第3話 主人公登場なり
レオンからぼったくる話で盛り上がりを見せたのも少しの間で、彼らはすぐに出立の準備を整えた。
課金アイテムで身を包み、武器はそれぞれ物理でどうにかできるようなものを装備する。
【アホで愉快な仲間たち】のギルドホールは最古参であるが故に、神殿近くに居を構えている。神殿は金を預けたりアイテムを預けたりする倉庫の役割と、外で死亡した時に復活する場所という役割を負っていた。
神殿以外でも復活できる場所、というのがギルドホールとなり、アイテムや金銭を預けたりもできるようになっているが、それはギルド倉庫という名目だ。つまり、ギルド共用倉庫と言っていい。個人の倉庫は神殿に行かなければ使えないため、彼らは立地の良い、神殿からほど近い――神殿の隣にギルドホールがある。
神殿が街の中心地だからこそ、そのエリアの価値は高く、4300万セルという法外な値段だ。また、ギルド設立には300万セルが必要であり、全てのギルドホールの機能を解放しようと思えば、設立金を含めて1000万セルが必要となっていた。
そのため、このエリアを購入する者は少ない。大手ギルドであればすぐに資金は集まるが、ギルド構成人数上限が設定されていて3度の上限解放でようやく上限が取り払われるので、どうしても別のところを購入してしまう。
ギルドとは、ギルドホールとは、彼らの家族であり家なのだ。
とはいえ、ギルドホールがなくともギルド設立自体は可能だ。
彼ら【アホで愉快な仲間たち】のギルドホールは最上級のもの。立地もそうであるが、外見もギルドホール専用課金アイテムを使用している。神殿よりも豪華そうに見えてしまう、西洋の宮殿を彷彿とさせる見た目。
門があり、広場があり、敷地内を10m歩いて玄関がある。
その扉がゆっくりと開き、出てきた者たちを見てレオンたちを見物していた者たちは目を見張った。これまで開くことがほとんどなかったギルドホール。その正体がいま、解き明かされる――。
なんてことはなく、入るときにも見られていた。
見ている者たち曰く、「なんでこんな奴らがこんなええとこ住んどんねん」である。
レオンを知らないであろう彼らに対し、鋭い視線が突き刺さる。けれども、そんな視線には一切気を留めず歩き出した。
12人が出てきたところで、《大阪の街》の外へ向かう。
《東京の街》――別名《始まりの街》周辺は3~7レベルの雑魚モンスターしかいない。だが、《大阪の街》周辺は最低レベルで45レベル。ポップする敵は45~60レベルとなっていた。
しかし、ここよりもさらに厳しい環境なのが《福岡の街》である。《福岡の街》は70~80レベルのモンスターが最低であり、九州地方のエリア全体で見ても最低レベルは32レベル。
そして、このゲームにはもう一つ、《北海の街》――現実世界では北海道にあたる地域があるのだが、ここはモンスターがほとんど出ない。街周辺に限って言えば、間違いなく4つの街で一番安全だろう。
しかし、北海道地方はイベントでよく使われていた。プレイヤーの往来を活発化するためなのだろうが、プレイヤーはイベントが終わり次第《北海の街》から引き上げるのが常。
悲しい運営の努力は、実を結ばなかった。
「なぁ、東京行くのに召喚笛ってあり?」
「なしやろ。縛りじゃなくなるやん」
「え~。500キロも離れてるんちゃうかった?」
「確かにそうやけど……龍樹に聞いてみぃ」
召喚笛とは、クエストを達成することで与えられるレアアイテムだ。召喚笛を使うとモンスターを呼び出すことができるけれど、呼び出せるモンスターには限りがある。それは、倒したことのあるモンスターに限る、というものだ。
口を尖らせた由梨は龍樹の元へ行き、確認を取る。
「は? あかんに決まってるやん」
「うへぇ……めんどっ」
縛りが大好きで仕方がない龍樹に一蹴され、面倒臭がりの女性陣は一様にため息を吐いた。
しかも由梨の種族はドワーフであり、種族特性によって移動制限がかけられている。しかも、職業は重戦士。つまりは盾役だ。この中で一番足が遅く、全力で走ってようやく他メンバーの70%程度の速さだという現実から逃れたい。だけど、それは許されないらしい。
「由梨に合わせるから頑張れ」
「は~い……」
東京まで500キロ。全力疾走しても4時間かかる。他のメンバーのみで行けば――一番足の速いアサシンである仁志が単独で向かえば、およそ1時間半で到着するだろう。
こんなことなら《密林》で待機しておけば……と嘆きたくなるも、こうなると誰もが予想していなかったのだから仕方がない。
《密林》――正式名称《躍動の森》は、所謂富士の樹海に当たる。富士の樹海を抜けた先にある転移門の転移先、富士山の内部に【ジャイアントマンドラゴラ】がいるのだ。
「ついでにリポップしてるか見に行く?」
「あー、そうしよか。リポップしてたらもっかい倒しとこ」
またしても数秒で倒す計画を立て始めたギルメンに、龍樹は出発を告げた。
正直、1vs1でも【アホで愉快な仲間たち】メンバーであれば余裕で倒せてしまうので、その役目はアサシンである仁志と、二番目に足の速いエルフ族であり弓職に就いている鈴花が請け負うこととなった。
2人は出発と同時に列を飛び出し、一直線に《躍動の森》を目指す。
メンバー全員が主人公ではありますが、メインで書いて行くのは鈴花になります。
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