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91 世界の接続

 フィナと相談して心が軽くなった俺は、自分の思うがままに選択を行い、それを爺へと伝える。


「分かったよ。コウヤ、君の選択を尊重するとしよう。その結果、何かトラブルが起きても、僕がなんとかするから気にしなくていいよ」


 フィナが言っていた通りに、爺は自分が責任を負うつもりだったようだ。

 まったく、ちゃんと最初にそれを伝えてくれていれば、俺も悩まなくてすんだのに。

 まあ悩んだ結果、得たもの大きかったので結果オーライなのだが。



 そして、ついに世界間ゲートを開く日がやって来た。


「いよいよか……」


「まあ君の要望通り、しばらくは人間の通行は一部ゲートのみに限定されるから、大きなトラブルにはならないはずさ」


 結局俺は、世界間で行き来できる方を選んだ。

 ただ、作られるのゲートの数は100を超える。それら全てで行き来を出来るようにすると、色々カオスな事になりそうだったので、制限を設けることを頼んだのだ。

 と言っても、一部だけの仕様を変えるのは無理なのらしく、妥協案として、爺が開通したゲートの大半に結界を張って蓋をするという形に落ち着いた。

 魔力の流れを極力妨げずに、生物の通行のみを阻害する結界を、それも沢山設置するのは大変だったようだが、それでも爺は快く引き受けてくれた。


「ナイトレインは、日本に戻ったりするのか?」


 記憶は無いらしいが、一応彼の故郷でもあるのだ。

 通行が開放されるゲートの中には日本と繋がるものもある。


「先代魔王として、必要があれば出向くこともあるかもしれないが、今の所は特に考えてはいないな」


 彼自身は日本に対し、別段興味を抱いている訳ではないらしい。

 まあ、覚えてないならそんなもんだよな。


「わたくしは帝国の皇帝として、異界の国々と交渉をする必要がありますから、当然行きますよ」


 リーゼは地球の国々に興味津々の様子だ。護衛にツバキを連れて行くらしい。


「ツバキ、お前は日本にある実家に戻らなくていいのか?」


「いやー、私は遠慮しておくわ……」


 何やら日本にいた頃、色々とやらかしていたらしい。

 地球には帰りたいが、地元にはあまり戻りたくない、そんな感じだ。


 ちなみにサトルは、この一大事にも特に興味を示さず、魔大陸で修行に励んでいるらしい。


「まあ、向こうの国々がどういう対応してくるかは、分からんけどな」


 一応、世界間がゲートによって繋がる事は、ネットの掲示板を通じて通告はしていおいた。

 同時に、それに南宮白夜が関わっていることも。

 結果、世界各国の首脳陣は大混乱に陥ったらしい。

 まあ、権力がまったく通じない爺の存在は、彼らにとって明らかに目の上のたんこぶだったからな。

 そんな人物が実は存命で、またどでかいことをやらかそうというのだ。

 その反応も無理はない。

 

 それからまだ数日だ。

 ロクな対応策など、まだ無いだろうが、それくらいでいい。

 変に時間を与えて、色々と悪だくみされると面倒だからな。


「じゃあそろそろ始めるよ」


 爺がそういって手を軽く掲げる。


「よし、第一段階は成功みたいだね」


 ん? 特に何が起こったようにも感じられないが……。


「今のは、神界とこの世界を繋げただけだからね」


 一気に繋げると、膨大な魔力でこの世界が大変になる為、ゆっくりと蛇口を捻るようにして、じわじわと魔力をこっちの世界へと流し込んでいるらしい。

 

「じゃあ次が第2段階だ。この世界とあちらの世界を繋ぐよ。コウヤの魔力も貸して欲しい」


 どうも神界との接続には、神界の世界にある魔力を流用している為、爺の魔力はほとんど使用していないそうだが、今度はそうはいかないのだそうだ。

 事前にその辺の話は聞いていたので、特に何か尋ねるでもなく、爺の言葉に従う。


「じゃあ行くよ!」


 爺のその言葉と同時に、俺の全身から膨大な魔力が抜けていく。

 それと同時に、世界各地からいくつもの光の柱が立ち上る。


「繋がったよ」


 それは長い準備期間の割には、あっさりとしたモノだった。

 だが、確かに2つの世界が繋がったのだろう。

 今俺の目の前に存在しているゲートがそれを証明している。


「ほら、折角だし潜ってみなよ」


 最初の一歩をどうやら俺に譲ってくれるつもりらしい。

 別にそんなの求めてなかったが、折角の気遣いを無碍にするのもなんだ。


「じゃ、じゃあ、行くぞ!?」


 俺はおそるおそるゲートを潜ると、そこは人気の無い海岸だった。

 周囲を見渡すと、そこには海と山に囲まれた小さな田舎町が広がっていた。


「あれ? 日本に繋ぐっていってなかったか?」


「そうだよ。……ああ、日本って言っても、意外と広いからねぇ」


 都会暮らしな上に、そこから出た事が無かった俺には、目の前に広がる風景が意外なモノに感じられた。


「うーん、ここは多分長崎かな?」


 若い頃は日本中を旅したこともあったと言っていた爺には、この街には見覚えがあるらしい。

 どうやら俺達は日本でも西の端の方に、ゲートは開いてしまったようだ。


「まあ乙なものじゃないか、かつては異国との貿易で栄えた街だ。今度は異世界との貿易で栄えるなんてのも」


 爺は気楽にそんな事を言っているが、それでいいのだろうか……。


「一応通告してたのに、誰もいないな」


 まあゲートの位置を日本のどこかとしか、伝えてなかったから、そりゃ対応も無理だろう。


「しゃーないな」


 俺はスマホを取り出し、掲示板にゲートの開いた位置や、その周囲の特徴などを書き込んだ。 

 それから15分程して、こちらへと警察がやって来る。


「パトカーか、久しぶりに見たよ」


 爺が懐かしそうにそれを見ている。

 日本にいた頃はしょっちゅうお目に掛かる機会があったからな。

 ただ、爺が大人しくそれに乗った姿を俺は見た事はないが……。


 やって来た警官と色々と話しているうちに、今度は県のお偉いさんがやって来て、場所を変える事になった。

 それから紆余曲折を経て、東京へと移動し政府のお偉いさん方と色々話をすることになった。


「……せめて通告をもう少し早くして欲しかったものです」


 疲れた表情でそう話すのは、現在の日本の内閣総理大臣だ。

 俺が日本にいた頃は見た記憶が無いので、最近になって台頭してきた政治家なのだろうか?

 まあ俺は、政治にあんまり興味無かったので、政治家の顔なんてほとんど覚えてないので、そのせいかもしれないが。


 向こうの世界の情勢など、色々な事を尋ねられたが、後から使節がやってくるから、そっちに聞いてくれと流して会談は終わった。


 その後も俺達はVIP待遇で歓待を受け、大きなトラブルもなくあちらの世界へと帰って行った。

 そうなったのは一緒にいた爺の存在が大きかったように思う。

 始めは南宮白夜本人とは信じていなかったようだが、俺が席を外している間に爺が何かやったらしく、それ以降の俺達への対応は非常に丁重かつ若干怯えの色が見えるようなモノに変わった。


 その後、俺達に続いて各国からの特使が、日本だけでなく世界中の国々を訪れ、2つの世界の交流が始まった。

 それがどういう結果へと辿り着くのか、戦々恐々としつつも、俺はただ状況の推移を見守っていた。


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