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第5話 説明多め

 ゲーム内でよく食べられる《ウナギのかば焼き》というアイテム。これはHPを3500回復させるものだ。アイテム欄の1つに消費アイテム欄があり、そこにあった一番食べてみたいものを選んだのがそれだった。

 しかし、HPは元々減っていないため、回復は見込めない。けれど、空腹感は和らいだ。味も良し、コスパはてんでダメ。HPが減っていないのに一つ1200セルもする《ウナギのかば焼き》を、ここで食べてもよかったのだろうか。


「ん~っ、美味しい!」


 そんな疑問が吹き飛ぶほどの笑顔を、鈴花が見せる。仁志はひっそりと喜びを胸中にしまい込んで、別の消費アイテム《エリクサー》を取り出した。食事には飲み物も必須だろう。

 ただ、《エリクサー》やポーション系アイテムは既に何度か飲んでいる。そうでなければ、喉がカラカラになり全力を出せなくなっていた。この辺りはゲーム時代と変わらず、腹を空かすというのは囚われてから初めてであるが、喉が渇くというのはゲーム時代を含むと何度も経験している。

 いつも通りに取り出した《エリクサー》。

 一般プレイヤーであればそう幾つも所持できないほど高価であるこのアイテムは、一つ6200セルもする。ただ、喉の渇きも使うアイテムによって変わってくるので、一概に勿体ないとは言えないかもしれない。

 それでも、やはりコスパはよくない。それに《エリクサー》はHPとMPを全回復させることのできる唯一のアイテムだ。あまり無駄使いはよくないのだが、そんなことは関係ないとばかりに仁志は二本目を取り出した。


「一服したら行こか」


「うん、わかった」


 30分ほどその場で雑談を交わした2人は、出かけるときには大きな木にもたれかかりながら、仁志に全体重を預けるようにもたれかかる鈴花がいた。

 その様子をこの丘陵エリア最高レベルである68レベルの【ラット】が取り巻きのように囲んでいるが、2人を攻撃するような素振りを見せない。


「ラットもこうしてたら可愛いなぁ」


「えっ……そうかぁ?」


 鈴花が微笑を浮かべる中、仁志は苦笑を浮かべる。

 そろそろ出発しよう、という話になった2人は、周囲のラット13体に手を振りながらその場を離れた。

 時刻は既に22時を回り、大ボスが復活していれば戦いが終わる頃には0時を回っているだろう。そう判断した2人は、転移門の中に入って安全を確保してから睡眠を取ることにする。もちろん、龍樹にはその時連絡するつもりだ。

 丘陵エリアを抜け、奈良県内の山岳エリアを幾つも踏破しながら、三重県へと突入。それも僅か30分もかからずに突き進み、愛知県を北上し始める。

 この【遥かなる冒険のその先へ】では、近未来の地球が衰退した世界設定となっている。自然に支配された地球。そのため、高速道路も線路もあるのだが、車や電車は走っていない。けれども、その道を使うことは可能だ。

 一般的なプレイヤーや現地人であれば、そういった道を活用する。召喚笛を用いて馬を出したりすれば、道を通るのであれば行きやすい。

 だけど、この2人――否、この12人は違った。

 召喚笛で出てくるモンスターは倒したことのある敵のみ。そうなると、彼らは【ジャイアントマンドラゴラ】を召喚できる、と思われがちだが、実際は1人で倒したことのあるモンスターでなければならないため、いつもパーティ戦闘を行う【アホで愉快な仲間たち】は、そういった召喚モンスターをあまり持っていない。

 それこそ、自身とかけ離れたステータスを持つ【タイガーウルフ】や【ラット】など、雑魚敵しか召喚できないのだ。どう考えても自分で走った方が速い。だから彼らは、召喚笛を滅多に使わなかった。

 ただ一人例外がいるとすれば、ドワーフ族であり重戦士である由梨だろう。一番足が遅く、かつて1人で倒したボスモンスターである89レベルの【ボルテージユニコーン】を召喚したいと常に思っている。

 このモンスターは雷系統の魔法を使い、回復系の魔法も使う。そしてユニコーンであるために地上最速のモンスターとして有名だ。その速度はトッププレイヤーである由梨より僅かに速く、あとの11人には勝らないものの、他プレイヤーや現地人からすれば絶対に欲しい召喚モンスターである。


「そろそろ静岡かなぁ」


「そうやと思う……けど、眠ぅなってきた」


 欠伸をしながら、鈴花は仁志を見た。

 ここら辺で一度、睡眠でもとらないか、と。

 しかし、既に一度休憩を挟んで若干の遅れがある。遅れを取り戻すために全力疾走しているが、夜が深まるに連れてモンスターはレベル以上の実力を発揮してくるため、一撃で倒すことが難しいモンスターも現れ始めていた。

 基本的に20レベル以上のレベル差があれば一撃で倒すことができるようになっているが、23時から5時までは深夜モードとなり、40レベル以上の差がなければ一撃で屠ることはできない。

 彼らが110レベルであるため、70レベルを越えるモンスターが出現した場合は2回攻撃を入れなければ倒せないのだ。その場合、一本13000セルの矢ではなく、一つ質の高い一本17000セルの矢を使えば一撃で倒せるのだが、縛りプレイをしている彼女は使えない。

 【絶命の弓】で扱える最弱の矢が、一本13000セルなのだ。他にもっと弱いモンスター向けに別の装備もあるにはあるが、現実となったゲームの中では、そういうことはしないでおこうという結論に至っている。

 いくらアホだとはいえ、安全マージンはきっちり取っていた。

 そして、仁志の方もアサシンであるため、クナイの他にも攻撃方法はあるが、スキルなしとなればクナイと肉弾戦闘のみとなってしまう。

 肉弾戦闘をするためにわざわざ近づかなければならないのは避けたい。であれば、クナイでの攻撃となる。クナイもバカにならない値段がつけられており、現在使っているのは一本8800セルの代物。いまの籠手こて装備では、それが最弱のクナイだ。もう一つ上のクナイであれば11200セルのものがあるが、そこはやはり縛りプレイを順守していた。

 縛りプレイもいいが、コスパを考えると一つ上のものを使って一撃で仕留めたほうが遥かにいいのだが……。

 形としては、鈴花の一本13000セルの矢が先に届き、仁志の一本8800セルのクナイが届く。合わせて21800セルの攻撃であり、得られるセルは相手にもよるが、ボスモンスターでないため最高でも34000セル……と言いたいところではあるが、この静岡に入ったばかりの平原エリアでは80レベル周辺のモンスターが多い。

 80レベル周辺で得られるのは17000セルが限界。つまり、少なくとも一体倒すごとに訳4800セルの赤字となる。

 2人はそれを、はっきりと認識しているのだろうか?


ゲーム系のものだとどうしても説明が多くなってしまいがち……。

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