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85 頼み事

 神々の住まう地にて個室を用意された俺たちは、それぞれの想いを胸に一晩を過ごした。

 途中、食事などの世話は、女神2人が甲斐甲斐しくやってくれた。

 正直その姿は、以前出会った時とは別人のように感じたが、状況が変われば態度も変わって当然だと思うことにした。


「さてと、ゆっくり休めただろうか?」


 俺達は昨日と同じく、応接室にてシンシと対面していた。


「ああ、流石は神の住まう地だけあって、色々と豪華で良かったよ」


 魔力を僅かに込めるだけで、色々と便利な機能が扱えたので、下手したら日本のシステム住宅以上に楽だったかもしれない。


「なら良かった。……それで答えは出たのかな?」


 その問いに対し、サトル以外の全員は微妙な表情をしている。

 恐らくまだ考えが纏まっていないのだろう。俺もだが。


「ふむ。その表情を見る限り、まだのようだね。何、焦る必要は無いから、じっくり悩んで欲しい」



 そんな感じで特に進展がないまま1週間が過ぎる。


「悪いな、中々答えが出せなくて……」


「構わないよ。最初にも言ったけど、焦る必要はまったく無い。何日でも何ヶ月でも、何だったら年単位で悩んでくれても一行に構わないさ」


 流石は神だけあって、年月に対する感覚が俺達とは大分異なるようだ。


「そんなに長く、ここで世話になるつもりはないさ」


 俺はそう言って肩をすくめる。


「そうだね。コウヤは神になんかならずに、早く下界に戻るべきだよ」


 対面のシンシからではなく、背後からそんな言葉が聞こえてくる。

 思わず俺は振り返ると、そこには白い髪以外は俺そっくりの爺の姿があった。


「なっ! 爺! どうしてここに!」


「どうしても何も、君に用事があったから来たんだよ」


「な、ビャクヤ様、何か御用で?」


 シンシが爺に対し、警戒の視線を向ける。


「ああ、君たちにも無関係な話じゃないから、ついでに一緒に聞くといいよ」


「で、用事ってなんだよ爺?」


「さて、どこから説明すればいいやら。うーん、面倒だし直球で言うよ。神を殺すことなく、その不死性を無くす方法を準備したのさ」


 その言葉に反応し、ガタッっと音を立てて立ち上がるシンシ。


「それは本当なのですか!?」


「こんな事で嘘を言ったりはしないさ。だけど、それを実行に移すには、僕の力だけじゃ無理なんだよね」


「……要するに、俺たちに協力しろって話か?」


「おっ、察しが良いねぇ、コウヤ。……ちゃんと成長してるんだね」


 失礼な。元からこんなもんだぞ。


「それはどういった方法なのですか? 我々にも手伝えることはないのでしょうか?」


 シンシが完全に爺の話に食いついている。

 意地でも逃がさない。そんな表情だ。


「簡単に言えば、ここと下界を物理的に繋げて、魔力を下界へと流し込むのさ。そうすればシステムの維持に必要な魔力が足りなくなって、システムはじきに動きを止めることになる」


「なるほど。……ですが、どのようにするのですか? その方法を考えたモノは他にもいましたが、技術的に不可能な為、皆断念しました」


「その辺は、僕が神から人間へと転生する際に色々仕込んでおいたから、問題ないよ」


 何やら大分昔から色々と企んでいたようである。


「そうですか……。しかし、仮にそれが可能だとしても、まだ問題はある筈です」


「そうだ。ここの膨大な魔力を流し込まれたら、大陸中、いや世界全部が魔物の領域と化してしまうぞ」


 これまで沈黙を守っていたナイトレインが、そう口を挟む。


「魔族のかつての故郷、魔大陸ラオブボーデンで起こった悲劇を、今度は世界全てで繰り返すつもりか?」


 だとすれば意地でも阻止する、そう言わんばかりにナイトレインに魔力が高まっていく。

 そして彼の妻2人も、同様の動きを見せている。


「殺気を収めなよ、ナイトレイン。その辺は僕もちゃんと理解してるよ。それを防ぐ為に、コウヤ、いや君たち全員の協力が必要なんだよ」


 そして爺は語り出す。


「ここと下界を繋いだ後、更に下界と日本のある世界を接続するんだ。あの世界には魔力が一切存在しない。そうすれば、各世界の魔力濃度は薄く収まり、世界全部が"魔物の領域"と化すような事態は防げる筈だよ」


 どうやら俺が元いた世界には、魔力が一切存在しないらしい。

 だから、爺とその血縁である俺以外に、魔法を使える人間が居なかったのか。


「一応その為の準備はしてたんだけど、色々と不備がある事が判明してね。それをカバーする手伝いをして貰いたいんだ」


 普通の人間の一生は、神々と比べ遥かに短い。その為、準備期間が不足したようだ。


「手伝いたいのは山々だが、内容にもよるな。その辺詳しく聞かせて貰おうか」


「ああ、勿論そのつもりだよ。実はね――」


 そうして爺の口から語られた中には、確かに俺にしか不可能な内容も存在した。

 俺は悩んだ末、渋々ながらにその頼みを引き受けるのだった。


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