っ先を向けた。突然目の前に剣を突き付けられた部下は、たまらず悲鳴を上げた。


「ひ、ひいっ!」


「そこの刑事、邪魔するな。私はコイツを切らなければならない。退かないならお前も切る」


「やれるものならやってみろ。俺でよければ全力で相手をしてやる。だが俺の部下に手を出してみろ。ただではおかないぞ」


 松林のドスの利いた声に、チャルカの顔に一瞬戦慄が走った。チャルカが剣を鞘に戻した。それを見て、松林も右腕を下ろす。

 

 お互いが武器をしまい、数秒の間張り詰めた空気が辺りを支配する。数秒経った後、チャルカが松林に近付き、クンクンと鼻を鳴らした。やがて何かを発見したのだろう。松林の顔を見つめ、真剣な面持ちで聞いてきた。


「お前、名前は?」


「松林尚人。何か俺の顔に付いているか?」


「お前、私よりも強い。さっきの速度と、お前の身体から出る気配がそれを証明してる。お前、一体何者?」


「さあな。お前の勘違いだろ」


 松林はポケットから手を出すと、チャルカに手を伸ばした。


「何はともあれ、俺達は同じ敵を捕まえるんだ。協力しようぜ」


「その前にもう一度質問。お前、一体何者?」


 どうやらいままで自分より強い人間に会った事がないようだ。松林は苦笑すると、チャルカの鼻先に手を差し出した。


「松林尚人。ただの刑事さ」


 チャルカはしばらくその手を見つめ―――やがてぎこちなくその手を握った。松林はニヤリと笑い、部下たちに命じた。


「じゃあ、全員配置につけ!ヘルズはもう侵入しているかもしれないぞ!今日こそあの憎きヘルズを捕まえてやるぞ!」


「おおおおおおおおおおおー!」

 松林の合図で、全員が配置に付いた。


 ヘルズは果たして、お宝を盗めるのか?そして、ボディーガードの少女との戦いは?楽しみに待っていてください。

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